AIエージェントを「一直線」から「グラフ」へ進化させる設計思想
「AIエージェントを作れる人」は増えました。
しかし、AIエージェントを"設計"できる人はまだ多くありません。
2026年、AIエージェント開発で最も注目されているキーワードが Graph Engineering です。
本記事では、Graph Engineeringとは何かを、図を交えながらわかりやすく解説します。
はじめに
前回は
- Prompt Engineering
- Loop Engineering
- Agent Engineering
について解説しました。
AIエージェントを作ることは、以前より簡単になりました。
しかし、実際の開発では別の問題が発生しています。
それは
Agent同士をどう組み合わせるのか
という問題です。
この問題を解決する考え方が
Graph Engineering
です。
従来のAIエージェント
多くのAIエージェントは
このような構造になっています。
入力
↓
Planner
↓
Researcher
↓
Coder
↓
Reviewer
↓
出力
非常に分かりやすい構造です。
しかし
この構造には大きな問題があります。
本当に待つ必要があるのか?
例えば
Researcherが
- Web検索
- PDF解析
- GitHub検索
を行うとします。
多くの実装では
Web検索
↓
PDF解析
↓
GitHub検索
のように
順番に実行しています。
しかし
これらは
互いに依存していません。
つまり
同時に実行できます。
Graphという考え方
Graph Engineeringでは
仕事を
一直線
ではなく
グラフ
として考えます。
例えば
Web検索
/
Planner
\
PDF解析
\
GitHub検索
│
▼
情報統合
│
▼
レポート
になります。
これだけで
実行時間は大きく短縮されます。
Graphとは
Graphには
たった2つしかありません。
- Node
- Edge
です。
Node
Nodeとは
仕事
です。
例えば
Planner
Researcher
Reviewer
Coder
Writer
すべて
Nodeです。
Nodeは
「入力」
「処理」
「出力」
だけを持ちます。
つまり
一つの責務だけを担当します。
Edge
Edgeは
データの流れです。
例えば
Planner
↓
Researcher
ではありません。
重要なのは
Plannerの結果
↓
Researcherが利用
という
データ依存です。
Graphでは
順番ではなく
データの流れ
だけを考えます。
Graph Engineeringで最初に覚えること
「そして(Then)」
という言葉に騙されないことです。
例えば
ファイルを要約してください。
そして
天気を調べてください。
この2つは
関係ありません。
つまり
要約
天気
は
同時実行できます。
Parallel(並列実行)
Graph Engineering最大の特徴です。
例えば
100社を調査するとします。
従来は
会社①
↓
会社②
↓
会社③
↓
……
でした。
Graphでは
会社①
会社②
会社③
会社④
会社⑤
・・・
全部同時
になります。
Claude Codeでも
Dynamic Workflowは
この考え方を採用しています。
Fan-out
仕事を
分割します。
例えば
会社分析
↓
財務分析
市場分析
競合分析
AI導入分析
のように
複数Agentへ
仕事を配ります。
Fan-in
最後に
統合します。
財務
市場
競合
AI導入
↓
統合Agent
↓
提案書
これを
Fan-in
と呼びます。
Diamond Pattern
Graphで最もよく使われる形です。
Planner
│
┌────┼────┐
▼ ▼ ▼
Agent Agent Agent
└────┼────┘
▼
Synthesizer
つまり
分割
↓
並列
↓
統合
です。
Deep Research
コードレビュー
市場調査
ほぼすべてが
この構造になります。
Router
Graphは
途中で分岐できます。
例えば
重要案件
なら
詳細レビュー
へ。
軽微案件
なら
簡易レビュー
へ。
AIが判断し
コードが分岐します。
Verifier
Graph Engineeringでは
複数AIで
確認します。
例えば
SQLインジェクションがあります
という結果が出たら
別Agentが
本当に?
と確認します。
さらに
第三のAgentも確認します。
これだけで
誤検出は大きく減ります。
Pipeline
Pipelineは
待たない構造です。
例えば
100件のデータなら
A
↓
B
↓
C
ではなく
A①→B①→C①
A②→B②→C②
A③→B③→C③
のように
流し続けます。
Graphでは
Barrier(全員待ち)
より
Pipeline
を優先します。
Barrier
Barrierは
全員が終わるまで待ちます。
例えば
100件の検索
↓
全部終わるまで待つ
↓
統合
です。
Barrierは
必要な場所だけ使います。
Graph Engineeringのメリット
高速
並列実行できます。
高品質
Verifierを置けます。
安価
軽量モデルと
高性能モデルを
使い分けられます。
スケールする
Agentを
100個
1000個
へ増やせます。
Claude Codeとの関係
Claude Codeでは
workflow
と書くだけで
Graphを
自動生成できます。
例えば
workflow
src/routes配下を全部監査してください。
と書くと
Claudeは
- タスク分解
- Parallel
- Verifier
- Synthesizer
まで自動で設計します。
つまり
Graphそのものを
Claudeが設計する時代
になっています。
実践例① Deep Research
質問
↓
調査項目へ分解
↓
Web検索
論文検索
GitHub検索
ニュース検索
↓
重複除去
↓
Verifier
↓
レポート生成
実践例② AIコンサル
企業分析
↓
財務
競合
市場
AI導入
↓
提案書
↓
レビュー
実践例③ 教材作成
テーマ
↓
台本
画像
スライド
問題集
↓
レビュー
↓
動画生成
Graph Engineeringは次の時代
Prompt Engineeringでは
「何を聞くか」
が重要でした。
Agent Engineeringでは
「誰にやらせるか」
が重要になりました。
Graph Engineeringでは
「どうつなぐか」
が最も重要になります。
まとめ
Graph Engineeringとは
AIエージェントを
一直線ではなく
グラフ
として設計する考え方です。
重要なのは
- Node
- Edge
- Parallel
- Fan-out
- Fan-in
- Router
- Verifier
- Pipeline
です。
AIエージェント開発では
プロンプトを書く能力よりも
AIシステム全体を設計する能力
が今後ますます重要になるでしょう。
次回予告
次回は
Graph Engineering実践編
として
- Failure Isolation
- Loop until Dry
- Judge Pattern
- Model Tiering
- Topology
- Claude Code Dynamic Workflows
まで詳しく解説します。
シリーズ
- 第1回:Prompt EngineeringからAgent Engineeringへ
- 第2回:Graph Engineering入門(この記事)
- 第3回:Graph Engineering実践
- 第4回:Claude Codeで実践するDynamic Workflows
- 第5回:OpenAI Agents SDK・LangGraph・Google ADK比較
- 第6回:Monadoで作るAgent Operating System
- 第7回:AIエージェント実践事例