この内容は 2020.11.17 の IoTLT Vol.69 で発表した内容を再構成しています。
世界の諸問題
秘密結社オープンフォースは世界の諸問題と戦っています。現在世界は様々な問題に直面していますが、目下のコロナ禍の問題については強い統治で抑え込むということが望まれる局面が多くあります。それは新型コロナの蔓延自体だけではなく、コロナ禍に伴う混乱も強い統治で抑え込むということになります。
強い統治を実現するにあたり、自由と平等、博愛と人権といった基本理念をないがしろにして統治を安易に実現しようとする流れがコロナ禍以前からあり、世界の流れは民主主義の退潮を示唆しています。
世界の歴史で紡がれてきた民主主義の発展形として、21世紀はインターネットの集合知による新しい市民政治が期待されました。しかしながら希望だったインターネットの実際はフェイクニュースと憎悪のエコー・チェンバーになっています。そしてリアル政治やリアル社会も、それに対応するようにいがみあい、非教養主義、非寛容が増大しています。
この流れの土壌となるのはポピュリズムであり、ポピュリズムの土壌にあるのは社会不安を背景とした分断です。
ボスニア紛争
このような、ポピュリズムからの分断の行く末にはどのようなことが起こるでしょうか? そのひとつの答えが1992年から1995年に発生した、ボスニア紛争です。
ボスニア紛争は1992年から1995年に発生した、旧ユーゴスラビアの内戦で、ボシュニャク人 / クロアチア人 に対するセルビア人の紛争です。
死者20万人、難民・避難民200万人、民族浄化として虐殺や組織的なレイプが行われるという言語を絶する所業が行われました。
File:Bratunac-Serbian-Cemetery-Bosnia-War.jpg CC-BY-SA 3.0
これは2020年現在からみてもまだ30年も経過しておらず、またヨーロッパ圏の先進国で行われたことです。旧ユーゴスラビアは諸民族の融和がかつてないほど行われた国のひとつでしたが、そのような文明社会を構築していても、簡単にこのような状態に陥る危険があるということを示しています。
そして、ボスニア紛争の原因は民族間のあれつきととらえられることもありますが、実はそれは本質ではなく、実際には政治の権力争いがポピュリズムを推し進め、分断を煽った結果でした。
日本の問題
さて、日本においても
- ポピュリズム
- コロナ
- 強権政治
- 非教養主義
- 分断
などなど多くの問題が横たわっています。
しかしここでは、日本固有の問題として痴漢を採り上げようと思います。
痴漢
痴漢とは?
- 髪を触る
- 耳を触る
- 息を吹きかける
- 服の上から触る
- 密着する
- ・・・
- 下着を触る
- 下着に手を入れる
- ・・・
様々な痴漢行為がありますが・・・
痴漢大国日本
このような、痴漢行為は女性の方には日常だそうです。
更には痴漢のターゲットになるのはおとなしそうな見た目の女性がターゲットとなるということです。
実際に、声を上げられない、勇気がない、泣き寝入りという流れが多い一方、そのような被害を表に出すと
「気にしすぎ」「たまたま手が当たっただけ」「被害妄想」
というような反応を受けたりします。
実際に痴漢問題では男性側から冤罪のリスクを挙げる声も大きく、リストの例の中でも髪を触るというような行為だと、混雑している電車などでは線引きがかなり難しいでしょう。
しかしながら、それがときたま被害者女性をあげつらうようなことになることがあります。そのような反応があると、被害者女性も余計に声が挙げあられなくなるという地獄が出てきます。
声が出せない
↓
エスカレート
↓
弱そうに見える女子をターゲット
という地獄。
更には
- 男性は全員痴漢!
- 女性を保護しすぎ!
- ヤラセで冤罪!
と憎しみ合う分断の地獄も日本に現出しています。
このような、弱者につけいるエスカレートと分断の連鎖は痴漢だけの問題ではなく日本の社会の根底とつながっているのではないかと感じています。それをどこかで流れを変えないとですね。しかしどうすれば?
nünoで解決
混迷を深める日本に颯爽と @tendots さんが!
