これからの時代に求められるエンジニア的思考と働き方
- これからの時代、すべての社員に「エンジニア的」な働き方や思考が求められるのではないでしょうか。
- エンジニアという職業は、ジョブディスクリプションが明確であり、常に価値を生産することが求められる職業です。
- そのため、成果を重視する仕事の進め方や、具体的な課題を解決する能力が備わっています。
- このようなエンジニア的な特性は、現代の急速に変化する社会や技術革新に対応する上で不可欠です。
- 以下はその論拠となる現代日本社会の働き方の分析です。
メンバーシップ型雇用とその背景
- これまでの日本では、「正社員」というメンバーシップ型雇用が主流でした。
- この雇用形態ではジョブローテーションが導入され、専門家を育成しない方針が取られてきました。
- その背景には、会社が社員を家族のように囲い込み、企業文化や価値観に染め上げることが目的としてあったのです。
- また、IT技術が未発達だった時代には、専門性を活かす機会や必要性が少なく、幅広い業務をこなす社員が求められていたという理由もありました。
- しかし、これからの時代にはこうした雇用の在り方が大きく変わると考えられます。
伝統的な企業と「お客さんマインド」
- 伝統的なメンバーシップ型企業では、「お客さんマインド」に陥る場面が多く見られます。
- このマインドとは、受け身の姿勢で物事に取り組むことを指し、与えられた環境や制度に依存し、自ら主体的に行動する意識を欠いた状態です。
- 特に企業内で給料をもらいながら「お客さんモード」で過ごす時間が増えると、社員の人間性や主体性が損なわれがちです。
- この状態では、自分の成果が直接的に評価される意識が薄れ、結果として価値を生み出す力が低下してしまいます。
- その背景には、成果を出そうと出すまいと雇用が保証されるという、メンバーシップ型雇用特有の安定性があると言えるでしょう。
- このような環境では、個人が挑戦や責任を避け、現状維持を選びがちになります。
- 結果として、企業全体のイノベーションが停滞し、社会全体の活力を削ぐ要因になる可能性もあります。
- 一方で、現代ではこうした雇用モデルの限界が指摘され、ジョブ型雇用への移行が進んでいる背景があります。
大企業にお客さんマインドの人が多い理由
- 大企業には「お客さんマインド」の人が多い理由として、就活の時点での選択肢が大きな要因となります。
- 「寄らば大樹の陰」という言葉が示すように、多くの人がリスクを嫌がり、安定性や福利厚生の良さを求めて大企業を選びます。
- 大企業の看板や規模の大きさに守られることで、自分が主体的に価値を生み出す必要性を感じにくくなることがあります。
- その結果、日々の業務においても受け身の姿勢になりやすく、責任感や挑戦意欲を持たない「お客さんマインド」に陥る人が増えるのです。
大企業と中小零細企業の価値創出の違い
- 大企業の中の一人と、中小零細企業の中の一人では、価値創出の形が異なる場合が多いです。
- 大企業では分業化が進んでおり、個人の役割が全体の歯車の一部として限定的になる傾向があります。
- そのため、自分の仕事が直接的に成果や顧客満足に結びついているという実感を持ちにくい場合があります。
- 一方で、中小零細企業では、個人が果たす役割が幅広く、会社全体に与える影響も大きくなります。
- 自分の行動がダイレクトに会社の成果や顧客の満足度に反映されるため、価値創出の手応えを得やすい環境です。
- これが、大企業では「守られている」という感覚から受け身になりやすく、中小零細企業では「自ら動かないと成果が出ない」という能動性を求められる理由といえます。
安全なクルーズ船と自ら操舵する船
- 人生を大企業に委ねる生き方は、安全なクルーズ船に乗り、観光を楽しみながら人生を終えるようなものに例えられます。
- その反面、中小零細企業では、自分自身で船の舵を取り、いろいろな場所に停泊しながら乗客を楽しませることに近いと言えます。
- どちらもそれぞれの魅力があり、どちらが正しいというわけではありませんが、求められるマインドは大きく異なります。
- 人生において「中間」という選択肢はなく、人間は必ずどちらかのマインドに寄っています。
- 大企業では、安定した環境の中でリスクを最小限に抑えた生き方が選択される一方で、主体性や挑戦意欲を持つ機会が少なくなりがちです。
