前置き
Qiita上には素晴らしい先人の方の記事として、「不思議の国のSE用語」というものがあります。網羅度を重視する方は、@t_nakayama0714さんのこの記事をお読みください。当記事では、もっとラフに、社会人歴数年(IT業界)の目線でよく聞くものをピックしようと思っておりますので、内容がスカスカなのはご了承ください。すかすか。アニメも原作も超大好きです。
はじめに
こんばんは。
夏に向けて暑さが増してきた今日このごろですが、先週末、大学時代の友人2人と宅飲みをしました(with宅配バー◯ン)。友達は2人とも非IT業界勤務(1人は新聞社勤務、もう1人は銀行勤務)なのですが、実は大学時代のいつメンはもう1人おり、そいつはIT業界勤務で絶賛炎上プロジェクトに従事しているらしく、不参加でした。幹事が自分だったこともあり、その理由を眼前の2人に説明しようと言葉を発しました。
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「あいつ、今プロジェクトが燃えてて不参加だってさ。結構大変そう」
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ITエンジニアをしている自分にとっては、ごくごく普通の会話です。おそらく同じ業種でこの意味がわからない人はいません。しかし、2人はきょとん、と目を丸くしていました。
あ、と思いました。「プロジェクト」って言葉はあんま聞かないよな、と。
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「ごめんごめん、プロジェクトっていうのは何というか、、チーム仕事みたいな」
$$
と自分が言うと、
$$
「違う違う、そうじゃない。あいつの仕事関連でSNSか何かが炎上したのか?」
$$
と銀行勤務の友達から真剣な眼差しで言われました。新聞社勤務も同じ表情してました。
頭の中で、鈴木雅之さんの「違う、そうじゃない」のワンフレーズが流れました。
おっとっと。こう捉えられるのは想定外でした。考えてみれば、片方は新聞社勤務なので投稿した記事などの炎上リスクを気にしているような業種ですし、銀行で炎上と言えば、記憶に新しい最近の、、、(省略)。
これはほんの一例ですし、たまたま相手が新聞社勤務、銀行勤務だったため起きた話です。IT業界だけでなく、コンサルなどのプロジェクト型の働き方をする業種であれば「燃える」程度は通じるはずです。しかし、さすがに「立てる」とか「なめる」、「怒られる」などのIT業界独特の言い回しは他の業種には通じないでしょう。この記事では、そういったIT業界にはびこる、よく考えたら謎な用語をまとめてみようと思います。
目次
- ファイヤーファイター
- コンピュータは生きている
- システムが建物になり、そして父になる
- 処理は走って飛んで、たまにコケてしまうお調子者
- データをなめて抜いて、なにそれおいしいの
- システムも低気圧だと体調悪いのかな
- 同じ言葉なのにITとビジネスで意味が変わる
- 会議室でスポーツするビジネス
- ビジネス側の特にスケジュール関連のことばたち
- 昭和ビジネス用語?
- エンジニア界隈のあるある用語
- 凡人の考察
- 個人的に気をつけること
- 蛇足編、すかすかのアニメ最終話の感想をかく
1. ファイヤーファイター
この記事のきっかけになった「燃える」から始めます。親戚に本物の消防士がいるのですが、とても屈強で格好良いです。
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\Large \text{① 燃える・炎上}
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納期、予算、品質、体制などに重大な問題が生じ、通常の進め方では収拾が難しくなった状態です。
「炎上案件」、「燃えているプロジェクト」のように使います。火種が小さいうちは「ちょっと燻ってる」、手がつけられなくなると「大炎上」と、例えの火事の深刻さがそのまま意味に直結します。友達が想像したSNSでの炎上は、批判や攻撃的な反応が短期間に集中し、広く拡散する状態のことです。対象は違いますが、どちらも問題が制御できない勢いで広がる様子を火事に例えた表現ですね。
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\Large \text{② 火消し}
$$
炎上したプロジェクトを鎮める作業や、そのために投入される人のことです。
多くは経験豊富なエンジニアやマネージャーが途中から送り込まれ、原因の切り分け、優先順位の付け直し、関係者との調整までをまとめて引き受けることになります。ゼロから機能を作るより、すでに燃えている現場を立て直すほうがよほど難しいので、火消しができる人は当然重宝されます。ただし、恐らくどんな人間であれ炎上案件にばかり従事していると心を痛めることになるので、できればやりたくないに決まっています。
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\Large \text{③ デスマーチ}
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過酷な長時間労働が続く、消耗しきったプロジェクトのことです。
ソフトウェア開発における「デスマーチ」は、エドワード・ヨードンが1997年の著書や記事で定義・紹介したことで広く知られるようになりました。ヨードン本人は、当時すでにこの言葉を耳にするようになっていたと述べているため、言葉そのものを作ったというより、ソフトウェアプロジェクトの概念として広めた人物と考えるのが正確です。語源は、捕虜などに十分な休息も与えず長距離を歩かせる「死の行軍」です。ヨードンは、合理的に期待できる水準よりスケジュールや予算が50〜100%厳しいプロジェクト、または失敗する可能性が50%を超えるプロジェクトを、デスマーチの例として説明しています。本来必要な期間や人員が大きく削られている状態などが該当します。語感は冗談のようですが、定義はかなり真面目です。デスマーチから始まるエンジニア生活にはなりたくないですね。
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\Large \text{④ 技術的には可能です}
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実装はできるが、現実的とは限らない、という含みを持った言葉です。
「技術的には可能です」の「には」には、技術的にできはするものの、大変なのでやりたくない、とか別の考慮事項によってやらないほうが良いのではないか、という意志が詰まっています。たとえば、工数が跳ね上がる、保守できる人がいなくなる、運用が回らなくなる、といった考慮事項です。可能かどうかだけを聞いて押し切ると、あとで全員が苦しむので、続きの本音まで引き出すのがおすすめです。
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\Large \text{⑤ 運用でカバー}
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仕組み(システム)で自動的に防ぐのではなく、人の手作業やダブルチェックで補うことです。
短期的には開発コストを抑えられますが、その負担は運用担当者へ移るだけで、人が介在するぶんミスの可能性もついて回ります。「そこは運用でカバーで」と気軽に決まった案件は、後で誰かが手順書とにらめっこしながら静かに頑張ることになります。本来は、何度もくり返す作業ほど、人ではなくシステム側へ寄せるのが健全なのですが、現場ではそううまくはいかないことも多々あるようです、、。
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\Large \text{⑥ 握りつぶす}
$$
発生したエラーや例外を、ログにも残さず、再通知もせずに、こっそり無視してしまうことです。
