0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

コードは“生きた仕様書”になり得る──DDDで設計する理由

Posted at

はじめに

PHPからJavaへのリプレースを行った際、まず苦労したのが既存コードの読解だった。スパゲッティ化したコードは、仕様理解だけで相当な時間を取られた。
新規開発時にはその反省から仕様書を丁寧に作ったが、後になって気づいたのは、仕様変更のたびにコードは更新しても、仕様書は忘れられがちという現実。
結局、もっとも正確な仕様はコードにしかない、というのが自分の実感だった。

コードは読めて当たり前ではない

仕様をコードから理解できるようにするのが最善なのは、前述の通り。
ただ、そのコードがスパゲッティ化してしまう背景には、設計方針が人に依存していて、開発者が変わるたびに構造や命名のルールがズレていくという問題がある。

結果として、コードベースに一貫性がなくなり、読んでも意図がつかめず、改修や仕様理解のたびに無駄なコストが発生する。

だからこそ、読めば自然と「このコードが何を意図しているのか」が伝わるような、意味のある設計が必要だと感じている。
設計は未来の開発者へのメッセージでもあり、コード自体が仕様書として機能する構造をつくることが、保守性と開発効率を大きく左右すると思う。

DDDの設計がどう貢献するか

こうした設計のばらつきや読みづらさの課題に対して、DDD(ドメイン駆動設計)が有効なのだと感じた。DDDでは、業務ルールや概念を反映した「ドメインモデル」を中心にシステムを構築していく。エンティティや値オブジェクト、サービスなどに責務が明確に分離され、構造的にも命名的にも「意図が透けて見えるコード」になりやすい。

たとえば「注文キャンセル」に関する仕様をコード上で表現する場合、以下のような違いがある:

// DDD的ではない例
orderService.cancelOrder(orderId);

// DDD的な設計
order.cancel();

OrderService.cancelOrder(orderId) のような曖昧な書き方ではなく、Order エンティティが cancel() というドメインロジックを持つことで、誰が見ても「このキャンセル処理は Order の振る舞いの一部なのだ」と理解できるようになる。

さらにDDDでは レイヤー分離の考え方 も明確で、アプリケーション層やインフラ層といった構造上の役割分担が定義されている。
これによってコードの責務が曖昧になりにくく、拡張や保守がしやすい状態を保ちやすくなる。

つまり、DDDで設計されたコードは、読み手にとっての「生きた仕様書」になりうる。しかも、仕様書のように “別管理” されるものではなく、コードと仕様が一体化している ため、仕様変更のたびにドキュメントとの不一致に悩まされることも少ない。

もちろん、DDDには学習コストや設計の難しさもあるが、
長期的に得られる保守性や可読性の高さは、それに十分見合う価値があると実感している。

実務で感じた “読めるコード” の価値

実際にDDDを意識して設計したプロジェクトでは、仕様書がなくてもコードを読めば「何がどう動いているのか」がある程度把握できる状態を作ることができた。
特に、業務ロジックがドメインモデルに集約されていると、処理の流れや意図の読み取りが驚くほどスムーズになる。

逆に、初期のPHPコードのように、設計方針が曖昧で責務が混在している場合は、コードを読むだけでも大きな労力を伴った。

読みやすさや一貫性は、開発の初期フェーズでは軽視されがちだが、時間が経つほどにその重要性が浮き彫りになる
特に、自分とは別の誰かが機能追加やバグ修正を行う場面では、設計そのものが「仕様書」として機能しているかどうかが、開発効率や品質に直結する。

だからこそ、最初の設計段階から 「読まれること」を前提にしたコードづくり を意識するようになった。

おわりに

仕様書を完璧に保ち続けるのは現実的ではない。
だからこそ、コードそのものが仕様を語るような設計が理想だと感じている。
その実現において、DDDは有効なアプローチの一つだった。

業務の意味をコードで表現し、構造や命名を通して自然と意図が伝わる設計は、
保守性やチーム全体の開発効率を大きく底上げしてくれる

設計は単なる初期コストではなく、未来への投資だと思う。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?