- 一方で、自ら操舵する生き方では、常にリスクを伴いますが、その分、自分が生み出す価値の実感や達成感を得られる機会が多いといえます。
お客さんマインドになりやすい業種とその背景
- お客さんマインドに陥りやすい業種には、既得権益が確立され、利権による安定収益が保証されているような、古い構造の業界が多いと考えられます。
- これらの業種では、競争が少なく、成果や努力に関わらず収益が見込めるため、社員が主体性や危機感を持つ必要が少なくなります。
- その結果、日々の業務がルーチン化し、イノベーションや進歩とは無縁の状態に陥りがちです。
- 例えば、公共事業に依存する一部のインフラ産業や規制によって保護されている業界などは、その典型例と言えるでしょう。
- こうした業界では、新しい価値を生み出すことよりも、現状を維持することに重点が置かれやすい傾向があります。
- そのため、社員がチャレンジ精神を持たず、「自分が何もしなくても業界全体で利益が保証される」という受け身の姿勢を取りやすくなるのです。
イノベーションの阻害と進歩への逆行
- こうしたお客さんマインドが業界全体に広がると、イノベーションが進まず、進歩とは対極にある状態が続きます。
- 業界が変化を拒み、既存の仕組みに依存し続けると、次第に市場全体で競争力を失い、長期的には停滞や衰退を招く危険性があります。
- 一方で、新しい技術やビジネスモデルが登場し、それを受け入れる柔軟な体制を持つ業界は、急速に成長を遂げる可能性が高いのです。
- 既得権益に頼らず、変化を受け入れる姿勢が、業界の未来を切り開く鍵となるでしょう。
多重下請け、中抜き、丸投げ構造との関連
- 多重下請け、中抜き、丸投げ構造は、日本社会における「お客さんマインド」を象徴する仕組みといえます。
- これらの構造では、実際に価値を生み出す末端の労働者が過剰に働いても正当な報酬を得られず、中間業者が労働に見合わない利益を得るという不均衡が生じています。
- このような仕組みは、責任を回避しつつ利益を得る行動を助長し、「お客さんマインド」を蔓延させる要因となっています。
- この仕組みがお客さんマインドを助長するのは、責任を回避しつつ利益を得るという行動が肯定されてしまうからです。
- 「自分が直接価値を生み出さなくても構わない」という考え方が蔓延すると、社会全体の生産性が低下し、最終的には全員が損をする状況を招きかねません。
それらの具体的な問題点
- 「自分が直接価値を生み出さなくても問題ない」という考え方が広がることで、生産性の低下を招き、最終的には全員が損をする社会構造が形成されかねません。
- 日本の労働生産性は主要先進国の中で低い水準にあり、2022年のデータではOECD加盟38カ国中30位と報告されています。
- このような低い生産性を向上させるためには、非効率的な構造を見直し、すべての社員が主体的に価値を生み出す意識を持つことが重要です。
- エンジニア的な思考や専門性を重視した職務設計が求められており、明確な成果と役割を意識する働き方への転換が必要です。
- 従来のメンバーシップ型雇用やジョブローテーションの見直しが求められ、透明で公正な報酬制度と、効率的な業務環境を整備する必要があります。
近年の傾向
- しかし、近年では公正取引委員会がソフトウェア業界の下請取引に関する実態調査を行い、多重下請け構造や中抜きの問題点を指摘しています。これにより、契約内容の明確化やサプライチェーンのスリム化が推奨され、業界全体での改善の動きが進んでいます。
- さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、企業は効率的で透明性の高い業務プロセスを求められるようになっています。これにより、多重下請けや中抜きといった非効率的な構造は見直されつつあり、直接的な価値創出に焦点を当てた業務体制へのシフトが期待されています。
- このように、社会全体で多重下請けや中抜き、丸投げ構造の改善に向けた取り組みが進行しており、今後の変化が注目されます。
アメリカとの違い
- アメリカ人と日本人の生涯における平均転職回数には大きな差があります。統計によれば、日本人の平均転職回数は約3回で、平均勤続年数は約11.9年です。一方、アメリカ人は平均して13回の転職を経験し、平均勤続年数は約4.1年と報告されています。
