はじめに
こんばんは、mirukyです。
今回から、AWSのクラウド型コンタクトセンターサービス 「Amazon Connect」 について、複数記事に分けてご紹介していきます。
別記事で紹介しているEnd User Messaging SMSと共に、業務でかなり使用しているサービスですので、業務観点での解説も含めたいと思っています。
第1回となる本記事では、Amazon Connect の概要、料金体系、主要機能など、基礎情報を中心にお届けします。
目次
- Amazon Connectとは
- 従来のコンタクトセンターとの違い
- 主要機能
- 料金体系
- Amazon Connect を支えるAI機能
- 導入時の注意点
- 終わりに
1. Amazon Connectとは
Amazon Connect は、AWSが提供するクラウドベースのコンタクトセンターサービスです。
従来のコールセンター構築に必要だったPBX(構内交換機)や専用回線といった物理インフラが一切不要で、AWSマネジメントコンソールから数分でコンタクトセンターを立ち上げることができます。
もともとは Amazon.com 自身のカスタマーサービスで使用されていた内部システムを、外部向けに提供したものがAmazon Connectです。
Amazon Connect は、規模に応じてパーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを提供するための完全な AI 駆動ソリューションです。
対応チャネル
Amazon Connect はオムニチャネル(複数の顧客チャネルを統合したもの)に対応しており、以下のチャネルを単一のプラットフォームで管理できます。
| チャネル | 説明 |
|---|---|
| 音声通話 | インバウンド(着信)・アウトバウンド(発信)の両方に対応 |
| チャット | Webサイトやモバイルアプリに組み込み可能 |
| Eメール | 2024年に追加された比較的新しいチャネル |
| SMS | AWS End User Messaging SMS と連携 |
| ビデオ通話 | Web RTC ベースの対面サポート |
| タスク | 問い合わせに関連するフォローアップタスクの管理 |
2. 従来のコンタクトセンターとの違い
従来のコンタクトセンター(コールセンター)は、オフィスにPBX(構内交換機)を設置し、専用回線を引き、席数分のライセンスを購入して構築するのが一般的でした。
Amazon Connect は、こうした従来型の課題をクラウドの力で解消しています。
| 比較項目 | 従来型(オンプレミス) | Amazon Connect |
|---|---|---|
| 初期費用 | PBX機器・回線工事で数百万〜数千万円 | 0円(従量課金のみ) |
| 構築期間 | 数週間〜数ヶ月 | 数分〜数時間 |
| 拡張性 | 回線数・席数の物理的制約あり | 無制限にスケール |
| 契約形態 | 長期契約・最低利用期間あり | 最低利用期間なし |
| リモート対応 | VPN等の追加構築が必要 | インターネット接続があればどこからでも利用可能 |
| AI機能 | 別製品の導入・連携が必要 | 標準搭載(追加契約不要) |
| メンテナンス | 自社で保守・運用 | AWSがフルマネージド |
初期費用・構築期間
従来型では、PBX機器の購入・回線工事だけで数百万〜数千万円の初期投資が必要で、構築にも数週間〜数ヶ月かかるのが一般的です。
一方、Amazon Connect はAWSマネジメントコンソールから数分でインスタンスを作成でき、初期費用は一切かかりません。使った分だけ支払う完全従量課金制です。
前払い料金、長期契約、インフラストラクチャ料金はありません。
拡張性・契約形態
従来型は物理的な回線数や席数に制約があり、繁忙期に席を増やすには追加の機器購入やライセンス契約が必要でした。
Amazon Connect は、1席から数万席まで自動でスケールし、最低利用期間や長期契約の縛りもありません。繁忙期だけ席数を増やし、閑散期にはコストを抑えるといった柔軟な運用が可能です。
Amazon Connect のクラウドベースのコンタクトセンターは、あらゆる規模をサポートするために数十万のエージェントにスケールアップまたはスケールダウンできます。
リモート対応
従来型のコンタクトセンターでリモートワークを実現するには、VPN環境の構築やセキュリティ対策が別途必要でした。
Amazon Connect はブラウザベースのソフトフォン(CCP)で動作するため、インターネット接続さえあれば自宅からでもコンタクトセンター業務が可能です。
