Tapyrus ブロックチェーンに挑戦: 環境構築（devモード）

はじめに

「ブロックチェーン技術を学びたい」と思いながらも、これまでなかなか行動に移せずにいました。
ローカル環境で Tapyrus ブロックチェーンを触ってみることで、「ブロックチェーンとは何か？」を体験しながら学んでいきます。

本記事では、Tapyrus の dev モードを使って、最小構成の Docker Compose 環境を構築する手順をまとめます。

Tapyrus とは

Tapyrus は、Bitcoin をベースにしたオープンソースのブロックチェーンプラットフォームです。日本の企業 Chaintope によって開発されており、企業や自治体での実用を想定した設計が特徴です。

主な特徴

• オープンソース: Bitcoin をフォークし、独自機能を追加
• ハイブリッド設計: 制御されたネットワークで運用しつつ、透明性も確保
• カスタムトークン: OP_COLOR による独自トークンの発行が可能

資料

• Chaintope 公式サイト
• Tapyrus Core GitHub
• Tapyrus Docker ドキュメント

手元の環境

今回の動作確認は、以下のローカル環境で行いました。

• OS：LMDE 6（Linux Mint Debian Edition）
• Docker：28.2.2
• Docker Compose：v2.36.2
• シェル：bash
• その他：インターネット接続（イメージ取得のため）

※ Docker 環境があれば、macOS や WSL2 でも同様に動くはずです。

Tapyrus 環境構築の概要

今回は Tapyrus の dev モード（開発・テスト用モード）を使って、単一ノード構成の最小ブロックチェーン環境を Docker Compose で構築します。
短時間でセットアップでき、動作確認や RPC の試行にも便利です。

以下のようなディレクトリ構成を前提として進めます：

├── docker-compose.yml  # Tapyrus ノードと Ruby クライアントを定義
├── tapyrus.conf        # ノードの設定ファイル（dev モード用）
├── data/               # ブロックチェーン・ウォレットの永続化領域
└── tapyrus-client/
    └── Dockerfile.dev  # tapyrus gem を含んだ Ruby IRB 環境

この環境はすべてローカルで完結しており、他のノードやインターネットへの常時接続も不要です。
外部ネットワークとつながない単一ノード構成なので、自分のマシンだけで安全にブロックチェーンを試せます。

docker-compose.yml の内容

ここでは、Tapyrus ノード（tapyrusd）と、Ruby 製クライアント（tapyrus-client）の 2 つのサービスを定義しています。

services:
  tapyrusd:
    image: tapyrus/tapyrusd:v0.6.1
    ports:
      - "2377:2377"
    environment:
      GENESIS_BLOCK_WITH_SIG: |
        0100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000002b5331139c6bc8646bb4e5737c51378133f70b9712b75548cb3c05f9188670e7440d295e7300c5640730c4634402a3e66fb5d921f76b48d8972a484cc0361e66ef74f45e012103af80b90d25145da28c583359beb47b21796b2fe1a23c1511e443e7a64dfdb27d40e05f064662d6b9acf65ae416379d82e11a9b78cdeb3a316d1057cd2780e3727f70a61f901d10acbe349cd11e04aa6b4351e782c44670aefbe138e99a5ce75ace01010000000100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000ffffffff0100f2052a010000001976a91445d405b9ed450fec89044f9b7a99a4ef6fe2cd3f88ac00000000
    volumes:
      - ./tapyrus.conf:/etc/tapyrus/tapyrus.conf
      - ./data:/root/.tapyrus

  tapyrus-client:
    build:
      context: ./tapyrus-client
      dockerfile: Dockerfile.dev
    depends_on:
      - tapyrusd
    environment:
      TAPYRUS_RPC_HOST:     "tapyrusd"
      TAPYRUS_RPC_PORT:     "2377"
      TAPYRUS_RPC_USER:     "rpcuser"
      TAPYRUS_RPC_PASSWORD: "rpcpassword"
    tty: true
    stdin_open: true

各サービスの役割

tapyrusd（ノード）

• Tapyrus Core の公式イメージを使って、dev モードのノードを起動。
• GENESIS_BLOCK_WITH_SIG により、初期ブロック生成を省略し即起動。
• tapyrus.conf で各種設定を行い、ブロックチェーンデータは ./data に永続化。

tapyrus-client（Ruby クライアント）

• tapyrus gem を入れた Ruby イメージをビルドし、IRB（対話環境）を起動。
• 起動時に $client が自動で生成され、すぐにノードと RPC でやり取り可能。

tapyrus-client/Dockerfile.dev の内容

Tapyrus に接続するための Ruby クライアント用 Docker イメージは、以下のような構成になっています。

FROM ruby:3.4.2-slim

RUN apt-get update -qq && apt-get install -y --no-install-recommends \
  build-essential \
  libssl-dev \
  ca-certificates \
  && rm -rf /var/lib/apt/lists/*