- この違いは、両国の労働市場や文化的背景の差異を反映しています。アメリカでは、成果主義が強く、個人の能力や成果に基づいてキャリアアップが図られる傾向があります。そのため、キャリアの向上や収入増加を目的として積極的に転職を行うことが一般的です。
- 一方、日本では、終身雇用や年功序列といった雇用慣行が根強く残っており、長期的な雇用関係が重視される傾向があります。その結果、転職に対して慎重になる傾向があり、平均転職回数が少なくなっています。
- これらの背景から、アメリカ人はキャリア形成において自己責任や自己主張を重視し、積極的に新たな機会を求める傾向があります。一方、日本人は組織への忠誠心や安定性を重視し、現職に留まることを選ぶ傾向が強いと言えます。
具体例
- アメリカの企業で特に我々の生活を変えたのは、アップル(iPhone)、アマゾン(eコマースとAWS)、マイクロソフト(WindowsとOffice)、スターバックス(カフェ文化の普及)、マクドナルド(ファストフードの普及)、フォード(自動車の大量生産と普及)です。
多様な視点の導入
- アメリカでは転職が一般的であり、異なる業界や企業からの多様なスキルやアイデアが集まりやすい環境があります。
- 例えば、スターバックスは異業種からの人材を積極的に採用し、カフェ以上の顧客体験を提供する文化を生み出しました。
成果重視の文化形成
- 転職が一般的なアメリカでは、個人が成果を出し続けなければキャリアが停滞するため、社員一人ひとりのパフォーマンスが重視されます。
- アマゾンのような企業は、徹底した成果主義に基づき、効率性を追求したビジネスモデルを構築しています。
革新へのチャレンジ精神
- 転職文化が根付くことで、従業員は新たな挑戦を恐れずに、リスクを取ってもキャリアを積み上げる傾向があります。
- フォードの大量生産方式やマクドナルドのフランチャイズモデルは、こうしたチャレンジ精神の結果と言えます。
個人の専門性の深化
- 転職回数が多いアメリカでは、専門分野を極めた人材が企業内で大きな価値を発揮します。
- マイクロソフトやアップルは、各分野で深い専門性を持つエンジニアやデザイナーが革新的な商品を生み出す基盤となっています。
イノベーションの促進
- 転職によって異なる知識や経験を持つ人材が企業に流入することで、斬新な発想が生まれる土壌が形成されます。
- スターバックスやマクドナルドの成功は、商品だけでなくビジネスモデル自体の革新によって実現されました。
楽をしたい、リスクを取りたくない気持ちとお客さんマインドの関連
- 「楽をしたい」「リスクを取りたくない」という気持ちは、人間として自然な感情です。
- しかし、それが行き過ぎるとお客さんマインドに繋がり、責任を他者に委ねてしまう態度を生む危険性があります。
- 楽を求めるあまり、自分が果たすべき役割を放棄し、他人に頼るばかりでは、個人としての成長も妨げられるでしょう。
- この停滞は、単に個人の問題に留まらず、人間としての進化を止めることによる深刻な悪影響を引き起こします。
- 人間は挑戦や困難を乗り越える中で自己成長を遂げ、知識やスキルを蓄積してきた存在です。これを怠ると、創造性や問題解決能力が退化する可能性があります。
- 人間として進化を怠ることは、「未来を創る力」を失うことと同義であり、次世代に持続可能な社会を引き継ぐ基盤を削ぐ結果となります。
大谷翔平に学ぶ主体性
- ここで注目したいのが、大谷翔平選手をはじめとするトップアスリートの挑戦する姿勢です。
- もし彼が「楽をしてお金を稼ぐこと」を第一の目的にしていたら、あれほどハードなトレーニングを積むことはなかったはずです。
- 彼が努力を続けられるのは、「野球を通じて人類に貢献したい」という高い意識を持っているからです。
- また、彼は自分の記録や成果が多くのファンを鼓舞し、結果的に彼らの人生を向上させることを認識しているため、常に高いモチベーションを維持しています。
- このような姿勢は、私たちが「お客さんモード」から抜け出し、価値を生み出す力を取り戻すヒントになるでしょう。
お客さんモードと生活習慣
- 結局のところ、「お客さんモード」に陥る時間の長さは、日々の生活習慣に直結しています。
- このモードが長いほど、能動的に価値を生み出す時間が削られてしまいます。
