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ファイアウォールが「SASE」になる日──Fortinetが仕掛ける2026年の大転換

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まずはひとこと。数あるセキュリティ関連記事のなかから、この記事を見つけてくださって本当にありがとうございます。今日は、いま最も勢いのあるセキュリティベンダーの一社、Fortinet(フォーティネット)の最新動向をまとめてお届けします。

全体要約

Fortinetが2026年、ファイアウォールとSASEを融合させた「SASE Firewall」という新市場を自ら定義。FortiOS 8.0やFortiGate新モデル、Virtue AI買収でAIエージェント時代の防御を強化し、製品売上52%増という絶好調な決算も達成。日本でもサプライチェーン防御を軸に攻勢をかける、その全貌に迫ります。


2026年、Fortinetの動きが加速しています。「ファイアウォールとSASEの融合=SASE Firewall」という新しいカテゴリーを自社で定義し、AIエージェント時代のセキュリティにも大胆に投資。そして財務面でも、製品売上が前年比52%増という驚異的な成長を記録しました。

本記事では、2026年3月〜8月を中心に発表された製品・買収・決算・アナリスト評価・日本市場の動きを整理しながら、Fortinetがいまどこに向かっているのかを読み解いていきます。比較の視点として、Palo Alto NetworksやCloudflare、CrowdStrikeなど競合他社の動向にも触れますので、業界全体の流れをつかむ参考にしてもらえたら嬉しいです。


1. FortiOS 8.0が示す「ネットワークとセキュリティの融合」

まずは土台となるOSの話から。2026年3月10日、Fortinetは年次イベント「Fortinet Accelerate 2026」(ラスベガス)にて、最新OS「FortiOS 8.0」を発表しました。25年以上蓄積してきたネットワーキング×セキュリティ技術の集大成と位置づけられており、その中身は大きく3本柱に分かれます(Fortinet公式ニュースルーム)。

① AI駆動セキュリティ

  • シャドーAI可視化:組織内で使われているAIアプリ・サービスをリアルタイムに把握し、許可済み/未許可のツールを識別
  • AI対応アプリケーション制御:承認済みの生成AIツールは使わせつつ、機密データ漏えいにつながる危険な操作だけをブロック
  • MCP/A2A可視化:AIエージェント同士のやり取りという「見えにくい部分」を可視化
  • OCR搭載の強化DLP:画像やスクリーンショットに埋め込まれた機密情報まで検知

② 次世代SASE

  • SASE Outpost:クラウド管理を維持したまま、顧客が管理する拠点にSASEのアクセスポイントを展開できる仕組み
  • ソブリンSASE展開オプション:地域別ログ保持やコントロールプレーンの所在地など、データ主権に配慮した多層的なモデルを用意

③ 量子セーフ対応

  • 重要な管理アクセス経路を、ML-DSAなどのポスト量子暗号(PQC)証明書で保護
  • ハイブリッド鍵交換とPQC対応のSSLディープインスペクションにより、暗号化トラフィックの脅威検出と将来の耐量子性を両立

CEOのKen Xie氏は「AI・クラウド・暗号化が進む環境では、複雑さを減らしつつスケールできる統一OSが不可欠だ」と説明しています(同上)。AI・SASE・量子耐性という2026年の3大キーワードを、一つのOSに詰め込んできた格好です。

耐量子暗号への対応は、Palo Alto NetworksやCiscoなど競合各社も段階的に進めている領域で、Fortinet独自の強みというよりは業界全体の潮流。ただし、これを単体のOSアップデートとして早めに打ち出した点は、Fortinetらしいスピード感といえるでしょう。


2. 「SASE Firewall」という新市場を自ら創り出す戦略

続いては、Fortinetが最も力を入れているポジショニング戦略について。単なる新製品の紹介にとどまらず、業界のカテゴリー自体を塗り替えようとしているのが今回のポイントです。

2026年7月28日、Fortinetは「FortiGate 1200G」シリーズと、それに搭載される「FortiSASE Outpost」を発表しました(Fortinet公式ニュースルーム)。これは独自ASICによる高性能な脅威防御と、クラウド提供のSASEサービスを顧客管理環境に持ち込む仕組みを組み合わせたもので、最大397Gbpsのファイアウォールスループットを実現するとされています(StockTitan)。

CEOのKen Xie氏はこの発表で、「ファイアウォールとSASE技術の融合が、今日のハイブリッドな世界の現実に対応した新しいSASEファイアウォール市場を生み出している」とコメント。独立系アナリストのWill Townsend氏(LoneStar Advisory and Research)も、「クラウド提供セキュリティのスケーラビリティと、オンプレミスのパフォーマンス・統制・主権性のどちらかを選ばなくてよい」構成だと評価しています(TahawulTech)。ただし、これは企業発表・ベンダー主催記事内でのコメントである点には留意が必要です。

