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【数理最適化】電力システムにおける最適化問題とは

Last updated at Posted at 2025-12-12

この記事は「【リアルタイム電力予測】需要・価格・電源最適化ダッシュボード構築記」シリーズの十三日目です
Day1はこちら | 全体構成を見る

これまで、電力需要予測モデル、電力価格予測モデルを作成してきました。これら2つは未来を予測するモデルでありますが、今日から扱う最適化は 未来条件下で最も良い行動を選ぶモデル です。

数理最適化とは

数理最適化=「目的を達成するために、制約を満たしながら、最適な意思決定を行うための数学的手法」を指します。

電力システムは「需要に合わせてリアルタイムに供給を調整する」という極めて制約の多い世界です。そもそも電力は大量に貯められないため、

  • 需要=供給 を常に満たす
  • 電圧・周波数の安定を維持する
  • 急な故障や気象変動にも対応する
  • コストやCO₂排出量を抑える

といった条件を 同時に 考慮しなければなりません。このような場面で活躍するのが 数理最適化 です。

電力システムにおける数理最適化

電力システムの中ではどのような問題を数理最適化で解いているのでしょうか。

1. 発電機起動停止問題(Unit Commitment: UC)

明日の 24 時間でどの発電機を 起動(ON)にするか/停止(OFF)にするかを決める問題です。起動停止にはコストや最小運転時間などの制約が伴い、ON/OFF という整数変数と、出力という連続変数が混在します。
そのため、発電機起動停止問題は典型的な混合整数線形計画(MILP)として解かれます。起動コストが非線形の場合は非線形整数計画問題(MINLP)に分類されるケースもあります。

参照:MOAI研究部会第7回研究会 電力最適化入門 スライド20

2. 経済負荷配分(Economic Dispatch: ED)

上記の発電機起動停止問題で ON にした発電機の 出力(何MW発電するか)を最適に割り当てる問題です。
目的は通常「総コストの最小化」になります。
線形計画問題が基本ですが、燃料費曲線を考慮すると非線形で表されることが多く非線形計画問題になります。

参考:一般社団法人 電気学会 用語解説 第64回テーマ: 経済負荷配分(ELD)

3. 最適潮流計算(Optimal Power Flow: OPF)

系統内の電圧・電流・潮流を物理モデルに基づき最適化する問題です。非線形最適化(NLP)が用いられます(近年は「線形近似 OPF(DC-OPF)」もよく使われる)。
これにより、送電線の過負荷を防いだり、再エネの大量導入に対応します。

参照:MOAI研究部会第7回研究会 電力最適化入門 スライド6

数理最適化の分類

最適化は、
(1) 目的や制約が線形か非線形か
(2) 変数が連続値か整数か
という 2 つの軸で分類できます

1. 変数が連続値

電力の「出力(MW)」のように、0〜上限まで自由に調整できる値 を扱います。

線形計画問題(LP)

  • 目的関数が 1次式(線形)で、制約もすべて 1次式
  • 高速で確実に解ける
  • 電力システムの場合
    • 経済負荷配分
      → 火力や水力などの「出力」だけ最適化する場合

非線形計画問題(NLP)

  • 目的関数が非線形で、制約は非線形
  • 物理法則や効率曲線などで非線形性が出る
  • 電力システムの場合
    • 最適潮流計算
      → 送電線の電圧・位相・電流がすべて非線形の物理式でつながっている

2. 変数が離散値

発電機の ON/OFF、設備の 台数、充電器の 台数など、
0か1か、あるいは整数しかとれない 場合の最適化します。

線形整数計画問題(IP)

  • 目的関数は線形で、制約も線形式
  • 電力システムの場合
    • 発電機の「ON = 1, OFF = 0」、
      蓄電池の台数、設備導入計画(いくつ建設するか)

非線形整数計画問題(MINLP)

  • 目的関数か制約のどちらかが非線形
  • CQP(二次形式の非線形整数計画)などを含む
  • 最も難しい部類(実務では MILP に近似したり線形化する)
  • 電力システムの場合
    • 発電所の起動停止コストが非線形
    • 設備台数が整数で、排出量や効率が非線形

3. 変数が連続値または離散値

整数(ON/OFF)と連続値(出力 MW)が混ざります。

混合整数線形計画法(MILP)

  • 目的関数は線形、制約も線形
  • 電力システムの場合
    • 発電機起動停止問題

今回の数理最適化の基本構造

今回の記事内では、経済負荷配分問題 を扱います。

1. 意思決定変数

  • 各電源の発電量

2. 目的関数

  • コスト最小化
    (今回は燃料コスト。現実では起動停止コスト、CO2コストなども考慮すべきであるが今回は含まない)

3. 制約条件

  • 需要=供給を満たす
  • 発電上限・下限
  • 電源ごとの特徴
    (例:太陽光の上限は天気で決まる、火力は最大出力がある)

目標としては、コストを最小化しながら以下のような各電源の時間ごとの出力予想を出すことです。

image.png
(出典:TEPCO でんき予報 エリア需給実績データ / 当日

簡単な例

問題設定

2つの発電機がある世界を考えます。

  • 発電機 A:燃料費 5 円/kWh、最大出力 60 kWh
  • 発電機 B:燃料費 10 円/kWh、最大出力制約なし
  • 系統需要:100 kWh

目的関数

総燃料費の最小化
$\text{Minimize } C = 5A + 10B$

制約条件

$A + B = 100$
$0 \leq A \leq 60$
$0 \leq B$

最適解

安い電源 A を最大限利用し、残りを B で賄う
$A = 60, \quad B = 40$

総コストは$C = 5 \times 60 + 10 \times 40 = 300 + 400 = 700 \text{ 円}$

今回は発電機が2つでしたが、複数の電源に対する制約条件をクリアしながら最適化を導くモデルを作ることが目的です。

明日

次回は、各電源の変数や制約条件の設定について記載します!:fist_tone1:

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