事業成長で見えてくるシステムの転換点 – ERP移行のタイミングと準備
小規模システムが抱える成長の壁
企業の多くは創業当初、クラウド会計や中小企業向けパッケージなど比較的シンプルな業務システムで経理・販売管理を賄っています。これらの小規模向けシステムは導入コストも低く、当初の業務には十分対応できます。しかし事業が拡大し取引規模や拠点数が増えてくると、徐々にそうしたシステムの限界が露呈します。例えば会計ソフトに在庫管理や受発注管理の機能がなければ、売上管理や在庫管理のために別システムやExcelなどを継ぎ足しで利用せざるを得ません。実際、小規模向けの会計ソフトを使い続ける企業は、売上・請求、購買、在庫、サービス提供など機能別に複数の補助システムを併用するケースが多く、その結果データ連携に手間がかかりシステム全体の複雑さ・コストが増大します。こうした分散システム間での手作業によるデータ転記は、人為ミスによる情報不整合のリスクも高めてしまいます。
「IT担当者としての選択」「現場担当者としての選択」「選択のための対話」
会計、売上・請求、購買、在庫、サービス提供の4つのシステムを導入している企業が何らかの理由でいずれか一つを現行から新規システムに変更する必要があると状況の設定をします。このような状況設定をシミュレーションしてみると当初の予定通りなのか当初の予定と異なるか見えてくると思います。継ぎ足しによる想定外の投資は企業の成長と共により大きくなっていくことが想像に難しくありません。
IT担当者と現場の業務担当者ではしばしば意見が分かれると言われますが、システム導入の判断時期の前に一度、カジュアルな対話をしてみることをおすすめします。
経営課題への対応
国内向けに作られた従来型の業務システムでは、企業がある程度成長して新たな経営課題に直面した際に柔軟な対応が難しい場合があります。例えば海外市場へ進出しようとしたとき、各国の商習慣や税制の違いに対応できる機能がないなど、従来システムではグローバル展開に障害となるケースが多々見られます。実際、日本国内で流通している多くの中小企業向け会計ソフトは多通貨・多言語対応が不足しており、海外拠点の設立時にそのまま使い続けることが難しいと指摘されています。また事業規模の拡大とともに管理会計や高度な財務レポートへのニーズが高まっても、シンプルな会計ソフトでは複雑な分析指標や多角的なレポート作成が困難になります。このように企業の成長や変化に旧来のシステムが追随できなくなった時点が、システム転換の兆候といえるでしょう。
成長企業がERP移行を検討すべきタイミング
では具体的に、どのようなタイミングでオールインワンのERP(統合基幹システム)への移行を検討すべきでしょうか。以下に主な契機となる例を挙げます。
1. 取引量・データ量の飛躍的増加: 受注件数や仕訳数が創業当初に比べ桁違いに増え、現在のシステムでは処理が追いつかなくなってきた時。システムのパフォーマンス低下や手作業の増加が見られたら、よりスケーラブルなクラウドERPへの切り替え時といえます。成長企業では顧客数や従業員数、取引データが指数関数的に増えるため、自動化や高度な処理能力を備えた環境への移行が不可欠です。
2. 事業の多角化・新規チャネル展開: 本業とは異なる新事業への進出や、EC(ネット通販)など新たな販売チャネルを開始した時。従来ソフトが特定業種向けや単一チャネル前提で設計されている場合、新しいビジネスモデルに必要な機能(例:EC在庫のリアルタイム連携、サブスクリプション課金管理など)が不足します。現在のシステムで事業の変化に対応できないと感じたら、それに対応できる統合システムへの移行を検討すべきタイミングです。
3. グローバル展開・複数拠点運営: 海外に販路を拡大したり現地法人を設立したりする段階。多通貨での会計や多言語での業務対応が要求されますが、国内中小企業向けシステムではこれらに標準対応していないことが多く、限界が明確になります。複数の海外子会社を管理し連結決算を行う必要が生じた場合も、各拠点を単一プラットフォームで管理できるクラウドERP(例:NetSuite OneWorld)のようなソリューションが有効になります。
4. 部門横断的な業務の複雑化: 受発注から在庫管理、出荷・物流、顧客対応まで一連のプロセスを一元管理する必要性が高まった時。成長に伴い部署ごとの業務が細分化・専門化すると、販売管理・在庫管理・CRMなどが別々の仕組みで動くサイロ化が問題になります。例えば 受注から出荷までを単一システムで可視化できていない と、在庫引当ミスや出荷遅延、顧客サービス低下につながります。こうした状況では、財務・販売・在庫・eコマースをすべて統合管理できるERPへの移行が有効です。
5. 経営管理ニーズ・ガバナンス強化: 上場準備や内部統制強化、国際会計基準への対応など、経営管理の高度化が求められる段階。例えば親会社との連結やIFRS対応、各国税制への準拠など高度な機能が必要になった時点も転換期です。単一グローバルERPであれば国ごとの税務ルールや多基準での財務レポートも標準機能でサポートできるため、将来的なガバナンス強化に対応できます。