FortiGate 1200Gは2026年第3四半期の提供開始予定(Fortinet)。さらに8月25日には、分散型エンタープライズ向けの新モデル「FortiGate Gシリーズ(70G/50G/30G)」も国内向けに発表され、暗号化トラフィックの増大やAI駆動ワークロードへの対応が進められています(フォーティネットジャパン公式発表)。

他社との比較でみると、フルクラウド型のSASEを主軸とするCloudflareやZscalerに対し、Fortinetは「オンプレミスとクラウドを自由に選べる」ハイブリッド路線を強みとして訴求しています。どちらが優れているというより、規制業界や主権性を重視する顧客にはFortinetの選択肢が刺さりやすく、俊敏性やクラウドネイティブ性を求める顧客にはCloudflare・Zscalerが強い、という住み分けが進んでいる構図です。


3. Virtue AI買収でエージェントAIセキュリティを強化

3つ目の軸は、AIエージェント時代への備えです。2026年8月17日、FortinetはエージェントAIセキュリティに特化したスタートアップ「Virtue AI」の買収を発表しました(Fortinet公式ニュースルーム)。買収額は非公表ですが、会社としては「業績への重要性は低い」金額としています(SecurityWeek)。

Virtue AIの技術は、以下のような機能でFortinetの既存ポートフォリオを補完します。

  • エージェント型システムのレッドチーミング:50以上のサンドボックス環境・14の高リスク領域で自律エージェントの脆弱性をテスト。プロンプトインジェクションやMCPベースの攻撃シミュレーションも含む
  • エージェント保護・ガバナンス・可視性:未承認のAIアプリ/エージェントの発見や、MCPツール・ソースコードのリスクスキャン
  • 継続的AI検証:モデル更新やポリシー変更後に生じる新たなリスクを特定し、監査対応のエビデンスを生成

これは、LLMをプロンプトインジェクションやデータ漏えいから守る既存の「FortiAIGate」を補完する位置づけです(Industrial Cyber)。Fortinetは、Gartnerの予測を引用しつつ「AIエコシステム・AIエージェントのセキュリティ市場は2026年の28億ドルから2030年には164億ドルへ拡大する」と説明しています(Fortinet)。

ここで注目したいのは、Fortinetが「AIエージェント=新しいアイデンティティ・新しい攻撃対象」と捉え始めている点です。単なる機能追加というより、企業のなかでAIエージェントが働き始める未来を見据えた、ライフサイクル全体の防御という発想への転換とみられます。この分野では、Palo Alto NetworksやMicrosoftも同様にAIセキュリティへの投資を強めており、Fortinet単独の動きというより業界全体が「エージェンティックAI=新しい攻撃対象」という認識に急速にシフトしている流れの一部と捉えるのが妥当でしょう。


4. 絶好調の決算とアナリスト評価、脅威動向にみる業界比較

最後は数字の裏付けです。どんなに製品戦略が魅力的でも、実際の業績と市場評価が伴っていなければ説得力に欠けます。その点、2026年のFortinetは非常に堅調な結果を残しています。

4-1. Q2 2026決算はコンセンサスを大幅に上回る

2026年7月29日発表の第2四半期決算は、市場予想を大きく上回る内容でした(Fortinet公式ニュースルーム)。

指標 実績 前年比
総売上高 20.5億ドル +26%
製品売上高 7.73億ドル +52%
請求額(Billings) 23.7億ドル +33%
フリーキャッシュフロー 9.66億ドル 前年から3倍超

CEOのKen Xie氏は「顧客はFortinetならではの“SASEファイアウォール”に価値を感じてくれている。単一のFortiOSと自社開発のFortiASICによって、主権性のある形態でもオンプレミスでもクラウドでも柔軟に展開できる」とコメントしています(Fortinet)。また、Moody'sはFortinetの社債格付けをA3に引き上げ、上場サイバーセキュリティ企業の中で最高水準の格付けになったと報じられています(The Globe and Mail)。

製品売上52%増という数字は華々しいものの、既存顧客がFortiGate Gシリーズへ移行する「ファイアウォール刷新サイクル」に強く支えられている面もあります。この成長率がどこまで持続するのか、比較対象期間が厳しくなる中で注視が必要、というアナリスト指摘もあることは押さえておきたいポイントです。

4-2. Gartner評価では「Challenger」、Leaderには一歩譲る

一方で、業界評価がすべて追い風というわけではありません。2026年のGartner Magic Quadrant for SASE Platformsにおいて、Fortinetは「Challenger(チャレンジャー)」の位置づけとされています。Leader/Visionaryの一角にはCloudflare、Zscaler、Palo Alto Networksなどが並んでおり、SASE単体の評価では一歩譲る格好です。Fortinet自身は「業界唯一の容易に展開可能なソブリンSASEソリューション」「ワンコンソール・ワンOSによる真の統合SASEアーキテクチャ」を強みとして訴求しています(Fortinet公式資料に基づく自己評価のため、独立検証は別途必要)。