プログラムは一見動いているように見えますが、問題が起きても誰も気づけなくなるため、後から原因を追うのが非常に難しくなります。「例外を握りつぶしてますね」とレビューで言われてしまいたくはないです、想像するだけでこわい。エンジニアとして当然ですが、ログには残しましょう。
2. コンピュータは生きている
IT業界の謎用語で最初に戸惑うのが、機械を生き物のように扱う言い回しです。サーバーやプロセスは、生きて、死んで、ときどきコロされます。一応補足すると、プロセスとは現在実行されているプログラムのことです。
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\Large \text{① 生きる}
$$
「対象サーバー、まだ生きてる?」のように、まずは生死の確認から障害対応が始まります。ここでいう「生きている」は、pingが返る、プロセス一覧に存在する、といった「とりあえず動いている」レベルの話で、正しく仕事をしているかどうかまでは保証しません。本当に健全かどうかは、ヘルスチェックやログ、別途動作確認などで確かめます。
$$
\Large \text{② 死ぬ}
$$
これは、無意識で使っちゃうことが多いです。「夜間バッチが死んでました」のように、気づいたときには止まっていた、という文脈でよく使われます。落ちる・倒れると近い意味ですが、「死ぬ」はプロセス単位の停止にも、機器そのものの停止にも幅広く使えます。原因が分からないまま止まっていたときの、あの嫌な予感まで込みの一語です。
$$
\Large \text{③ 殺す}
$$
これはネット上で見かけたことはありますが、昨今のコンプラ規制によるものなのか私の周囲ではほぼ聞きません。普通にkillって言ってますね。「応答ないので一旦殺します」のように使うらしいです。物騒な響きですが、実際のLinuxコマンドもズバリ kill なので、言葉どおりではあります。ちなみに kill は本来、プロセスへシグナルを送るコマンドです。通常の kill では、終了処理の機会を与える SIGTERM が送られます。それでも止まらない場合に、強制終了させる kill -9、つまり SIGKILL が使われます。
$$
\Large \text{④ 倒れる}
$$
「アクセス集中でサーバーが倒れた」のように使います。死ぬとほぼ同義ですが、「倒れる」は処理しきれずに力尽きた、というニュアンスが少し強く出ます。まだやること残ってるのに、倒れちゃった的な感じです。テレビで紹介された、セールが始まった、といった想定外のアクセスでサーバーが倒れる話は、エンジニアにとってちょっとしたホラーではあるものの、少なくともセールなどは事前から把握して、オートスケーリングなどの対応を考えておく、といった対応が求められますが、コスト的に実現できるかどうかはそのプロジェクト次第ですね。
$$
\Large \text{⑤ 食う}
$$
CPUやメモリ、ディスクなどのリソースを大量に消費することです。
「この処理、メモリを食いますね」のように使います。少し食うくらいなら問題ありませんが、食いすぎるとほかの処理に回す余裕がなくなり、最終的にはサーバーが倒れる原因になります。どこが一番食っているのかを突き止めることが、性能改善の第一歩です。よくエンジニアからはChromeはメモリ食い虫と言われますが、本当に1つのタブでも結構食われています。
$$
\Large \text{⑥ 食わせる}
$$
システムやプログラムにデータを取り込ませて処理させることです。
さっきの「食う」とは意味が違うので注意ですね。「本番相当のデータを食わせます」のように使います。とくにテストの場面で多く、わざと大量のデータや変な値を食わせて、壊れないか、遅くならないかを確かめます。きれいなデータしか食わせていないと、本番で初めて未知の値に出会って事故になりがちです。ちなみに、長年運用しているシステムだったり、運用中にデータ基盤が汚くなってしまっている場合のデータ準備はめちゃめちゃ大変です、、。
$$
\Large \text{⑦ 吐く}
$$
これまためちゃくちゃ使います。「どんなエラーを吐いてますか?」のように使います。障害対応では、まずシステムが何を吐いているかを読むのが基本で、エラーメッセージは原因にたどり着くための最大のヒントになります。逆に、何も吐かずに静かに失敗するプログラムが、いちばん怖いですし、厄介です。
$$
\Large \text{⑧ 喋る}
$$
これは最近ではあまり聞かないですかね。上の世代と話すときはたまに聞きます。「この機器、HTTPSを喋れます?」のように使います。同じネットワークにつながっていても、お互いが同じ言葉(プロトコル)を喋れなければ会話は成立しません。新しい機器やサービスを組み合わせるときは、まず「何を喋れるのか」を確認するのが定番の流れです。
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\Large \text{⑨ 怒られる}
$$
「型が違うって怒られました」。たまに聞く話ですが、コンパイラを「先生」に見立てて、先生から怒られては改善を繰り返して一人前のプログラマーになります。赤文字で警告やエラーを出されることが多いので、より怒られたと感じるんですかね。不思議なもので、ITを学び始めた最初は違和感しか無かった表現ですが、今では馴染んでしまっています。
3. システムが建物になり、そして父になる
機械が生き物なら、システムは建物や土地です。立てて、入って、掘って、区切ります。と思ったら、親になったり子になったりもします。
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\Large \text{① 立てる}
$$
「検証用にWebサーバーを立てます」のように使います。物理的に何かを建てるわけではなく、クラウドや仮想環境の上に必要な設定を整えて起動するまでを、まとめてこう呼びます。最近はコマンド数行で立てられるので、「ちょっと立てておきます」という気軽さも言葉ににじんでいます。クラウドであればポチポチでドーンっと立てられます。
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\Large \text{② 入る}
$$
サーバーや環境にログインして、中で操作できる状態になることです。
「あのサーバー、入れます?」は、アクセス権限があるかどうかの確認も兼ねています。物理的にサーバールームへ入るわけではなく、SSHなどでリモート接続することを指すのがほとんどです。逆に「入れない」と言えば、権限不足かネットワークの問題を疑う感じです。こう字面で書くと不思議な表現な気がしますね。
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\Large \text{③ 開ける・閉じる}
$$
ファイアウォールなどで特定のポートや通信を許可することを「開ける」、許可しない状態にすることを「閉じる」と表現します。
「443番(HTTPS)だけ開けてください」のように、番号で会話が進みます。必要な通信だけを開け、それ以外は閉じておくのがセキュリティの基本で、なんでも開けてしまうと攻撃の入り口を増やすことになります。ちなみに、AWSのセキュリティグループには明示的な拒否ルールはなく、許可ルールを削除する、または追加しないことで通信を閉じます。必要なポートが閉じたままだと「つながらない」の原因になります。新人あるあるとして、インバウンド通信の送信元を全許可で開けてしまい、上司から指導を受ける、みたいなものもあります。
$$
\Large \text{④ 掘る}
$$
まぁまぁ聞くぐらいですかね。頻繁には聞きません。「ログ用に一段掘ります」のように使います。深い階層へ降りていく操作を指すこともあり、文脈によって「作る」と「降りる」のどちらの意味にもなります。見通しなく掘り進めると、あとから目的のファイルにたどり着けなくなるので、ほどほどの深さが肝心です。お芋ほりほり。
$$
\Large \text{⑤ 切る}
$$
