この記事は インフォマティカ Advent Calendar 2024 の記事として書かれています。
はじめに
データマネジメントのエバンジェリストをやっているもりたくです。
本日は、昨年に引き続き、私が2024年に登壇またはプロデュースした講演内容の振り返りを行い、そこから今年のデータマネジメント・トレンドを読み解き解説してみたいと思います。
この記事に向いている人は、「2024年にホットだったデータマネジメントのテーマは何なのか」を知ることで、「2024年以降に自分たちが何に注力して推進していくか」を考えるヒントが得られたら嬉しい! と思っている人になります。
登壇したイベント一覧
2024年に私が登壇またはプロデュースしたデータマネジメント関連のイベント10選は以下になります。
実際はこれらの他に多くのパートナー企業のイベントで登壇させていただきましたが、特徴的なものを選択してみました。
No | 時期 | イベント名 | 主催者 |
---|---|---|---|
1 | 2月 | Digital Foresight | 日経 |
2 | 2月 | 日本国際金融システムフォーラム | 日経 |
3 | 3月 | データマネジメント2024 | JDMC |
4 | 5月 | Snowflakeデタマネ勉強会 | Snowflake |
5 | 6月 | 製薬DXオンラインセミナー | ITメディア |
6 | 7月 | トヨタ紡織様事例から学ぶ、DXの第一歩 | SCSK |
7 | 8月 | FDUA(金融データ活用推進協会)勉強会 | FDUA |
8 | 9月 | Informatica World Tour in Tokyo | Informatica |
9 | 10月 | CTC Forum 2023 | CTC |
10 | 11月 | データ活用実践フォーラム | 日経 |
以下、各イベントの講演タイトルと共にそのセッション概要をクイックに紹介してきたいと思います。
1. 企業のDXを加速させるうえで不可欠なデータ連携・統合基盤構築の勘所とは〜
日経主催のDigital Foresightで、ALSIさんと共に登壇させていただいた対談形式の講演となります。対談形式の講演は一人の登壇と異なり、対話の中で生まれる予期せぬ化学反応、アドリブが私は好きだったりします。
ここで私はデタマネのしくじり先生をやりました。
テーマの一つはデータ品質とMDM(マスタデータ管理)です。というのも、近年の大きなトレンドとして、データ品質に注目してMDMに取り組む企業が増えているからです。
しかし、データ品質しくじりあるあるとして、「自社のデータは汚れていない」と勘違いしている経営陣は多いです。過去多くのIT投資をしてきているので、その中で当然開発品質、データ品質も担保されていると思い込んでいるのです。
実態は異なり、経営陣と現場の感覚にギャップが有るケースが多いです。現場のメンバーは、過去個別システム最適ではデータ品質をケアしていますが、システムや事業部横断の全体最適の視点では対策をしてきていません。それをいかに経営陣に納得させ、そこに投資させるかで四苦八苦することになります。
そこで経営陣を巻き込んで納得させるため、3つの視座で経営陣を納得させたお客様の事例を紹介させていただきました。
MDMって大きな投資になる一方、その価値が見えにくい取り組みです。そのため、その価値を経営陣にどのように納得させるのか、そこに何年も苦闘している人たちは多いです。そのお悩みあるあると打開するアプローチ、この両方を紹介しました。
2. 金融改革の必要条件、なぜ今ビジネスに最適化したデータが必要なのか?
