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BigQuery で 1 円も溶かさない人の顔 (ZERO BYTE STRUCT を考案した)

Last updated at Posted at 2019-12-05

自分は BigQuery で Extract-Load されたデータを機械学習モデル用に前処理し、テラバイト級の特徴量エンジニアリングを行っています。この記事では、BigQuery のデータ量を一切消費せず、誇張なく 1 円も溶かさない裏技をまとめます。(2019/12/18 現在)

※ パロ元:BigQueryで150万円溶かした人の顔
元ネタの方と同じ職場で働くことになりましたので、被せて書いております。この記事では、BigQuery 記事最安値を目指します。

速くて安い BigQuery は、データウェアハウスとしても、特徴量エンジニアリングツールとしても優れており、機械学習モデルを用いたサービスを構築する際には、ベースラインとして一候補に挙がるでしょう。

BigQuery の料金

オンデマンドクエリを利用する際、極めて重要なのは読み取りデータ量に対して \$5/TB の料金が発生する点です。これと毎月ストレージコスト \$0.02/GB がかかるだけで、BigQuery の請求が完結する点は恐ろしく明快だと言えます。 (US (multi-region) 2019/12/18 現在)(定額クエリやストリーミングインサートは、本記事の対象外とさせていただきます。)
つまり、読み取るデータ量が小さければ、お財布に優しい料金で膨大な計算を BigQuery に担ってもらえるということです。BigQuery ML もスケール 50 倍ですが、同様の料金体系です。

料金の詳細な説明は 公式ページ: BigQuery pricing公式ページ: BigQuery ML pricing をご覧ください。

Lv.0 BigQuery サンドボックスの使用

BigQuery にはサンドボックスと呼ばれる、クレジットカード不要で、無料枠分使える機能が実装されています。
この設定をお試ししつつ、利用額の目安を知ることができます。

Lv.1 UNNEST でテーブルを作る

SELECT *
FROM UNNEST([STRUCT('a' AS a, '1' AS b), STRUCT('b' AS a, '2' AS b)])

クエリの中で生成されたデータは課金されません。UNNEST でどんな大きなデータを作っても読み取りデータ量は 0 になります。CSV, JSON, AVRO などから、UNNEST のデータに変換するコードを用意しておくと、テスト用データとしても使えるのでおすすめです。

詳しくは、BigQuery で無からリレーションを出現させる(StandardSQL 編)BigqueryでUNNESTを使いこなせ!クエリ効率100%!!最強!! が参考になります。

Lv10. CREATE FUNCTION / VIEW で永続データを作る

CREATE FUNCTION dataset.function_name()AS([STRUCT('a' AS a, '1' AS b), STRUCT('b' AS a, '2' AS b)]);

上の方法と組み合わせて使います。ポイントは永続化できる点です。ARRAY を入れるなら UNNEST して擬似テーブルに、スカラ値を入れるなら、擬似定数として呼び出すことができます。VIEW の場合は、SELECT * FROM UNNEST([]) で保存しましょう。VIEW の中でテーブルを参照すると、クエリの度に読み込みコストが発生するので注意しましょう。

Lv20. ERROR でテーブル参照する

SELECT
  ERROR(TO_JSON_STRING(ARRAY(
      SELECT
        AS STRUCT MAX(geo_id),
        MIN(geo_id)
      FROM
        `bigquery-public-data.census_bureau_acs.blockgroup_2010_5yr`)))

BigQuery は成功したクエリのみ課金されます。つまり絶対に失敗する SELECT ERROR でテーブルを読み取ると課金されません。ERROR 関数は STRING 引数を取れるので、TO_JSON_ARRAY_STRING と ARRAY 関数を組み合わせて、テーブルを JSON で返すようにします。このエラーを各種クライアントの実装からキャッチして、JSON 展開することで、無料のテーブル参照が実現できます。Web コンソールでは、表示文字数に制限があるため、大きなデータを見ることはできません。

Lv45. カラム名としてデータを保管する

(10 MB 分の課金が発生するので、0 円ではない です)
クライアント API からテーブルを作成する際に、カラム名に情報64文字(a-zA-Z0-9_)を埋め込み、INFOMATION_SCHEMA 経由で参照する。
STRING を適切に加工することで 10 MB の課金で無制限のデータにアクセスできる。STRING は Lv 100.と違い、データ変換前の列サイズ制約にかかりやすいので注意しましょう。