これはめちゃくちゃ聞きます。ネットワークなら「サブネット」などの領域の分割、Jiraなどの課題管理なら「チケットを切る」、Gitなら「ブランチを切る」と、相手が何の話をしているかで指すものが変わる、割と新人泣かせの一語です。何を切るのかで判断できます。
$$
\Large \text{⑥ 生やす}
$$
「作業用のブランチを生やします」。切ると似ていますが、こちらは何もないところから増やすイメージです。余談ですが、GitHubでcontributeしまくっている人のcontribution graph(プロフィールページのやつ)は緑がたくさんあるので、「たくさん草を生やしている」とか言います。ネット用語では笑いを表す意味でも「草が生える」は使われていますよね。
$$
\Large \text{⑦ 焼く}
$$
CD-R、DVD-R、USBメモリ、SDカードなどの記録媒体へ、データやディスクイメージを書き込むことです。
これはむしろエンジニアになる前によく聞きましたが、上の世代の方々はかなり聞き馴染みがあるだろうと思い、いれています。「SDカードにイメージを焼く」「USBに焼く」のように使います。もともとはCD-RやDVD-Rなどの光ディスクへ、レーザーでデータを書き込むことを「焼く」と呼んだ表現です。現在は、OSイメージをUSBメモリやSDカードへ書き込む場合にも使われます。OSイメージの場合は、単なるファイルコピーではなく、起動に必要な構成ごと媒体へ反映するニュアンスがあります。
$$
\Large \text{⑧ 親・子}
$$
プロセス、チケット、テーブル、画面部品などが階層関係を持つときに使う言葉です。
「親チケットに子チケットをぶら下げます」「親テーブルと子テーブルの関係です」のように使います。IT業界では、理解のしやすさからだと思いますが、急に家族構成が始まります。親が全体をまとめ、子が細かい作業やデータを持つ、というイメージです。非ITの人に「この子は親を持っていて」と説明すると、「ん?」となって、より詳細な説明が必要になります。
4. 処理は走って飛んで、たまにコケてしまうお調子者
プログラムや処理は、人間のように走り、飛び、ときどき転びます。動きを表す動詞は、特に種類が豊富です。
$$
\Large \text{① 走る・走らせる}
$$
もはや日常レベルで使う言葉です。「裏で集計処理が走ってます」のように使います。自分が画面の前で待っている処理にも、バックグラウンドで黙々と動いている処理にも使え、後者は「裏で走らせておく」と言ったりします。「並行して走らせます」みたいにもよく言いますね。走り始めたら終わるまで余計に触らない、というのが暗黙のマナーです。
$$
\Large \text{② 流す}
$$
バッチやテスト、データなどを、一連の処理へまとめて投入することです。
「修正版でテストを流します」のように使います。ひとつずつ手で確認するのではなく、用意した処理に一気に通すイメージで、「とりあえず全部流して結果を見る」という使い方が多いです。流したあとに何件こけたかの確認までがセットですね。書いていて思い出したのですが、ととべんきのうたって知っている方いますか。もしかしたら同世代かもしれません。ながーせながせみたいな歌です。
$$
\Large \text{③ 回す}
$$
これは一般的な使い方からも想像がつきやすいです。「数日処理を回してみて、様子を見ましょう」のように使います。一度動いただけでは分からない、メモリの少しずつの増加や、まれにしか起きない不具合をあぶり出すために、あえて長く回します。物理的に時間がかかるのであまりやりたくはありませんが、やむを得ない場合も多し、です。回レ!雪月花という歌では、もう、とんでもなく回っています。とても良い歌です。
$$
\Large \text{④ キックする}
$$
イメージはまさにキックオフ!です。「午前1時に日次処理がキックされます」のように使います。自分で手動でキックする場合もあれば、スケジューラーや特定のイベントで自動でキックする場合もあります。比較的理解がしやすい用語です。
$$
\Large \text{⑤ 叩く}
$$
コマンドを実行したり、APIへリクエストを送ったりすることです。
でました、IT業界、というかITエンジニア特有の言い回しでよく見るやつです。「APIを叩きます」のように使います。APIとセットの文脈もあれば、コマンドの文脈も多いです。実際にキーボードを叩くので、よく考えるとあまり違和感ないかも、と思いましたが、もしかしたらキーボードを叩くという言い回し自体非ITの方はあまりしないのでしょうか。今街頭インタビューしてきたのですが、キーボードを「打つ」と言う人が結構な割合でいました。
$$
\Large \text{⑥ つつく}
$$
人やシステムに軽く働きかけて、反応や状態を確認することです。
「ちょっとAPIをつついてみます」「先方をつついておきます」のように使います。叩くよりも少し弱めで、強く実行するというより、軽く刺激して返事を待つニュアンスです。字面だけだと小学生のちょっかいですが、現場では疎通確認や催促の言葉としてたまに出てきます。おでんはきちんと買ってから家でつんつんしましょう。
$$
\Large \text{⑦ 呼ぶ}
$$
日常レベルでよく使います。これの由来はcallでしょうね。例えば、「この関数を呼べば値が返ります」と言います。呼び出す、とも言います。これももはや日常レベルの言葉です。
$$
\Large \text{⑧ 通す}
$$
テストやレビュー、ビルドなどの関門を、問題なくパスして次へ進めることです。
さっきのcallみたく、今回の由来はpassですかね。「レビューを通してからマージします」のように使います。通らなければ先に進めない、というニュアンスを持っており、品質を守る防波堤的な意味も含まれている気がします。
$$
\Large \text{⑨ 飛ぶ}
$$
もはや日常レベ(略)。前者の意味では「障害が発生し、アラートが飛びました」、後者の意味では「再起動でメモリ上のデータが飛びます」といったりします。同じ動詞で、正常な動作(ただし起点は異常な動作)と事故が同居しています。
$$
\Large \text{⑩ コケる}
$$
「夜間バッチがコケました」のように使います。最後まで走りきれずに転ぶイメージで、なぜコケたのかはログを見て調べます。朝出社したらバッチがコケていた、というのはエンジニアにとって嫌な一日の始まり方あるあるです。例えコケても運動神経を発揮して踏ん張ってほしいものです。
$$
\Large \text{⑪ 踏む}
$$
潜んでいたバグや不具合を、操作の過程で引き当てて発動させてしまうことです。
「特定条件でバグを踏みます」のように使います。良くないものを踏んでしまうイメージで、自分は悪くないのに、たまたま条件がそろって被害を受ける、というニュアンスが少し感じられます。誰かが先に踏んでくれたバグは、再現手順が分かるぶん直しやすくなります。
5. データをなめて抜いて、なにそれおいしいの
データやログもまた、独特の動詞で扱われます。なめたり、抜いたり、逃がしたり。ここまでの章まとめで、何が一般的な用途なのかよくわからなくなってきてしまいました。
$$
\Large \text{① なめる}
$$
最初これを聞いたときはちょっぴりだけ引きました。今となっては日常レベルの言葉です。「テーブルを全件なめます」のように使います。現実世界でも、相手のことを上から下までじっくり見ることを「なめるように見る」とか言いますよね。まさしくそのイメージです。
$$
\Large \text{② 抜く}
$$
「障害時刻の前後だけログを抜いて」のように使います。全部を見ると膨大すぎるので、クエリで条件を絞って関係しそうな箇所だけを抜き出す、という調査の基本動作です。どこを抜けば原因にたどり着けるか、その勘どころにめちゃくちゃ経験の差が出ると考えています。経験年数の浅さをカバーできるのは、運用しているシステムへの深い理解ですね。
$$
\Large \text{③ 逃がす}
$$
消失や破損を避けるために、データを安全な別の場所へ退避させることです。
