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AWS Direct Connect SiteLinkで実現する拠点間通信 - AWSバックボーンの活用とデフォルト値・有効化の判断基準

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概要

AWS Direct Connect SiteLinkは、AWSリージョンを経由せずにDirect Connectロケーション間を直接接続できる機能です。オンプレミス拠点間の通信をAWSバックボーンネットワーク上で実現し、インターネットや高額な国際専用線を使わずにグローバルなネットワークを構築できます。本記事では、SiteLinkの仕組み、デフォルト値、有効化時のデメリット、そして有効化判断の基準について解説します。

目次

  • AWS Direct Connect SiteLinkとは
  • AWSバックボーンの意味と役割
  • SiteLinkの仕組みと動作原理
  • SiteLinkのデフォルト値と有効化方法
  • SiteLink有効化時のデメリット
  • SiteLink有効化の判断基準
  • 料金体系と試算例
  • 終わりに

AWS Direct Connect SiteLinkとは

AWS Direct Connect SiteLinkは、AWS Direct Connectの機能の一つで、異なるDirect Connectロケーション間を直接接続し、オンプレミス拠点同士の通信をAWSリージョンを経由せずに実現できる機能です。2021年12月に一般提供が開始されました。

従来のDirect Connect接続では、オンプレミス拠点間で通信する場合、AWSリージョン内のVPCやTransit Gatewayを経由する必要がありました。SiteLinkを使用すると、Direct Connectロケーション間でAWSバックボーンネットワークを利用し、最短経路で直接通信できるようになります。

image.png
【図1: 従来のDirect Connect構成】

image.png
【図2: SiteLink有効時の構成】

図の説明:

【図1: 従来のDirect Connect構成】

  • オンプレミス拠点間の通信はAWSリージョン内のTransit Gatewayを経由
  • データはAWSリージョンを必ず通過する必要がある
  • Private VIF(青線)でDirect Connect Gatewayと接続

【図2: SiteLink有効時の構成】

  • オンプレミス拠点間の通信がAWSバックボーンネットワーク上で直接実現
  • AWSリージョンを経由せず、Direct Connectロケーション間で最短経路を選択
  • SiteLink有効なPrivate VIF(赤の太線)で接続
  • Direct Connect Gatewayを介してBGP経路情報が交換される
  • データ転送はAWSバックボーン上で行われる(オレンジの太線)

【色の凡例】

  • 青線: 通常のPrivate VIF接続
  • 赤の太線: SiteLink有効なPrivate VIF接続
  • 緑線: BGPセッション・経路交換
  • 紫の点線: AWSバックボーン上の経路情報共有と最短経路選択
  • オレンジの太線: AWSバックボーンを経由する拠点間データ転送
    ================================================================================

AWSバックボーンの意味と役割

「AWSバックボーン」とは、AWSが世界中のデータセンターやDirect Connectロケーションを接続するために構築した、プライベートな高速ネットワークインフラストラクチャです。公共のインターネットとは完全に分離された専用回線網で、AWS内部のデータ通信やリージョン間通信に使用されています。

AWSバックボーンの主な特徴は以下の通りです。

  • 高速性:商用ISPネットワークと比較して帯域幅が大きく、混雑による遅延が少ない
  • 低遅延:最短経路での通信を実現するSPF(Shortest Path First)アルゴリズムを使用
  • 高信頼性:冗長化された設計により、高い可用性を確保
  • セキュリティ:公共のインターネットを経由しないため、盗聴や改ざんのリスクが低い

SiteLinkは、このAWSバックボーンネットワークを顧客のオンプレミス拠点間通信に利用できるようにした機能です。世界中に100以上あるDirect ConnectロケーションをAWSバックボーンで結び、グローバルな拠点間通信インフラとして活用できます。

SiteLinkの仕組みと動作原理

SiteLinkを利用した拠点間通信は、以下の流れで動作します。

1. 基本構成要素

SiteLinkを使用するには、以下のコンポーネントが必要です。

  • Direct Connect接続:各拠点からDirect Connectロケーションへの物理接続(専用接続またはホスト型接続)
  • 仮想インターフェイス(VIF):Private VIFまたはTransit VIFを使用(Public VIFでは利用不可)
  • Direct Connect Gateway(DXGW):グローバルに配置される論理的なリソースで、すべてのSiteLink対応VIFを同一のDXGWに接続する必要がある

2. BGPによる経路交換

SiteLinkではBGPプロトコルを使用して経路情報を交換します。各拠点のオンプレミスルーターは、Direct Connectロケーションとの間でBGPセッションを確立し、自拠点のネットワークCIDRをアドバタイズします。

SiteLinkが有効なVIF間では、Direct Connect Gateway経由で経路情報が自動的に交換されます。この際、AWSリージョン内のリソースには経路情報は送信されず、SiteLink対応VIF間でのみ経路が共有されます。

3. 最短経路の選択

AWS公式ドキュメント ( https://docs.aws.amazon.com/whitepapers/latest/ec2-networking-for-telecom/direct-connect-sitelink.html ) によると、SiteLinkでは『the shortest path between AWS Direct Connect locations to its destination, using the fast, secure, and reliable AWS global network』を使用してデータが転送されます。

