はじめに
きのこカンファレンス2026 に参加してきました。
参加した理由は友人に誘われたというのもありますが、エンジニアとしての将来に、いつでも不安を抱いている私にとって、ちょうど良いテーマだと思ったという側面もあります。
今回は、参加して印象に残ったセッションを中心に、感想をまとめていきます。
イベント概要
正式名称は「エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス」。
40歳以上のベテランエンジニアだけが登壇するという、ちょっと変わったコンセプトで、長くこの業界で生き残ってきた人たちが、自身の生存戦略やキャリアの知見を語り尽くすカンファレンスです。
なお、当日は台風7号の接近で開催が危ぶまれましたが、開始時間を1時間遅らせて、無事に開催されました。
参加したセッション
① 若手(20代)から登壇者に逆質問
- 登壇者: ことみん さん(質問者・若手代表)/ 稲垣剛之 さん、にしはら ちひろ さん(回答者)
- 概要: 若手エンジニアが抱く「リアルな問い」を、40代以上のベテランエンジニアにぶつける逆質問形式のセッション
1つ目に紹介するのは、若手がベテランに質問していく形式のセッションです。
技術変化の激しい時代に、若手が抱える課題や不安に対して、多くの変化を経験してきたベテランがどう向き合ってきたのか。それぞれの視点から「エンジニアとして生き残るための思考法」を深掘りする内容でした。
セッションは、ことみんさんがお二人に質問を投げかけていく形式で進行。ことみんさんからの質問が終わった後は、参加者からの質問も何点か飛び出しました(私自身も1点質問させてもらいました)。
ここでは、特に気になった質問とその回答をいくつか紹介します。
Q. 30歳以降も成長し続けるためには?
- 稲垣さん: 目の前のプロダクトをよくしようと思ってやってきた。少し質問から外れるが、「キャリア」という言葉はラテン語が語源で、「轍」や「車道」など「今までやってきたこと」という意味合いがあるので、実は先のこととはちょっと意味合いが違う。また、尊敬した人をロールモデルにすることで成長できると思う。
- にしはらさん: 30代のキャリアのことは、当時はそこまで考えていなかった。私も尊敬できる人に色々アドバイス(読んでいる本や日頃やっていることなど)を聞いて成長してきた。
Q. 「これをやっておけばよかった」と思うことは?
- 稲垣さん: もっと実装をしておけばよかった。途中からマネジメントに振り切ったが、それでも実装を続けてより詳細なイメージができるようになっていると、なおよかったかもしれない。
- ことみんさん: 勉強をもっとできればよかったですね。
Q. 不安駆動で動いているが、この気持ちはどう解消すればよい?
- ことみんさん: 不安を持つこと自体は悪いことじゃないから、その不安を原動力にできるといいよね。
- 稲垣さん: 「不安」というより「危機感」と考えるとよい。そして、その危機感のエネルギーを「悩む」ではなく「考える」に使っていきたいね。
最後の質問は自分から投げさせてもらいました。
私自身常に不安を抱えて生きている(勉強会への参加や技術のキャッチアップもその不安を解消するためにやっている)ので、その悩みに対する1つの答えをもらえたのはとてもありがたかったです。
X上でもこの件は何件かツイートされていて、不安を抱えているのは自分だけじゃないんだな、と少し安心しました。
また、採用や会社選びの観点で「4P」の話も出ていました。会社を選ぶ軸を、
- Profession(仕事): 仕事の内容ややりがい
- People(人): 一緒に働く人
- Philosophy(理念・文化): 会社の理念やカルチャー
- Privilege(待遇): 給与や福利厚生
の4つに分けて考えるという話です。
若いうちは People(人) を重視しがちですが、歳を重ねるにつれて Philosophy(理念・文化) を重視するようになっていく、という傾向があるそうです。
私の場合、最初は Profession(仕事) を重要視していましたが、最近は People(人) に惹かれる傾向にあります。
もしかしたら、今後 Philosophy(理念・文化) をもっとも大切にする時が来るのかもしれません。
