業務スケジュール設計

Last updated at 2025-05-10Posted at 2025-05-10

3つの記事に分けていますので参考にしてください

業務スケジュールパターン
業務スケジュール設計(今回の記事)
業務スケジュール実装

業務スケジュール生成システム設計ドキュメント

概要

本システムは、Office Scripts for Excelを利用して、企業や組織における日常的な業務スケジュールを自動生成するためのツールです。業務一覧テーブルに定義された様々な条件に基づいて、特定の日付に実行すべき業務を判定し、スケジュールとして出力します。

システムの背景には、以下のような課題があります：

日次・週次・月次・年次など様々な周期で実行される業務の管理が煩雑
手動での業務スケジュール作成に時間と労力がかかる
実行条件の複雑さ（営業日基準、暦日基準、曜日指定など）による漏れや誤りのリスク
祝日や休業日に当たる場合の振替処理の対応

これらの課題を解決するために、本システムでは以下の特徴を持つスケジュール生成機能を実現しています：

多様な業務パターンへの対応（日次、週次、月次、年次、特定日付、特定曜日など）
営業日・非営業日を考慮した業務スケジュール生成
非営業日の場合の振替ルール（直前営業日、直後営業日、振替なし）
詳細なデバッグ機能によるトラブルシューティングのサポート
Excelテーブルとの連携による使いやすいインターフェース

本システムの利用により、業務スケジュールの作成時間の大幅な削減、業務漏れの防止、業務実行の標準化と効率化を実現し、組織の業務品質向上に貢献します。

システム構成

データ構造

システムは以下の3つの主要なデータテーブルを使用します：

1. カレンダーテーブル

日付ごとの営業日情報を格納
列構成：
- 年月日（YYYY-MM-DD形式）：カレンダーの基準日
- 営業日フラグ（TRUE/FALSE）：営業日かどうかを示すフラグ
- 備考（祝日名など）：休日理由や特記事項
- 曜日：月、火、水、木、金、土、日
- 営業日：月内での営業日番号（1始まり）
- 逆算営業日：月末からの営業日カウント（最終営業日=0）

2. 業務一覧テーブル

業務の基本情報と実行条件を格納
列構成：
- 業務ID（一意の識別子）：各業務を識別する一意のID
- 業務名：業務の名称
- 業務詳細：業務内容の詳細説明
- 業務種別：「定常」「依頼」など業務の種類
- 周期・頻度（日次/週次/月次/年次）：業務の実行周期
- 基準：業務実行の基準日の決定方法
  - 暦日：暦上の日付による指定
  - 営業日：営業日カウントによる指定
  - 暦日(n日指定)：毎月特定の日（例：毎月15日）
  - 営業日(n日指定)：特定の営業日（例：第3営業日）
  - 暦日(月末逆算)：月末からの逆算（例：月末3日前）
  - 営業日(月末逆算)：月末からの営業日カウント（例：最終営業日から2営業日前）
  - 暦日(曜日)：特定の曜日（例：毎週月曜）
- 月（特定月を指定、年次業務の場合）：1～12の月指定
- 週番号（第何週か、1-5）：第何週かを指定
- 曜日（月-日）：曜日指定
- n日（日にちや営業日番号）：何日目かを指定
- 非営業日振替規則：非営業日だった場合の振替方法
  - 直前営業日：非営業日なら直前の営業日に振替
  - 直後営業日：非営業日なら直後の営業日に振替
  - 振替しない：非営業日でも日付変更しない
- 優先度：業務の優先順位（高/通常/低など）
- 有効開始日：業務の有効期間開始日
- 有効終了日：業務の有効期間終了日（空欄は無期限）
- 備考：その他補足情報