- 自分の生活の中で1日にどれくらいの時間を「お客さんモード」で過ごしているか、改めて考えてみる必要があるでしょう。
- いわゆるホワイト企業での快適な環境も、一時的には楽に感じるかもしれませんが、それは「お客さんとしての楽」に過ぎない場合が多いのです。
- もちろん、その時間を有効活用して副業に取り組んだり、家族を立派に育てる目標がある場合は別です。
- そのような目標があれば、「お客さんモード」ではなく、職場以外のシーンで能動的に価値を生み出す主体的な行動といえるでしょう。
無意味な苦労を避ける重要性
- ただし、「無意味な苦労」をすることはお客さんモードからの脱却にはなりません。
- 例えば、無意味な社内申請業務や、付加価値の低いレビュー業務をただこなしているだけでは、価値を生み出す働き方とは言えないのです。
無意味な申請業務の例:
- 紙ベースの承認フローがまだ残っている職場では、書類を印刷し、上司に持っていき、押印をもらうプロセスが日常化している場合があります。
- このような業務は自動化ツールやデジタル化によって効率化できるにも関わらず、古い仕組みを維持することで時間を浪費しています。
- 解決策としては、クラウド型の承認フローを導入し、申請業務そのものの付加価値を高めることが考えられます。
付加価値の低いレビュー業務の例:
- チームでの会議が多く、議論する内容が不明確なまま進行するケースです。
- 無駄な会議やレビュー作業が多い環境では、結果として時間の無駄遣いとなり、価値を生み出す作業に集中できなくなります。
- 解決策としては、会議を短縮し、アジェンダを事前に明確化したり、不要なレビュー工程を省略するなどの工夫が有効です。
今後の世界の変化と構造の未来
- 今後の世界の変化に伴い、多重下請けや中抜き構造、お客さんマインドの温床となりやすい日本の労働環境は、大きく変わる可能性があります。
- 特に、テクノロジーの進化やグローバル化の加速により、価値を直接生み出す人々の力が強まり、透明性の高い仕組みが求められる時代が来るでしょう。
- ブロックチェーン技術やAIの普及は、中間搾取を減らし、公正な取引や報酬分配を促進する可能性があります。
- 一方で、変化の中で主体性を持たない人々は、新しい仕組みに適応できず、さらに厳しい状況に追い込まれるリスクもあります。
- そのため、これからの時代を生き抜くには、主体的に行動し、価値を生み出す力を身につけることが重要です。
- 社会や経済の構造が変化する中で、楽を求めるだけでなく、自ら積極的に新しい価値を追求する姿勢が求められるでしょう。
エンジニア的な働き方が社会を変える可能性
- エンジニア的な働き方が普及することで、これまでの多重下請け構造に変化が生じる可能性があります。
- 技術の進化とともに、価値の生産過程が透明化され、直接的に成果を生み出す人々が評価される仕組みが整いつつあります。
- 例えば、IT技術やプラットフォームの発展により、個人が企業を介さず直接顧客とつながり、自分の専門性を発揮できる場が増えています。
- その結果、下請け構造を介さずに価値を提供するエンジニア的な働き方が主流になれば、不透明で非効率な中抜き構造は淘汰される可能性があります。
単なる専門性の追求ではない未来の働き方
- ただし、これからの社会が求めるのは、単に専門的なスキルを持つことだけではありません。
- エンジニア的な働き方には、明確な責任感や成果主義が伴います。
- すべての社員が自らの役割を理解し、価値を生み出す努力を続けることで、個人と社会の両方が発展する未来が描けます。
- そのためには、企業が透明性の高い報酬体系や成果に基づく評価を導入し、社員が主体性を持って働ける環境を整備する必要があります。
結論:エンジニア的思考が未来を切り開く
- エンジニア的な働き方は、これからの時代の働き方の標準となるでしょう。
- 明確な役割と価値の創出に重点を置くこのスタイルは、多重下請け構造のような不健全な社会システムを改革し、公平で持続可能な社会の実現に寄与すると考えられます。
- 全ての社員が専門性を持ちながら主体的に行動する時代が到来すれば、個人と社会の成長がさらに加速するでしょう。
追記
- 本家のCMもAIつかっててワロタ
https://www.youtube.com/watch?v=ab5Yr7ekLqc