この記事はZOZOテクノロジーズ #2 Advent Calendar 2019 最終日の記事です。
24日目はIchi0124さんのECS Fargate(Nginx + gRPC)構成のヘルスチェック設定でした!
#はじめに
こんにちは、ZOZOテクノロジーズのmuff1225です。
普段はZOZOのアパレル事業の一つであるマルチサイズプラットフォームのシステム部門でプロダクトオーナーをやっています。
最近メンズジュエリーにハマっていることもあって、興味のあったシルバーリング制作にチャレンジしました。
シルバーリングを作るにあたり、3DCADと3Dプリンターを使っています。
この記事では、その過程や必要な費用、備品などをまとめてご紹介します!
シルバーリングの制作とは
ところでみなさん、世間一般的に販売されているシルバーリングはどのように作られているかご存知ですか。
シルバーリングを作るにあたりいろいろ調べたところ、シルバーリングの製造には大きく2つの手法があることがわかりました。
3D制作の話をする前に簡単にご紹介します。
その1. 鍛造(たんぞう)
鍛造と書いて「たんぞう」と読みます。
トンカチでトンカンしながら作るのがこの鍛造です。
なんとなく金属加工といったら工場で火を使ってトンカンしてるイメージありませんか?
リング作りおける鍛造では、金属の板を、トンカチで叩きながら少しずつリングの形として整えていきます。
金属を叩くことによって金属の密度が増していくため強度が高くなるのが特徴で、マリッジリングや細めのリングに使われる手法です。
トンカンするので、力仕事でもあり、繊細さが求められる手法です。
槌目の手作り指輪 作り方【必見!これが鍛造の極み】ハイレベルな指輪作り
その2. 鋳造(ちゅうぞう)
鋳造と書いて「ちゅうぞう」と読みます。
リング作りにおける鋳造では、作りたい形状のリングをワックスと石膏を使って型取りをし、石膏型に熱で溶かした金属を流し込んで製造をします。
この手法では、熱で溶けるワックス(ロウソクのロウを固めたもの)を使ってデザインを行うのが特徴で、ワックスは手で簡単に加工できるため、ヤスリや彫刻刀などで削って加工をします。
ロストワックス法ともいわれており、デザイン性の高いリングや大量製造向けのリングに使われる手法です。
ワックスと3Dプリンティング
実はこの鋳造で使われるワックスなのですが、最近では3Dプリンターを使ったワックス出力1ができるようになったおかげで、ワックスに直接彫刻を施す必要がなくなりました。
そのため3DCADのようなソフトウェア上でデザインが完結することになり、デザインのやり直しがいくらでもでき、作業の正確性が大幅に向上しました。
今回のシルバーリングの製法もこの3Dプリンターを使ったロストワックス法を採用しています。
シルバーリングを作ろう
さて本題のシルバーリング作りに入っていきます。
順番に説明していきます。
デザインをしよう
3Dプリンターでワックスを作るにあたり、3Dデータで原型を作る必要があります。
世の中にはたくさんの3DCADがあるのですが、Fusion360はクラウドストレージに保存 かつ 個人利用の場合は1年間フリーで利用できる2ということで、こちらのソフトを使うことにしました。
初めての3Dモデリングだったのですが、Youtubeにたくさん制作チュートリアルがあるので、作り方のイメージが湧いてきます。
Fusion360の使い方は割愛しますが、基本的には図形を書いて、立体化したり、くっつけたり、削ったりして3Dモデリングをする3DCADソフトウェアです。
モデリング中
モデリング済み
3Dプリンティングをしよう
3Dモデリングが出来たところで次はワックス化です。
3Dプリンターは市販されているので個人で買えるのですが、いかんせんミドルエンドで40万円近くしてしまう かつ 匂いや音もあるので個人で所有するのは難しいと思います。3
3Dプリンターはいろいろ調査した結果、DMM.makeに3Dプリンティングサービスがあったのでこちらを利用することにしました。4
使い方は特に難しいところはありません。
会員登録し、3Dモデリングのデータをアップロードすると、1日程度で3Dプリンティングできるかどうかのモデルチェックが通るので、最後に素材を選んで終了です。
素材には光造形のキャスタブルYRかキャスタブルBRを使いましょう!(鋳造向けの素材のことです)
発注後は出力と郵送までを行ってくれます。
ワックスを補正しよう
DMM.makeで注文後、2週間程度で3Dプリンターで造形されたリングが届きました。