「消す前に別バケットへ逃がす」のように使ったりします。危ない操作の前に、念のため元データをコピーして取っておく、という保険的なニュアンスがあります。逃がしておけば、もし操作を間違えても戻せるので、慎重な人ほどこまめに逃がします。インシデントを防ぐためにも、このマインドは真似するのがオススメです(元々バックアップしているのが理想)。
$$
\Large \text{④ こぼす・取りこぼす}
$$
本来は処理すべきデータの一部を、処理しきれずに漏らしてしまうことです。
これは割とそのままの意味です、IT業界用語とは言えないかも?結構使うので一応紹介しました。「この条件だとイベントを取りこぼします」のように使います。全部できているように見えて、端のケースだけ静かに抜け落ちている、という怖さがあります。別ロジックで集計した件数が合わない原因を追うと、たいていどこかで取りこぼしている、というのはよくある話です。
$$
\Large \text{⑤ 渡す}
$$
言わずもがな、日常レベルで使います。「関数にユーザーIDを渡します」と言ったりします。次の処理が正しく動くかどうかは、何をどんな形で渡すかにかかっていて、渡す中身を間違えるとそこから先が一気に崩れます。投げると似ていますが、渡すは「相手がきちんと受け取る前提」の、もう少し穏やかな受け渡しだと思われます。
$$
\Large \text{⑥ 投げる}
$$
「このJSONをAPIに投げます」のように使います。渡すよりも一方的で、「送ったあとは相手しだい」というニュアンスが少し強い言葉です。プログラム内部で問題を上位へ送る「例外を投げる(throw)」のような使い方もあり、技術用語としても定着しています。
$$
\Large \text{⑦ 配る}
$$
サーバーなどから、多数のクライアントへデータを届けることです。
「CDNから配ります」「設定ファイルを各端末に配る」のように使います。1対多で同じものを行き渡らせるイメージで、いかに速く、もれなく配るかが設計のポイントになります。次の「取りにいく」とは、データが動く向きがちょうど逆です。
$$
\Large \text{⑧ 取りにいく}
$$
「変更があればサーバーへ取りにいきます」。配ると取りにいくは、ちょうど反対向きの動きです。配るが宅配だとすれば、取りに行くはお持ち帰りサービスですね。現実ではお持ち帰りすると大抵お得になります。
$$
\Large \text{⑨ 突っ込む}
$$
めちゃめちゃ使います。例えば、「検証データをDBに突っ込みます」のように使います。きれいに整える前に、とりあえず放り込む、という勢いのある語感があります。手早く試すときには便利ですが、変なデータを突っ込むと後で整合性が崩れるので、慎重に行いましょうね。
$$
\Large \text{⑩ 固める}
$$
イメージはしやすい言葉かもです。「ログをtarで固めて送ります」のように使います。バラバラのファイルを1つにすると、受け渡しや保管がぐっと楽になります。ちなみにビジネスの会話では「方針を固める(確定させる)」の意味でも使われ、同じ言葉が文脈で分かれる例でもあります。言葉のイメージ的には同じようなものです。
$$
\Large \text{⑪ ガッチャンコ}
$$
どうでも良いですが、実際に自分が非ITの友達にGitのマージを説明するときに使った表現です。本来は「2つのCSVをガッチャンコします」のように使います。よく考えると擬音がそのまま動詞になってますよね、おもしろい。
6. システムも低気圧だと体調悪いのかな
サーバーやアプリには、人間の体調のような言葉が当てられます。重かったり、固まったり、張り付いたり。問診票のような語彙です。ちなみに自分は片頭痛持ちなので、起きた瞬間に今日の天気がわかる異能を持っています。
$$
\Large \text{① 立ち上がる・落ちる}
$$
サーバーやプロセスが起動すること(立ち上がる)、意図せず停止すること(落ちる)です。
これはエンジニアに限らない用語かもしれません。「またサーバーが落ちた」のように使います。「立ち上がる・落とす」と他動詞になると、自分の意思で起動・停止する意味になり、勝手に止まる「落ちる」とは責任の所在のニュアンスが変わります。ファイルのアップロード・ダウンロードを指す「上げる・落とす」もあり、文脈で読み分けが必要です。実際にあったかは不明ですが、パソコン教室に来ていたご高齢の方に向かって講師が「パソコンを立ち上げてください」といったところ、そのご老人が席から立ち上がってしまったみたいな微笑ましい話があったりします。
$$
\Large \text{② 寝ている}
$$
サーバーやジョブ、機能などが起動していない、または使われず止まったままになっている状態です。
これは情報系出身の人がめっちゃ言っている勝手なイメージがあります。「そのバッチ、今寝てます」、「寝てるのでプログラム流して起こさないと」のように使います。コールドスリープ的な意味合いで使われることも多い印象があります。
$$
\Large \text{③ 固まる}
$$
これはITとか関係ないかもです。「画面が固まった」、「アプリが固まった」のように使います。処理が重すぎる、無限ループに入った、どこかで詰まった、など原因はさまざまで、見た目はどれも「動かない」になります。少し待てば戻ることもありますが、戻らなければ強制終了(殺す)の出番です。
$$
\Large \text{④ 溶かす}
$$
固まった状態や凍った状態を解除して、また動くようにすることです。
個人的にはほんとたまに聞くレベルです。「固まったジョブを溶かします」のように使うことがあります。厳密な技術用語というより現場の比喩で、止まっていたものを再開させる、ロックや保留状態を解く、といった意味合いです。固まるがあるなら、溶かすもある、シンメトリーですね。
$$
\Large \text{⑤ ハマる}
$$
問題から抜け出せず作業が止まること、または条件にうまく合うことです。
なにかに熱中する一般的な意味合いとは異なり、前者のイメージとしては側溝に足がハマって抜けない、みたいな感じです。後者は、凸凹がかっちりとハマったあの気持ち良い感覚です。「環境構築でハマってます」、「うまい感じにハマりました」みたいに使います。良い意味でも悪い意味でも使われます。
$$
\Large \text{⑥ 張り付く}
$$
CPUやメモリの使用率が、高い数値のまま下がらない状態のことです。
これは月1くらいの低い頻度で聞きます。「CPUが100パーセントに張り付き」のように使います。一瞬だけ高いのは問題ありませんが、張り付いたまま戻らないのは、処理が詰まっているか、無駄に働き続けているサインです。監視グラフが天井に張り付いていたら、まず疑うべき状態です。こうなると運用担当者はPCの前に張り付かないといけなくなるので、そこも掛詞的な意味があるのでしょうか。
$$
\Large \text{⑦ サチる}
$$
リソースが飽和して、これ以上さばけなくなった状態のことです。
これも情報系出身の人がやたら言っているイメージがあります。英語の saturate(飽和する)が語源で、「帯域がサチってます」のように使います。コップが満杯になってあふれる手前のイメージで、サチるといくら流しても処理量は増えず、待ち時間だけが伸びていきます。性能の上限にぶつかっているサインなので、増強や見直しの検討どきですね。
$$
\Large \text{⑧ 枯れる}
$$
「枯れた技術」みたいな文脈で聞くことが多いです。普通なら枯れるはネガティブですが、技術の世界では実績やノウハウが蓄積して安定していることを意味します。最新より枯れた技術が喜ばれる場面は珍しくありません。この「枯れる」のイメージはIT業界の人とそれ以外の方で大分異なると思うので、面白いですよね。
$$
\Large \text{⑨ ガバガバ・ガチガチ}
$$
設定や制約が緩すぎること(ガバガバ)、または厳しすぎること(ガチガチ)です。
ガバガバはよく聞きます。「権限設定がガバガバです」、「ルールがガチガチで動きにくい」のように使います。ガバガバはセキュリティ事故の温床になり、ガチガチは作業効率を落とすので、ちょうどよい塩梅を探すのが腕の見せどころです。このトレードオフが難しいですよねー。どちらも擬態語がそのまま形容詞になった例です。
$$
