1. はじめに
こんにちは!
今月はネットワーク関連業務を担当しているチームより、IoTを支える無線通信技術「LPWA」についてご紹介いたします。
近年、次世代のIT産業として注目されている技術の一つに「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」があります。IoTの市場規模は拡大を続けており、今後もさらに伸びていくと予想されています。それに伴い、私たちの生活を支えるインフラ(電気・ガス・水道)をはじめ、農業、物流、ヘルスケアなど、さまざまな分野でIoTの活用が進んでいます。
こうしたIoTデバイスを支える通信技術として、従来よりも低消費電力、広いカバーエリア、低コストを可能にする「LPWA」ネットワークが期待されています。
私は、現在LPWAを活用したIoT機器に関するプロジェクトに携わっていますので、今回はその実務を通じて感じた可能性や知見をベースに、今後重要となるLPWAの技術的特徴とメリット、活用事例についてご説明します。
2. LPWAとは
LPWAとは、「Low Power Wide Area」の略で、その名の通り「低消費電力で広範囲の通信」を実現する無線通信技術の総称です。
IoTでは、センサーやメーターなどのデバイスを、電源の確保が難しい場所や広範囲に分散して設置するケースが数多くあります。
例えば、従来のWi-FiやBluetoothでは通信範囲が狭く、携帯電話網(LTE/5G)では消費電力が大きく通信コストも高くなりがちです。
LPWAは、こうした従来の通信技術の「スキマ」を埋めるために設計されました。「通信速度は遅くてもよいから、とにかく省電力で、遠くまで、安く」というIoTのニーズに特化した技術です。
3. LPWAの技術詳細
特徴
LPWAの主な特徴は、冒頭でも触れた3つのキーワードに集約されます。
1.低消費電力 (Low Power)
LPWAは、通信時以外の消費電力を極限まで抑える設計になっています。これにより、ボタン電池や小型バッテリーだけで、数年単位、場合によっては10年以上の長期間にわたり、電池交換なしでデバイスを稼働させることが可能です。
2.広範囲 (Wide Area)
一つの基地局(アンテナ)で、数kmから数十kmという非常に広い範囲をカバーできます。障害物の少ない場所ではさらに遠くまで電波が届くこともあります。
3.低コスト (Low Cost)
通信モジュール(デバイスに搭載する通信部品)自体が安価です。また、通信インフラ(基地局)の設置コストも、カバーエリアが広いために少なく抑えられます。
メリットとデメリット
上記の「特徴」がそのままメリットとなりますが、一方でトレードオフとなるデメリットも存在します。
メリット:
省電力:電源の確保や電池交換が困難な場所への設置が容易になります。
広いカバーエリア:少ない基地局で広範囲を網羅できるため、インフラ構築コストを抑えられます。
導入・運用コストの削減:デバイス本体も通信費も安価なため、大量のデバイスを設置するような用途に適しています。
デメリット:
通信速度が非常に遅い:LPWAの最大の制約です。通信速度は数kbps~数十kbps程度と、スマートフォンの通信(Mbps~Gbps)とは比較にならないほど低速です。
送信できるデータ量が少ない:速度が遅いため、一度に送信できるデータ量にも限りがあります。
画像や動画、音声の送信には不向き:テキストや数値データ(温度、湿度、位置情報、メーターの数値など)の送信に特化しており、リッチコンテンツの送受信には使えません。
4. LPWAの活用例
LPWAは、その特性である「省電力・広域通信・低コスト」を活かし、「少量のデータを、長期間にわたり定期的に送信する」といった用途において真価を発揮します。
ここでは、私が現在携わっているインフラ関連プロジェクトの視点から、最も代表的な活用シーンである「スマートメーター」の事例を中心にご紹介します。
この分野で長年の課題となっていたのが、検針業務にかかる「膨大なコスト」と「稼働負荷」でした。
従来の検針業務は、検針員が一件ずつ現地を訪問し、目視で数値を確認する必要がありました。しかし、メーターの設置環境は平地の住宅街だけとは限りません。アクセスの悪い山間部にある施設や、マンホール内など確認が困難な地下に設置されているケースも数多く存在します。
こうした場所への巡回は、単に多大な工数を要するだけでなく、移動コストの増大や、荒天時の安全確保といった面でも、現場にとって大きな負担となっていました。
ここにLPWAを活用することで、以下のようなことが劇的に改善します。
検針の自動化(遠隔検針)
LPWA通信機能を搭載したスマートメーターが、使用量データを自動的に計測し、定期的にサーバーへ送信します。
業務効率化とコスト削減
検針員が訪問する必要がなくなり、人件費や移動コストを大幅に削減できます。
データの可視化とサービス向上
ほぼリアルタイムで使用量を把握できるため、利用者は自身のエネルギー使用状況をWebなどで確認できるようになります。また、事業者側もデータの分析による需要予測や、漏水・ガス漏れなどの異常検知に役立てることができます。
この他にも、工場の設備監視、農地の環境モニタリング(温度・湿度)、物流の荷物追跡、自動販売機の在庫管理、高齢者の見守りなど、多岐にわたる分野で活用が始まっています。
5. 終わりに
今回は、IoT社会を支える基盤技術として注目される通信方式「LPWA」について紹介しました。
高速・大容量通信が特徴の「5G」とは異なり、LPWAは「低速・省電力・広域通信」を特長とする、いわば対極のポジションにある技術です。しかし、コスト面や電源制約などの理由でネットワーク接続が困難だったデバイスをインターネットに接続可能にする点で、IoT普及の鍵を握る存在と言えます。
私自身の生活圏では、依然として検針員の方が一軒ずつ巡回する光景も見られ、LPWAを含むスマートメーター等が完全に普及するまでにはまだまだ一定の時間を要するであろうと感じています。一方、街中で自ら関わったタイプのIoT機器を目にしたり、インフラDXに関するニュースに触れたりするたびに、社会インフラのデジタル化に自身の業務が寄与し始めていることを実感し、非常に感慨深く感じています。
LPWAを活用したサービスやソリューションは、徐々ではありますが着実に社会実装が進み、私たちの生活をより便利で効率的なものへと変えつつあります。今後も、この技術を基盤とした新たな価値創出が期待されます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。