@tendots さんは IoTLT Advent Calendar 2020 の6日目の記事として、
「M5Stack x 導電布でしゃべるぬいぐるみ(の服)をつくる」
https://qiita.com/tendots/items/9cbde5e701e1865f98ec
を投稿されています。
ここで使っている nüno モジュールは、布の表面を触ることで反応が取れるというものです。
ver.2モジュールは新たに電池駆動/無線送信が可能となっています。
(右側:Ver.1 左側:Ver.2)
100%の犯罪はどこから?
さて、痴漢について、疑わしいか、確実な痴漢かの区切りが鍵となります。というと、以下のようなところではないでしょうか?
髪を触る | ????? |
耳を触る | ???? |
息を吹きかける | ??? |
服の上から触る | ?? |
密着する | ? |
・・・ | 超えられぬ壁 |
下着を触る | ✗ |
下着に手を入れる | ✗✗ |
・・・ | ✗✗✗ |
nüno モジュール
nüno モジュール Ver.2 を使って、確実な痴漢を検出する方法を考えます。
・・・ | 超えられぬ壁 |
下着を触る | ✗ |
この「下着を触る」は、服の上から触るのではなく服の下に手を入れて下着を直接触る行為とします。
髪を触る、とか息を吹きかける、とかだとたまたま当たったり、気のせいだったりするかもしれませんがあからさまに下着を直接触ったらさすがにアウトでしょう。そして nüno モジュールだとタッチを確実に検出できます。
下着を直接触る、よりも前の段階の痴漢も多々あります。しかし今回のアプローチはここで線を引き、これを越したら100%アウトとみなして対応する、というやりかたを取ることにします。
そして検出したあとは、被害者が怖くてアクションを起こすことができなくても大丈夫な方法を考えています。具体的には、以下のようなことが考えられるでしょう。
- 痴漢対応ソーシャルサービスに IoT で接続
- サービス加入している近くにいる第三者にアラートを出す
- 触られたパターン、位置、時刻を記録
- 交通機関内のカメラと照らし合わせ可能に
- 交通機関と連携、自動通報
今回のこの文章は検出実験までですが、それがもっと確実にできるようになれば、このようなサービスや連携を進められるようにしていければと思います。
ちかんパンティライナー
そういったことを考えて、ちかんパンティライナーを考えました。
- ライナーをパンティーに装着します。
- 触る → 検出 → IoTで通報。
- パンティに直接触ることを検出します。
- 直接触るか、そうでないかの区別で冤罪を防止
- 導電性布を使って違和感払拭。
- いつも装着しっぱなしでも気にならないように工夫
痴漢対策はセンシティブ!!!
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている
性被害対策をするときに、それの責任者自身が裏では加害者であったというお話があったりします。そこまでいかなくても、後ろ暗いところは誰でも多かれ少なかれあるでしょう。そのようなものを心に抱えながら、痴漢対応に関わる資格があるでしょうか?
これにあたり、プロジェクトの進行にあたり以下のポリシーを作りました。
決して聖人君子ではない、自分の中にいやらしい心があることを前提に、それでも現状を変えていかないといけないということでやっていきます。
準備
さて、人間の業を背負いながら準備をしましょう。
近所のドラッグストアで買ってきました。こういう時に秘密結社の制服である白衣は便利! それらしい施設で業務で買う、というような何食わぬ顔をして買うことができました。
いろんな種類!
昭和世代としては、今まで「ナプキン」しか認識がなかったのですが、
- 女性用軽度尿吸収製品
- 女性用軽度失禁ケア製品
- おりもの専用シート
- 生理用ナプキン
などがありました。勉強になります。
次に、パンティを購入します。何もなくても家内からは「目つきがいやらしい」と非難を受けるほど目つきには自信があります。なので女性用下着売り場でパンティを凝視していたら通報されそうです。
今回は Amazon 業務アカウントで購入しました。
沢山!