\Large \text{⑩ サクサク・ヌルヌル}
$$
ゲームをよくする方はfps(FPSでなくフレームのほう)的な文脈で聞き馴染みがあると思います。「新環境、サクサク動く」、「スクロールがヌルヌル」のように使います。サクサクは反応が速くテンポよく進む様子、ヌルヌルはアニメーションが滑らかな様子を指すことが多いです。どちらも褒め言葉です。
7. 同じ言葉なのにITとビジネスで意味が変わる
同じ単語でも、エンジニア同士の会話とビジネスの会話で、意味がきれいに分かれます。文脈を取り違えると、地味に話が噛み合わなくなります。
$$
\Large \text{① 上げる}
$$
ITだと、起動やファイルのアップロードを行うことで、ビジネスだと、上司や上位部署へ報告・エスカレーションすることです。
「サーバー上げといて」と「この件、上に上げといて」では、同じ「上げる」でも行き先が機械か人かで正反対になります。きちんと文脈を押さえておけば問題ナシです。
$$
\Large \text{② 落とす}
$$
ITだと、停止やファイルのダウンロードを行うことで、ビジネスだと、上から現場へ方針や指示を下ろすことで、要件を削るという意味で使われることも多いです。
上げるの対になる意味の方では、こちらも機械を相手にするのか、組織の上下を指すのかで意味が分かれます。要件の意味では、「落とす」とか「劣後」とか言って要件を削ったり、優先度を落として次フェーズ対応にしたりします。
$$
\Large \text{③ 投げる}
$$
ITだと、データや例外を送ることで、ビジネスだと、仕事や質問を相手へ依頼することです。
この言葉はビズ側(ビジネス)もDev側(開発側)も結構頻繁に使うかもです。「この件、田中さんに投げといて」は依頼ですが、エンジニアが「例外を投げる」と言えば、プログラム内部のエラー通知の話です。あと自分用語で、「投げ出す」は「仕事を放棄すること」です。
$$
\Large \text{④ バッファ}
$$
ITだと、データを一時的にためておく記憶領域や、そのための仕組みを指すことが多いです。ビジネスだと、予定や予算、工数に持たせておく余裕を指します。
「少しバッファを見ておきます」と言われたら余白の話ですが、「バッファに積まれている」と言われたら、データが一時待機している話です。同じ余裕でも、片方は人間の計画、もう片方はコンピュータの一時置き場です。これも文脈を押さえておけば問題ナッシングですね。
$$
\Large \text{⑤ 重い}
$$
ITだと、処理が遅い、またはリソースを多く使うことで、ビジネスだと、判断や責任が重大なことです。両者に共通して、タスクが工数的に大きい時にも重いと言うこともあります。
割と世間的に画面が重いとかは言いますよね。仕事の中で「この処理、重いね」はチューニングの相談ですが、「重い決断」は覚悟の話で、両者に共通して「タスク重いな」とも言います。重い決断を下すのは上の人なので、ジュニアレベルのエンジニアは処理が重いほうをよく言いますが、上の人の「重い」というぼやきもよく聞くかもです。
8. 会議室でスポーツするビジネス
コードを書かない会議でも、謎用語は飛び交います。ボールを持ったり、握ったり、壁打ちしたり。スポーツと相談が入り混じった謎な空間がそこにあります。これまでと違い、通常の用途ですが理解が難しい、みたいな単語もちょっと紹介します。
$$
\Large \text{① ボールを持つ}
$$
ある仕事や判断について、今その対応の責任が誰にあるかを表します。
ビズ側との会話では必須級で使います。「ボールはこちらで持ってます」、「誰ボール?」のように使うことが多いです。誰がボールを持っているかが曖昧なまま放置されると、タスクが宙に浮いて誰も進めない、という事態になります。だからこそ、打ち合わせの最後に「これは誰のボール?」と確認するのが大切です。タスクのキャッチボールをしているイメージですね。
$$
\Large \text{② キャッチアップ}
$$
事あるごとに使います。「この件、キャッチアップしておきます」のように使います。休み明けや途中参加の人が、これまでの経緯をざっと追う場面でよく出ます。大項目としては紹介しませんが、似た言葉として「KT」、「ナレトラ」というものがあります。どちらもKnowledge Transfer、つまり知識移転の意味で、詳しい人が新しく入った人や後任へ知識を渡す場面で使われます。キャッチアップは受け手が追いつく行為、KTやナレトラは渡す側が説明して引き継ぐ行為、という違いです。「明日ナレトラお願いします」と言われると、だいたい資料を見ながらシステムの経緯や注意点を教えてもらう会が始まります。
$$
\Large \text{③ 握る}
$$
納期や金額、進め方などの条件を、関係者と事前に合意して固めることです。
例えば「この要件、先方と握れてましたっけ?」のように使います。口約束でも「握った」と表現しますが、後で言った言わないにならないよう、本当はメールなどに残すのが安全です。握れていない状態で進めると、終盤でちゃぶ台返しを食らいがちです。
$$
\Large \text{④ ネゴる}
$$
よく聞くわけではないですが、たまに聞きます。英語の negotiate (交渉する)が語源で、「金額はこちらでネゴっておきます」のように使います。価格や納期、仕様など、そのままでは折り合わない部分を、話し合って落としどころを探る場面で登場します。
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\Large \text{⑤ プッシュ}
$$
相手に催促したり、前に進むよう強く働きかけたりすることです。
頻繁に聞きます。例えば「先方にプッシュしておきます」のように使います。返事が遅い、決まりかけが止まっている、といった場面で背中を押す行為を指します。ちなみにGitの「プッシュ(push)」とはまったくの別物なので、文脈を取り違えないよう注意です。
$$
\Large \text{⑥ たたき台}
$$
議論を始めるための、たたいて直す前提の暫定的な案や資料のことです。
「たたき台を作っておきます」のように使います。完璧を目指さず、まず形にして叩いてもらうことで議論が一気に進みます。ゼロから全員で考えるより、誰かがたたき台を出したほうが速い、というのは多くの現場の経験則です。
$$
\Large \text{⑦ 揉む}
$$
案や資料を、関係者同士で意見を出し合いながら詰めていくことです。
またまた頻繁に聞くやつです。「この案、もう少し揉みましょう」のように使います。完成版にする前に、角を取り、抜け漏れを減らし、落としどころを探ります。個人的には、唐揚げのために鶏肉の下味をつけるべく、調味料を入れた袋に鶏肉を入れて揉むみたいなイメージを持っています。揉むだけ揉むだけ、30秒ですね。これをやって数時間放置するだけでめちゃくちゃ美味しい唐揚げが作れます。
$$
\Large \text{⑧ ペライチ}
$$
「まずペライチで概要を」のように使います。分厚い資料より、1枚で全体像が見えるほうが、忙しい人にはありがたい、という発想です。情報を1枚に収めるには取捨選択が必要なので、作る側の理解度もかなり試されます。いつも思うのですが、コンサルの人って凄いです。
$$
\Large \text{⑨ ポンチ絵}
$$
厳密な設計図ではなく、全体像や仕組みをざっくり示したラフな図のことです。
何気によく聞きます。例えば、「ポンチ絵で構成を共有します」のように使います。細部の正確さより、関係者が同じイメージを共有することを優先した図で、議論のたたき台としてよく使われます。
$$
\Large \text{⑩ 壁打ち}
$$
もはや日常レベルで良く聞きます。「30分ほど壁打ちさせてください」とか「俺のことは壁打ち相手としてでも使って」とか言ったりします。もとは一人でテニスの練習をする言葉で、相手は壁役なので無理に答えを出さなくてよい、という暗黙の了解もセットです。最近はAIとの壁打ちもよく聞きますね。
$$
\Large \text{⑪ 空中戦}
$$
資料や数字などの具体的な根拠がないまま、口頭の意見だけで議論がふわふわ進むことです。
