グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートし、その後Webデザイナーへと転向した経験から、私が考える「良いUI/UX」について大事だと感じだことをまとめてみました。
グラフィックデザインの美意識について
まず良いデザインとは何かを考えてみましょう・・・。
人によって色々な定義はありますが、グラフィックデザインの世界では、ざっくり 「美しさ」「コンセプトの明確な表現」「視覚的なインパクト」の3点 が重要視されます。
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ここで記載する 「美しさ」 とは人の思考の過程で生まれた複雑な要素を、選択し、排除し、より洗練された情報が、瞬時に受けて側の脳に「伝わるよう」に設計されていることを言います。ロゴマークやアイコンなどがそれですね。(シンプル is ベストって昔どこかの先輩が言っていた)
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そして 「コンセプトの明確な表現」 とは、このデザインが生まれる基盤となった思想や哲学、重要な要素のことを指します。
生みの親な訳ですから、「ただなんとなく」や「みんながそうしていたから」などの曖昧な説明は、クライアントにとって信頼や安心を損なう結果をもたらし、デザイナーとして考えることを放棄している事になります。
どんなに良いデザインでもしっかりとしたコンセプトが無ければ、机上の空論と同じで、ただの自己満足になってしまいます。例えば下記の「サウナイキタイ」のロゴはコンセプトの明確な表現としていい例かなと思います。文字は波や水、もしくは湯気を連想させるような柔らかな造形で、少し斜めに傾けることで不安定感がより揺らぎを後押ししています。(これで水平に書体を配置していたらかっちりしすぎちゃったんだろうなぁ・・と勝手に想像しつつ)
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そして最後に 「視覚的なインパクト」 とは「制作物の美しさ」とそれを支える「コンセプト」がきちんとユーザーに伝わるデザインだと思います。
情報が溢れる現代では類似的なデザインは、埋もれ、忘れ去られてしまいます。
(だからといって派手や奇抜で目立てばいいというわけでなく)
洗練されたデザインとコンセプトを上手く消化し、クライアントにとって唯一無二の「カタチ」を提供してあげることがデザイナーのお仕事かなと考えています。
良いデザインとは
ここで世界的に有名なデザインを例に、「美しさ」「コンセプトの明確な表現」「視覚的なインパクト」 抑えた「良いデザイン」とはどういうものか、説明できればと思います。
ロゴデザインの金字塔:コカ・コーラ (Coca-Cola)
コカコーラのロゴは誕生から130年以上にわたりほぼ変わらない一貫性持っています。
徹底した一貫性は、消費者に絶対的な安心感と信頼感を与え、使用されている赤色は情熱と活力を象徴しどこでも目立つ 「視認性の高さ」 を、独特なロゴの筆記体は他と差別化された 「美意識」 と 「識別性」 を持っています。
それは 「どこにでもある、変わらない味」 という ブランド価値 を伝えるために、上記のデザイン的要素が機能してきたのです。
事例としてコカコーラのロゴを挙げましたが、他にも昔から残り続けているグラフィックデザインは、「美しさ」「コンセプトの明確な表現」「視覚的なインパクト」 が明確に抑えられているものが多いかと思います。
大事な3要素を抑えつつ、制作への情熱を持つことも大事
ただ、上記で3要素を抑えつつても、それだけ良いデザインは生まれません。
何故なら、いま現代でデザイン界の礎となった世界の有名なデザイナー達には、共通して確固たる意思や情熱がありました。
フォント1つにしても「余白」「形」に意味があり、デジタル時代のフォント創設者であるマシュー・カーターは今でも使われている「ITC Georgia」や「Bell Centennial」を生み出しました。
特に「Bell Centennial」は2年間にわたって開発され、ただ「読みやすい文字」を追い求め続ける情熱があったからこそ今のデジタルフォントが生まれたのだと思います。
時間をかければ良いってことはないけれど・・・
利益が絡む分、 時間をかけ過ぎるのは良くないと考えています。
なので最近はAIを活用した効率化が叫ばれていますが、個人的にはAIばかり頼りすぎているデザイナーが増えてきている現状に危機感を感じています。
確かにAIは決して否定的な事は言わず、何案でも提案してくれて優秀に見えますが、所詮はAI。
模範解答しか出してくれません。そして人は無駄な失敗や不利益を被りたくない生き物です。いつしかAIが正解であると思えばそれ以上の思考を止めてしまいます。
デザイナーが自身の制作物に対し思考をAIに委ねてはいけません。
AIはあくまでサポートとして使い方を選び、デザイナーは失敗を恐れず、常に新しいモノを生み出す挑戦者でなければならないと思います。
Webデザインの大事なことは?