エージェントに必要なのは、サポートされているウェブブラウザとインターネット接続のみです。
AI機能・メンテナンス
従来型では、通話録音の文字起こしや感情分析を行うには、別製品の導入・連携が必要でした。
Amazon Connect では、Contact Lens(会話分析)やAmazon Q in Connect(AIアシスタント)といったAI機能が標準搭載されており、追加契約なしで利用できます。
また、インフラの保守・運用はAWSがフルマネージドで行うため、自社でサーバーの監視やアップデート対応を行う必要がありません。
Amazon Connect は、AI と ML を利用した機能を提供するため、エージェントのやり取りを自動化し、コンタクトセンターのパフォーマンスを深く理解することができます。
3. 主要機能
3-1. コンタクトフロー(IVR)
Amazon Connect の中核となる機能です。GUIベースのドラッグ&ドロップエディタで、着信時の自動音声応答(IVR)やルーティングロジックを視覚的に構築できます。
コンタクトフローでは、以下のような処理を組み合わせることができます。
他にも多くの処理ができますので、詳細はドキュメントをご覧いただければと思います。
| 処理 | 説明 |
|---|---|
| プロンプト再生 | 音声ガイダンスの再生(テキスト読み上げ or 録音ファイル) |
| 顧客入力の取得 | DTMF(プッシュボタン)や音声認識による入力受付 |
| 条件分岐 | 営業時間判定、入力値による分岐 |
| キュー転送 | 適切な担当者グループへの振り分け |
| Lambda呼び出し | 外部システム連携(CRM参照、DB検索等) |
| Amazon Lex連携 | 自然言語対話による高度なIVR |
主なフロータイプ
| フロータイプ | 説明 |
|---|---|
| コンタクトフロー | 着信時のメイン処理フロー |
| 顧客キューフロー | 顧客が待ち行列にいる間の処理 |
| 顧客ウィスパーフロー | 顧客とエージェント接続直前に顧客側で再生される案内 |
| エージェントウィスパーフロー | 接続直前にエージェント側で再生される情報(例:「○○の問い合わせです」) |
| エージェントへの転送フロー | 別のエージェントへ転送する際の処理 |
| キューへの転送フロー | 別のキューへ転送する際の処理 |
3-2. ルーティング
顧客からの問い合わせを最適なエージェントに振り分ける機能です。
| ルーティング方式 | 説明 |
|---|---|
| キューベース | 特定のスキルや部門ごとのキューに振り分け |
| スキルベース | エージェントのスキル(言語、専門知識等)に基づいて振り分け |
| 優先度ベース | VIP顧客や緊急度の高い問い合わせを優先処理 |
3-3. エージェントワークスペース(CCP)
エージェントが顧客対応を行うためのWebベースのソフトフォン画面です。
ブラウザさえあればどこからでもコンタクトセンター業務が可能です。
インスタンス画面右上の「Workspaceを接続」から入れます。
主な機能:
- 受電・発信・保留・転送
- 顧客情報のポップアップ表示
- チャット・Eメールの同時対応
- 通話後の後処理(ACW: After Contact Work)
3-4. リアルタイム&履歴メトリクス
| メトリクス種別 | 説明 |
|---|---|
| リアルタイムメトリクス | 現在のキュー状況、待ち人数、エージェント稼働状況をリアルタイム監視 |
| 履歴メトリクス | 過去の応答率、平均対応時間、放棄呼数などのレポート |

現在はデータは表示されていませんが、実際にフローを使用することでデータが溜まります。
4. 料金体系
Amazon Connect は完全従量課金制で、初期費用・最低利用期間はありません。
2025年3月の料金改定
2025年3月に「次世代 Amazon Connect」が発表され、AI機能(Contact Lens、Amazon Q in Connect 等)が通話・チャット利用料にバンドル(込み) される新料金体系に刷新されました。
主要な料金項目(東京リージョン)
| 項目 | 料金(税別) | 備考 |
|---|---|---|
| 音声通話利用料 | $0.018/分 | コンタクトフローでの通話時間 |
| 音声通話利用料(AIバンドル) | $0.038/分 | AI機能(Contact Lens等)込み |
| チャット利用料 | $0.004/メッセージ | 送受信1メッセージあたり |
| チャット利用料(AIバンドル) | $0.010/メッセージ | AI機能込み |
| タスク | $0.04/件 | タスク1件あたり |
