秘密結社オープンフォース 河野悦昌

高温調理の壁

「IoTピザ窯、または巨大災害レジリエンスで娘に怒られたこと
https://qiita.com/nanbuwks/items/0bb92acf7f7ee075a6b5
でも述べたように、巨大災害と巨大防空壕のための(それとこの記事に書いてなかったが本当は発展途上国の砂漠化対策のために)ピザ窯を開発しています。

高断熱素材を使うことでエネルギー機動理論が適用できるようになり、500℃前後での維持調理が可能です。

500℃のためには多くの技術開発をクリアしなくてはなりません。

  • 500℃に十分耐える素材
  • 熱電対による温度測定
  • 500℃で劣化しないヒーター
  • 1kW程度で500℃を維持できる断熱性能

そして、更に焼網の問題があります。

なぜ焼網が必要か

ピザを焼くためには底面をぱりっとしたいですね。
本来の石窯は炉床の石に直接ピザ生地を載せるため、炉床が水蒸気を吸収して良い具合になります。
しかしながら開発中のピザ窯はピザの下にヒーターがあります。ヒーターとピザの間にピザストーンを置くと石の炉床に近くなって良い焼き加減になります。しかしながらピザストーンは熱容量が大きく、準備・撤収時間がかなりかかってしまうのが難点です。

現在の開発ポイントはその時間を短縮した「高機動ピザ窯」としての開発に進んでいて、現在ピザストーンを使用しないようにしています。今採用している構造は、ヒーターとピザの間をの空間を金網で確保していて、更にその上に焼網を載せています。
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焼網ではなく、アルミホイルやクッキングシートを使うことも試してみました。結果、200℃〜300℃ぐらいまでの調理温度なら、クッキングシートが使えますが、500℃ぐらいだと一瞬でクッキングシートが燃え上がってNG。

アルミ箔はくっついてしまうこと、ピザの底面がぱりっとした食感になりませんでした。

結果、底面から水蒸気を逃がすこと、熱に強いことを考え金網を使うことにしました。

焼網に必要な技術課題

サイズ

横幅は使用している耐熱耐火レンガのJIS規格サイズが230mm。それ以下のサイズに合わせます。

種類

焼網の種類はいろいろ。

  • 鉄焼網
  • アルミメッシュ
  • ステンレス焼網

鉄焼網

使い捨て。1枚あたり70~80円ぐらい。パーティで50枚ぐらい焼きまくるので、ちょっとバカにならない。あと持ち運びが重たくなるかな?と考えて採用しませんでした。

アルミメッシュ

1枚¥500ぐらい。
プロの人はこれを使っている。9in(230mm)直径の円形のアルミメッシュを取り寄せて使ってみたところ、かなり使いやすい。でも焦げ付いたときには綺麗にするのをあきらめないといけなくて、割と寿命が短い感じ。ちょっと維持コストがかかるかな? ということでこちらも最近は使用しなくなりました。

ステンレス焼網

今は粗目太線の、21cm直径の円形のものを使っています。

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1枚¥1200ぐらい。結構値段するのが難点。これが四角とか8角形とかだと安くなるけれど、ピザの焼きムラを防ぐため焼いている途中で回転する必要があります。角がひっかかったりすると一手間かかるため、円形がマストでした。
値段が高いけれども、いくら焦げ付いても清掃ができて再生できるのでランニングコストが安くなると考え、これを数枚用意して現在使っています。

くっつかないようにするには

ということでステンレス製の焼網を使うようにしているのですが、メンテナンスが大変です。初期は焼くたびにくっつき、それを水槽の中で金属ブラシでごしごしやっってました。パーティ中、1枚1枚これをするのは大変な労力でした。

一番の問題は生地がくっつくのが問題で、これを防ぐために以下のようにしています。

  • 焼網の上に何分も生地を置いたままにしない
    • 生地が垂れてきて、網にからみついてしまいます
  • 生地を丸めた後、ピザ窯が空くタイミングを計って金網に生地を乗せます
  • 金網に生地を乗せた後は手早くトッピングして、すぐにピザ窯で焼きます

また、焼網に水気があることが生地がくっつく原因だというのがわかってきました。そのため以下のようにして、網を洗わないようなオペレーションにしています。

  • 油を薄く塗る
  • 空焼きする
  • 油膜が変質してコーティングされた状態とする
  • これをなるべく汚さないようにして使い回す

ピザパーティーが終わったら

こんな感じでピザパーティ中は楽になったけれども、何時間も焼き続けてパーティが終わった後の金網はかなり焼きつきで見栄えが悪くなっています。これを保管して次に使うのは抵抗があります。かといってこの焼きつきはかなり強力な皮膜です。油脂が重合して強力な物質になり、ちょっとやそっとでは落ちません。
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これを水酸化ナトリウムで化学洗浄を行います。

