86
62

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 3 years have passed since last update.

@babel/preset-typescriptを使ってTypeScriptを変換する

Last updated at Posted at 2019-01-14

はじめに

@babel/preset-typescriptというBabelのプリセットが出て以来、tscコマンドではなくBabelによって、TypeScriptで書いたコードをJavaScriptに変換できるようになりました。既にtscコマンドを日常的に使いながらTypeScriptを書いている人には影響はないですが、これからTypeScriptで書いてみようという人(かつ、既にBabelに慣れている人)にとっては、TypeScriptとの付き合い方の選択肢が増えたことになります。

この記事では、Babelでできるようになった事の範疇や、今まで通りにtscコマンドに担ってもらう事について、設定例を交えながら整理していきます。

前提として、Babelのバージョンは7が対象です。

@babel/preset-typescriptが出る前は

大まかに示すと、TypeScriptでコードを書く際は、その都度にtscコマンドによって以下の処理を行います。

  • 型チェック(静的解析)をして、コードに型のエラーが無いか確認する。
  • TypeScriptのコードをJavaScriptに変換する。
  • 必要に応じて、コード変換と同時に型定義ファイル(.d.tsファイル)の生成もする。ライブラリをTypeScriptで書く際などに行われる処理。

@babel/preset-typescriptが出る前は、上記を全てtscコマンドが担当していました。
(フロントエンドのプロジェクトなら、Webpackのts-loaderなどを介して)

コードの変換だけはBabelでもできるようになった

2018/8に@babel/preset-typescriptが登場したことで、TypeScriptからJavaScriptへの変換の部分だけは、Babelが担当できるようにもなりました。

Babelの設定方針(.babelrcあるいはbabel.config.jsの書き方)については、基本はMicrosoftの公式ブログの例に沿いつつ、必要に応じて自分好みの設定を追加すればOKです。

引用すると下記が基本の設定となります。もちろん、これらのプリセットやプラグインを予めdevDependenciesにインストールしておく必要があります。

.babelrcの例
{
    "presets": [
        // ES2015以降の文法を使えるようにする定番プリセット
        "@babel/preset-env",
        // 今回の主役。TypeScriptのコードから、型アノテーションの部分などを取り除く変換を行う。
        "@babel/preset-typescript"
 
        // ざっくり言うと、preset-typescriptは、TypeScriptからES2015以降への変換を担当し、
        // preset-envは、ES2015以降からES5への変換を担当する。
    ],
    "plugins": [
        // TypeScriptの文法には既に含まれているけど、
        // 今はまだpreset-envには含まれていない文法も使えるようにしておく。
        // preset-envに含まれる日が来たら、これらのプラグインは不要になるはず。
        "@babel/proposal-class-properties",
        "@babel/proposal-object-rest-spread"
    ]
}

上記のように設定した上で、例えば以下の様にBabelコマンドを実行し、コードを変換します。

srcディレクトリに含まれていて、拡張子がtsまたはtsxのファイルにBabelを適用し、distディレクトリにjsファイルを出力する
babel src --extensions '.ts,.tsx' --out-dir dist

Webpackを利用しているフロントエンドのプロジェクトなら、Babelコマンドの代わりにbabel-loaderを介してBabelを利用していることでしょう。その場合は、Webpackの設定に例えば以下の様に書いて、拡張子がtsやtsxのファイルにbabel-loaderが適用されるようにします。

webpack.config.jsの抜粋
  module: {
    rules: [
      {
        test: /\.tsx?$/, // ここ!
        exclude: /node_modules/,
        use: [
          {
            loader: 'babel-loader',
            // 必要に応じてその他の設定...
          },
        ],
      },
    ],
  },

以上のように準備することで、TypeScriptからJavaScriptへの変換に限っては、Babelが担当できるようにもなりました。
逆に言うと、型チェックや型定義ファイルの生成に関しては、今まで通りtscを使う必要があります。

