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Day 6

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@mnishiguchi(Masatoshi Nishiguchi)in株式会社ハウインターナショナル

Tapyrus ブロックチェーンに挑戦: UTXO を使って送金してみる

Last updated at Posted at 2025-07-01

はじめに

「ブロックチェーン技術を学びたい」と思いながらも、なかなか行動に移せずにいました。
ローカル環境で Tapyrus ブロックチェーンを触ってみることで、「ブロックチェーンとは何か？」を体験しながら学んでいきます。

これまでの記事では、Tapyrus ブロックチェーンのローカル環境構築から、RPC を使った基本操作、そしてブロック生成までを試してきました。

本記事では、既に得たコインベース報酬（UTXO）を使って、別アドレスに TPC を送金することに挑戦します。

これまでの記事

Tapyrus とは

Tapyrus は Bitcoin をベースにしたオープンソースのブロックチェーンプラットフォームで、日本の企業 Chaintope によって開発されています。企業や自治体での実用を想定した設計が特徴です。

手元の環境

今回の動作確認は以下のローカル環境で行いました：

  • OS：LMDE 6（Linux Mint Debian Edition）
  • Docker：28.2.2
  • Docker Compose：v2.36.2
  • シェル：bash
  • その他：インターネット接続（イメージ取得のため）

※ Docker 環境があれば、macOS や WSL2 でも同様に動くはずです。

手順概要

今回の流れは以下の通りです：

  1. コインベース報酬を mature（使用可能状態）にする
  2. 送金先アドレスを生成
  3. sendtoaddress コマンドで送金
  4. 確認用ブロックを生成し、送金トランザクションをブロックに取り込む
  5. UTXO 状態の変化を確認

ノードとクライアント起動

以下は、以前の記事 で作成した Docker Compose 環境がすでに存在している前提です。

ターミナル
docker compose up -d tapyrusd
docker compose run --rm tapyrus-client

これで Tapyrus ノードがバックグラウンドで起動し、Ruby クライアント（IRB セッション）が開始されます。

コインベース報酬の成熟（ブロック生成）

Tapyrus の dev モード（dev=1）では、コインベース報酬は 1 ブロックの確認 で spendable（使用可能）になります。
まずは 1 ブロックを生成して報酬を使用可能にしましょう。

報酬受取用アドレスの生成とアグリゲート秘密鍵のインポート

まず、コインベース報酬の送り先となるアドレスを新規に生成します。

IRB
addr_mine = $client.getnewaddress

次に、Tapyrus dev モードで必要となる アグリゲート秘密鍵 をインポートします。

IRB
agg_wif = "cUJN5RVzYWFoeY8rUztd47jzXCu1p57Ay8V7pqCzsBD3PEXN7Dd4"
$client.importprivkey(agg_wif, "dev_aggkey", false)
  • 第1引数：インポートする秘密鍵（WIF 形式）
  • 第2引数：任意のラベル名（ここでは "dev_aggkey"）
  • 第3引数：false を指定するとウォレットの再スキャンをスキップ（処理が高速化されます）

ブロックを生成

これで準備が整ったので、ブロックを生成します。

IRB
$client.generatetoaddress(1, addr_mine, agg_wif)
  • 第1引数：生成するブロック数（今回は 1）
  • 第2引数：コインベース報酬の送り先アドレス
  • 第3引数：署名に使用するアグリゲート秘密鍵

これで、50 TPC のコインベース報酬が 1 確認済み で使える状態（confirmations=1, spendable=true ）になります。

UTXO 状態の確認

以下のコマンドで、現在の UTXO 一覧を確認してみます。

IRB
$client.listunspent.find { |u| u["confirmations"] == 1 }
出力例
{"txid" => "09e260b9d1e5afe0a252e7cf1205c4c13a6278357d656f8258aeeda8d27b4a52",
 "vout" => 0,
 "address" => "mqopVBKSY2TkXoJx3kdPbHPrChsXDvCCUB",
 "token" => "TPC",
 "amount" => "50.0",
 "label" => "",
 "scriptPubKey" => "76a91470e1cfad1d447569775a700dcd14acf6e69bbd0e88ac",
 "confirmations" => 1,
 "spendable" => true,
 "solvable" => true,
 "safe" => true}

