小規模SOCを見据えたログ解析基盤の活用例
これまで自作したログ分析hadoop基盤は、syslog / authlog を収集し、Iceberg・Trino・Grafana で分析できる構成になっているため、単なるログ保管基盤にとどまらず、小規模SOCを意識した監視分析基盤としても活用しやすい。
特に、認証系ログの監視、管理操作の監視、ログ途絶の監視、時系列での傾向把握といった観点は、SOC的な初期ユースケースとして取り入れやすい。
以下に、現構成で実現しやすいユースケースを整理する。
SOC的なユースケース10選
| No | ユースケース | 目的 | 主な見る項目 | 今の基盤での実現性 | SOCっぽさ |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | SSHログイン失敗の急増検知 | ブルートフォースやパスワードスプレーの早期検知 | authlog失敗件数、ホスト別、時間帯別、送信元IP、ユーザー | 高 | 高 |
| 2 | SSHログイン成功の急増検知 | 正規認証情報悪用や不自然な運用増加の検知 | authlog成功件数、ホスト別、ユーザー別、時間帯別 | 高 | 高 |
| 3 | 深夜・休日ログイン検知 | 通常運用外アクセスの検知 | JST時刻、曜日、ユーザー、ホスト | 高 | 高 |
| 4 | 普段と違うホストへのログイン検知 | 横移動やアカウント悪用の兆候把握 | ユーザー×ホストの過去出現履歴、初見組み合わせ | 中〜高 | 高 |
| 5 | root / sudo / su の異常増加監視 | 権限昇格や管理操作の異常検知 | program、message、ユーザー、ホスト、時系列推移 | 高 | 高 |
| 6 | ログ途絶・ホスト沈黙検知 | 転送障害、エージェント停止、ホスト停止の検知 | ホスト別件数、最終受信時刻、直近n分の件数 | 高 | 中〜高 |
| 7 | 特定メッセージ急増検知 | 障害や攻撃兆候の文字列ベース監視 | failed、error、denied、invalid user などの件数推移 | 高 | 中〜高 |
| 8 | 重要サーバー優先監視 | 影響度を踏まえた優先順位付け | ホスト重要度、役割、異常イベント | 中 | 高 |
| 9 | 簡易相関分析 | 単発イベントではなく一連の怪しい流れを追う | 失敗→成功→sudo などの時系列つながり | 中 | 高 |
| 10 | LLMによる一次トリアージ支援 | 検知後の初動調査を高速化 | 件数推移、対象ホスト、対象ユーザー、直近イベント | 高 | 高 |
まず優先して取り組みやすいもの
全部を一気に実装するよりも、まずは分かりやすく、効果を説明しやすいものから始めるのが現実的である。
| 優先度 | ユースケース | 理由 |
|---|---|---|
| 高 | SSHログイン失敗の急増検知 | すぐ作れて効果が分かりやすい |
| 高 | SSHログイン成功の急増検知 | 失敗だけでなく成功も見ると実運用寄りになる |
| 高 | 深夜・休日ログイン検知 | ルール化しやすく説明しやすい |
| 高 | ログ途絶・ホスト沈黙検知 | 運用監視とセキュリティ監視の両面で有効 |
| 高 | root / sudo / su の異常増加監視 | SOCらしい管理操作監視になる |
| 中 | 普段と違うホストへのログイン検知 | 振る舞い検知に近く、SOC感が強い |
| 中 | 特定メッセージ急増検知 | 運用異常と攻撃兆候の両方を拾いやすい |
| 中 | 重要サーバー優先監視 | 同じアラートでも優先度差を付けられる |
| 低 | 簡易相関分析 | 効果は大きいが設計が少し重い |
| 低 | LLMによる一次トリアージ支援 | 基盤完成後に載せると価値が出やすい |
今の構成と特に相性が良いもの
今回の構成では、特に次のユースケースが始めやすい。
| 特に相性が良い項目 | 理由 |
|---|---|
| SSHログイン成功/失敗監視 | authlog中心の現構成ですぐ始めやすい |
| 深夜・休日ログイン検知 | Asia/Tokyo前提の時刻処理と相性が良い |
| ログ途絶検知 | ホスト別件数集計が活かせる |
| sudo / su / root 監視 | syslog/authlogの文字列抽出で実装しやすい |
| LLM一次トリアージ | 既に進めている構成と自然につながる |
特に authlog / syslog は、認証・管理操作・異常メッセージ・ログ到達状況といった基本的な監視観点を押さえやすく、小規模SOCの入口として扱いやすい。
SOCそのものというより「SOCを見据えた基盤」
現時点では、一般的な商用SIEMや大規模SOCのように、ケース管理、チケット連携、多数のログソース相関、脅威インテリジェンス連携まで揃っているわけではない。
一方で、本基盤は以下の流れをすでに作りやすい。
- ログを集約する
- 長期保存する
- 高速に検索・集計する
- 可視化する
- 異常を検知する
- 調査を支援する
このため、位置づけとしては 「SOCそのもの」ではなく、「SOC運用を見据えたログ監視・分析基盤」 と表現するのが最も近い。
まとめ
本基盤は、syslog / authlog を中心に、Iceberg・Trino・Grafana・Flink・LLM連携を組み合わせることで、単なるログ保管基盤ではなく、小規模SOCを意識した監視分析基盤として活用しやすい。
最初の一歩としては、以下のような分かりやすいユースケースから始めるのが現実的である。
- SSHログイン失敗急増の検知
- SSHログイン成功急増の検知
- 深夜・休日ログインの検知
- root / sudo / su の監視
- ログ途絶の検知
これらを整備するだけでも、基盤の見え方は大きく変わり、「ログをためる仕組み」から「異常を見つけて調査できる仕組み」へ一段進めやすくなる。
ここまで、SOCについてインフラ技術観点から触ってみたいという観点では色々見られた良い題材でした。