たまに聞きます、意味が想像しやすい言葉ですね。「このままだと空中戦になるので、いったん資料に落としましょう」のように使います。全員がそれぞれ別の前提で話していると、会議は立派に盛り上がっても何も決まりません。地に足がついていない、ということですね。(別チーム同士の会話で、たまに白熱しそうになった時にこの言葉で会議が終了することがある印象はありませんか)
$$
\Large \text{⑫ 温度感}
$$
相手の関心度、緊急度、乗り気かどうか、といった感覚的な度合いをまとめて表す言葉です。
「先方の温度感どうでした?」のように使います。やる気なのか様子見なのかで、こちらの動き方も変わるため、数字にしづらい空気感を共有するのに便利です。便利すぎて多用すると、肝心の事実があいまいになるので、使いどころは選びたいところです。
$$
\Large \text{⑬ 腹を割る}
$$
ごくたまに聞きます。例えば、「一回腹を割って話す機会を作ります」のように使います。きれいな報告や遠回しな表現では進まないときに、利害や不安を率直に出す場面で登場します。かなり強めの言葉なので、言う側にも受ける側にも覚悟が要ります。
$$
\Large \text{⑭ 腹落ち}
$$
理屈だけでなく、背景や理由まで含めて、心の底から納得することです。
めちゃめちゃ聞きます。「説明されて腹落ちしました」のように使います。頭では分かった、より一歩深い、自分でも人に説明できる状態を指します。メンバーが腹落ちしていない施策は、表向き進んでいるように見えても、どこかで失速しがちです。個人的に、心の底から納得したときって、本当に腹落ちするような感覚があります。腹落ちという言葉の意味が腹落ちしました。この言葉を作った人は言語化の奇術師ですね。
$$
\Large \text{⑮ 玉虫色}
$$
複数の立場から都合よく読める、あえて曖昧にした表現や結論のことです。
「玉虫色の回答になりました」のように使います。関係者の顔を立てるには便利ですが、実行段階では「結局どうするの?」となります。ただ、いろんな意見をあらかじめ聞いておいた方が方策もたくさん立てられるため、最初が玉虫色であることはむしろ良い兆候なのかもしれません。
$$
\Large \text{⑯ 横串}
$$
「横串で見る担当が要ります」のように使います。それぞれが自分の担当だけを見ていると、全体最適が崩れたり、同じことを別々にやってしまったりします。横串を通す人がいると、組織のあちこちが噛み合うようになります。
$$
\Large \text{⑰ 横展開}
$$
あるチームでうまくいった成果や対策を、ほかのチームや案件へ広げて使い回すことです。
「この改善、横展開しましょう」のように使います。一度作った知見をみんなで使えば、全体の効率が上がります。ただし現場ごとに事情が違うので、そのまま横展開すると合わないこともあり、少し調整が要ります。
$$
\Large \text{⑱ 一気通貫}
$$
工程を分断せず、最初から最後まで途切れなく一貫して行うことです。
よく聞く言葉です。「要件定義から運用まで一気通貫で」のように使います。担当や工程の間に切れ目があると、引き継ぎのたびに情報が抜け落ちますが、一気通貫だとそのロスが減ります。もとは麻雀の役の名前で、一筋に通っている様子から転用された言葉です。
$$
\Large \text{⑲ アサイン}
$$
英語の assign が語源で、「次の案件にアサインされました」のように使います。誰を、どの仕事に、どれだけの割合で割り当てるか、というリソース配分の文脈でよく登場します。アサインが決まらないと、いくら計画があっても実際には動き出せません。
$$
\Large \text{⑳ マスト・ウォント}
$$
絶対に必要な要件(マスト)か、できれば欲しい要件(ウォント)か、を区別する言葉です。
ほぼセットで使われている印象があります。例えば、「ここはマスト、そこはウォントです」のように使います。すべてを同じ優先度で扱うと時間も予算も足りなくなるので、まずマストを押さえ、余力でウォントに手を伸ばします。何がマストかを関係者と握っておくと、終盤で揉めにくくなります。
9. ビジネス側の特にスケジュール関連のことばたち
ビジネス側のスケジュール関連の用語を切り出してまとめました。この章は謎用語というよりも単純な単語解説に近いです。
$$
\Large \text{① 人月}
$$
1人が1か月働いてこなす作業量を、1人月とする見積もりの単位です。
「これは3人月くらいの規模です」のように使います。3人月なら、1人で3か月、3人で1か月、という計算のもとになります。ただし、人を増やせば比例して早く終わるとは限らず、その思い込みは炎上の典型的な原因にもなります。ブルックスの法則ですね。
$$
\Large \text{② オンスケ}
$$
オンスケジュールの略で、計画どおりに進んでいる状態のことです。
ほぼ毎日聞きます。「進捗はオンスケです」のように使います。報告で一番聞きたい、平和な言葉です。平和が一番。
$$
\Large \text{③ リスケ}
$$
「来週にリスケで」のように使います。会議の日程変更にも、プロジェクト全体の計画見直しにも使える便利な言葉です。気軽に使われますが、リスケが続くと信頼に関わるので、本来はできるだけ避けたいものです。
$$
\Large \text{④ 前倒し・後ろ倒し}
$$
予定を早めること(前倒し)、または遅らせること(後ろ倒し)です。
「リリースを1週間前倒しします」のように使います。前倒しは歓迎されがちですが、しわ寄せが別の作業に回っていないか確認が必要です。後ろ倒しは、正直に早めに宣言したほうが、関係者の被害が小さくて済みます。
$$
\Large \text{⑤ ペンディング}
$$
「一旦ペンディングで」のように使います。情報が足りない、決裁者がいない、といった場面で時間を稼ぐのに便利な言葉です。ただ、ペンディングにしたまま誰も拾わず、そのまま忘れ去られる、というのもよくある落とし穴です。
$$
\Large \text{⑥ 寝かせる}
$$
案件や判断を、すぐには動かさず一定期間そのまま置いておくことです。
「この案はいったん寝かせます」のように使います。ペンディングと近いですが、単に決められないというより、時間を置いて反応を待つ、タイミングを待つ、という少し前向きな含みがあります。寝かせたまま忘れないよう、再開日だけは決めておきたいところです。
$$
\Large \text{⑦ 凍結する}
$$
「このリリースまでは仕様変更を凍結します」のように使います。勝手な変更を入れないための安全策で、リリース直前や障害対応中によく登場します。凍結したものは、いつ・誰の判断で解除するのかまで決めないと、そのまま永久凍土になることがあります。
$$
\Large \text{⑧ 差し戻す}
$$
提出された資料やレビュー対象を、修正が必要として元の担当者へ戻すことです。
「この申請は差し戻します」のように使います。否定というより、条件を満たしていないので直して再提出してほしい、という意味です。差し戻し理由が曖昧だと、戻された側は何を直せばよいか分からず、同じ場所を何度も行き来します。
$$
\Large \text{⑨ 手戻り}
$$
防ぎたいものの、現実問題発生してしまうやつです。「要件変更で手戻りが出ました」のように使います。設計後に要件が変わる、実装後に前提が違うと分かる、レビューで大きく直すことになる、そんなときに発生します。手戻りそのものは避けきれませんが、早く見つけるほど傷は浅く済みます。
$$
\Large \text{⑩ 五月雨式}
$$
チャット文面でよく見ます。「五月雨式で申し訳ありません」のように、断りを入れながら使われます。五月雨(さみだれ)は陰暦五月ごろに降る長雨、つまり梅雨を指します。「五月雨式」は、雨が少しずつ繰り返し降る様子から、一度にまとめず、断続的に何回かに分けて行うことを表します。受け取る側は何度も対応することになるので、できればまとめてほしい、という本音も透けて見えます。関係ありませんが、『NARUTO』の「五月雨」というOSTが大好きで、これ聞くと毎回泣きそうになっちゃいます。
10. 昭和ビジネス用語?