送金先アドレスの生成

次に、送金先となる新しいアドレスをウォレット内で作成します。

IRB
addr_recv = $client.getnewaddress

このコマンドにより、ウォレットが新しい受取用アドレスを 1 つ生成し、文字列として返してくれます。

今回はこのアドレス(addr_recv)を送金先とし、先ほど生成したコインベース UTXO をここに送ります。

dev モードでは、すべてのアドレスはローカルウォレット内で管理されています。外部ノードや外部ウォレットが存在しないため、「同一ノード内での自己送金」という形になります。

UTXO を使って送金

準備が整ったので、実際に UTXO を使って 10 TPC を先ほど生成したアドレスに送金してみます。

Tapyrus Core では、ウォレット内の未使用 UTXO から送金額と手数料分を消費して、新しいトランザクションが作成されます。

以下のコマンドで、指定したアドレスに 10 TPC を送ります。

IRB
txid = $client.sendtoaddress(addr_recv, 10.0)
  • 第1引数：送信先アドレス
  • 第2引数：送金額（単位は TPC）

戻り値は、作成されたトランザクションの txid（トランザクション ID） です。

手数料について

特に設定しない場合、dev モードでは非常に小さい固定手数料（例：0.000045 TPC） が自動で適用されます。

ウォレット残高が少ない場合でも、通常はこのままで問題なく送金が完了します。

トランザクション情報を確認

送金直後のトランザクション状態は、以下のように確認できます。

IRB
info = $client.gettransaction(txid)
出力例
{"confirmations" => 0,
 "trusted" => true,
 "txid" => "e9da62fb5200ace43f9ae1f70da082120b6c8d28dc7128f6ae660e56431dd8d4",
 "walletconflicts" => [],
 "time" => 1751372216,
 "timereceived" => 1751372216,
 "bip125-replaceable" => "no",
 "details" =>
  [{"address" => "mrgEDw3W3Ht75yF3Gdmp3G3CtxrSXs6Ukn",
    "category" => "send",
    "token" => "TPC",
    "amount" => "-10.0",
    "label" => "",
    "vout" => 0,
    "fee" => "-4.5e-05",
    "abandoned" => false},
   {"address" => "mrgEDw3W3Ht75yF3Gdmp3G3CtxrSXs6Ukn",
    "category" => "receive",
    "token" => "TPC",
    "amount" => "10.0",
    "label" => "",
    "vout" => 0}],
 "hex" =>
  "0100000001524a7bd2a8edae58826f657d3578623ac1c40512cfe752a2e0afe5d1b960e209000000006a473044022013e7bba19a3242c2ef2e213af417de62299e40c748f075d11b028b6396566a820220068a56995ee8a2574db80ce5c5c7d03c57b86c2990a4e489b8b9b82873bc2c99012103b0499b7a7bb348b227cd5b10eea7b5174884c6cea27ab99847b92ed3af32362efeffffff0200ca9a3b000000001976a9147a6a6c91069323f3f32e2fb6763dd47d995b24f388ac6c166bee000000001976a914dc6eda65c811bb975bde6462f8b63270a8c8694888ac00000000"}
  • confirmations: 現在の確認数（送金直後は 0）
  • details： 各アドレスごとの出入金情報
  • hex: 生のトランザクションデータ（hex）

送金直後は未承認（confirmations = 0）です。

IRB
info["confirmations"]
#=> 0
IRB
sent = info["details"].find { |d| d["category"] == "send" }["amount"]
#=> "-10.0"

fee  = info["details"].find { |d| d["category"] == "send" }["fee"]
#=> "-4.5e-05"

recv = info["details"].find { |d| d["category"] == "receive" }["amount"]
#=> "10.0"

