はじめに
前回のアドベントカレンダーでは「ヒューリスティック評価をQAでやってみた」という形で記事にさせていただきました。(記事はこちら)
担当タイトルにて、施策リリース後に不具合は少ないもののUIが使いづらくユーザー評価が下がっていたという課題があり、UIの課題を検知する手法の一つであるヒューリスティック評価をやってみた経験を記事にしました。
やってみた結果UI面での改善指摘ができるようになり、そこまでは良かったのですが、ゲームをより楽しんでいただくための、ゲームの面白さや継続してプレイしていただくためのUX課題が捉えきれていない課題を感じていました。
そしてその課題に対してチャレンジしてみたのが、本記事で取り扱う「プレイアビリティヒューリスティック」となります。
またこちらの内容について、ヒューリスティック評価とプレイアビリティヒューリスティック双方での実践事例をCEDEC2025にて発表もさせていただいております。
気になる方は弊社内の記事(こちら)もご確認いただけると幸いです。
今回の記事は「プレイアビリティヒューリスティック」をメインでご説明できればと思います。
プレイアビリティヒューリスティックとは
プレイアビリティヒューリスティックとは、Hannu Korhonen氏が提唱しているゲームに特化している手法で大きく下記二つを軸に評価します。
| 観点 | 概要 |
|---|---|
| ゲームプレイ | 主にゲームの操作性、情報伝達、およびインターフェースが分かりやすく、快適で効率的に利用できるかを評価 |
| ユーザビリティ | 主にゲーム体験周りの戦略性、目標設定、報酬、バランスといったプレイヤーの体験の質を評価 |
上記を元に担当タイトルに適用できれば、UIだけでなくUX課題に対しても改善提案できると考えました。
評価項目のカスタマイズ
プレイアビリティヒューリスティックの項目をベースにしつつ、弊社でリリース前に実施しているユーザーテストの観点を導入しました。
その観点が運用タイトルに必要な継続やビジネス要素の下記観点となります。
- 面白さ
- 継続度
- 課金意欲
評価の定着化とQAプロセスへの組み込み
QAプロセスへの組み込み
実施スケジュール
実施するタイミングが遅いとせっかく指摘しても改善に充てる時間が開発側で取れずに改善ができなくなってしまいます。なのでQAを開始するタイミングではなく、下記のような改善を洗い出すフェーズに実施するのが重要と考えます。
| 開発フェーズ | おすすめの実施タイミング | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 新規リリース | αやβで実施されるユーザーテスト 開発チーム内プレイ会 |
早期の大きなUX課題の洗い出し |
| 運用タイトル | 開発チーム内プレイ会 | 既存の顧客体験からの逸脱防止 継続率に影響する課題の特定 |
具体的な評価フロー
実施する順番について
チェックリストを用いて評価する順番ですが、おすすめは下記の順です。
1. 同じジャンルの他ゲームも同じチェックリストで評価
2. 実際の調査対象に対する評価
なぜなら、上記の順番で行うことで、市場やジャンル内の競合と同じ観点で評価した結果の比較ができるため、説得力に深みを持たせられる。
また、他競合タイトルではこの項目は「OK」だったが、評価対象のタイトルはこういう理由で「NG」だったを提示できるようになり、「個人の主観」ではなく「市場の成功事例」に基づいた客観性をもった指摘が可能になるからです。
実践ノウハウと工夫
QAを普段実施されている方であれば理解いただけるかと思いますが、チェックリストがあればQAメンバーは比較的実施するのは得意ではないでしょうか。
ですので、比較的普段の業務で慣れているチェックリストという形で用意することが重要と考え、記事内「評価項目のカスタマイズ」で紹介したようなチェックリストとして用意しました。
その上で工夫したポイントをご紹介します。
事例の提示
このチェック項目ではこういう指摘ができるという事例も合わせて提示することで、初めて着手したテスターでも一定指摘ができるようにしました。
例えばチェックリスト上の「ユーザビリティ 継続性」観点「何かを達成した時にグラフィックだけでなく音響表現でもサポートがあるか」というチェックの指摘事例として「プレイヤーランクが上がった際に、演出は再生されるが盛り上がるようなSEが再生されない」と具体例を提示したり、慣れたメンバーが先に実施したチェックリストを共有するといったことを行いました。
継続実施
ヒューリスティック評価と同じメンバーで複数施策を継続的に実施。慣れてくると指摘を行うための勘所がわかってくるため、より短い時間で指摘数が増えるという効果があります。
すり合わせ
開発メンバーに展開する前、実施したメンバー内ですり合わせを行い、観点の共有や指摘意図を確認し、開発に伝える際の説得力を上げるように試みました。また、お互いに観点や指摘事例を共有することで次回以降実施時の指摘率アップを狙いました。
指摘事例
では、実際に「プレイアビリティヒューリスティック」を行って指摘できた事例を紹介させていただきます。
事例1(ユーザビリティ/継続性)
指摘内容:バトル中にキャラやエネミーのアイコン長押しで、選択したキャラまたはエネミーの状態を確認できるようにしてほしい
検証観点:「ユーザビリティ 継続性」観点「バトル中のレイアウトは効率的か、ビジュアル的にもすぐに理解できるか」
結果:バトル中のアイコン長押しで状態確認が行えるように修正が入り、ユーザーの情報不足に対する課題の解決が行われた
事例2(ゲームプレイ/継続性)
指摘内容:特定箇所の報酬がすでにユーザーが複数入手できているアイテムで、意味のあるアイテムになっていない
検証観点:「ゲームプレイ 面白さ/継続性」観点、「プレイヤーが報酬を獲得できる場合、その報酬は意味のあるもの、まったく関連性のないものになっていないか」
結果:ユーザーの体験価値を損なわないよう報酬アイテムの見直しが行われ、報酬設計に調整が入った
いかがでしょうか。
上記の事例からも、普段の仕様と一致しているかどうかの観点だけでは検知できない、そんな課題を指摘できたと考えております。
終わりに
仕様書を元に検証するのも間違いなく大切なのですが、それと合わせて品質を高めるためのアプローチとして、ヒューリスティック評価やプレイアビリティヒューリスティックもいかがでしょうか?
今後についてですが、ゲームのジャンルによって一定確認観点が変わると思っており、各ジャンルに対応したような形での対応ができないか等、改善を検討しております。
QAとしてあらゆる角度で品質を高められるように今後も活動できたらと思います!ご覧いただきありがとうございました!