導電性布を用意します。
nüno プロジェクトの標準品だと厚みがけっこうあるので、肌触りの良さそうなものを選びました。
このほか、 nüno モジュールとして Ver.2 を用意。
Ver.2 は無線対応ですが、一旦有線でデータ取得手法を確立してから無線化するようにします。
有線の受信はESP32を用い、PCで可視化するようにします。
ライナーサイズ決定
ライナーは色んな種類がありますが、このサイズで進めることにしました。
このやりかただと、パンティを触る検出ですがパンティの側面を触っても検出できません。
これだと意味がないのでは?
ここで活躍するのがヘンタイの知見! この位置で装着すれば、痴漢は必ずここを触ります。
ヘンタイは自信を持って有効性の確信を保証します。
データ取ってみる
いやらしい手で触ると
灰色の4本のシマシマがそれぞれ青、赤、緑、黄色に対応しています。
次に、下着を着せてデータを取ります。
それ以外に地球儀は後に述べる静電容量の問題があり、今後の実験に支障が出る恐れがあるのでエアトルソーを用意してみました。
無事取れましたが、しかし!
エアトルソーの中身は空気です。nüno モジュールは検出のために Microchip MTCH6102 が搭載されています。MTCH6102の検出原理は静電容量です。静電容量的に、人体が背景にある状態だとパラメータが全く違います。
パラメータを近づけるためにエアトルソーに水を入れることにしました。
体重に負けます
空気圧をかけて形を維持し、サポーターをつけることで解決しました。
データ取得
再度、いやらしい手で触ってみます。
データ取れた!
直接触ることの検出は問題無さそうです。
痴漢区別
さて、次に直接触った時のデータと、スカートの上から触った時のデータを区別しないといけません。
ファントムにスカートを穿かせます。
「スカート貸して」
娘(中1)「やだっ!」
スカートの上から触れる vs スカートの中に手を入れて触る
・・・SORRY! コード画面の方を間違って画面キャプチャしてしまってました。・追って追記します。
今後
現在はセンサーはパンティ外部に出てますが、パンティ内部に装着ができないか考えています。その際、
- おもらしした時の誤作動防止
- 自分で触った時の誤作動防止
- 見た目を目立たなく
- 洗濯対応
などなどの課題をクリア、確実に動作するモジュールをまずは目指そうと思います。
確実に動作するモジュールができれば、オープンソースハードウェアとして秘密結社が行う痴漢対応だけではなく、いろんな方が応用で使えるようにすることを目指します。
ユーモアを持って!
今回の問題はセンシティブでなおかつ日本の社会の根底にかかわります。直接的な痴漢対策とは別の視点からの批判や、対策当事者への圧力も多いことが予想されます。そういった問題だからこそユーモアを持って気軽に試そう!という姿勢が本質に迫ることに大きな意味を持ってくると思います。
部外者がふざけているのはケシカラン、被害者である女性自身がやらないと、という見方は当然あるでしょう。
しかしながら女性が声を出すと、男性VS女性の分断勢力からの批判に晒されるのは容易に想像できます。
あえて秘密結社が行うというのは被害当事者があらぬ批判を受けてややこしいことにしたくないという意図もあります。
そういったことから、今回のアプローチは
- 直接の問題の当事者ではない
- ユーモアを持って
- 自分の心の闇と共に
進めるということでいこうと考えています。
ひどい思いをしている人がいるのにケシカラン!マジメにやれ!という声もあるかと思いますが、ヘンタイなのでスミマセン。
さて、アプローチは多様性を持って進めるべきであり、このプロジェクトはこのように進めていきますが OSS の流儀で賛同するけど方向は違うという方はいくらでもフォークできるように基本的に知的所有権は Public Domain の扱いとしていきます。
IoTでイノベーション
身近な生活の裏側にも広がる闇はあります。
社会問題の解決は大きな資本を用いたり偉い人を動かささなくても、IoTやスマホなどを活用して個人でもできるというのが、現在我々が手にしている電子工作やメイカーズのテクノロジーがもたらすイノベーションの意味ではないかと思います。