確認用ブロックを 1 つ生成

先ほど送信したトランザクションは、現在 mempool（未承認トランザクションプール） に入っている状態です。
これをブロックに取り込み、confirmation = 1 の状態にするためには、新たに 1 ブロックを生成する必要があります。

IRB
$client.generatetoaddress(1, addr_mine, agg_wif)

このコマンドにより、未承認だったトランザクションが新しいブロックに取り込まれ、正式に承認（confirmation = 1） されます。

トランザクションの確認数を再チェックしてみます。

IRB
$client.gettransaction(txid).fetch("confirmations")
#=> 1

confirmations が 1 に増えていれば成功です。

これで、送金トランザクションがブロックチェーンに記録されたことが確認できました。

UTXO 状態の変化を確認

最後に、今回の送金によってウォレット内の UTXO がどのように変化したかを確認します。

送金前には「50 TPC のコインベース UTXO」が 1 つだけ存在していましたが、送金後は以下のように変化しているはずです。

  • 送金先アドレス（addr_recv）宛: 10 TPC の新しい UTXO
  • お釣りアドレス： 約 39.9999 TPC のお釣りUTXO（ウォレット内で自動生成）

入出力詳細を確認

IRB
$client.gettransaction(txid).fetch("details")
出力例
[{"address" => "mrgEDw3W3Ht75yF3Gdmp3G3CtxrSXs6Ukn",
  "category" => "send",
  "token" => "TPC",
  "amount" => "-10.0",
  "label" => "",
  "vout" => 0,
  "fee" => "-4.5e-05",
  "abandoned" => false},
 {"address" => "mrgEDw3W3Ht75yF3Gdmp3G3CtxrSXs6Ukn",
  "category" => "receive",
  "token" => "TPC",
  "amount" => "10.0",
  "label" => "",
  "vout" => 0}]

全体の UTXO 一覧を確認

まずは、現在ウォレット内に存在する全 UTXO を確認します。

IRB
$client.listunspent
出力例
[{"txid" => "fca123725a5cb57d11d415a9b9095b91ad3ac5687a4a0e3fb1a4ea660133220c",
  "vout" => 0,
  "address" => "mncZjvY8bw7GT9VVDs6KC1jomezPV2q9xC",
  "token" => "TPC",
  "amount" => "10.0",
  "label" => "",
  "scriptPubKey" => "76a9144dd88c95444cef495d832b6a38075081dc33912388ac",
  "confirmations" => 1,
  "spendable" => true,
  "solvable" => true,
  "safe" => true},
 {"txid" => "fca123725a5cb57d11d415a9b9095b91ad3ac5687a4a0e3fb1a4ea660133220c",
  "vout" => 1,
  "address" => "n3JX9XtYiWGQFHTvVCcpAMWu6fMypU575R",
  "token" => "TPC",
  "amount" => "39.999955",
  "scriptPubKey" => "76a914eef8c8bc1bdd90c64af786d5028adc44a9c530b988ac",
  "confirmations" => 1,
  "spendable" => true,
  "solvable" => true,
  "safe" => true},
 {"txid" => "c61da3212313bb612deb8ff7f365cac8823cad1b9eb5825c30fba2acd394b126",
  "vout" => 0,
  "address" => "mvASke4rE4zrfne3NGE8LoUFSCrpv58UJD",
  "token" => "TPC",
  "amount" => "50.000045",
  "label" => "",
  "scriptPubKey" => "76a914a0a8e84c693edfce761d2d8722ee344392a5306f88ac",
  "confirmations" => 1,
  "spendable" => true,
  "solvable" => true,
  "safe" => true}]

この中で、以下が確認できるはずです：

  • 送金先アドレス（addr_recv）宛の 10 TPC の新規 UTXO
  • ウォレット内で自動生成された change アドレス宛の 約 39.9999 TPC のお釣り UTXO
  • 未使用の他の UTXO（もしウォレットに他の残高があれば）