RUN gem install tapyrus -v "~> 0.3.9" --no-document

RUN cat << 'EOF' > /root/.irbrc
require 'tapyrus'

$client = Tapyrus::RPC::TapyrusCoreClient.new(
  schema:   'http',
  host:     ENV.fetch('TAPYRUS_RPC_HOST')     { abort "Missing ENV[TAPYRUS_RPC_HOST]" },
  port:     ENV.fetch('TAPYRUS_RPC_PORT')     { abort "Missing ENV[TAPYRUS_RPC_PORT]" },
  user:     ENV.fetch('TAPYRUS_RPC_USER')     { abort "Missing ENV[TAPYRUS_RPC_USER]" },
  password: ENV.fetch('TAPYRUS_RPC_PASSWORD') { abort "Missing ENV[TAPYRUS_RPC_PASSWORD]" }
)

puts "→ $client ready (#{ENV['TAPYRUS_RPC_HOST']}:#{ENV['TAPYRUS_RPC_PORT']})"
EOF

CMD ["irb", "-r", "tapyrus"]

各ステップの説明

ベースイメージの選定

• ruby:3.4.2-slim を使用（軽量で必要最小限）。
• C 拡張ビルド用に build-essential, libssl-dev を追加。

tapyrus gem の導入

• RPC クライアントとして tapyrus をインストール。

.irbrc による初期化

• IRB 起動時に $client を自動生成。
• 接続情報は環境変数から取得。

IRB の起動設定

• CMD により tapyrus 読み込み済みの IRB を起動。
• $client.getblockchaininfo などがすぐ使える状態に。

tapyrus.conf の内容

Tapyrus ノードの dev モード動作用の設定ファイルです。
以下のような内容になっています：

networkid=1905960821
dev=1

[dev]
server=1
keypool=1
discover=0
bind=127.0.0.1

rpcuser=rpcuser
rpcpassword=rpcpassword
rpcallowip=0.0.0.0/0
rpcport=2377

各設定項目の説明

ネットワーク設定

• networkid=1905960821
  開発用ネットワーク ID。GENESIS_BLOCK_WITH_SIG と一致させる必要あり。
• dev=1
  dev モードを有効化（ジェネシスブロック自動インポートなどが有効に）。

dev セクションの設定

• server=1
  JSON-RPC を有効化。外部からコマンドを受け付けられるように。
• keypool=1
  鍵を事前生成しておき、getnewaddress の待ち時間を削減。
• discover=0
  ピア探索を無効化。単一ノード構成向け。
• bind=127.0.0.1
  ノードのバインド先。ローカルホスト内の通信のみ許可。

RPC 認証・接続設定

• rpcuser / rpcpassword
  RPC のユーザー名・パスワード。Docker 側の環境変数と一致させる必要あり。
• rpcallowip=0.0.0.0/0
  全ての IP を許可（※ dev モード限定で想定）。
• rpcport=2377
  JSON-RPC の待ち受けポート。docker-compose.yml のポートと合わせる。

動作確認・操作例

セットアップが完了したら、以下の手順で Tapyrus ノードを起動し、Ruby クライアントから接続してみましょう。

1. ノードを起動

ターミナル

docker compose up tapyrusd

• Tapyrus ノードが dev モードで起動します。
• GENESIS_BLOCK_WITH_SIG により、ブロックチェーンが即座に初期化されます。
• RPC サーバがポート 2377 で待ち受け状態になります。

2. Ruby クライアントを起動

別ターミナルで以下を実行：

ターミナル

docker compose run --rm tapyrus-client

• tapyrus を読み込んだ IRB セッションが起動。
• 起動時に $client が定義されており、すぐに RPC を試せます。

3. 何か試してみる

ノードのブロックチェーン情報が表示されれば接続成功です。

irb

$client.getblockchaininfo

4. クリーンアップ

以下のコマンドで、コンテナとボリュームを削除して、環境を初期化できます。

ターミナル

docker compose down --volumes --remove-orphans

おわりに

本記事では、Tapyrus の dev モードを使ってローカル環境に最小構成のブロックチェーンノードを立ち上げ、Ruby クライアントから接続して簡単な RPC を試すところまでを紹介しました。

Docker Compose を使うことで、複雑なビルドや依存関係を気にせず、手元でブロックチェーンの挙動を確認できるのはとても便利だと感じました。

今回は「まずは Tapyrus を動かしてみる」ことを主な目的としましたが、今後はトランザクション生成など、もう一歩踏み込んだ内容にも挑戦していく予定です。

Tapyrus を通じて、ブロックチェーンの基本を一緒に学んでいきましょう！

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資料

• Tapyrus Core GitHub
• Tapyrus Docker イメージ
• Tapyrus 開発者向けドキュメント（Docker）
• Tapyrus 開発者向けドキュメント（Getting Started）
• Tapyrus Ruby gem (tapyrusrb)
• Chaintope 公式サイト
• https://qiita.com/John110/items/0ac6deb458af976b0cf8