3. スケジュールテーブル

生成された業務スケジュールを格納
列構成：
- スケジュールID（一意の識別子）：各スケジュールの一意のID
- 業務ID（業務一覧の業務を参照）：業務一覧テーブルの業務ID
- 予定日：業務の予定実施日
- 作業者：担当者名（手動入力項目）
- 開始予定時刻：予定開始時間（手動入力項目）
- 実開始時刻：実際の開始時刻（手動入力項目）
- 実終了時刻：実際の終了時刻（手動入力項目）
- ステータス：「未実施」「進行中」「完了」など（手動入力項目）
- メモ：作業メモや結果（手動入力項目）

テーブルの関係図

ファイル構成

scheduler.osts: Office Scripts for Excelのメインスクリプトファイル
Excelファイル: 上記3つのテーブルを含むExcelファイル

システム全体構成図

データフロー概要

機能仕様

業務スケジュール生成機能

機能概要: 指定された日付に実行すべき業務を判定し、スケジュールを生成
入力: 対象日付（YYYY-MM-DD形式、YYYY/MM/DD形式、またはM/D/YYYY形式）
出力: スケジュールテーブルへの業務登録
処理内容:
1. 入力日付の正規化（複数の日付形式に対応）
2. カレンダー情報の読み込み
3. 業務一覧データの取得
4. 既存スケジュールの確認（同日のスケジュールが存在する場合は処理中断）
5. 業務条件判定（通常判定）
6. 振替判定（他の日付からの振替対象かどうか）
7. 対象業務のスケジュールテーブルへの登録
8. 処理結果のログ記録

日付処理機能

機能概要: 様々な形式の日付を扱うためのユーティリティ関数群
主要機能:
- 日付形式変換（Excel日付⇔文字列）
- 特定の日付の情報取得（年、月、日、曜日など）
- 月末日の取得
- 月の第n曜日の取得
- 月のn営業日目の取得
- 月末からn営業日前の日付取得

営業日判定機能

機能概要: カレンダーデータに基づく営業日関連の処理
主要機能:
- 指定日が営業日かどうかの判定
- 特定日の直前/直後の営業日の取得
- 月内での営業日情報（何営業日目か、月末から何営業日前か）の取得

業務条件判定機能

機能概要: 業務データの実行条件に基づく判定
対応条件:
1. 日次業務
  - 暦日指定（毎日）
  - 営業日指定（営業日のみ）
2. 週次業務
  - 暦日(曜日)指定（特定の曜日）
3. 月次業務
  - 暦日(n日指定)（例：毎月10日）
  - 暦日(月末逆算)（例：月末、月末から3日前）
  - 営業日(n日指定)（例：毎月第3営業日）
  - 営業日(月末逆算)（例：毎月最終営業日）
  - 暦日(曜日)（例：毎月第2火曜日）
4. 年次業務
  - 特定月 + 上記の月次条件（例：3月の第2営業日）
追加条件判定:
- 有効期間: 有効開始日～有効終了日の範囲内であることを確認
- オリジナル条件判定: 振替先を判定するため、基本条件のみに基づいた判定も実施
- 複合条件: 複数の条件を組み合わせて（例：特定月の特定曜日）業務対象日を判定

振替規則処理機能

機能概要: 非営業日に当たる業務の振替処理
振替規則:
- 直前営業日: 非営業日の場合、直前の営業日に振替
- 直後営業日: 非営業日の場合、直後の営業日に振替
- 振替しない: 非営業日でも振替を行わない
振替処理の方向:
1. 本来の実行日から振替日を算出（通常の条件判定）
2. 振替先の日付から元の日付を検証（振替対象日判定）
  - これにより、もとの日付が検索対象外の場合でも振替が適切に処理される

デバッグ機能

機能概要: 処理中のログを記録
処理内容:
- デバッグシートの作成・管理
- ログレベル（info/warning/error）に応じたログ記録
- 処理の各ステップでの状態記録

処理フロー

メイン処理フロー

業務条件判定フロー

振替規則処理フロー

振替先の日付を検証するフロー

型定義

システムで使用される主要な型定義：

/**
 * カレンダー情報を保持する型
 * 日付文字列をキー、営業日フラグを値とするマップ
 */
type CalendarInfo = { [date: string]: boolean };

