##はじめに
Advent Calendarのデータガバナンス・シリーズの第二弾です。
先日の記事「難しい言葉を使わずにデータガバナンスについて語ってみる」の続編として、本記事では、インフォマティカのデータガバナンス・ソリューション Axonの紹介をしたいと思います。
##Informatica Axonとは?
前回の記事で、以下のデータガバナンスの定義をご紹介しました。
データガバナンスとは、企業レベルで、データマネジメントされた(イイ感じの)状態を恒常的に維持していくこと
ここでポイントとなるのは、「企業レベルで」データマネジメントされた状態を恒常的に維持していくこと、です。
「企業レベル」ということは、全ての社員、全ての役割の人が、一緒に取り組むことを意味しています。
そのためには、あらゆる人がデータにまつわる共通の理解を持ち、同じ方向を向いてデータを利活用できることが求められます。
しかし実際、これを実現するのは簡単ではありません。
全社レベルでデータ利活用、データマネジメントを推進していった場合、あらゆる立場の人が、様々な視点の疑問を抱くことになると思います。
この状況において、恒常的に運用継続していくためには、これらの疑問を誰もがセルフサービスですぐに解決できる状態にする必要があります。
そのために、インフォマティカのデータガバナンス・ソリューション Axonは以下の実現を支援します。
1. データの周りの透明性を担保すること
2. 信頼できるデータを確保すること
3. コラボレーションできるようにすること
データの透明性が担保できていない、企業内の誰もがデータにまつわる疑問でいっぱいの状態では、とても企業内統制がきいてるとは言えません。
また、仮にデータにまつわる疑問が解けたとしても、そのデータ品質が低い、どこから入手したものかわからない、といったような信頼性の無いデータであれば、とても企業内の誰もが安心してデータを利活用することなどできません。
更に、データにまつわる疑問を解決する中で何かしらの問題を発見した場合、この問題を解決していくことが必要です。
そのためには、問題解決のためのプロセスに合わせた適切な組織を作り、適切な役割の人をアサインし、それらの人が有機的にコラボレーションできるようにしなければなりません。
従って、Axonはこれら1~3.を実現するための各種機能を提供します。
それらの機能とは具体的にどのようなものなのか、次の章以降で順にご紹介していきたいと思います。
データの周りの透明性を担保する
こちらがAxonのデータにまつわるあらゆる疑問を解決する画面です。
Axonの中にはビジネスとシステムの両方のメタデータが、その関係性と共に格納されています。
このあらゆるメタデータを検索することで、データにまつわる疑問を誰もがセルフサービスで解決することができます。
例えば、「取引先信用リスクレポート」というデータセットがどのような業務で使われているかを知りたければ、そのキーワードで検索し、知りたい情報の格納された業務プロセスのタブを開くだけで確認ができます。
データセットで検索をすると同時に、その検索対象に関連付けられた他のメタデータが絞り込み表示されるため、関連する要素を簡単に調べることができます。
この機能を利用することで、業務プロセスの他にも以下のようなデータにまつわる疑問を解決することができます。
- データのオーナーは誰なのか? >(データセットの検索後に)役割のタブを開く
- データの品質はどういう状態か? > データ品質のタブを開く
- データを使う上で守るべきポリシーは何なのか? > ポリシーのタブを開く
- データに関係しているプロジェクトは何なのか? > プロジェクトのタブを開く
また、Axonが素晴らしいのは、ビジネス・メタデータの各々を単なる文字列情報としてではなく、一つの独立したオブジェクトとそのリレーションで管理している点です。
従って、「取引先信用リスクレポート」に関係する業務プロセス「信用リスク・レポーティング」の詳細を知りたければ、検索結果に表示されるURLリンクをクリックするだけで、その詳細定義画面に遷移し、その内容を把握することができます。
この機能を活用することで、データと関連するビジネスと共に、その利活用ノウハウの共有も実現することが可能です。
またもちろん、システム・メタデータも同様の詳細定義画面に遷移することが可能で、そこではより多くの疑問を解決していくことが可能です。
Axonにはインフォマティカの無数のお客様と共に培ってきたデータガバナンスのベストプラクティスとして、20を超える種類のメタデータを管理するフレームワークが内包されています。
このフレームワークを活用することで、お客様は迅速且つ効果的にデータの周りの透明性を担保することができます。
一般的なデータカタログツールが、システム・メタデータしか管理できない点から、ビジネス・メタデータを管理できるAxonのことを(次章以降の機能がある点も踏まえて)次世代のデータカタログと呼ぶこともあります。
##信頼できるデータを確保すること
続いて、データの信頼性を確保するための機能を紹介します。
信頼性の一つであるデータ品質については、データ品質メトリクスの可視化を実現することができます。
この機能は、インフォマティカの別ソリューション Data Qualityと連携することによって実現しています。
Data Qualityがデータ品質メトリクスをスコアリングすることができるため、そのスコアをAxonに連携し、俯瞰的なダッシュボードやスコア変動のトレンドを管理することができます。