| 電話番号保持料 | $0.10/日 | 1番号あたり |
| 着信通話料(DID) | $0.003/分 | 着信1分あたり |
| 発信通話料(国内) | $0.0780/分 | 日本国内発信 |
コスト試算例
| シナリオ | 構成 | 月額概算 |
|---|---|---|
| 代表電話(小規模) | 03番号1個、月3,000分着信 | 約8,500円($61) |
| コールセンター(中規模) | 月30,000分通話 + 10,000チャット + AI込み | 約18万円 |
コスト最適化のポイント
・音声通話の一部をチャットに誘導するだけで大幅なコスト削減が可能(音声: $0.018/分 → チャット: $0.004/メッセージ)
・利用していない電話番号を整理し、番号保持料を削減
・AI分析でFAQを強化し、自動処理率を向上させることで有人対応コストを削減
5. Amazon Connect を支えるAI機能
Amazon Connect には、以下のAI機能が標準搭載されています。
5-1. Contact Lens(会話分析)
通話やチャットの内容をリアルタイムで分析する機能です。
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| 自動文字起こし | 通話内容をリアルタイムでテキスト化 |
| 感情分析 | 顧客・エージェント双方のポジティブ/ネガティブをスコアリング(-5〜+5) |
| 自動要約 | AIが会話内容を数秒で要約。エージェントの後処理時間を大幅短縮 |
| キーワード検出 | NGワードや法定案内の抽出・自動フラグ |
| カテゴリ分析 | 問い合わせ内容のトレンドや問題発生を自動タグ付け |
| 通話録音・画面録画 | コンプライアンス・品質保証のための記録 |
5-2. Amazon Q in Connect(AIアシスタント)
エージェントの対応をリアルタイムで支援する生成AIアシスタントです。
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| 回答候補の自動提示 | 会話内容に基づいてナレッジベースから最適な回答を表示 |
| 顧客情報の自動表示 | 過去の問い合わせ履歴や顧客情報をコンテキストに応じて提示 |
| 対話要約 | 進行中の会話をリアルタイムで要約 |
| プロアクティブサジェスト | 次にエージェントが取るべきアクションを提案 |
5-3. 予測・スケジューリング
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| コンタクト量予測 | 過去データに基づき、将来の問い合わせ量をAIが予測 |
| 自動スケジューリング | 予測に基づいてエージェントのシフトを自動最適化 |
6. 導入時の注意点
| 注意点 | 詳細 |
|---|---|
| 電話番号の取得 | 日本の電話番号(03、050等)の取得には本人確認書類の提出が必要で、2週間程度かかる場合がある |
| 通話品質 | インターネット回線の品質に依存するため、安定した回線が必要 |
| 緊急通報 | Amazon Connect は110番・119番等の緊急通報には対応していない |
| ブラウザ要件 | エージェントワークスペースは最新のChrome または Firefox を推奨 |
| リージョン | 東京リージョン(ap-northeast-1)で利用可能。日本語の音声合成(Amazon Polly)にも対応 |
7. 終わりに
以上、Amazon Connect の基礎情報をご紹介しました。
まとめると、Amazon Connect は以下のような特徴を持つサービスです。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 初期費用ゼロ | PBX不要、従量課金のみ |
| 即時構築 | 数分でコンタクトセンターを立ち上げ可能 |
| オムニチャネル | 音声・チャット・Eメール・SMS・ビデオを一元管理 |
| AI標準搭載 | 文字起こし・感情分析・自動要約・AIアシスタントが追加費用なしで利用可能 |
| 無制限スケール | 1席から数千席まで柔軟に拡張 |
| リモート対応 | ブラウザとインターネットがあればどこからでも業務可能 |
前回までの AWS End User Messaging SMS シリーズと合わせて、AWSのコミュニケーション系サービスの理解を深めていただければ幸いです。
次回は、実際にAWSマネジメントコンソールからAmazon Connectインスタンスを作成し、簡単な着信フローを構築する手順をご紹介します。
では、またお会いしましょう。