Lv70. Javascript で計算する


CREATE TEMP FUNCTION `magic_function`(x ARRAY<INT64>) RETURNS ARRAY<INT64> LANGUAGE js AS '''
const memory = new WebAssembly.Memory({ initial: 256, maximum: 256 });

const env = {
    'abortStackOverflow': _ => { throw new Error('overflow'); },
    'table': new WebAssembly.Table({ initial: 0, maximum: 0, element: 'anyfunc' }),
    'tableBase': 0,
    'memory': memory,
    'memoryBase': 1024,
    'STACKTOP': 0,
    'STACK_MAX': memory.buffer.byteLength,
};

const imports = { env };

const bytes = new Uint8Array([0, 97, 115, 109, 1, 0, 0, 0, 1, 139, 128, 128, 128, 0, 2, 96, 1, 127, 0, 96, 2, 127, 127, 1, 127, 2, 254, 128, 128, 128, 0, 7, 3, 101, 110, 118, 8, 83, 84, 65, 67, 75, 84, 79, 80, 3, 127, 0, 3, 101, 110, 118, 9, 83, 84, 65, 67, 75, 95, 77, 65, 88, 3, 127, 0, 3, 101, 110, 118, 18, 97, 98, 111, 114, 116, 83, 116, 97, 99, 107, 79, 118, 101, 114, 102, 108, 111, 119, 0, 0, 3, 101, 110, 118, 6, 109, 101, 109, 111, 114, 121, 2, 1, 128, 2, 128, 2, 3, 101, 110, 118, 5, 116, 97, 98, 108, 101, 1, 112, 1, 0, 0, 3, 101, 110, 118, 10, 109, 101, 109, 111, 114, 121, 66, 97, 115, 101, 3, 127, 0, 3, 101, 110, 118, 9, 116, 97, 98, 108, 101, 66, 97, 115, 101, 3, 127, 0, 3, 130, 128, 128, 128, 0, 1, 1, 6, 147, 128, 128, 128, 0, 3, 127, 1, 35, 0, 11, 127, 1, 35, 1, 11, 125, 1, 67, 0, 0, 0, 0, 11, 7, 136, 128, 128, 128, 0, 1, 4, 95, 115, 117, 109, 0, 1, 9, 129, 128, 128, 128, 0, 0, 10, 196, 128, 128, 128, 0, 1, 190, 128, 128, 128, 0, 1, 7, 127, 2, 64, 35, 4, 33, 8, 35, 4, 65, 16, 106, 36, 4, 35, 4, 35, 5, 78, 4, 64, 65, 16, 16, 0, 11, 32, 0, 33, 2, 32, 1, 33, 3, 32, 2, 33, 4, 32, 3, 33, 5, 32, 4, 32, 5, 106, 33, 6, 32, 8, 36, 4, 32, 6, 15, 0, 11, 0, 11]);

async function main() {
  const wa = await WebAssembly.instantiate(bytes, imports);
  const magic_sum = wa.instance.exports._sum;
  return x.map((val) => {
    return magic_sum(val, val);
  });
}

return main();
''';

SELECT magic_function(GENERATE_ARRAY(1,100))

running async JS functions on BigQuery with #standardSQLなら、web assembly を BigQuery で動かせます。テーブル参照ではないので、普通に SQL 関数を大量に呼ぶのと一緒ではありますが、BigQuery で苦手な再帰関数も Javascript なら呼べます。web assembly なら、BigQuery の計算時間の範囲内で割と自由に呼びまわせます。
データ参照の方法ではないので、他の手法と組み合わせましょう。

Lv100. ZERO BYTE STRUCT でテーブルを作る

定義

この記事で使う用語として ZERO BYTE STRUCT を定義します。これは NULL や STRUCT に NULL を入れたデータ、ARRAY に STRUCT(NULL) を入れた状態で、参照コストが 0 であるデータと定義します。後述しますが、BigQuery では NULL の参照コストがかかりません。しかし、NULL と STRUCT(NULL) は明確に区別されます。この仕様により、参照コスト 0 にもかかわらず、1 bit の情報量を持つことができます。

2019/12/18 現在、データ容量は以下のようになっています。
データサイズな説明は 公式ページ: Pricing Data size calculation をご覧ください。

データの種類 サイズ
INT64/INTEGER 8 バイト
FLOAT64/FLOAT 8 バイト
NUMERIC 16 バイト
BOOL/BOOLEAN 1 バイト
STRING 2 バイト + UTF-8 エンコードされた文字列のサイズ
BYTES 2 バイト + 値のバイト数
DATE 8 バイト
DATETIME 8 バイト
TIME 8 バイト
TIMESTAMP 8 バイト
STRUCT/RECORD 0 バイト + 含まれているフィールドのサイズ
GEOGRAPHY 16 バイト + 24 バイト × GEOGRAPHY 型の頂点の数

どのデータ型でも、null 値は 0 バイトとして計算されます。

もしお暇な方がいれば以下のクエリを実行し、テーブルに保存し、容量を確認してみてください。

CREATE TEMP FUNCTION
  CONVERT_BOOL_TO_ZERO_BYTE_STRUCT(b BOOL)AS(
  IF
    (b,
      STRUCT(NULL),
      STRUCT(STRUCT(NULL))));
CREATE TEMP FUNCTION
  CONVERT_INT64_TO_ZERO_BYTE_STRUCT(i INT64)AS(ARRAY(
    SELECT
      CONVERT_BOOL_TO_ZERO_BYTE_STRUCT(i&1<<u=0)
    FROM
      UNNEST(GENERATE_ARRAY(0, 63))u
    ORDER BY
      u));
SELECT
  CONVERT_INT64_TO_ZERO_BYTE_STRUCT(i)
FROM
  UNNEST(GENERATE_ARRAY(1,1000000))i