経路選択にはSPF(Shortest Path First)アルゴリズムが使用され、Direct Connectロケーション間の最短経路が自動的に選択されます。ただし、DSCPマーキングは保持されますが、AWSバックボーン上でQoS(Quality of Service)は実施されません。

4. AS_PATHの動作

SiteLink有効時は、BGPのAS_PATH属性に特徴的な動作があります。

  • 同じAWSデバイスに接続された2つのDirect Connect接続間では、DXGWのASNが1回追加(+1 AS prepend)
  • 異なるサイトのDirect Connect接続間では、DXGWのASNが2回追加(+2 AS prepend、各AWSルーターで1回ずつ)

この動作により、経路の優先度制御が可能になります。

SiteLinkのデフォルト値と有効化方法

デフォルト値

AWS公式料金ページ ( https://aws.amazon.com/directconnect/pricing/ ) には『The SiteLink feature is off by default and can be turned on or off at any time』と記載されています。つまり、SiteLinkはデフォルトで無効です。

VIF作成時にSiteLinkオプションを明示的に有効化しない限り、SiteLink機能は動作しません。既存のVIFに対しても、後から有効化または無効化の切り替えが可能です。

有効化方法

SiteLinkの有効化は非常にシンプルです。

AWS Management Consoleでの有効化

  1. Direct Connectコンソールを開く
  2. 仮想インターフェイスを選択
  3. Private VIFまたはTransit VIFを作成または編集
  4. 「Additional Settings」セクションの「Enable SiteLink」スイッチをオンにする

AWS CLIでの有効化

# 新規VIF作成時
aws directconnect create-private-virtual-interface \
  --connection-id dxcon-xxxxxxxx \
  --new-private-virtual-interface \
    virtualInterfaceName=my-private-vif,\
    vlan=101,\
    asn=65001,\
    directConnectGatewayId=xxxxxxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxxxxxxxxxx,\
    enableSiteLink=true

# 既存VIF更新時
aws directconnect update-virtual-interface-attributes \
  --virtual-interface-id dxvif-xxxxxxxx \
  --enable-site-link

重要な点として、SiteLinkを機能させるには、少なくとも2つ以上のDirect Connectロケーションで、同一のDirect Connect Gatewayに接続されたSiteLink有効なVIFが必要です。

SiteLink有効化時のデメリット

SiteLinkは便利な機能ですが、有効化には以下のデメリットがあります。

1. 追加コストの発生

SiteLinkを有効にすると、通常のDirect Connect料金に加えて以下のコストが発生します(2025年12月時点)。

  • SiteLink時間料金:VIFあたり$0.50 USD/時間(データ転送がない場合でも課金)
  • SiteLinkデータ転送料:送信元と送信先のロケーションに応じて課金(GB単位)

例えば、2つのVIFでSiteLinkを有効化し、24時間365日稼働させた場合、年間で約$8,760(2 VIF × $0.50/時間 × 8,760時間)の時間料金が発生します。

2. QoSの未サポート

AWS公式ブログ ( https://aws.amazon.com/blogs/networking-and-content-delivery/introducing-aws-direct-connect-sitelink/ ) によると、『AWS preserves DSCP markings on traffic forwarded between your routers that are connected using SiteLink enabled VIFs, but the AWS backbone does not enforce any QoS based on these DSCP markings』とされています。

つまり、DSCPマーキングは保持されますが、AWSバックボーン上でQoSによる帯域制御や優先制御は行われません。音声通話やビデオ会議など、QoSが重要なアプリケーションでは注意が必要です。

3. ルーティング制約

SiteLinkには以下のルーティング制約があります。

  • オンプレミスルーターが複数のVIF経由で同一のルートをアドバタイズする場合、SiteLinkは正常に機能しない
  • SiteLinkは同一のAWSパーティション内でのみ動作(中国リージョンは非対応)

4. AS_PATH動作の変化

SiteLink有効時は、AWSリージョンからオンプレミスへのトラフィックルーティング動作が変わります。

通常のDirect Connect(SiteLink無効)では、AWSリージョンは同じリージョンに関連付けられたDirect Connectロケーションを優先します。しかし、SiteLinkが有効な場合、VIFに関連付けられたリージョンに関係なく、AS_PATHの長さが短いBGPパスが優先されます。

この動作変化により、意図しない経路が選択される可能性があるため、既存環境にSiteLinkを追加する際は慎重な検証が必要です。

SiteLink有効化の判断基準

SiteLinkを有効化すべきかどうかは、以下の観点から判断します。

SiteLinkが適している場合

判断基準 説明
グローバルな拠点間通信がある 異なる国や大陸にまたがる拠点間で定常的にデータ通信が発生する
大量のデータ転送 月間で数TB以上のデータを拠点間で転送する(国際専用線との比較でコストメリットがある)
低遅延が重要 AWSバックボーンの最短経路を活用し、遅延を最小化したい
既存のDirect Connect環境 すでに複数拠点でDirect Connect接続を利用している
柔軟性の重視 長期契約不要で、必要に応じてオンデマンドで有効化・無効化したい