ベテラン勢の方々から飛んでくる言葉です。近年は「おっさんビジネス用語」(自分が名付けたわけではありませんよ)として、世代差ネタで盛り上がることも増えました。当のベテランたちが、半分自虐で楽しんでいる雰囲気もあります。皆さんの歴戦の経験からくる心の余裕がある感じが、とてもかっこよくて憧れます。
$$
\Large \text{① よしなに}
$$
細かいところは任せるので、状況に応じてうまく対応してほしい、という意味です。
「あとはよしなに」のように使います。便利な丸投げワードですが、正直任された側からすると「どこまでやればいいのか」が分からず、かえって困ることもあります。お互いの信頼と前提の共有があって、はじめて機能する言葉です。
$$
\Large \text{② 一丁目一番地}
$$
政治家が多用しているイメージがありますが、ビジネスでも使う人をたまに見かけます。「ここが一丁目一番地です」と言ったりします。意味が分かりにくい昭和のビジネス用語として、ランキング上位に挙げられることもあります。自分は戦後の政治史研究でめちゃくちゃ多くの政治家の日記を読んだのですが、政策の文脈でこの言葉をよく使い、かなり頻繁に軽井沢か箱根に行っていました。
$$
\Large \text{③ 鉛筆なめなめ}
$$
割と月1レベルで聞きます、笑。例えば、「最後は鉛筆なめなめで」のように使います。「鉛筆をなめて」みたいに使われることもあります。鉛筆をなめながら数字を書いた時代の名残で、根拠よりも落としどころを優先する、というニュアンスがあります。聞いた瞬間意味不明ランキング上位の言葉で、その時にきっちり調べさせてもらいました。
$$
\Large \text{④ ガラガラポン}
$$
今ある案や体制を、いったん全部白紙に戻して一から組み直すことです。
「一度ガラガラポンしましょう」のように使います。抽選器をガラガラ回す様子が語源で、これまでの積み上げをリセットする思い切りのよさ(と、こわさ)があります。手詰まりを打開できる一方で、これまでの努力も流れるので、言う側にも覚悟が要ります。
$$
\Large \text{⑤ ちゃぶ台返し}
$$
ほぼ固まった案を、最終盤になって根本からひっくり返すことです。
「役員のちゃぶ台返しで作り直し」のように使います。食卓ごと引っくり返す様子が語源で、それまでの合意がまるごと無に帰す破壊力があります。これを防ぐには、早い段階で決裁者を巻き込み、要所要所で握っておくのが効果的です。
$$
\Large \text{⑥ 全員野球}
$$
一部の担当だけに任せず、役割を越えて組織全体で取り組むことです。
「ここは全員野球で」のように使います。総力戦で乗り切ろう、という前向きな号令として使われます。ただし、便利な言葉ゆえに責任の所在があいまいになりやすく、誰のボールかは別に決めておくのが無難です。
$$
\Large \text{⑦ 正直ベース}
$$
建前やきれいごとを外して、本音や実情をベースに話すことです。
「正直ベースで言うと厳しいです」のように使います。きれいな報告では見えない、現場のリアルな見通しを共有したいときに使われます。この一言が出たら、ここからが本題、という合図でもあります。
11. エンジニア界隈のあるある用語
最後に、エンジニアのコミュニティでよく見かける、ネタ寄りの言い回しを少しだけ紹介します。
$$
\Large \text{① 完全に理解した}
$$
実際はまだ入り口に立っただけ、という自虐を含みます。学ぶほど自分の無知に気づく、という学習曲線をネタにした定番フレーズです。
$$
\Large \text{② チョットデキル}
$$
逆に、本物の達人ほど「ちょっとできる」と控えめに言う、というネタです。
完全に理解した、と対で語られます。Linuxの生みの親リーナス・トーバルズが「ワタシハリナクスチョットデキルヨ」と書かれたTシャツを着ている画像が広まり、達人ほど謙虚、という皮肉の効いたネタとして定着しました。学会の「素人質問で恐縮ですが」に共通するものを感じます。
$$
\Large \text{③ マサカリ}
$$
マサカリ怖い。「マサカリが飛んでくる」のように使います。受けると多少心を痛めますが、正しいことも多いので勉強になります。ただ、マサカリと揚げ足取りは紙一重です、ご利用は計画的に。
12. 凡人の考察
ここまで並べてみると、IT業界の謎用語には、いくつかの共通した癖みたいなものが見えてきます。普通の言葉を、何かに見立てて使っているのです。
$$
① 生き物に見立てる
$$
具体例は、生きる / 死ぬ / 殺す / 食う / 吐く / 寝ている、あたりです。サーバーやプロセスの状態を、まるで生き物の体調のように表しています。動いていれば生きている、止まれば死ぬ、リソースを消費すれば食う、ログを出せば吐く。かなり物騒な言葉も混ざりますが、状態を短く伝えるには便利です。
$$
② 建物や関係に見立てる
$$
具体例は、立てる / 入る / 開ける・閉じる / 掘る / 切る / 親・子、あたりです。環境を建物のように作り、サーバーへ入って作業し、ポートを扉のように開け閉めします。ディレクトリを掘ったり、ネットワークを切ったり、チケットに親子関係を持たせたりするので、ITの世界は急に建築現場や家族構成になります。
$$
③ 物体に見立てる
$$
建物と近いですが、対象はもう少しスケールが小さい物体です。具体例は、渡す / 投げる / 配る / 取りにいく / 逃がす / 抜く / 固める、あたりです。データや依頼を、実体のある荷物のように扱っています。関数に値を渡す、APIにJSONを投げる、CDNからファイルを配る、ログを抜く、消す前にデータを逃がす。目に見えないデータを、手で持てるもののように言い換えているのだと思います。
$$
④ 人の動きに見立てる
$$
具体例は、走る・走らせる / 流す / 回す / キックする / 叩く / つつく / 飛ぶ / コケる / 踏む、あたりです。処理やテストが走り、バッチが流れ、ジョブがキックされ、APIが叩かれ、最後にコケます。プログラムの動きを人間の動作に見立てることで、処理の勢いや失敗の様子を直感的に伝えています。
目に見えないシステムの状態や処理を、身近なものに置き換えると、短い言葉で複雑な状況を一発で共有できます。「メモリを食ってサーバーが落ちた」は、たった一言で原因と結果まで伝わります。便利だからこそ、ここまで広く根づきました。一方で、見立てを共有していない人には、まったく意味が伝わりません。それどころか「殺す」「叩く」のように、字面が強い言葉は誤解や不安すら生みます。便利さと伝わりにくさは、いつも背中合わせです。
13. 個人的に気をつけること
どの業界でも謎用語はあると思います。寿司屋では、しょうゆのことを「むらさき」、温かいお茶を「あがり」と呼ぶみたいですね。自分は他業界の人間なので、全く意味がわかりません。これは、当然自分のいるIT業界を他業界から見た時も同じことです。クライアントのいるタイプの仕事を行っている方は特に非ITの方々と話すときに気をつけていると思うのですが、エンジニアとそうでない人との言葉を分けるよう、今回の一件できちんと反省しました。「何ごとも、考えてから言葉を発するようにしよう」と、胸に刻み直すのでした。
書いている途中に疲れてしょうもない小ネタを書いてしまった単語がいくつかあるかもしれません、すみません。ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました!