表のサイズが 0 B になっていることを確認できましたか?それでは戻しましょう。

CREATE TEMP FUNCTION
  CONVERT_BOOL_TO_ZERO_BYTE_STRUCT(b BOOL)AS(
  IF
    (b,
      STRUCT(NULL),
      STRUCT(STRUCT(NULL))));
CREATE TEMP FUNCTION
  CONVERT_ZERO_BYTE_STRUCT_TO_BOOL(s STRUCT<_ STRUCT<INT64>>)AS(s._ IS NULL);
CREATE TEMP FUNCTION
  CONVERT_INT64_TO_ZERO_BYTE_STRUCT(i INT64)AS(ARRAY(
    SELECT
      CONVERT_BOOL_TO_ZERO_BYTE_STRUCT(i&1<<u=0)
    FROM
      UNNEST(GENERATE_ARRAY(0, 63))u
    ORDER BY
      u));
CREATE TEMP FUNCTION
  CONVERT_ZERO_BYTE_STRUCT_TO_INT64(a ARRAY<STRUCT<_ STRUCT<INT64>>>)AS((
    SELECT
      SUM(
      IF
        (CONVERT_ZERO_BYTE_STRUCT_TO_BOOL(a[
          OFFSET
            (u)]),
          0,
          1<<u))
    FROM
      UNNEST(GENERATE_ARRAY(0,ARRAY_LENGTH(a)-1))u));
SELECT
  CONVERT_ZERO_BYTE_STRUCT_TO_INT64(CONVERT_INT64_TO_ZERO_BYTE_STRUCT(i))
FROM
  UNNEST(GENERATE_ARRAY(1,1000000))i
  -- 先ほどのテーブルを参照する

元に戻っていること、課金されるバイト数が 0 B であること確認できたでしょうか。
このように情報を埋め込むことができ、全ての列をこの形に変形すれば、テラバイト情報量を持った 0 バイトテーブルを作成することが可能です。
もちろん ZERO BYTE STRUCT 変換に計算時間はかかりますが、これが許容できるのであれば、データ変換のたびに、ZERO BYTE STRUCT 形式にデータを変換して保存、読み出して次のデータ変換とすれば、参照コストなしで、無限のデータを扱うことができます。

ZERO BYTE STRUCT FUNCTIONS

ここで自作公開した関数群があるので紹介します。
bqfunc.zerobyte._{type}_TO_ZEROBYTE と
bqfunc.zerobyte.ARRAY__{type}_TO_ZEROBYTE と
bqfunc:zerobyte.ZEROBYTE_TO_{type} と
bqfunc:zerobyte.ZEROBYTE_TO_ARRAY_{type} です。
({type}は、STRUCT 以外の任意の型に対応。STRUCT は個別に関数を組み合わせて作るか、TO_JSON_STRING で詰め込むと良いです。)
_{type}_TO_ZEROBYTE は対応する型の引数を受け取ると、ZERO BYTE STRUCT に変換を行います。その逆関数が ZEROBYTE_TO_{type} で、元の型の値に戻すことができます。

SELECT
  bqfunc.zerobyte.BOOL_TO_ZEROBYTE(TRUE)

終わりに

ZERO BYTE STRUCT は、BigQuery の課金の抜け穴のようなものですので、実用は避けるべきでしょう。
みんな BigQuery 使おう。

(追記)

BigQuery は黒魔術!?

黒魔術を使わずとも、他の SQL を触ったことがある方なら、BigQuery は安心してお使いいただけます。(言語は PostgreSQL が最も近いかも)ただ、使い方が違います。従来の SQL はデータを取得するだけのものでしたが、BigQuery は、WINDOW 関数どころではなく、多段のデータ変換まで担わせることが、コストパフォーマンスを高める秘訣です。(巨大な SQL のコストパフォーマンスとメンテナンス性はトレードオフなので、別にテスト手法の記事を投稿予定です。)

BigQuery 黒魔術の先駆に BigqueryStandardSQLの黒魔術ってなに!?記してみました! がいらっしゃいます。ぜひこちらもご覧ください。(Lv100. は暗黒魔法かもしれない)

0 円クエリの賛否

利用者への課金が 0 円でも、BigQuery は計算コストを払っていることでしょう。一部分が 0 円で提供されているのは、それでもサービスが全体として成り立つからでしょう。容量用法を守ってお使いください。WHERE 句で IF を使えば条件によって N% ERROR を返すクエリになりますが、それらが悪かなどの議論は避けます。可能なら、BigQuery としての立場を確認したいところです。(ZERO BYTE STRUCT については、記事の投稿前に GCP にフィードバック送信済みです。)

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