今年は金融などのインダストリー特化イベントに登壇することも多かったです。各インダストリーでデータに関する注目が年々強まっているから、とも言えるかもしれません。
冒頭では金融のデータトレンドとしてTop 5 Financial Services Data Trends That Will Define the Futureを紹介させていただきました。
規制やセキュリティの厳しい金融業界でもデータ活用を狙ったクラウド推進が進んでいる。しかし、その取り組みを阻害する要因として、多様なデータマネジメントの課題に悩む組織が多い。
更に、その課題解決策となるデータマネジメントの取り組みを推進する上で、投資対効果の証明に悩んでいる。
金融業界に限らずデータマネジメントの投資対効果を示すのは難しいです。そこで多くのお客様がやっているのが他社事例を引用し、自社でもこれだけの価値が将来見込めると試算するやり方です。そのため、このイベントでは3つの金融事例を紹介しながら、そのアプローチ方法と期待効果を紹介させてもらいました。
3. なぜ先進企業は生成AIと共にデータマネジメントの再構築を急ぐのか 〜国内外の先進事例から読み解くグローバル標準〜
続いては、毎年最も力を入れている講演、JDMCのデータマネジメント2024の講演内容の紹介です。この講演内容は評判が良かったため、実は今年行ったその他の講演でも少しアレンジしながら話をさせていただくことが多かったです。
特にCTC Forumの最も遅い講演枠でお話しした時、聴講者から「疲れてたから聞かずに帰ろうか悩んだけど、イベント最後に最も面白い話、欲しかった話を聞くことができて良かった」とフィードバックもらえたのは嬉しかったですね。
内容としては、昨年のInformatica Worldにおける80以上のデータマネジメント事例から読み解いた最新グローバルトレンドを紹介しています。
データエンジニアリングについては、継ぎ接ぎで開発運用してきたデータパイプライン環境の複雑化、技術的負債化に悩み、データ連携基盤を再構築するケースが多い話を紹介しています。
結局データ連携って一言でいっても、データ種類、データ量、レイテンシーなどの要件によって最適な連携方法は異なるため、それを個別ツールで実装していくと運用が大変なことになります。そんな最近のあるある課題と解決アプローチを紹介しています。
MDMについては、多種の要因による第二次ブームの到来を紹介し、昔MDMプロジェクトに失敗した企業も成功している企業でも、今の技術に最適化したMDM基盤へ再構築するケースが増えている話を紹介しています。
データガバナンスについては、生成AIのトレンドに推されて注目が集まっていること、更にその中心にあったデータカタログの進化について触れました。もはやメタデータは特定のデータマネジメントの分野でのみ取り扱われるものではなく、あらゆるデータマネジメントで取り扱われる時代へと変わってきています。
データプラットフォームについては、データエンジニアリングと似ています。各データマネジメントの取り組みに勤しんだ結果、各テーマのツールが乱立する世界になり、この統合に苦しむケースが多くなっています。
これらの課題はグローバルだけでなく日本でも最近増えてきているため、聞いた人にはあるある話に聞こえるみたいですね。
4. データメッシュの魅力:原則から拓く新たな道
Snowflakeのデタマネ会でWhat is ”DataMesh”…?データメッシュについて語る会があり、そこにご招待いただき登壇もさせてもらいました。この動画は多様なスピーカーがそれぞれの視点でデータメッシュについて語っているため、ぜひ情報収集している方は見てもらうことお薦めします。
私からは、データメッシュはコンセプトが素敵だが実践が難しいと言われる昨今、「データメッシュの4つの原則を分解して個別のベストプラクティスとして扱うのはどうか」という提案をさせてもらいました。
例えば、Data as a Product、プロダクトとしてのデータ管理をしたい場合、ベストプラクティスとしてデータマーケットプレイスを実装していくことで、自然とこのコンセプトに沿った管理が推進できたりします。
ソリューションにそのプラクティスが埋め込まれているため、細かなことを考えずとも、そのソリューションのフレームワークに沿うだけで実践できるというわけです。
この発想はその他の原則についても同じで、各社にあったデータメッシュの適用方法があってもよい、実際そのように実践して成功している事例をよく見る、そんなお話も紹介させてもらいました。
5. なぜ製薬DXにビジネスに最適化されたデータが必要なのか? -国内外の先進事例から読み解く変革の必要条件-