今回は同一ウォレット内で「自己送金」しているため、
送金先アドレスもお釣りアドレスも、どちらも自分のウォレットの UTXO として一覧に出てきます。

送金先アドレス側の UTXO

次に、送金先アドレス（addr_recv）で新たに受け取った 10 TPC の UTXO を確認します。

IRB
$client.listunspent.select { |u| u["address"] == addr_recv }
出力例
[{"txid" => "e9da62fb5200ace43f9ae1f70da082120b6c8d28dc7128f6ae660e56431dd8d4",
  "vout" => 0,
  "address" => "mrgEDw3W3Ht75yF3Gdmp3G3CtxrSXs6Ukn",
  "token" => "TPC",
  "amount" => "10.0",
  "label" => "",
  "scriptPubKey" => "76a9147a6a6c91069323f3f32e2fb6763dd47d995b24f388ac",
  "confirmations" => 1,
  "spendable" => true,
  "solvable" => true,
  "safe" => true}]

10 TPC の UTXO が新たに生成されているはずです。

トランザクションの構造確認

もしトランザクションの中身（入出力詳細）を確認したい場合は、以下のように生トランザクションをデコードできます。

IRB
raw = $client.getrawtransaction(txid)
$client.decoderawtransaction(raw)
出力例
{"txid" => "e9da62fb5200ace43f9ae1f70da082120b6c8d28dc7128f6ae660e56431dd8d4",
 "hash" => "948aec037bb3036b090a02e0601dbf140051328f1f3aefd4e98a5d483b3f924f",
 "features" => 1,
 "size" => 225,
 "locktime" => 0,
 "vin" =>
  [{"txid" => "09e260b9d1e5afe0a252e7cf1205c4c13a6278357d656f8258aeeda8d27b4a52",
    "vout" => 0,
    "scriptSig" =>
     {"asm" =>
       "3044022013e7bba19a3242c2ef2e213af417de62299e40c748f075d11b028b6396566a820220068a56995ee8a2574db80ce5c5c7d03c57b86c2990a4e489b8b9b82873bc2c99[ALL] 03b0499b7a7bb348b227cd5b10eea7b5174884c6cea27ab99847b92ed3af32362e",
      "hex" =>
       "473044022013e7bba19a3242c2ef2e213af417de62299e40c748f075d11b028b6396566a820220068a56995ee8a2574db80ce5c5c7d03c57b86c2990a4e489b8b9b82873bc2c99012103b0499b7a7bb348b227cd5b10eea7b5174884c6cea27ab99847b92ed3af32362e"},
    "sequence" => 4294967294}],
 "vout" =>
  [{"token" => "TPC",
    "value" => "10.0",
    "n" => 0,
    "scriptPubKey" =>
     {"asm" =>
       "OP_DUP OP_HASH160 7a6a6c91069323f3f32e2fb6763dd47d995b24f3 OP_EQUALVERIFY OP_CHECKSIG",
      "hex" => "76a9147a6a6c91069323f3f32e2fb6763dd47d995b24f388ac",
      "reqSigs" => 1,
      "type" => "pubkeyhash",
      "addresses" => ["mrgEDw3W3Ht75yF3Gdmp3G3CtxrSXs6Ukn"]}},
   {"token" => "TPC",
    "value" => "39.999955",
    "n" => 1,
    "scriptPubKey" =>
     {"asm" =>
       "OP_DUP OP_HASH160 dc6eda65c811bb975bde6462f8b63270a8c86948 OP_EQUALVERIFY OP_CHECKSIG",
      "hex" => "76a914dc6eda65c811bb975bde6462f8b63270a8c8694888ac",
      "reqSigs" => 1,
      "type" => "pubkeyhash",
      "addresses" => ["n1cVkTzb7JB35RDufBLsX6mo5FAc9WDSeS"]}}]}

おわりに

本記事では、Tapyrus dev モード環境で得たコインベース報酬から、別アドレスへの送金と UTXO 状態の変化を体験しました。

資料

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