転職活動に際し、求職者というのは何とも受け身な立場である。ものすごく技術力があり、自他ともに認めるツヨツヨなエンジニアであれば違うのであろうが、学習意欲もあって実装の実務経験を持っていてもいざ面接となるとどうしても緊張し萎縮してしまうのが人間というものである。
いろんな理由を持って転職をしていくのだが、一人きりで次の職場を見つけるというのはなかなか骨が折れる作業である。求人を探し、履歴書を書き、応募ボタンを押すのに小一時間悩み。決死の覚悟で応募しても書類すら通らないこともしばしば。そんな困難を少しでも軽くするために存在しているのが求職エージェントやダイレクトスカウトの転職サイトである。
大抵の場合、それらに頼って転職活動を進めるものであろう。一度履歴書や職務経歴書を書けば、サイト違いであってもコピペしたり、履歴書や職務経歴書のPDFの入力代行を依頼したりして、一気に荒波の中に漂う求人へアプローチする手を広げることができる。
さあ、譲れない条件を満たすものには応募を進めていこうじゃないか。あちらのサイトからはエージェントがスカウトをくれる。そちらからは企業が直接スカウトを送ってくれる。応募をし、選考を進めてもらっているものもある。ではこちらではカジュアル面談をして情報収集をしつつ、いざ選考に進んだ時のために顔を繋いでおこうじゃないか。
数日、いや一週間か二週間経っただろうか。応募していたところは書類選考止まり。カジュアル面談をしてもなんだかピンとこない。いやいやめげるな、数を打てば当たるかもしれない。応募を続け、カジュアル面談をこなし、スカウトを期待する。そうすると10社に1社くらい一次面接に呼んでもらえる。一つ書類が通るようになるとあら不思議。もう2~3社から面接へ声がかかるではないか。ああ、一安心。とりあえずは面接に呼んでもらえるような職務経歴書になっているようだ。選考という一方的に審判されるものである以上、どうしても不安が拭えないものであるがそれでも今まで勤務してきたことは嘘じゃない。
いざ、面接だ。基本的には職務経歴書に書いたことに沿って面接が進んでいく。ビデオに映る自分はどうだろう。笑えているか。愛想はないよりあった方が絶対にいい。誰だって気分の良い人と働きたいものだ。別の面接を受ける。この間と同じ業務について質問がある。別の企業でも聞かれるかもしれない。ここはもっとスムーズに答えられるように文章を練ろう。テクニカルな質問は緊張する。うまく答えられた試しがないからだ。後で聞かれたワードについて調べなければ。
そうこうしているうちに、面接が進んでいくもの、お祈りされるものが出てくる。お祈り理由は可能な限り教えてほしい。一体何がダメなんだ。どこを改善したら私を受け入れてくれるだろうか。社内のポジションや既存メンバーとの兼ね合い?他にいい人がいた?コミュニケーション能力は素敵でしたけど?... 結局何がどうだったら良いのだ。公開されていない社内事情を理由に対策など立てられない。他にいい人なんてごまんといるだろう。コミュニケーション力は磨いてきたのだ。これは素直に嬉しい。
お祈りが続く、応募を続ける、時たまスカウトがくる。
あれ、なんかこの企業名見た気がする。スカウトをくれた企業名に見覚えがある。確認しよう。そうだこの企業にはあちらのエージェントを使って応募していたのだ。スカウトは別の求人サイトから来ている。選考状況はどうだっただろうか。にわかに嫌な予感がする。複数の求人サイトを使っているのだ。予定の管理や企業情報のまとめなど煩雑になりがちだ。転職情報管理のスプレッドシートを開く。スカウトをくれた企業は...。
スプレッドシートの選考管理シートを開く。ああやっぱりだ。この企業は書類選考で終わっている。苛立ちか、やるせなさか、はたまたどうしても自責になってしまうが故の不甲斐なさか。大きく息を吐き出す。深呼吸は大事だ。いくつかの求人サイトに登録していてもほとんど書いている自分のプロフィールは同じなのだ。同じ採用担当者が求人サービスを跨いでもそれを見ているのではないのか。なぜお祈りしておいて、あなたのご経歴に惹かれました、なんて書けるのだろう。
落ち着け。相手も仕事をしているだけだ。サイトごとに担当者が違うのかもしれない。むしろ本当はその企業に適性があったかもしれないと見極めていた自分を褒めてもいいのではないか。しかし何の結果も得られませんでした、という現実だけが存在している状況では何の慰めにもならない。
こんな状況こそどうしようもない採用のミスマッチの一つではないだろうか。求職者からしたら企業に対する心象はよくないし、一度落とした相手からのスカウトの返事なんて期待できない。その状態を知らない企業からしたら見えない求職者の印象も決して良いものにはならない。
サイトを跨いだ転職活動をひとまとめにするようなサービスを作ったら売れないだろうか。もうあるかもしれない。こんな時でも問題解決案を出そうとするエンジニア脳な自分が憎たらしい。AIが盛んなこの時代に泥臭い転職活動はもっとスマートなものになってほしいと願わずにはいられない。