/**
 * 営業日情報を表す型
 */
type BusinessDayInfo = {
  nth: number;      // 月内での営業日番号（1始まり）
  total: number;    // 月内の営業日総数
  reverse: number;  // 月末から数えた営業日番号（最終営業日=0）
};

/**
 * 日付情報を表す型
 */
type DateInfo = {
  year: number;     // 年
  month: number;    // 月（1-12）
  day: number;      // 日
  dayOfWeek: number; // 曜日（0:日, 1:月, ..., 6:土）
  isBusinessDay: boolean; // 営業日かどうか
};

関数仕様

システムの主要関数は以下の通りです（抜粋）：

メイン関数

main(workbook: ExcelScript.Workbook, targetDate: string = ""): スクリプトのエントリーポイント。業務スケジュールの生成を実行します。

日付処理関数

excelDateToString(excelDate: string | number | Date | boolean): string: Excel形式の日付を標準的な日付文字列（YYYY-MM-DD形式）に変換します。
formatDate(date: Date): string: 日付オブジェクトをYYYY-MM-DD形式の文字列に変換します。
formatDateBySlash(date: Date): string: 日付オブジェクトをYYYY/MM/DD形式の文字列に変換します。
getDateInfo(dateStr: string, calendar: CalendarInfo): DateInfo: 日付文字列から日付の詳細情報を取得します。

営業日判定関数

isBusinessDay(inputDate: string, calendar: CalendarInfo): boolean: 指定日が営業日かどうかを判定します。
getBusinessDayInfo(inputDate: string, calendar: CalendarInfo): BusinessDayInfo: 指定日の営業日情報を取得します。
getPreviousBusinessDay(inputDate: string, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): string: 指定日の直前営業日を取得します。
getNextBusinessDay(inputDate: string, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): string: 指定日の直後営業日を取得します。
getNthBusinessDayOfMonth(year: number, month: number, n: number, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): string: 指定月のn営業日目の日付を取得します。
getReverseNthBusinessDayOfMonth(year: number, month: number, n: number, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): string: 指定月の末日からn営業日前の日付を取得します。

業務条件判定関数

isTargetTask(inputDate: string, taskData: (string | number | boolean)[], headers: string[], calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): boolean: 指定された業務が対象日に実行すべきかを判定します。
isDailyTask(inputDate: string, base: string, calendar: CalendarInfo): boolean: 日次業務の判定を行います。
isWeeklyTask(inputDate: string, base: string, youbi: string): boolean: 週次業務の判定を行います。
isCalendarDayNthTask(inputDate: string, n: number, furikae: string, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): boolean: 暦日(n日指定)の判定を行います。
isCalendarDayEndOfMonthTask(inputDate: string, n: number, furikae: string, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): boolean: 暦日(月末逆算)の判定を行います。
isBusinessDayNthTask(inputDate: string, n: number, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): boolean: 営業日(n日指定)の判定を行います。
isBusinessDayEndOfMonthTask(inputDate: string, n: number, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): boolean: 営業日(月末逆算)の判定を行います。
isCalendarDayWeekDayTask(inputDate: string, youbi: string, weekNum: number, furikae: string, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): boolean: 暦日(曜日)の判定を行います。

振替規則処理関数

applyFurikaeRule(inputDate: string, rule: string, calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): string: 振替規則を適用して日付を計算します。
isTargetDateForFurikae(inputDate: string, taskData: (string | number | boolean)[], headers: string[], calendar: CalendarInfo, workbook: ExcelScript.Workbook): boolean: 指定日が他の日付の振替先になっているかを判定します。