化学洗浄の反応式

元々、普通の油に水酸化ナトリウムを反応させると石鹸になる。

反応はこんな感じ。

トリグリセリド(油) + 水酸化ナトリウム → グリセリン + 脂肪酸ナトリウム
R-COOCH2CH(OOC-R)CH2OOC-R + 3NaOH → C3H5(OH)3 + 3R-COO-Na

これで石鹸を作るには、何十日もかかってしまいます。当然ながら、金網に水酸化ナトリウム水溶液をかけても何も変化が無いように見えます。

また、金網に取り付いた汚れは上のRの部分(アルキル基)に含まれる二重結合が反応して、トリグリセリド同士が重合しています。重合した物体はこすっても熱をかけても一般的な洗剤を使ってもちょっとやそっとではびくともしません。

これを水酸化ナトリウム水溶液に漬け、上の反応を熱をかけて、スピードアップします。
温度を10℃上げると化学反応速度は2倍になるので、20℃を90℃にすると、128倍の速度で反応することになります。

いつも、10枚取りのステンレスバットに金網を入れて、水酸化ナトリウム水溶液で煮沸しています。
ステンレスバットのサイズ25cmx35cmに、4cm水を入れたとすると3.5リットル。
それに水酸化ナトリウムを溶かします。

R-COOCH2CH(OOC-R)CH2OOC-R + 3NaOH → C3H5(OH)3 + 3R-COO-Na

上の式に、例えばオレイン酸をあてはめると分子量282なので、オレイン酸10gに対し0.1モルぐらいの水酸化ナトリウムが必要となります。水酸化ナトリウムの必要量は4gの計算ですがしかしながら実際にはもっとたくさん使わないと取りきれない感じです。単に過剰な水酸化ナトリウムを使って速度アップというのではなく、上記以外の反応にも使われて、化学洗浄に使われる分が不足してくる感じです。

いつもは100g程度を溶かしていて、大体0.7mol/lとなり、PH=13.8ぐらいで洗浄しています。

実際の洗浄

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水酸化ナトリウム水溶液に金網を漬けて弱火で加熱します。

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30分経過して取出した状態。
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黒いコゲは柔らかくなっているのでスポンジでこすると落ちます。

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まだ取り切れていない汚れがあります。更にこの後バットに戻して1時間煮沸しました。

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使い終わった溶液
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きれいになりました。

調整した溶液は危なくないの?

水酸化ナトリウムは劇物です。使用に十分注意する必要があります。
一方、水溶液は5%以上が毒物及び劇物取締法で劇薬の指定になりますが、今回の例では3.5リットルに100gを溶かしているので、大体3%程度の濃度になります。
とはいえ、危険なことには違いがなく目に入ったり体につかないように十分注意をしなければなりません。特に、水酸化ナトリウムを水に溶かすときは急激に発熱するので、以下のようなことは厳禁。

  • お湯に溶かす
  • いっぺんに溶かす

また、保護メガネや排気ドレンも必須です。

排水

この反応でできるCH3n(CH2)CH2Naは石けんであるので、十分に中和したら石けん水になり、水に流すことができます。しかしながら上に書いたようにかなり過剰な水酸化ナトリウムを使用しているためかなりのアルカリになっているはずです。

水質汚濁防止法に基づく生活環境項目として、

水素イオン濃度(水素指数)(pH) 海域以外の公共用水域に排出されるもの: 5.8以上8.6以下

という規定があります。

水酸化ナトリウムがほとんど反応せずに残っているとすると、PH=13を超すことになるのでPH値を少なくとも5下げないといけません。

水で希釈するのもかなり大量の水が必要なため、今回はクエン酸を使って中和することにします。

C6H8O7+3NaOH→Na3(C6H5O7)+3H2O

という反応で、クエン酸の分子量は192。100gの水酸化ナトリウムに対しては160gぐらいのクエン酸で中和することになります。
鹸化などで水酸化ナトリウムは消費されているので、完全中和ではなく若干クエン酸が過剰になります。そのような条件の場合、PH=6程度になります。

クエン酸は100円ショップに販売している100g~200gのものが販売されています。

注意

上に記した方法は、大変危険な方法で、デンジェラスです。お勧めできません。
そもそも、500℃も出る調理器具自体が間違っています。くれぐれも、良い子はマネしないように!!

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