② "詰む"前に仕組みを作れ ー 技術の波に溺れないためのキャッチアップ術
- 登壇者: 杉山貴章(zinbe)さん
- 概要: 新しい技術のキャッチアップを「気合」ではなく「仕組み」で継続するための方法を紹介するセッション
登壇者の杉山さんは、2026年6月時点で雑誌『Software Design』で最も長い連載を持っている方で、「ITエンジニア必須の最新用語解説」というタイトルで、2026年7月号時点でなんと211回を数えるそうです。
技術ライターとして長年第一線で情報を追い続けてきた方の話、ということで期待が高まりました。
話の核となっていたのは、
情報を取りに行くのではなく、自分に集まってくるようにし、自分に合うように選定して、定着させる。インプット → フィルタリング → アウトプットのサイクルを作りましょう。
という考え方でした。各フェーズでさまざまなツールを活用されていましたが、私が最も印象に残ったのは 「インプットする際は、信頼できる情報源かつ多様性を担保すること」 という話です。
複数の信頼できる情報源(出版社でも著名な人でもよい)を押さえておき、複数の意見を聞くことで、自分の中の 「判断軸」 を育てていく。この判断軸こそが、情報があふれる時代を生き残るための土台になる、という内容でした。
また、次々と登場する技術をすべて完璧に追うのは現実的ではないので、完璧を目指さず、自分の得意な分野や興味のある分野に取捨選択していくことも重要だと話されていました。
セッションでは、AI登場後のこのサイクルについても軽く触れられていました。これを聞いて、
- 今週の技術トピックのサマリーを生成
- それらの情報を自分の好みやプロファイルでフィルタリングし、チュートリアルや試し方などを生成
- 実際に動かしてみたり、記事にしてみたりする
という流れを Claude Code などで仕組み化できたら面白そうだなと思いました(もうありそう)。
③ 多くの現場を見て気づいた「有名ではないエンジニア」の生きのこり方
- 登壇者: けん・うすすぎ さん
- 概要: 多くの現場を経験してきた「無名」のエンジニアが、現場で「生きのこる人」の共通点を語るセッション
SNSで賞賛されるキラキラした有名エンジニアの言説とは少し違う視点から、環境や時間に制約がある人でも自分らしく生きのこる方法を語ってくれるセッションでした。
このセッションでは、生きのこるための 7つのポイント が紹介されていました。
- 「継続して業務できる」環境を整えること
- 現場で「一緒に働きたい」と思われる人になる。逆に、自分がそう思える人と積極的に関わる
- 「事業に貢献する」ために何かをする
- 昔の現場仲間と時々会う機会を作る
- 情報は積極的に収集し、興味の持てる分野や選択肢を増やしておく
- 自分が活躍できる場所、熱中できる仕事を見つける
- 必ずしも「エンジニア」という肩書きにこだわらない
この中で特に印象的だったのは、2つ目の 「現場で『一緒に働きたい』と思われる人になる。逆に、自分がそう思える人と積極的に関わる」 という点です。
最低限仕事ができる必要はあるものの、最終的には「一緒に笑い、共感してくれる人」のほうに声がかかる、という話でした。確かに、自分も一緒に仕事をするなら気持ちよく働ける人と仕事をしたいと思うので、とても納得感がありました。
また、コミュニティでのマウントや、そこで得た知識を振りかざして現場に押し付けることは避けよう、という話も印象的でした。
コミュニティで得た知見や公開されている手法には、有益なものが本当に多いです。しかし、それらをそのまま現場に持ち込むと、必ずと言っていいほど軋轢が生まれます。有効な手法こそ、現場の合意を得つつ、その場に合う形に落とし込んでいく——これを意識していこうと思いました。
まとめ
参加してみて、一番得られたのは「不安を危機感に切り替えていく」という感覚でした。
漠然とした不安は抱えていても何も変わりませんが、それを危機感として捉え直し、情報収集をしたり、手を動かして活動をしたりしていけば、エンジニアとしてこの先も生き残っていける——ベテランの方々の話を聞いて、そう確信できました。
今後もこの危機感を大事にしながら、仕事を続けていきたいと思います。
登壇された皆さん、そしてこのような場を作ってくださった運営の皆さん、ありがとうございました。