ユーティリティ関数

prepareCalendarMap(workbook: ExcelScript.Workbook): CalendarInfo: カレンダーデータを準備します。
getScheduleSheet(workbook: ExcelScript.Workbook): 業務スケジュールシートを準備します。
getExistingScheduleInfo(scheduleSheet: ExcelScript.Worksheet): { lastRowIndex: number, maxScheduleId: number }: 既存のスケジュールデータの最終行と最大スケジュールIDを取得します。
debugLog(workbook: ExcelScript.Workbook, message: string, level: "info" | "warning" | "error" = "info"): void: デバッグログを記録します。
create_debug_sheet(workbook: ExcelScript.Workbook, isClear = false): デバッグシートを作成します。

エラー処理

システムは以下のエラー処理を実装しています：

例外捕捉: 主要な関数では例外をtry-catch文で捕捉し、エラー情報をデバッグログに記録
エラーメッセージ: 重要なエラーはエラーメッセージとして表示
回復処理: 一部のエラー（テーブル取得エラーなど）では代替手段での処理を試行
- テーブルからのデータ取得失敗時にシートから直接取得を試行
- 日付変換に複数の形式対応
入力検証: 日付の形式検証や有効性確認を実施
デフォルト値: エラー時には安全なデフォルト値を使用
デバッグログ: すべての主要な処理ステップとエラーを詳細にログに記録

拡張性と制限事項

拡張性

新しい業務条件: 周期・頻度や基準の種類を追加することで、新しい業務条件への対応が可能
追加フィールド: 業務一覧やスケジュールテーブルに新しいフィールドを追加可能
処理カスタマイズ: 各種判定ロジックはモジュール化されており、カスタマイズが容易
将来の拡張可能性:
- 作業者マスター: 担当者情報を管理するテーブルを追加して作業者の割り当て機能
- Power BI連携: 生成されたスケジュールデータをPower BIで可視化
- 複数条件対応: 「第1と第3金曜日」のような複合条件への対応
- 繰り返し情報: 年次・月次等の識別情報をスケジュールに追加
- パフォーマンス指標: 作業時間や遅延率などのKPI測定

制限事項

日付範囲: カレンダーテーブルに登録されている日付範囲内でのみ正確に動作
テーブル構造: 想定されるテーブル構造（列名など）に依存
処理速度: 大量の業務データや長期間のスケジュール生成では処理時間が増加する可能性
非営業日判定: カレンダーテーブルの営業日フラグに依存
既知の制限:
- 複数の条件を組み合わせた業務（例: 第1と第3金曜日）は別々のレコードとして登録が必要
- 非定型的な業務（特定の日付のみ、不規則なパターンなど）への対応には個別レコードが必要
- 依存関係のある業務（Aの完了後にBを実行など）のスケジューリングには非対応

運用方法

前提条件

Excelファイルには、カレンダー、業務一覧、スケジュールの3つのシートが必要
カレンダーデータは最新の休日情報で更新されていること
業務一覧には有効な業務データが登録されていること

使用手順

準備:
- Excelファイルを開く
- 必要に応じてカレンダーデータや業務データを更新
スケジュール生成:
- 「業務スケジュール」シートのB1セルに対象日付を入力
- スクリプトを実行
結果確認:
- 生成されたスケジュールを確認
- 必要に応じてデバッグログを確認
カスタマイズ:
- 業務一覧を編集して対象業務を追加・変更
- 振替規則や条件を調整

使用例

例1: 月初の業務スケジュール生成

// B1セルに「2025-05-01」を入力
// スクリプトを実行
// → 月初に実行すべき業務（毎日業務、営業日業務、月初業務、第1営業日業務など）が抽出される

例2: 月末の業務スケジュール生成

// B1セルに「2025-05-31」を入力
// スクリプトを実行
// → 月末に実行すべき業務（毎日業務、営業日業務、月末業務、最終営業日業務など）が抽出される

例3: 連休前の一括スケジュール生成

// 連休期間の各日付を順に入力し、それぞれに対してスクリプトを実行
// → 連休期間中の全ての業務が抽出され、必要に応じて営業日に振り替えられる

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