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はじめに

「動いているだけのシステム」を脱却し、ビジネスに貢献する新たな価値を生むために、レガシーシステムの刷新に挑むエンジニアやプロジェクトチームは少なくありません。しかし、その道のりは簡単ではなく、多くの課題と向き合う必要があります。

私が実際にレガシーシステムを保守・刷新する中で得られた知見やノウハウ、そして直面した苦労話とその解決策を具体的に共有します。同じ課題に直面している方々の参考になれば幸いです。

保守・刷新で得られた知見

1. 現状を正確に把握することが最優先

レガシーシステムでは、まず「全体像を把握する」ことが不可欠です。私が取り組んだプロジェクトでは、以下のステップを踏みました。

  • 現行システムのドキュメント化: 既存の資料がないことがほとんどなので、このタイミングでできるだけ資料を作成します。ただし、納期が決まっている場合が多いため、どの資料を作成するかの優先順位を明確にすることが重要です。
  • 担当者ヒアリング: 過去の運用経験者やベテランエンジニアから、システムの「暗黙知」を吸収。
  • 影響範囲の洗い出し: 変更が他システムやビジネスに与える影響を調査。これが意外と難しく、影響確認漏れが発生することを前提に進める必要があります。

2. 小さく試して大きく動かす

刷新時には、大規模なリプレイスではなく段階的な改善を意識しました。

  • モジュール単位での置き換え: レガシーと新システムの共存期間を設け、徐々に新システムへ移行。一度のリプレイスは大規模システムでは難しいため、フロントエンド、バックエンド、ツールなど、モジュールを明確に分けて進めることが重要です。
  • カナリアリリースの活用: 特定のユーザーグループに限定したリリースでリスクを低減。私のプロジェクトでは実施できていませんが、もし可能であれば、不具合発生時の影響を抑える有効な手段となります。
  • CI/CD導入: テストの自動化を進めてリリース頻度を上げる。

3. チームのモチベーションを高める

レガシーシステムの保守や刷新は、特に若手エンジニアにとって魅力的に映らない場合があります。この課題に対して、以下のような取り組みを行いました。

  • プロジェクトの意義を共有: レガシー刷新の意義を明確にし、全員で共通の目標を持つようにしました。「ユーザーにとっての利便性向上」や「技術的負債の解消」など、チーム全体にとってプラスになる目標を設定しました。
  • 成功体験を積む環境の提供: 小さな改善で成果を出し、チーム全体で共有することでモチベーションを維持しました。
  • リーダーシップの発揮: メンバー個々の特性を理解し、それぞれの役割に応じた挑戦的な課題を提供するよう意識しました。

苦労話とその解決策

苦労話1: 仕様がわからない

過去のプロジェクトでは、仕様書が存在せず、さらに既存の仕様書が古く、最新の情報が全く反映されていないことが多々ありました。

解決策:

  • 実行ログの分析やコードの分割実験を通じて仕様を推測。
  • どのシステムにもレジェンド(長年の経験を持つキーパーソン)が存在するので、早めにその人物を特定し、協力を仰ぐことが非常に重要です。

苦労話2: 新旧システムの統合

刷新の過程で、レガシーシステムと新システムを並行稼働させる必要がありました。

解決策:

  • 移行チームと旧システムビジネス案件遂行チームで組織分け: 新システムへの移行を担当するチームと、旧システムのビジネス案件を継続するチームを分けることで、それぞれの効率を高めました。
  • ビジネス案件で対応した機能も移行時に吸収: 並行作業の中で、旧システムで追加された機能を計画的に新システムに組み込む運用を実施。

苦労話3: チームの抵抗感

特に若手エンジニアにとって、移行プロジェクトはあまりモチベーションが上がる内容ではないことが多いです。

解決策:

  • 若手にはビジネス案件を中心に担当: 直接的に価値を感じやすいビジネス案件を若手エンジニアに担当してもらい、プロジェクトへの関与を促進しました。
  • 進捗共有を頻繁に実施: チーム全体での透明性を高め、成功事例を共有することで、プロジェクトに対する心理的な抵抗を減らしました。

今後の展望

レガシーシステムの刷新は終わりではなく、持続的な改善プロセスの一部です。新システムもいずれレガシー化する可能性があるため、メンテナンスしやすい設計やドキュメントの整備を今後も継続する必要があります。

まとめ

「動いているだけ」のシステムから脱却するには、多くの課題と向き合う必要がありますが、その過程で得られる知見や成長は計り知れません。小さな成功体験を積み重ね、チーム全体で共有することで、刷新の壁を乗り越えることが可能です。本記事が、同様の課題に取り組むエンジニアやプロジェクトチームの一助となれば幸いです。

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