NetSuite × 経費精算システム連携【詳細編】
~業務自動化と経理DXを実現するデータ連携設計~
【概要】編もご参照ください
https://qiita.com/naoyamiyake/items/120eca775e35bc77a6ea
はじめに:業務連携の目的(経理の自動化)
企業の経理部門では、経費精算・仕訳登録・支払処理といった反復的な業務が日常的に発生しています。これらの業務が属人化しやすく、データの二重入力や転記ミス、確認作業の工数が大きな課題となっていました。
本記事で紹介する「NetSuite × 経費精算システム」連携は、以下の目的を実現するための業務自動化モデルです:
- 経費申請から仕訳・支払までの一貫したデータフローを自動化
- マスタ情報の一元化による整合性確保と内部統制の強化
- 各種帳票・レポートのリアルタイム化による経営判断の迅速化
- インボイス制度・電子帳簿保存法等の法制度対応の基盤構築
これにより、経理部門は「事務処理部門」から「経営支援部門」への脱却が可能となります。
マスタ連携の詳細(コード/ID管理と外部IDの運用)
連携対象となる主なマスタ項目:
連携対象 |
経費精算システム側の項目 |
NetSuite側のデータ項目 |
連携方向 |
補足説明 |
マスタ連携 |
コストセンターコード |
部門コード(department.externalid ) |
NetSuite → 経費システム |
NetSuiteの部門マスタを同期して利用 |
マスタ連携 |
ユーザID |
従業員ID(employee.externalid ) |
NetSuite → 経費システム |
ユーザの氏名・部署など基本情報も合わせて連携 |
マスタ連携 |
プロジェクトコード |
プロジェクト(job.externalid ) |
NetSuite → 経費システム |
プロジェクト情報をセグメント1として取り込み |
仕訳データ |
仕訳ヘッダー |
支払伝票(vendorpayment )や経費帳票(expensereport ) |
経費システム → NetSuite |
経費精算の会計登録と仕訳起票に利用 |
明細データ |
仕訳明細 |
GL行(transaction.lines ) |
経費システム → NetSuite |
勘定科目・部門・プロジェクト別の明細データを反映 |
支払データ |
支払方法コード、銀行口座 |
送金指示データ(vendorpayment.paymentmethod 、bankdetails ) |
経費システム → NetSuite |
支払処理と連動した仕訳のトリガーとして活用 |
補足ポイント
-
externalid
を使うことで、NetSuiteの各レコードと外部システム間で一意にマスタを突合できます
- 経費システムからの仕訳起票を
expensereport
または vendorpayment
に自動反映することで、仕訳の手入力を排除し、経理の業務負担を軽減します
マスタデータ連携:コストセンター(部門)
経費精算システム項目 |
説明 |
対応するNetSuite項目例 |
企業コード |
Custom Segment / Subsidiary |
― |
コストセンターコード |
部門コードとして使用 |
department.externalid |
コストセンター名 |
表示名称 |
department.name |
グループコード |
グルーピング用途の任意コード |
カスタムフィールド設定が必要 |
有効開始日 |
運用上の有効期間(開始) |
department.startdate |
有効終了日 |
運用上の有効期間(終了) |
department.enddate |
マスタデータ連携:ユーザー(従業員)
経費精算システム項目 |
説明 |
対応するNetSuite項目例 |
企業コード |
所属企業情報 |
Subsidiary |
ユーザID |
一意の従業員識別子 |
employee.externalid |
姓名 |
氏名 |
employee.lastname , employee.firstname
|
所属コストセンター |
部門との関連付け |
employee.department |
勤務地コード |
配属拠点コード(拠点単位管理) |
employee.location |
有効日 |
雇用日・退職日など |
雇用期間のフィールドで表現 |
マスタデータ連携:プロジェクト
経費精算システム項目 |
説明 |
対応するNetSuite項目例 |
プロジェクトコード |
プロジェクトの一意な識別子 |
job.externalid |
プロジェクト名 |
表示用名称 |
job.name |
負担箇所コード |
部門との関連(原価負担先など) |
department.code (関連部門) |
承認者ユーザID |
プロジェクトマネージャ(PM)情報 |
job.projectmanager の外部ID |
仕訳データ構成:ヘッダー項目
項目名 |
内容・備考 |
金額 |
伝票合計金額または支払額。支払処理時に使用されるメインの金額項目。 |
消費税額 |
合計の消費税額。明細の合算値として計上されることが多い。 |
支払勘定科目コード |
支払処理時に使用される、仕訳用の勘定科目コード(例:未払金など)。 |
消費税率 |
消費税額の計算に使用。税率マスタと連携する場合もあり。 |
支払日 |
会計処理タイミングに関わる日付。現金主義など運用ポリシーに影響。 |
仕訳データ構成:明細項目
項目名 |
内容・備考 |
円貨金額 |
明細単位での日本円金額。NetSuiteのGL行にそのまま反映される主金額。 |
外貨金額 |
外貨精算時の明細金額。参考情報または為替換算の元データ。 |
消費税額 |
明細ごとの消費税額。税抜処理時や税伝票作成時に使用。 |
税抜金額 |
税抜金額として設定された場合に出力。内税・外税の処理方式によって異なる。 |
通貨レート |
為替レート。外貨精算時の日本円換算や財務報告に使用。 |
🔍 補足
-
ヘッダー項目は、1伝票あたりの全体情報。支払や会計登録時の起点となる。
-
明細項目は、GL(General Ledger)仕訳行にそのまま展開される粒度。
- 外貨精算を行う場合、「円貨金額」「外貨金額」「通貨レート」の整合性が重要。
- 税処理は企業の設定(外税/内税)や制度(インボイス制度)に依存するため、設計段階で確認必須。
運用上のポイント:
-
externalidの活用:NetSuite側で一意のID(externalid)を設定し、外部システムと突合。人為的なID変換の手間を省き、マスタ不一致のリスクを低減します。
-
NS→経費システムへの同期:NetSuiteのマスタを基準とし、定期的にAPIまたはCSV連携により、経費システム側へ更新
-
連携設計の柔軟性:従業員の所属部門やプロジェクトの組織異動にも対応できるよう、マスタに履歴や有効期限を持たせる構造が推奨されます
活用メリット:
- 入力データから自動で勘定科目が振り分けられ、経理の起票工数がゼロに。
- プロジェクト別・部門別の費用配賦がリアルタイムで可能に。
- 電子証憑連携(PDF添付)との組み合わせで、インボイス制度や電子帳簿保存法にも対応。