これは金融でやったお話の製薬バージョンですね。実は海外に目を向けてみると、最もデータ&AI活用が進んでいるインダストリーは製薬、ライフサイエンス業界だったりします。
そこで製薬におけるデータ&AIの活用事例を5つ、ビジネスユースケースとして紹介しました。製薬業界には多くの事例がありますが、それらを大別するとこれら5つのユースケースに分類できる気がしています。
医療機関と患者を繋ぐペイシェント・ジャーニーをデータでサポートする話もありますし、
製薬ライフサイクルを横断する製品データの標準化、IDMPデータ標準をMDMで実現する話などを紹介しました。
その他、合併や買収の多いインダストリーでもあるため、それを支えるデータマネジメントの価値、なども注目は集まっています。
このデータマネジメントの波は日本の製薬業界にも広がりつつあるため、最新のデータ&AIの取り組みを知りたければ、製薬業界の事例を聞くのも一つお薦めといえます。
6. クラウド時代の金融革新:SMBCの欧米成功事例と日本への示唆
一般社団法人金融データ活用推進協会、FDUAの勉強会ではインフォマティカの金融の最新事例として、欧米のSMBC様の事例を紹介させていただきました。これはこちらのYoutubeから詳細が見れますので、ご興味ある方はぜひご参照ください。
SMBC EMEAに所属するCarl Foxさんが、日本の金融業界でもクラウド化、顧客データのMDMの取り組みが広がって欲しい、と熱い思いをもって登壇してくれた内容になっています。顧客データをクラウド上で管理して大丈夫なのか、という不安に対するメッセージになっているため、ぜひ日本の金融業界にもこの波が伝搬してくれると嬉しいです。
なお、公開事例になっていないものが多いのですが、業種業界問わず、海外では確実に顧客データのMDMの取り組みが必須化していきている印象です。
7. ビジネスに革新をもたらす生成AIとモダン・データマネジメント
最後に、弊社の日本最大のイベントであるInformatia World Tour Tokyoで話した内容をご紹介します。
データマネジメントのトレンドの中心は、確実に生成AIのサポートへとうつってきているため、その最新トレンドをなるべくわかりやすく伝えるように工夫してみました。
今や誰でも使える生成AI、それを企業の中で革新に繋げるためには、企業データとの融合の成否こそが重要です。(これは当たり前ですね)
そのために、今あらゆる企業が企業データを生成AIの学習または検索に使わせることに四苦八苦している話をしています。(これも当たり前ですね)
そんな生成AIの取り組みに必要なモダン・データマネジメントとは何なのか。それは従来のデータマネジメントを否定するものではなく、継続しなければならないものです。データエンジニアリング、データガバナンス、データ品質&MDM、その全ては継続してやる必要があります。
しかし、取り扱わなければならないデータの量と種類、更にAIを活用するユーザーやユースケースの量と種類、それらが与えるビジネスインパクト、これらは従来よりも遥かに大きなものとなり、この規模の拡大とスケールに我々は対処しなければなりません。
そのために、今後データマネジメントは進化しなければならない、これらの要素をサポートできるようにならなければならないことをメッセージしました。
その進化の一例として、インフォマティカはノーコードのETL/ELTで、ChunkingやEmbeddingsの処理に対応してVector DBの生成をサポートするよう進化していますし、
ノーコードのAPI開発で、生成AIのRAGアプリケーション開発もサポートするよう進化しています。
(注意: こちらの画面イメージは実際の製品の画面イメージとは異なる可能性があります)
このようなノーコードの生成AIアプリケーション開発、それに関連する非構造化データも含むデータマネジメントを支える世界観が2025年以降の中心にやってくる、そんな未来を紹介して私の講演は幕を閉じました。
まとめ
以上、2024年に私が登壇またはプロデュースしたデータマネジメント関連のイベントになります。
振り返ってみると、生成AIのデータマネジメント、という新しい世界の話もありながら、従来型のデータマネジメントを再構築しながらやり続けることの重要性をメッセージし続けた1年であったと思います。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本記事が、データマネジメントを推進する人たちにとって、少しでも参考になっていれば幸いです。
なお、各講演の詳細を知りたい! ともし関心を持っていただいた方がいましたら、Twitterのもりたくまでご連絡ください。