この記事は Optimind Advent Calendar 2023 の7日目の記事となります。
はじめに
最近、読解力低下を憂えるSNS発信を見かける。受け手の読解力が炎上原因とする主張も散見する。
読解力向上を扱う書籍も多く出版されている印象だ。
説明したのに理解してもらえない、説明されたが理解できない、いずれの場合も発受信の双方が不幸になる。
そうならないためには、発信者による「説明力」と受信者の「読解力」双方の工夫とバランスが必要である。
長い歴史を重ねたきただけあり日本語は機能豊富だ。しかし複雑で分かりにくい。そのためスキルや経験による活用の濃淡がある。
一方、たかだか60年かそこらの歴史しかないインターネットプロトコルはすこぶる効率的でシンプルだ。
この2つを同じフィールドで比較して考えるのは愚の骨頂だ。
だって、スノーボード履いてサッカーなんてしないだろう。
でも、並べてわかることもある。
「伝える」と「伝わる」
相手に何かを「伝える」ことは簡単でも、それが「伝わる」となると難しいと感じることがよくある。
- 「伝える」:情報発信者は受信者に伝わっているかどうかわからない。
- 「伝わる」:情報受信者は伝わったことを情報発信者に伝えることができる
インターネットプロトコルに置き換えると少し面白い (細かい話はおいておいて)
- 「伝える」:UDP
- 「伝わる」:TCP
TCPはパケットが到着したことを受け手が報告する。あぁ伝わったなとなるのである。
一方、UDPは受け手にお構いなくパケットを送り付ける。
UDPが意地悪というわけでない。動画や電話のようにリアルタイムでデータを届ける場合はいちいち受け手の連絡を待っていたのではブツ切れになってしまう。
(出典:https://qiita.com/daitasu/items/ae21b16361eb9f65ed43)
TCP/UDPはシンプルでいい。世の中の会話はもうこれでいいのではないか。
それに比べて日本語は難解で煩雑。尊敬語、謙譲語、丁寧語、敬語だけでも3つある。なくせばコミュニケーションコストも下がる。
と思うのは心得違いである。
日本語の妙と難解
どうやら日本語は不思議で奥ゆかしく妙であるらしい。
先日、外山滋比古氏の「国語は好きですか」という名著に出会った。
コミュニケーションツールとしての日本語の興味深い点をいくつか発見できたのは収穫であった。
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1人称(I)や2人称(you)が多彩
- わたし、ぼく、おれ、わがはい、小生 いろいろある
- きみ、あなた、貴様 いろいろある
- 西日本だけかもしれないが、相手をさして「自分」といったり。もう意味不明だ
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2人称が多彩にもかかわらず、へりくだった敬称のボカシ表現がある
- 「殿」はその人の住居をさす、「様」はもやったとした様(さま)をさすとして失礼のないようボカシしているのだそう
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にもかかわらず、失礼のないよう主語を省く
- 「わたしが食べます」ではなく「いただきます」
- 「あなたが来ませんか?」ではなく「いらっしゃいませんか?」
Slackの使い初めで「@名前」は失礼かなと思ったり、慣れてきても「@名前 さん」としていた方も少なくないのではないか。
日本語にはインターネットプロトコルにはない相手を思いやる機能がある。
自らをへりくだって相手を立てるコトバをコミュニケーションのヘッダに載せる。言うなれば人間関係の潤滑油付きの意思疎通ツールだ。
素晴らしいコミュニケーションツールである。ただうまく使う必要はある。
ここ数年のAIに発達をみれば日本語なんて簡単 なのかもしれない。
でもAIに言われてもねと思うのは世代格差か歳のせいか。
いや、もしもそれができるAIなら、ブレードランナーの世界を味わえるかもと期待。
京都ことば
笑い話になっていたりする場合もあるのでご存じの方も多いと思う。
身内に京都人がいることもあり、ネタとしてからかったりもする。
- 商談が長引いたときなど「いい時計してますね」は「早く帰ってくれませんか」
- 屋外でのご近所同士で「お嬢さんのピアノとても上手ですね」は「ピアノがうるさくて迷惑」
相手に恥をかかすことなく、もやっと意思を伝える。
この要素は日本語コミュニケーションツールの特徴の1つであり、それは共通語としての日本語も同様である。
しかし、相手に通じなければプロトコル崩壊である。明確なエラーコードが出てこないばかりか、予期しない悲しい結果をもたらすこともある。
発信側は受信側の読解力を見極め、説明を工夫する必要があるのだ。ここは発信側の腕の見せ所とも言えるだろう。
なんだかネットワークエンジニアからは多くのツッコミが入りそうだが、本意を汲んでいただき何卒ご容赦願いたい。
拙筆を最後まで読んでいただき感謝申し上げる。
では、この辺りでTCP FINとさせていただきたく。