また、データのリネージュも可視化できるため、データの元となったデータソースが何なのか、更にはどこで利用されているのかを把握し、データの信頼性を担保することもできます。
更に、このAxonが凄いのは、リネージュの上に他のメタデータを重ねて表示することができる点です。
例えば、リネージュにデータ品質メトリクスを重ねれば、データパイプラインのどこでデータ品質の問題が発生しているのか、その問題の原因となる箇所を即座に特定し、迅速にデータ品質の問題を解決することができます。
また、Axonに内包されているAIエンジンCLAIREの機能を使うことで、自然言語解析による、データ品質メトリクス取得ロジックの自動生成と適用を行うこともできます。
例えば、Axon内のデータ品質メトリクスの定義に、英語で「Phone number should not be null.」(電話番号はnullではない)と記載するだけで、そこから実際のシステムのnullの有無をスコアリングするロジックを自動生成できます。(この機能は英語のみに対応)
更に、そのデータ品質管理対象とすべき電話番号のデータが、営業管理システム、マーケティングシステム、顧客の購買管理システム、サポートの問合せ管理システムなどの複数システムに存在する場合、同じデータ分類であることを識別し、それらのシステム全てにデータ品質メトリクス取得ロジックを適用することができます。
これらの機能を利用することで、データの信頼性を確保するための膨大な作業ワークロードを極小化することができます。
コラボレーションできるようにする
今までご紹介してきたAxonの2つの機能を使用することで、データの周りの透明性を担保し、信頼性を確保することができます。
更に、もしその過程でデータにまつわる問題を発見した場合、適切なコラボレーションによって解決に導くことができます。
そのために使用するのが、Axonに内包されているワークフロー機能です。
Axonの中では、自由にワークフローを定義することができます。
定義したワークフローは、Axonの中に定義されたデータオーナーやデータスチュワードなどの役割のメタデータを利用して実際に稼働します。
つまり、Axon内の役割というメタデータは、単なるカタログ化された文字情報ではなく、実際のコラボレーションとして利用することになります。
例えば、「取引先信用リスクレポート」というデータセットについて、データ品質に関する問題管理の変更要求を起票し、ワークフローを実行したとします。
すると、この「取引先信用リスクレポート」に定義されたデータスチュワードとデータオーナー本人に実際に通知が届き、彼らが定義されたプロセスに則ってワークフローを回し、解決をしていくことになります。
このワークフロー機能を使用して、各種の事例では以下のようなプロセスを実際に回しています。
- メタデータの更新を依頼するプロセス
- データオーナーのアサイン確認をするプロセス
- データにまつわる何でも相談を受け付けるプロセス
- データのアクセス権限付与を依頼するプロセス
Axonがこれらのプロセスを実現することで、恒常的なデータマネジメントや利活用を可能にする、データ組織と役割を企業のガバナンス機能として組み込むことができます。
##(おまけ)攻めのデータ利活用と守りのデータ保護を両立し、データ利活用文化を醸成する
今までご紹介した機能がAxonの基本機能になりますが、それ以外にも便利な機能が多数あります。
この章では、その一端であるデータマーケットプレイスについてご紹介します。
Axonのデータマーケットプレイス機能では、企業全体として信頼できると判断したデータのみをショップに公開し、LOBなどに所属するデータ利活用ユーザーに提供することができます。
データ利活用ユーザーは、Amazonのような感覚でそのショップにおいて、データの定義や品質はもちろんのこと、データの評価レーティングとその口コミ、Q&Aによる簡易なコミュニケーション、データ利用上で守るべきポリシーなどの情報をデータ利活用前に知ることができます。
更に、そのデータを使いたいと思ったら、買い物かごに入れて購入する感覚で、データ利活用の目的を入力してデータの利用申請をあげることができます。
そこからはデータオーナーを巻き込んだデータアクセス権限管理のワークフローが実行され、データオーナーとテクニカルオーナーを巻き込んだ利用申請のレビュー、そしてアクセス権限付与のオペレーションが行われます。
このプロセスを経ることによって、データの買い物履歴が証跡として残ることになります。
これにより企業は、誰が、いつ、何の目的で、どのデータを、利活用しているかの把握が可能となり、データの保護を強力に実現することができます。
以上によりAxonは、信頼性の高いデータを簡単に見つけることができる攻めのデータ利活用と、それと同時に守るべきポリシーや厳格なアクセス権限管理を実現できる守りのデータ保護、更にはデータ品質を常に把握することで生まれるデータ管理の重要性、それらを全て融合した世界を実現することができます。
##まとめ
以上、Informatica Axonが誘うデータガバナンスの世界、楽しんでいただけましたでしょうか。
データガバナンスの世界は、各企業が抱える課題や実現すべき要件によって、答えが一つではない世界とも言えます。
そのため、今回ご紹介した機能とその使い方の説明は、あくまでその世界観の一端に過ぎません。
しかしながら、その実態が掴みにくいデータガバナンスの世界において、本記事が今後皆さまがデータガバナンスの一歩を踏み出す一助になれば幸いです。