一方、Webデザインの世界ではこれら 「美しさ」「コンセプトの明確な表現」「視覚的なインパクト」 に加え、「使いやすさ(ユーザビリティ)」 と 「体験(ユーザーエクスペリエンス、UX)」 が決定的に重要になります。
転向して強く感じたのは、Webにおけるデザインは単なる 「見た目」だけ ではなく 「問題解決の道具」 とならなければならないということです。
どれだけ見た目が美しくても、ユーザーが目的を達成できなければ、そのデザインは失敗だと言われました。
理解はしても
Webデザインをして最初に思ったのが、グラフィックで重視している事はWebではなかなか再現できない!ってところでした。
技術や費用の問題以外で、デザインの「美しい」とされる部分はWebでは重要とされない事が多かったです。ここ数年UIデザインを経験させて頂いて、グラフィックとWebの間のちょうどいいデザインは表現できるようになりましたが、今でも自身が携わったサイトを見ると妥協した痕跡が残っていてなんとも言えない衝動に駆られます。
例えば、、、過去でお仕事させて頂いたWebサイトで、アイコンと数字のデザインをしたのですが、アイコンの配置とテキストのバランスがどうしてもデザイン通りにいかず(時間も足りず)結局このままで公開したのですが、細かいところ気になってしまうのはグラフィックデザイナーの名残りかなと思います。
徐々にWeb脳にアップデートを
グラフィックよりの思考に傾きすぎていたので、自身の成長の為にまずはユーザー中心設計(UCD)への意識変革を始めました。
手探りで始めたことは、ユーザー中心設計と言われるものを参考に以下3点を上流工程で行うことから始めました。
- 誰が使うのか?
- 何のために使うのか?
- どのような状況で使うのか?
グラフィックデザイナーだった頃は、クライアントの「要望」や自分の「感覚」がデザインの核となることが多かったのですが、Webデザイナーになってからは、デザインの起点は常に 「ユーザー」 になりました。幸い自身をユーザーに置き換えて考える事は、新しい扉を開ける感覚でとても楽しかったです。
逆にグラフィックのデザインでも深く思考するようになり、コンセプトの表現に活かせる武器が増え良かったと感じてます。
私が考える「良いUI/UX」で大事にしてるトコ
結局、グラフィックデザインで培った 「美しい」と感じること は、Webではその美しさを 「ユーザーの成功」 という機能性のために役立てることが求められます。時にそれは、プロジェクトの中でグラフィックの良いとされる部分が理解されず放っておかれることにも繋がります。
それが悪いわけではなく、Webではどうしてもそうなるのが現実なんです。なので私は、Webデザインをする時に大事にしている事が2つあります。
心がけている2点
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視覚的な魅力
グラフィックデザイナーとしての経験を活かし、可読性を損なわない範囲で、美しく洗練されたビジュアルで体験を豊かにすること。 -
認知負荷の軽減
情報を整理し、余白と空間を意識すること。
この2点は主にユーザーがサイトを視認する時の「見づらさ」や「わかりにくさ」を軽減することと、見ていてサイトの伝えたいこと、目的がわかるサイトである事を重点に置いています。
例えば、下記のサイトのように情報に溢れているページでは、ユーザーの知りたい情報の伝わりにくさ、同じ情報が狭い範囲に配置されていて、どこにアクセスしていいか迷う原因がストレスとなっています。
そして上記のサイトを改修したサイトが下記になります。
サイト情報を整理し、色を統一することで、強調したい箇所が一目でわかるようになっています。またアイコンを使用することで、コンテンツの視認性と認識速度の向上に繋がり、ストレスを軽減しながらユーザーが目的を達成しやすくなります。
このように視覚的な魅力と認知負荷の軽減はWebデザインにとって大切な事だと言えます。
結論:美しさと機能性のうまく融合できる着地点の模索中
己の経験や考えを述べ、長々と書き綴ってしまいましたが、、、
グラフィックを経験したからこそ思う、良いUI/UXとは、「美しさと機能性がうまく融合したデザイン」 だと思います。
ただ私自身、それはいまだに満足のいく結果を得られていません。
着地点を見つけること自体が困難なのもあります。
ただ、文中にも記したようにデザイナーには知識と「情熱」が大事です。より多くの人に「心地良い」体験を提供できるデザインに携われるのであれば!
これからも思考し、悩んで、時には折れながら模索していこうと思います。