蛇足編、すかすかのアニメ最終話の感想をかく
記事名と冒頭で大好きな作品をネタのように使ってしまったので、『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』アニメ最終話の感想を書いておこうと思います。
※すかすかアニメ最終話「世界で一番幸せな女の子」のネタバレを含みます。
ここをクリックすると、感想が開きます
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一言感想:アニメ史に残る、最高の最終話
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これを書くために数年ぶりに原作小説(の3巻まで)もアニメも見返したのですが、相変わらず、めちゃくちゃ良かったです。
原作小説のアニメ化作品の中でも最高峰のアダプテーションでした。アダプテーションとは、原作をアニメや映画などの別媒体に合わせて翻案し、構成や表現を組み替えることをいいます。
実はアニメ版『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』の最終話は、結末こそ同じですが、その過程が結構違います。キャラの掛け合いとか、ヴィレムの独白の内容とかですね。
あともう一個、原作アニメ共通して、私はヴィレム・クメシュというキャラが大好きです。
私の一番好きなタイプの主人公なんですよね、彼。アニメ版の声優さん(新井良平さん)の演技であったり、声が原作を読んでいる時のままで、それ込みで最高でした(原作はアニメ放映前、今から10年近く前に読んでます)。
さっきも言いましたが、私はヴィレムみたいなタイプのキャラが昔から好きです。そのタイプとは、「凡人がとんでもない努力をした果てに凄まじい力を身に着けたが、それでも力が足りないやら理想が思い描いていたものと違ったなどで過去に重い後悔を抱えている」タイプのキャラです。私の中でのこの原点は、Fate SNの赤アーチャー(あえて真名は書きません)です。CV:諏訪部順一なのも最高で、元々凡人(?)がとんでもない努力をして、まぁなんやかんやあってギリシャ神話屈指の大英雄を相手に、複数回分の命を奪うほどの領域まで到達しました。
これは、ヴィレムにも共通しています。彼は正規勇者ではない準勇者ですが、同じ準勇者のナヴルテリから「最強の準勇者」と称されるほどの存在であり、星神エルクを守護する三柱の地神の一柱・黒燭公を激闘の末に倒したものの、その戦いで受けた呪いによって、500年以上の間石化してしまいました。元々凡人だったのに、めちゃくちゃ努力して凄まじいレベルの力を身につけました。そして神様みたいな存在を一柱倒して、500年以上の石化状態から蘇生された直後に、自分以外の人間族が滅亡していると知らされる、初手絶望スタートです。
で、ここからがアニメ最終話の感想です。
$$
①:ヴィレムの独白が哀愁あってかっこいい
$$
最終話はまず、「深く潜む六番目の獣(ティメレ)」という化物とヴィレムの戦いから始まります。あと、「六番目の獣(ティメレ)」を始めとした獣達が元々自分と同じ人間族ではないかと、なんやかんやあってヴィレムは思っています。つまり、ヴィレムにとって戦っている存在は「かつて自分が守りたかったもの」です。
$$
よう・・久しぶり。なんだよな、たぶん・・
$$
$$
ごめんな・・ご不沙汰すぎて、もう顔と名前が一致しねぇんだわ・・
$$
そして、「六番目の獣」を吹き飛ばし、飛空艇から落とします。ここから、ヴィレムの苦悩の独白が行われます。
$$
俺は何も守れなかった。手の中にあったものは、もう全部こぼれ落ちた
$$
$$
今更こんなことをしても何にもならないと、思い知ったはずなのに
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$$
それでも、俺には戦うことしかできない・・。何やってんだろうな・・俺
$$
そして、涙をこらえながら、「六番目の獣」に殴りかかるヴィレム。その瞬間、OPがかかります。
いや、めちゃくちゃ良いですよねこれ。独白で端的にヴィレムの葛藤とか苦悩を表現するという、アニメならではの技法を感じました。原作では、時計の針の描写で場面が移り変わる表現技法があり、こちらの表現もタイムリミット的な意味で読み進める手がとまらなくなるほど面白かったです。
で、アニメ版では、OPの後に藍色の髪のラーントルクがティメレと戦闘しており、調子が良いことから技を乱発してしまったり、注意散漫になったことでティメレの触手に足を掴まれて食われかけます。そこを、ヴィレムがとんでもない身体能力で助けますが、その戦闘の負荷(ヴィレムは戦ったら死ぬほどの古傷を負っている)で倒れてしまいます。その際の独白がこちらです。
$$
戦ってんだよ・・・今も昔も。俺に出来るのは結局のところ、それだけ・・
$$
で、ラーントルクの膝の上で介抱されたヴィレムは目を覚まし、ラーントルクの「随分と強いのですね。人間というのは、みんなあのようにでたらめに強かったんですか」という問いに、ヴィレムは「俺、昔な、勇者をやっていたんだ」と身の上話を始めます。
$$
人が努力で強くなれる限界までは、強くなった。でも、足りなかった。
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俺の届いた程度の強さじゃ、誰の手も掴めなかった。
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アルも・・リーリァも・・クトリも。
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で、ラーントルクがそんなヴィレムを慰める言葉をかけますが、ヴィレムは聞いていないふりをします。
いや〜めちゃ好きです。原作ではもっといろんな葛藤を抱えている印象がありますが、アニメ版では「強くなったが、誰も救うことはできなかった。だけど、自分には戦うことしかできない」という側面がとても強調されており、アニメ版ヴィレムはその一貫性と哀愁が、とてもかっこよく見えました。原作版ではラーントルクとの会話の中で結構迷ったりもしているため、個人的にはアニメ版ヴィレムのほうが好きですね。ただ、原作版ヴィレムの人間らしさも好きです。アニメ版は、監督さんがヴィレムの声優さんに肉体年齢の10歳上くらいで演じてください、という打診があったみたいな話も聞いたことがあります。監督さんと原作者の枯野さんは頻繁に連絡をとっておられたそうなので、お二人の意図的な表現でしょう。
てか、今調べたところ最終話と1話・11話の脚本は原作者の枯野さんが書かれているのですね、非常に納得しました。
https://sukasuka-anime.com/story/12.html
深くは触れませんが、この後のネフレンとヴィレムのやり取りも原作の同じ場面にはありませんでした。ネフレンの感謝が伝わり、とても良かったです。
$$
②:挿入歌良すぎないか
$$
まず、クトリがヴィレムを助けに行こうとするシーンで、最初の挿入歌が流れます。山田タマルさんの『Always in my heart』です。
で、この音楽が流れたあとのシーンは原作・アニメ共通のクトリの伝説のセリフです。
$$
ごめん。わたし、もう、絶対に、幸せになんてなれないんだ。だって気づいちゃったから
$$
$$
わたし、もう、とっくに幸せだったんだって
$$
原作と一言一句違わないセリフです。いや〜いつ見ても良いセリフですね。
で、ネフレンとヴィレムを助けた後、ついにクライマックスです。『Scarborough Fair』です。この曲は、イングランドのヨークシャー地方に伝わる伝承歌で、アニメでは山田タマルさんによるカバー版が使われています。
で、ここでアニメ最終話で一番好きなシーンです。クトリとヴィレムが独白で交互に喋ります。
クトリ
$$
いつまでも一緒にいると誓った。誓えた事が幸せだった
$$
ヴィレム
$$
いつまでも一緒にいると誓った。誓えた事が安らぎだった
$$
クトリ
$$
この人のことが、好きだなと思った
$$
ヴィレム
$$
こいつのことが、大切だと思った
$$
クトリ
$$
思えたことが、幸せだった
$$
ヴィレム
$$
思えたことが、喜びだった
$$
真っ赤な夕日を背景に曲が続きます。
クトリ
$$
幸せにしてやるよ、と言ってもらえた
$$
ヴィレム
$$
幸せにしてやる、と言ってやれた
$$
クトリ
$$
言ってもらえたことが、幸せだった
$$
ヴィレム
$$
言えたことで、満たされていた
$$
クトリ
$$
こんなにもたくさんの幸せを、あの人にわけてもらった
$$
ヴィレム
$$
こんなにも色々なものを、こいつから受け取っていた
$$
$$
なのに俺は・・・
$$
クトリ
$$
だから、きっと、今のわたしは、誰がなんと言おうと、「世界一幸せな女の子」だ
$$
この独白の後、『Scarborough Fair』のサビが流れます。踊るように戦うクトリ、ティメレから攻撃を受けますが、最終的にティメレの大群を葬り去ります。
で、全てを終えたクトリは、ヴィレムに近づきます。
クトリ
$$
ヴィ・・レム、ありが、とう・・
$$
ヴィレム
$$
ばかやろう・・
$$
いや〜もう見るたび鳥肌ものですね、この掛け合い。本来クトリはこの瞬間はヴィレムの名前も含めて、殆ど全ての記憶を失っており、独白の応酬も原作にはありません(ヴィレムへの感情だけ少し残っている)。最後のヴィレム、という名前を覚えていたことも含め、アニメ版独特です。ただし「ありが、とう」は原作、アニメ共通しています。
この掛け合いからは、あることが見れます。ヴィレムは徹底して後悔し、自分は何もできなかったと思っている一方で、クトリは自分を「世界一幸せな女の子」と言っていることです。ここらへんはクトリに限らず、アルマリアとかリーリァにも共通している部分なのではないでしょうか(感情は違えど)。この対比の表現も素晴らしいと感じました。
とにかく良かったです。このシーンをリアルタイムで見ていた当時は、何回も何回も最終話を見返しました、懐かしい、笑。
以上、感想でした。原作小説、この後の4巻、5巻と続編の『終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか?』もめちゃくちゃおもしろいので、ぜひ両方とも1巻からご覧ください。
私も久々に全巻読み直してみようと思います!
参考リンク
IT現場の用語まとめ
- 不思議の国のSE用語 - Qiita
- IT業界の現場で使われる日本語を一覧化してみた - Qiita
- システム開発における造語/隠語/謎用語 - 電通総研 テックブログ
- 若手SEのためのIT業界用語・隠語辞典2024 - SOLXYZ Blog