型チェックなどは引き続きtscで行う

コードの変換以外は引き続きtscを使いますので、そのための設定が必要です。大前提として、typescriptをdevDependenciesにインストールしておく必要があります。

TypeScriptに関する設定は、tsconfig.jsonというファイルに書きます。基本的にはpackage.jsonと同じ階層に置きます。この設定ファイルに、「普通の使い方と違ってコードの変換はしなくてよいよ(そっちはBabelの担当だから)」という設定をしていきます。この設定も、基本はMicrosoftの公式ブログの例をベースにすると良いでしょう。

tsconfig.jsonの例
{
  "compilerOptions": {
    // TypeScriptのコードを何に変換するかを指定する。
    // 今回はBabelが変換を担当するのでそれほど重要でないはずだが(多分)、公式ブログの例を踏襲しておく。
    // targetの値に応じて、他のオプションのデフォルト値が変わるので、こうしておいた方が色々便利なのかも。
    "target": "esnext",
    // 詳細は割愛するが、とりあえずこう設定するのがおすすめなオプション。
    "moduleResolution": "node",
    // TypeScriptと一緒にJavaScriptもtscの処理対象に含められるようにする。必要に応じて。
    "allowJs": true,
    // (変換はBabelが担当するから)tscはファイルを出力しないように指示する。
    "noEmit": true,
    // 色々な型チェックのルールを厳しくする。おすすめ。
    "strict": true,
    // コードの変換に関するオプションのようなので、これもそれほど重要でないはずだが(多分)、公式ブログの例を踏襲しておく。
    "isolatedModules": true,
    // 詳細は割愛するが、とりあえずこう設定するのがおすすめなオプション。
    "esModuleInterop": true
  },
  "include": [
    "src"
  ]
}

ライブラリのプロジェクトなど、型チェックだけでなく型定義ファイルの生成も行いたい場合は、設定を少しアレンジして以下の様にします。

型定義ファイルの生成も行いたい場合の例
{
  "compilerOptions": {
    // 前略

    // ファイルの出力が全くないわけではないので、noEmitはデフォルト値のfalseに戻しておく。
    // "noEmit": true,

    // 型定義ファイルの生成を指示する。
    "declaration": true,
    // 「生成するファイルは型定義ファイルだけ」と指示する。コードの変換はBabel担当だから。
    "emitDeclarationOnly": true,
    // ファイルの出力先ディレクトリ
    "outDir": "dist",
  },
  "include": [
    "src"
  ]
}

Reactによるフロントエンドプロジェクトなど、JSXを使いたい場合は以下の設定を追加します。

JSXを使いたい場合の例
{
  "compilerOptions": {
    // 前略

    // .tsxファイルに書かれたJSXの変換について指定するオプション。何か指定しないとエラーとなる。
    // コードの変換はBabel担当なので、値はそれほど重要でないはず。例えば"preserve"を指定する。
    "jsx": "preserve",
  },
}

以上のように設定した上でtscコマンドを実行すれば、型チェックや(必要に応じて)型定義ファイルの生成をしてくれます。

まとめ

@babel/preset-typescriptの登場によって、これまではtscが担当していた(1) 型チェック、(2) JavaScriptへのコード変換、(3) 型定義ファイルの生成のうち、(2) コード変換の部分だけはBabelが担当することもできるようになりました。

既にBabelに慣れている人にとっては、TypeScriptを書き始める敷居が低くなったと言えるでしょう。他にも、preset-env以外にも使いたいBabelプラグインがある人などは(例:まだ提案中の新しい文法をいち早く使いたい人)、引き続きBabelのエコシステムに乗っかりながらTypeScriptを書けるメリットがあります。

一方、以前からTypeScriptを書いており、tscを使ってコード変換をしている人には、それほど決定的なメリットはなさそうです。必ずしも、わざわざ乗り換えなくてもよいでしょう。

86
62
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
86
62

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?