DockerとKubernetesの本質を知る
結論
Docker: 「プログラム + ライブラリ + OSの部品」をコンテナ化し、どの環境でもサービスが正常に起動するためのシステム
Kubernetes:コンテナ化したアプリを、 手間をかけずに安定して動かし続けるための自動運転システム
第1章:かつての開発現場は「地獄」だった
Dockerが登場する2013年以前、アプリを本番環境へリリースする作業は、エンジニアにとって非常にリスクの高いものでした。
-
開発プロセス
開発者が自分のPC(Windows/Mac)でアプリを完成させる。 -
デプロイ作業
運用担当者が本番サーバー(Linux)上で、長大な「手順書」を見ながら1つずつ設定を行う。
なぜ動かなかったのか?(環境の壁)
「開発者のPCでは動くのに、本番サーバーでは設定が違って動かない」――この現象が頻発した原因は主に3つあります。
-
OSのわずかな違い
開発環境は「CentOS 7.1」、本番は「CentOS 7.2」といった微差で、標準ソフトの挙動が変わりエラーになる。 -
ライブラリの競合
サーバーに既に入っている別のアプリ用のソフトと、新しいアプリが衝突する。 -
設定の漏れ
手順書に書き忘れた「たった一行の設定」のせいで、サービスが正常に起動しない・停止するといった事態を招く。
第2章:Dockerがもたらした「イメージ」の配布
なぜDockerを使うと、環境の壁を越えて「どこでも同じように動く」のでしょうか。それは、アプリ単体ではなく 「動く環境そのもの」をパッケージ化して配布する仕組みに変えたからです。
Dockerの正体:裏側で動く「小さなLinux」
Dockerは本来、Linuxの心臓部(Linuxカーネル)を借りるための道具です。 WindowsやMacにDockerをインストールすると、PCの中に 「超軽量なLinuxの仮想マシン」 が1つだけ自動で作られます。
このLinuxの機能を使って、一つのOSの上でコンテナを作ることで、あたかも独立したサーバーのように見せる。これがDockerの技術の本質です。
「イメージ」と「コンテナ」の役割
環境の壁を壊すために、Dockerでは「イメージ」と「コンテナ」という2つの概念を使い分けます。
イメージとは 「プログラム + ライブラリ + OSの部品」がすべて入ったパッケージのことです。動作に必要なパーツがすべてこの中に固定されています。
コンテナとは イメージから作られた、アプリをどこでも動かせる「魔法の箱」のことです。
なぜ「どこでも同じ」が実現するのか
コンテナは、先ほどの 「仮想マシン内のLinux」のOSの心臓部(カーネル)を共有 して動きます。
これにより、あなたの手元のPCが何であっても、実行環境が変わっても、中身のパッケージは「Linux用」として常に同じ条件で動作することができるのです。
この「心臓部は共通、中身の部品はパッケージ化」というルールがあるからこそ、開発者のPCで動いたものは、本番サーバーでも寸分狂わず動作します。
第3章:大規模化に伴う「接続」と「状態」の管理
アクセスが増えると、同じイメージからコンテナを複数(A-1, A-2, A-3)に増やして負荷を分散します(水平スケーリング)。
ロードバランシングとセッション問題
手前にロードバランサーを置くと、同じユーザーでもアクセスするたびに接続先のコンテナが別になります。
ここで、「1号機でログインしたのに、2号機に飛ばされたらログアウトしちゃうのでは?」という疑問が湧くかもしれません。
解決策:ステートレス設計
-
セッションの共有
ログイン情報などの「状態」はコンテナの中に置かず、外にあるデータベース(Redisなど) に保存します。 -
ステートレス(無状態)設計
コンテナ自体は「いつ捨ててもいい、ただの計算機」として扱い、重要なデータはすべて外に置きます。
第4章:Dockerだけでは足りない?大規模運用の課題
コンテナ技術で環境の差は消えましたが、システムが大規模化し、コンテナが数百・数千と増えると新たな問題が浮上します。
- 「コンテナが止まったら、手動で再起動が必要」
- 「アクセスが増えたとき、コンテナを増やすのが大変…」
- 「どのサーバーでどのコンテナが動いているか把握しきれない」
Dockerは「箱を作る」道具ですが、大量の箱を維持・管理する機能が不足していました。
第5章:Kubernetes――安定稼働の「自動運転システム」
これら大規模運用の課題をすべて自動で解決するために生まれたのが Kubernetes(K8s) です。
Kubernetesが提供する4つの自動化
-
自己修復(セルフヒーリング)
コンテナが故障して止まったら、自動で検知して新しいコンテナを立ち上げ直します。 -
オートスケーリング
アクセスが急増したらコンテナの数を増やし、空いたら減らしてコストを抑えます。 -
ロードバランシング
負荷が偏らないように、通信を各コンテナにバランスよく振り分けます。 -
ローリングアップデート
サービスを止めることなく、アプリを新しいバージョンへ順番に入れ替えます。
まとめ
「Dockerで信頼できる『箱』を作り、Kubernetesでその『運用』を機械に任せる。」 これが、現代のシステムが迅速かつ安定して動く仕組みの正体です。