延命か統合に向けた乗り換えか
以上のような節目で、現行システムの延命ではなく新しい統合基幹システムへの乗り換えを検討する企業が増えています。実際、ある老舗メーカーでは国内中心だった販売形態にオンライン海外販売を本格化した際、既存システムが多国間取引や在庫の管理に柔軟に対応できず手作業が増大。通貨換算を含む非効率な作業や過剰在庫の発生に限界を感じ、クラウドERPへの移行を決断しました。その結果、業務プロセスの標準化と各国固有要件(例:商品表示ラベルの多言語対応)の容易な実現により、配送リードタイム短縮と在庫最適化を達成しています。このように事業成長の転換点**では、統合ERPへの移行が業務効率化と次の成長への土台作りにつながるのです。
もちろん、延命も一つの選択肢です。本記事の最初に記載したいようにシステム全体(100%)を延命することとシステムの30%、50%、70%を延命するのでは検討するべきことがずいぶんとことなるので延命策を取りたい場合でも上記の「検討すべきタイミング」に倣って社内確認を進めるのはいかがでしょうか。
NetSuiteによる統合管理がもたらす効果
オラクル社の「NetSuite(ネットスイート)」は、こうした成長企業の課題を解決する代表的なクラウドERPプラットフォームです。NetSuiteのようなオールインワンERPに移行することで得られる主なメリットを整理します。
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全社業務の一元化: 財務会計、販売管理、在庫・物流、購買、CRM、eコマースなど企業の主要業務を単一システム上で統合可能です。データが各部署・機能で一貫して繋がるため、受注から出荷・請求までのプロセスをリアルタイムに可視化できます。例えば在庫情報と受注情報が連動し、欠品やダブルブッキングを防止できるほか、経営層も単一のデータソースからタイムリーな業績指標を得ることができます。
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在庫管理・サプライチェーン最適化: 複数倉庫や店舗・EC在庫を含めた在庫のリアルタイム把握と需要予測など、高度な在庫管理機能が備わっています。前述の老舗メーカーのケースでも、ERP導入後は人手に頼った在庫管理を脱却し在庫適正化を実現しています。販売チャネルや拠点が増えても中央のシステムで在庫・受発注を統合できるため、過剰在庫や欠品のリスクを抑え、迅速な出荷対応が可能になります。
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グローバル対応: NetSuite OneWorldをはじめとするマルチカンパニー対応機能により、複数の海外子会社や事業部門を一つのシステムで管理できます。190以上の通貨や多言語、各国の税制・会計基準にも対応しており、海外拠点を含むグループ全体の財務状況を即座に連結ベースで把握することが可能です。実際にある食品メーカーでは、国内ERPでは対応できなかった海外の複雑な消費税計算や各国言語での帳票発行もNetSuite導入により標準機能でクリアし、グローバル展開への土台を築いています。
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スケーラビリティと効率化: クラウドサービスであるNetSuiteは、サーバー増強などインフラ面を意識せずとも、取引件数やユーザー数の拡大にシームレスに対応します。急成長企業でもシステム処理性能がボトルネックになりにくく、必要に応じて機能追加やユーザー追加が容易です。またワークフロー自動化やアラート機能、ダッシュボードによる見える化により、社員一人あたりの生産性向上が期待できます。ある導入企業では、NetSuite導入後に前年比150%の売上増を達成しても追加の人員増強なしで業務を回せたと報告されています。これはシステム自動化による工数削減と、属人的業務の排除による成果と言えるでしょう。
まとめ
移行直前ではなく継続的な検討事項として準備を周到に進めることで、事業拡大とERP導入プロジェクトが円滑になってゆきます。新しい基幹システム導入は決して容易ではありませんが、適切なタイミングを見極め事前準備を怠らなければ、企業成長を次のステージへ押し上げる強力な原動力となるでしょう。事業拡大や変革の波に直面しているIT担当者の方は、自社の今と将来を見据えつつ、統合型クラウドERPへの移行計画を検討してみてはいかがでしょうか。必要な時期に適切な一手を打つことで、企業の持続的成長を支える堅牢なシステム基盤を築くことができるはずです。
参考資料・出典: 本記事ではNetSuiteを含むクラウドERPの機能や導入事例、およびシステム移行に関する外部記事を参照しています。