結局いくら儲かるか知りたい!
サイトを高速化すると儲かると言うエピソードは聞きます。
でも「じゃあうちのサイトだと具体的にいくら儲かるのさ?」と聞いてもはっきり答えてくれる人がいませんでした。
今回、実際の通販サイトに協力いただき、ページの読み込み時間とCVRの関係を詳しく調査したので、その結果を紹介し、収益増の見積もり方法を考えてみます。
2024年3月21日追記
この記事で紹介したサイト高速化の成果を事前に見積もるアクセス解析サービスをリリースしました!
ぜひお試しください。
結論
調査対象サイトでは、高速化により読み込み時間を一律20%短縮できると、売上が14%上がる見込みです。
いかにこの見積もりの流れを解説します。
平均読み込み時間とCVR
セッション平均読み込み時間とCVR(注文成約率)の関係を計測したところ、以下のようになりました。
CVRは全体で3.076%
でしたが、セッション平均読み込み時間が
- 1〜1.5秒だとCVRが最大9%に達する
- それ以降は遅くなるほどCVRが低下する
- 4秒を超えるとCVRが2〜2.5%で横ばいになる
ページの読み込みが遅いと露骨に離脱が増える様子がよくわかります。
読み込み時間が短すぎてもCVRが低い理由
上のグラフを見て、1.5秒未満だと逆にCVRが低いのが気になった方もいるかと思います。「早すぎてもダメ」というのは理屈に合わない気がしますが、これには理由があります。
次は平均読み込み時間と平均PVのグラフです。
注文まで行き着くには購入手続きが必要なので一定以上のPVが必要です。
さらに購買意欲の高いお客さんは商品を熱心に比較するでしょうから、PVが増える傾向にあります。実際、CVRの高い2秒前後のPV数が多いことからもそれがわかります。
PVが多いと、極端に短い平均読み込み時間を出し続け、平均読み込み時間も極端に短いという可能性はとても低くなります。
逆に直帰であれば、偶然、平均読み込み時間が極端に短いとそれがそのまま平均値になります。
要は生存バイアスの逆のようなもので、極端に短い平均読み込み時間は直帰でないと出にくいため、見かけのCVRが低くなるということです。
実際のセッション数の分布
次に平均読み込み時間と、実際のセッション数の分布を見てみます。
3秒をピークに偏った山型になっていて、遅い方のなだらかな坂は延々と続きます。17.5秒以上が突然上がっているのは、それをギュッと寄せたからですが、それだけロングテールが長いということです。ちなみに17.5秒以上は全体の約5%に相当します。
先ほど平均読み込み時間とCVRの関係では、1.5秒のときにCVRが最大値を示しました。しかし実際のセッション数のピークは1.5秒ではありません。
そのズレが機会損失となっており、CVRの高い読み込み時間にセッションが集まるほど、収益最大化に迫ります。これがサイトの高速化で収益が上がるということの正体です。
「サイト高速化で収益増」って、話には聞くけど実際に見たことがあるという人は少ないと思います。「やっぱりあるんだ。むしろ絶対にある!」と共感いただけたら幸いです。
高速化による収益増を見積もる
もし計測前に時間を戻してサイトを改善し、読み込み時間を一律20%早くできたとします。すると平均読み込み時間によるセッション数の分布はこのように変化します。
この変化によって後のユーザーの行動も変わりますが、その辺は無視します。おそらくポジティブな変化の方が多く結果は上振れすると思われます。
よりCVRの高い平均読み込み時間帯(1.5秒付近)により多くのセッションが集まるので、全体のCVRが改善されます。
これを実際に計算すると以下のようになります。
- 改善前のCVR 3.076%
- 改善後のCVR 3.507%
- 売上 約14%アップ
このサイトではサイトを読み込み時間を20%高速化すると、売り上げが14%上がる見込みがあることがわかりました。
あとは効果がどのくらい持続するかを評価し、広告など他の打ち手と比べて、20%高速化のためのコストが妥当であるか具体的に検討できます。
もし10%読み込み時間が悪化すると
逆に平均読み込み時間が遅くなってしまうと、収益性は低下します。
最後に
いかがでしょうか。ざっくりとした計算ではありますが、サイトの高速化プロジェクトは、見込みや予算なしの勢いで始まることが多かったと思います。
また、「1秒短縮するとCVRがX%改善」のような他社のエピソードもありますが、そういったものを根拠にするよりずっと精度が高いはずです。
サイトを高速化したいが、組織を納得させられない、とお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。