SiteLinkが適さない場合

判断基準 説明
低頻度の拠点間通信 月に数回程度しか拠点間通信が発生しない(時間課金のコストが見合わない)
QoSが必須 音声通話などQoSによる帯域保証が必要なアプリケーション
小規模なデータ転送 月間のデータ転送量が数百GB以下と少量
既存専用線との併用 MPLSなど既存の拠点間ネットワークがあり、バックアップ用途のみ

具体的な判断例

例1:グローバル製造業の場合

  • 東京、シンガポール、フランクフルトに工場あり
  • 各拠点で毎日数百GBの生産データをやり取り
  • 既存のDirect Connect接続あり
    SiteLink有効化を推奨(国際専用線より低コストで低遅延通信が可能)

例2:国内中心の企業の場合

  • 東京と大阪の2拠点のみ
  • 月間データ転送量は50GB程度
  • 社内システムのバックアップ用途
    SiteLink不要(時間課金のコストが転送量に見合わない。国内VPNや閉域網で十分)

料金体系と試算例

料金構成(2025年12月時点)

SiteLinkの料金は以下の2つの要素で構成されます。

1. SiteLink時間料金

すべてのロケーション、接続速度、接続タイプで一律$0.50 USD/時間/VIFです。データ転送の有無に関わらず、SiteLinkが有効な時間分だけ課金されます。

2. SiteLinkデータ転送料

送信元と送信先のDirect Connectロケーションの地域によって料金が異なります。AWS公式料金ページ ( https://aws.amazon.com/directconnect/pricing/ ) で最新の料金表を確認できます。

主要な地域間のデータ転送料の例(2025年12月時点)を以下に示します。

  • アジアパシフィック内:$0.030~$0.040 USD/GB
  • 北米内:$0.020~$0.030 USD/GB
  • ヨーロッパ内:$0.025~$0.035 USD/GB
  • アジア→北米:$0.050~$0.060 USD/GB
  • アジア→ヨーロッパ:$0.050~$0.070 USD/GB

※料金は変動する可能性があります。最新情報はAWS公式料金ページ ( https://aws.amazon.com/directconnect/pricing/ ) で確認してください。

料金試算例

AWS公式料金ページに掲載されている例を参考に、具体的な料金を試算してみます。

前提条件

  • ニューヨークとアムステルダムにDirect Connectロケーションあり
  • 各ロケーションで冗長化のため2つのVIF(計4つのVIF)にSiteLinkを有効化
  • 1ヶ月は730時間(8,760時間/年÷12ヶ月)
  • ニューヨークからアムステルダムへ60TBのデータ転送
  • アムステルダムからニューヨークへ40TBのデータ転送

料金計算

SiteLink時間料金:

  • 4 VIF × $0.50/時間 × 730時間 = $1,460

SiteLinkデータ転送料(2025年12月時点の料金表より):

  • ニューヨーク→アムステルダム:60TB × $0.030/GB = 60,000GB × $0.030 = $1,800
  • アムステルダム→ニューヨーク:40TB × $0.030/GB = 40,000GB × $0.030 = $1,200

月額合計:$1,460 + $1,800 + $1,200 = $4,460

この金額は、通常のDirect Connect料金(ポート時間料金、AWS→Direct Connectロケーションへのデータ転送料など)に追加で発生します。

東京・大阪間の試算例

日本国内の拠点間通信の場合も試算してみます。

前提条件

  • 東京(Equinix TY2)と大阪のDirect Connectロケーション
  • 各ロケーションで1つのVIF(計2つのVIF)にSiteLinkを有効化
  • 月間データ転送:東京→大阪 500GB、大阪→東京 300GB

料金計算

SiteLink時間料金:

  • 2 VIF × $0.50/時間 × 730時間 = $730

SiteLinkデータ転送料(アジアパシフィック内の料金を$0.035/GBと仮定):

  • 東京→大阪:500GB × $0.035 = $17.50
  • 大阪→東京:300GB × $0.035 = $10.50

月額合計:$730 + $17.50 + $10.50 = $758

国内の少量データ転送では、時間料金がコストの大部分を占めることがわかります。

終わりに

AWS Direct Connect SiteLinkは、グローバルな拠点間通信を実現する強力な機能です。AWSバックボーンネットワークを活用することで、インターネットや高額な国際専用線を使わずに、低遅延で信頼性の高い拠点間通信が可能になります。

SiteLinkはデフォルトで無効であり、有効化は簡単に行えますが、追加コストやルーティング動作の変化などのデメリットも存在します。有効化の判断は、拠点間通信の頻度、データ転送量、QoS要件、コスト目標などを総合的に評価して行う必要があります。

特に、グローバルに展開する企業で大量のデータ転送が発生する場合は、SiteLinkによるコスト削減と運用効率化のメリットが大きくなります。まずは自社の拠点間通信要件を整理し、料金試算を行った上で、SiteLink導入を検討することをお勧めします。

参考文献・参考サイト

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