はじめに
2026年10月13日、Gemini 4 Argon が一般提供(GA)になりました。
Gemini 4 Argon: our next era of frontier intelligence
そこで、前世代の Gemini 3.1 Pro と最新の Gemini 3.8 Flash を比較対象に、Argon との違いを調べました。
お題は、Three.js で「雨の夜の街を走る電車」の 3D シーンを1つの HTML で作らせるものとして、3モデルをそれぞれ実行し、参考として Claude の Opus 5.5・Fable 5.1 でも検証しました。
Gemini 4 Argon とは
Gemini 4 Argon は、Gemini 4 ファミリーの最初のモデルで、公式ドキュメントではコーディング、金融、法律、サイバーセキュリティ、科学といった領域の、複雑な実務での深い作業を得意とすると説明されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入力 | テキスト、画像、音声、動画 |
| 出力 | テキスト |
| トークン上限 | 入力と出力を合わせて 1,048,576 トークン(思考を含む) |
| 1回の出力 | ストリーミングで 65,536 トークン。Long Decode を使うと最大 1,048,576 トークン |
| 思考 | LOW / MEDIUM(既定)/ HIGH の3段階 |
| ツール | Google 検索などのグラウンディング、コード実行、関数呼び出し、Computer use(プレビュー) |
Long Decode(公式ドキュメントでは「長いデコード」)は、1回の出力上限を超えて、思考と回答を続けて生成する仕組みとなっていて、続きのトークン(continuation_token)で複数のリクエストをつなぎ、Gen AI SDK が自動で処理してくれるようです。
3.1 Pro から変わる点は、補足にまとめました。
Google 公開のベンチマークです。比較対象は GPT-6 Astra、Claude Fable 5.1、Claude Opus 5.5 が挙げられています。
画像引用元: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-4-argon/
19項目のうち、Argon が14項目で最高値を取得しており、FrontierSWE v2 など5項目は、他のモデルが上回っていることがわかります。
検証環境
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデル |
gemini-4-argon / gemini-3.1-pro-preview / gemini-3.8-flash
|
| 呼び出し | Gemini Enterprise Agent Platform の streamGenerateContent
|
| 思考レベル | 3モデルとも HIGH |
| 最大出力 | 65,536 トークン |
| サンプリング値 | 指定なし(既定値。Argon は指定しても無視される) |
「雨の夜の街を走る電車」をテーマとして、1つの HTML に収まりながらも電車、光、雨、濡れた路面の反射など、見て比べられる要素が多いものを選定しました。明かりと反射の作り込みが、そのまま見た目の差になるためモデルごとの表現力が出やすいと考えました。
使ったプロンプトは次のとおりです。
Three.js を使って、単一の HTML ファイルで「雨の夜の街を走る電車」の 3D シーンを作ってください。
要件:
- 1つの HTML ファイルに完結させる(Three.js は cdnjs の r128 を読み込む。他の外部アセットや画像は使わない)
- 夜の街(高さの違う複数のビル群、窓の明かり、ネオン看板風の発光)
- 線路の上を電車(複数両編成)が走り続ける。車両には窓の光とヘッドライトがある
- 雨が降っている(雨粒のアニメーション)。地面は雨で濡れて光を反射しているように見える
- マウスドラッグで視点を回せる(OrbitControls は使わず、自前で実装すること)
- 画面全体にレンダリングし、ウィンドウサイズ変更に追従する
出力は、完成した HTML コードを1つのコードブロックだけで返してください。説明文は不要です。
検証してみる
Argon は、1回の出力が、ストリーミングで 65,536 トークン、非ストリーミングの直接 HTTP で 32,768 トークンまでです。
出力が上限に近づく可能性があったため、3モデルとも streamGenerateContent を使用して実行をしました。
curl -N -X POST \
-H "Authorization: Bearer $(gcloud auth print-access-token)" \
-H "Content-Type: application/json" \
"https://aiplatform.googleapis.com/v1/projects/${PROJECT_ID}/locations/global/publishers/google/models/gemini-4-argon:streamGenerateContent?alt=sse" \
-d '{
"contents": [{"role": "user", "parts": [{"text": "(上のプロンプト)"}]}],
"generationConfig": {
"maxOutputTokens": 65536,
"thinkingConfig": {"thinkingLevel": "HIGH"}
}
}'
モデル ID を変えれば、他の2モデルも同じ形で呼べます。
| Gemini 4 Argon | Gemini 3.1 Pro | Gemini 3.8 Flash | |
|---|---|---|---|
| 所要時間 | 265秒 | 131秒 | 81秒 |
| 生成コード | 1,174行 | 344行 | 583行 |