DMM.makeは3Dプリンティングに必要なサポート材(リングを支える土台)は自動で作ってくれるのですが、削除はしてくれないのでこれを自分でカットします。
サポート材はハサミやニッパーなどで切れます。プラモデルのパキパキみたいな感じです。
到着後
(なんかちょっとあれ・・・)
補正後
ニョキニョキしてるところをカット
サポート材とリングの境目のバリがうまく切れずにそのままになってしまいました。
あとで加工すればいいやと思ってこのまま次のステップに進みましたが、
先に言っておくとこのレベルのカットだとあとで苦労するので、ヤスリなどで削った方が良いです。
鋳造しよう
ワックスができたので次は鋳造です。
通常ならこの鋳造には専用の石膏、遠心分離機、加熱器、金属流し込みマシンなど専用機器がたくさん必要です。
もちろん自宅には到底置けないラインナップだったので、この工程も請け負ってくれる業者を探しました。
いろいろ調べた結果、トーヨー精工さんが1個単位で仕上げてくださるということをアクセ作りのパイセンに教えてもらったので、今回はトーヨー精工さんにお願いしました。
依頼方法はWebから注文が可能で、WEBフォームに必要な情報を入力し、ワックスを郵送したらそのあとはよしなしやってくださいます。
なんと驚きなのが、トーヨー精工さん、ワックスが手元に届いてから1営業日で鋳造して、郵送してくださる超激早仕様。
自分の場合、火曜日に送って、水曜日に鋳造し、木曜日に手元に届きました。早すぎない?
見てお分かりだと思うのですが、ワックスのバリを削らずそのままにしていたところが、そのままシルバーとして上がってきました。すごい再現度。
そして鋳造で必ず出来てしまう、銀の通り道である湯道(ゆみち)がついています。(写真の中のマイナスドライバーが入りそうな形状のやつ)
トーヨー精工さんで削ってくれるプランもありますが、今回初制作ということで自分でやってみることにしました。
研磨しよう
ここからリングとして仕上げるための最後の工程です。
鋳造から上がってきたリングをみると、以下の研磨工程が必要です。
- 湯道を削る
- バリ再現部分を削る
- 傷をとるように綺麗に磨く
研磨では目の荒さが異なるヤスリでゴリゴリ削る方法が一般的で、ヤスリはAmazonなどでたくさん見つかります。
今回目的としては、荒削りをすることと綺麗に磨くことの2種類だったので以下の商品を購入しました。
手動でももちろん削れるのですが、電動ルーターがあるとめちゃくちゃ効率いいです。
バフ(ヤスリ)をミニルーターにくっつけてゴリゴリ削っていきます。
完成!
まとめ
これでシルバーリングが完成しました。
長くなったので改めて手順をまとめます。
手順
- Fusion360で3Dモデリングをする
- ワックスを3Dプリントする(省略可能)
- ワックスで鋳造してもらう
- シルバーリングを磨いて仕上げをする(省略可能)
今回2,4を別工程でやったのですが、
実はトーヨー精工さんでは3Dデータを渡せば一気に2,4をやってくださるプランもあるようで、
2, 4の工程が面倒だなと思ったらお願いすると良さそうです。
磨きは思ったよりスキルが必要 かつ 部屋が汚れるので、磨きはやってもらった方が良さそう。
必要な備品
主に研磨用の備品を今回購入しました。
手順の2,4をやってもらう場合は不要そう。
必要な費用
- 3Dプリンティング費用(2,052円)
- 鋳造費用(2,445円)
意外と鋳造が安いですね。
3Dプリンティングはトーヨー精工さんにお願いしたらもう少し安いと思います。
鋳造する前にワックスをチェックしたいなどの特別な要望がなければお願いしちゃった方が良いですね。
注意事項
作ったあとに気付いたのですが、3Dプリンター出力+鋳造時にサイズが縮みます。
今回直径16.3mm(11号)で3Dモデリングしたリングでしたが、仕上がり後は15.7mm程度(9号)に縮んでいました。
指に入らなくなって内側ゴリゴリ削りました・・・
3Dモデリングする場合は、2号程度大きめに作成した方が良いです!
1号程度であれば鋳造から上がったあとでも削ってなんとかなります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
シルバーリング作りはなんとなく、設備が大変そう、手先が器用じゃないとダメそうと思ってましたが、うまくアウトソーシングすることでほとんど省略できることがわかりました。面白い。
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