競合としては、プラットフォーム全体で最大の直接競合となるPalo Alto Networks、ネットワーキングの牙城を活かしたバンドル戦略を展開するCisco、脆弱性管理領域で部分的に競合するQualysが挙げられます。FortinetのASIC駆動によるコスト構造は、これら競合に対する一貫した差別化要因として評価される一方、SASEの純粋な機能性やクラウドネイティブ性ではCloudflareやZscalerに軍配が上がる場面も少なくありません。つまり、「万能」というより「ハイブリッド環境に強い」という個性がFortinetの立ち位置だといえそうです。

4-3. 脅威動向:業界全体で「AIによる攻撃の高速化」が進む

Fortinetが2026年4〜5月に発表した「2026 Global Threat Landscape Report」(FortiGuard Labs、2025年の脅威データに基づく)では、以下のような傾向が報告されています。

  • ランサムウェア被害者数が前年比389%増:確認された被害者数は7,831件(前年約1,600件)
  • 脆弱性の悪用スピードが加速:重大な脆弱性の攻撃開始までの時間が、過去の4.76日から24〜48時間へ短縮
  • 「シャドーエージェント」の台頭:高度な攻撃グループが半自律的な「企業」として機能し、アクセスブローカーやボットネット運用者がオンデマンドでサービスを提供する構造に
  • AI攻撃ツールのダークウェブ流通拡大:WormGPT/FraudGPTの高度化版に加え、自動偵察を行う新型ツールも確認

興味深いのは、同時期に発表されたCrowdStrike「2026 Global Threat Report」でも、AI駆動攻撃が89%増、平均侵入からの拡散時間(breakout time)が29分にまで短縮したという酷似した傾向が報告されている点です。ベンダーが違っても同じ結論に至っているということは、「AIによる攻撃の高速化」がもはや一社の主張ではなく、業界全体の共通認識になりつつあることを示しています。


5. 日本市場:サプライチェーン防御を軸にした攻勢

グローバルの動きだけでなく、日本市場での展開にも触れておきます。2026年5月28日、フォーティネットジャパンは2026年度の事業戦略説明会を開催し、社長執行役員の与沢和紀氏が以下3つを重点領域として説明しました(ASCII.jp)。

  1. サプライチェーンセキュリティ強化:ランサムウェア被害が相次ぐ状況を踏まえ、上流から下流までを網羅した防御体制構築を支援
  2. 統合セキュリティ基盤:大企業から中堅・中小企業まで、あらゆる攻撃対象領域を保護するソリューション群を展開
  3. AIセキュリティ:グローバル戦略と同様、AI活用のセキュリティ強化を国内でも重点領域に位置づけ

与沢氏は「中堅企業のうち、アンチウイルス以外のセキュリティ対策が施されている会社の約半数にFortiGateが入っている」というデータも紹介しており(Yahoo!ニュース(ZDNET Japan))、このSMB市場での高いシェアを、サプライチェーン全体への展開における「構造的優位」として活用していく戦略が見て取れます。

2026年7月10日には、3年ぶりとなる国内ツアーイベント「Fortinet Accelerate Japan 2026」も開催され、「ネットワークとセキュリティの融合」「サプライチェーン全体を守るセキュリティ」という2つのキーメッセージが打ち出されました(EnterpriseZine)。三菱電機デジタルイノベーションやトヨタ自動車のセキュリティリーダーも登壇するなど、国内大手企業を巻き込んだ訴求が進んでいる点も見逃せません。

グローバル発表のFortiGate 1200GやFortiSASE Outpostは日本語でも同時展開されており、海外発表とのタイムラグを縮める動きも継続しているようです。


まとめ:ファイアウォールという「枠」を超えようとするFortinet

ここまで見てきたように、2026年のFortinetは「SASE Firewall」という自らの言葉で新市場を定義し、AIエージェント時代への投資、そして絶好調な決算という3つの軸で動いています。

  • FortiOS 8.0でAI・SASE・量子耐性を一つのOSに統合
  • FortiGate 1200G/FortiSASE Outpostで「SASEファイアウォール」市場を象徴する製品を投入
  • Virtue AI買収でエージェントAIセキュリティを強化
  • 製品売上52%増という絶好調な決算を達成しつつ、Gartner評価では「Challenger」にとどまるという二面性も

「ファイアウォールとSASEの融合」という現象自体は、Gartnerの評価やアナリストコメントを見る限り業界でも広く認識されています。ただし「SASE Firewall」という呼称そのものが業界標準として定着するかどうかは、今後数四半期の動向次第という段階です。ファイアウォール刷新サイクルへの依存度や、Gartner MQでの評価変動も含めて、引き続きウォッチしていく価値がありそうです。


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。もしこの記事が「役に立った」「面白かった」と感じていただけたら、いいねを押していただけると励みになります。また、今後もセキュリティ業界の最新動向を追いかけていく予定なので、ぜひフォローもお願いします!


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