| 1回あたりの費用(概算) | 約 $0.23 | 約 $0.17 | 約 $0.04 |
| 思考 / 回答トークン | 6,925 / 15,539 | 9,544 / 4,308 | 3,429 / 7,405 |
Argon のコードは、3.1 Pro の約3.4倍の行数で、濡れた路面のテクスチャ、鏡像による反射、複数の点光源まで作り込まれていました。
思考トークンは 3.1 Pro より少なかったですが、回答(コード)が長くなっていることがわかります。
Flashモデルは画面が暗くてよく見えないですね。
差があったのは濡れた路面の反射を作る仕組みで、同じプロンプトでもArgonは意図を汲み取り正確に描画していたのに対し、ProやFlashモデルは作り込みが弱い部分があると感じました。(もちろん指示するプロンプトの質にもよると思います)
ただし所要時間や生成コード数を見ても、Argonは深く推論して頑張って回答していますね。
Claude の Opus・Fable と比べてみた
3D の動くシーンは、体感として Claude の Opus や Fable が綺麗に作ってくれる印象がありました。
Argon が他ベンダーモデルと比較してどこまで精度向上しているかをみるため、同じプロンプトを Claude Opus 5.5 と Fable 5.1 にも出しました(思考の設定は指定できず既定のままなので、条件は全く同じではありません)。
| Gemini 4 Argon(HIGH) | Claude Opus 5.5 | Claude Fable 5.1 | |
|---|---|---|---|
| 生成コード | 1,174行 | 983行 | 641行 |
Opus と Fable は、雨の筋、街の奥行き、ビルの陰影が丁寧で、空気感のある絵でした。
ネオン看板の数と明るさ、濡れた路面の反射、電車の大きさが目を引き、Opus・Fable も精度が高いことがみて取れ、Gemini 4 Argonも引けを取らない精度は出せていました。
Opus は雨の筋や遠景の霞など、空気感の表現が丁寧でFable はビルの立体感が分かりやすいです。一方でArgon は電車を追う視点でもビルの壁が画面の大半を占め、電車は小さめで奥行きの表現は控えめですね。
ワンシーンとしての出来を見ると、個人的にはFableやOpusの立体感や作り込みが好みではあります。
どれを綺麗と感じるかは好みで分かれますし、何度も壁打ちすればどのモデルでも最終的には同じ程度の品質を出せますが、あくまで今回の範囲では、Argon は Claude の Opus・Fable に並ぶ水準の絵を作れるようになったと感じました。
別モデルから移行するときに押さえておくこと
公式の開発者ガイドを参考に、移行で変わる点をまとめました。
-
思考レベル: LOW / MEDIUM(既定)/ HIGH の3段階です。
thinking_budgetとMINIMALはHTTP 400になるので削除します。 -
パラメータ:
temperature/top_p/top_kは無視されます。frequency_penalty・presence_penalty・candidate_countはHTTP 400になり、prefillも使えません。 - トークン: 1,048,576 は入力と思考・回答を合わせた上限で、1回の出力は 65,536 まで(非ストリーミングの直接 HTTP は 32,768)で、それを超える長文は Long Decode を使います(Gen AI SDK なら自動)。
- キャッシュ: 明示的なキャッシュは非対応です。先頭 6,144 トークン以上が前回と一致すると、暗黙のキャッシュで入力が 95% 割引になるので、固定部分を先頭に置くことが推奨されます。
-
関数呼び出し:
FunctionCallとFunctionResponseの id・name・順序をそろえておきます。 -
リージョン:
global/us/euのいずれかを選べます(3.1 Pro は global のみ)。
費用
公式の料金ページの、100万トークンあたりの単価(グローバルエンドポイント)です。
| モデル | 入力 | 出力(思考を含む) |
|---|---|---|
| Gemini 4 Argon(〜2026年11月30日、クレジット還元後の実質価格) | $2 | $10 |
| Gemini 4 Argon(2026年12月1日〜) | $4 | $20 |
| Gemini 3.1 Pro Preview | $2 | $12 |
| Gemini 3.8 Flash(〜2026年12月31日) | $0.75 | $3.75 |
| Gemini 3.8 Flash(2027年1月1日〜) | $1.50 | $7.50 |
Argon の導入価格は「50% のクレジット還元」として案内されています。
まとめ
今回はGoogle 満を持して発表したフラグシップのArgon モデルということで、過去のGeminiモデルやClaudeモデルと単発プロンプトでの精度比較をしてみました。
Argon はコーディングにも使えるレベルになったのか、という点では、今回の3D シーン生成で、反射まで作り込んだ動くコードを出してくれて、Claude の Opus・Fable に並ぶ水準でした。
公式ベンチマークでも DeepSWE v1.1 などは最高値ですが、Terminal-bench 4.0 などでは他のモデルが上回るので、実務での使い心地は別途試したいところです。
Antigravity などでコーディング用途も増えているので、以前オウンドメディアで書いた記事もあわせてどうぞ。
Google Antigravityの「via Google Cloud」を試してみた
3.1 Pro と比べて時間は約2倍・費用は約1.4倍かかるので、完成度や見栄えを重視するなら Argon、安く速く回したいなら 3.8 Flash が向いていると思います。
移行の注意点は補足にまとめ、プロンプトも載せているので、ぜひ手元でも試してみてください。


