統計検定のHP から問題と略解は入手できます。頑張って詳しい解説を書いていきたいと思います。
※ 5番まで書く予定ですが、現在は1番と2番までです。
問1
解答〔1〕
$G_X(t) = E\left[ t^{X}\right]$ の$1$階, $2$階微分を考えることで,G'_X(t) = E\left[X \, t^{X-1}\right], \quad G''_X(t) = E\left[X(X-1) \, t^{X-2}\right]
である. $t = 1$を代入して,
G'_X(1) = E\left[X \right], \quad G''_X(1) = E\left[X(X-1) \right] = E\big[X^2\big] - E[X]
よって, $X$の期待値は,
E[X] = G_X'(1)
$X$の分散は,
V[X] = E\big[X^2\big] - E[X]^2 = G_X(1)'' + G_X'(1) - {G_X'(1)}^2
と表される.
解答〔2〕
$X$ が $B(n,p)$ にしたがうとき, $q = 1-p$ とおくと, $P(X = k) = {}_n C_k p^k q^{n-k}$であるから, 確率母関数は,G_X(t)
= \sum_{k = 0}^{n} {}_n C_k {(pt)}^k q^{n-k}
= (pt+q)^n
となる. ```math G_X'(t) = np (pt+q)^{n-1}, \quad G_X''(t) = n(n-1)p^2 (pt+q)^{n-2}
より,
G_X'(1) = np, \quad G_X''(1) = n(n-1)p^2
であるから,
E[X] = G_X'(1) = np, \quad V[X] = G_X(1)'' + G_X'(1) - {G_X'(1)}^2 = np(1-p)
解答〔3〕
方針は以下の解答の通りですが, 途中の不等号がなぜ成立するのかの説明を加えたほうがより良いです.\begin{align} G_X(t) &= \sum_{k \leq r} t^k P(X = k) + \sum_{k > r} t^k P(X = k) \\ &\geq \sum_{k \leq r} t^k P(X = k) \geq \sum_{k \leq r} t^r P(X = k) = t^r P(X \le r) \end{align}
これを$t^r$で割って, $P(X \leq r ) \leq t^{-r} G_X(t)$を得る.
解答〔4〕
解答がまだ荒いです.
$0 < t \leq 1$に対して,P( X \leq an) \leq t^{-an}(pt+q)^{n} \tag{1}
が成り立つ. $t$を動かしたときの右辺の最小値を求める. $f(t) = t^{-a}(pt+q)$ とおくと, 右辺は $f(t)^n$ であるから, $f(t)$ を最小にする $t$ を考えればよいが, 特に, $\log f(t) = \log(pt+q) -a \log t$ を最小にする $t$ を考えればよい.
(\log f(t))' = \frac{p}{pt+q} - \frac{a}{t}
が $0$ となるのは, $t = \frac{qa}{p(1-a)}$のとき, またこのとき, $pt+q = \frac{q}{1-a}$ である. (1) にこの $t$ の値を代入して,
P( X \leq an) \leq \left( \frac{p}{a} \right)^{-an} \left( \frac{1-p}{1-a} \right)^{(1-a)n}
を得る.
問2
損失関数という言葉は出てきますが, 背景を知らなくても, 積分の計算だけで解けてしまう問題です。
解答〔1〕
\begin{align} E[X_1] &= \int_{0}^{\infty} x f(x) \, dx = \int_{0}^{\infty} x \cdot \lambda \, e^{-\lambda x} \, dx \\ &= \bigg[ x \cdot \left( -e^{-\lambda x} \right) \bigg]_0^{\infty} - \int_{0}^{\infty} 1 \cdot \bigl( -e^{-\lambda x} \bigr) \, dx - = \bigg[ \frac{1}{\lambda} \cdot e^{-\lambda x} \bigg]_0^{\infty} = \frac{1}{\lambda} \end{align}
同様に, $E[X_2] = \frac{1}{\lambda}$ なので,
E[U] = E[X_1] + E[X_2] = 2 \cdot \frac{1}{\lambda} = \frac{2}{\lambda}
解答〔2〕
\begin{align} g(u) &= \int_{0}^{u} f(u-x) \cdot f(x) \, dx = \int_{0}^{u} \lambda^2 \, e^{-\lambda u} \, dx = \lambda^2 u e^{-\lambda u} \end{align}
解答〔3〕
〔2〕で求めた$U$の確率密度関数を利用する。
\begin{align}
E\biggl[\frac{1}{U}\biggr]
&= \int_{0}^{\infty} \frac{1}{u} \cdot \lambda^2 u e^{-\lambda u} \, du
= \int_{0}^{\infty} \lambda^2 e^{-\lambda u} \, du \\
&= \bigg[ - \lambda e^{-\lambda x} \bigg]_0^{\infty}
= \lambda
\end{align}
解答〔4〕
\theta$と$\lambda$という$2$つの文字が出てきますので、早い段階で$\lambda$を消して>$\theta$だけの話にしたほうが混乱が防げると思います。
\begin{align} L(\alpha \bar{X}, \theta) &= \alpha\lambda \bar{X} + \frac{1}{\alpha\lambda} \frac{1}{\bar{X}} -2 \\ &= \frac{\alpha\lambda}{2} U + \frac{2}{\alpha\lambda} \frac{1}{U} -2 \end{align}
\begin{align}
E\bigl[ L(\alpha \bar{X}, \theta) \bigr]
&= \frac{\alpha\lambda}{2} \cdot \frac{2}{\lambda} + \frac{2}{\alpha\lambda} \cdot \lambda -2 \\
&= \alpha + \frac{2}{\alpha} - 2
\end{align}
微分しても良いが相加相乗平均不等式で$\alpha = \sqrt{2}$で最小値を取ることがわかる。
問4
解答〔1〕
帰無仮説が真であるにも関わらず, 棄却される確率であるから,
\begin{align}
\int_1^3 f_0(x) \, dx
&= \frac{1}{\pi} \left[ \tan^{-1} x \right]_1^3
= \frac{1}{\pi}(\tan^{-1}3 - \tan^{-1}1) \\
&= \frac{1}{\pi}(1.249 - \frac{\pi}{4})
= \frac{1.249}{\pi} - \frac{1}{4}
= 0.148
\end{align}
解答〔2〕
対立仮説が真であり, 帰無仮説が棄却される確率であるから,
\begin{align} \int_1^3 f_1(x) \, dx &= \int_0^2 f_0(x) \, dx = \frac{1}{\pi} \left[ \tan^{-1} x \right]_0^2 = \frac{1}{\pi}(\tan^{-1}2 - \tan^{-1}0) \\ &= \frac{1}{\pi}(1.107 - 0) = \frac{1.107}{\pi} = 0.352 \end{align}
解答〔3〕
概形を描くと言われると, どこまで正確に描けばいいのか困りますが, ポイントは, 極大・極小や漸近的な振る舞いでしょうか. この問題の場合は, $x = 1, 3$ での値も記入するとよいでしょう.
略解には $x>0$ の部分だけを描けばよいと書かれていますが, それで十分だと確信が持てる記述が問題文には書かれていないので, $x$が実数全体を動くときのグラフを描くのが普通の対応だと思います.\lambda(x) = \frac{f_0(x)}{f_1(x)} = \frac{1+x^2}{1+(x-1)^2}
$\lambda(1) = 2$, $\lambda(3) = 2$である.
解答〔4〕
ほとんど, ネイマン・ピアソンの定理のままなのですが, ある程度一般的な形でネイマン・ピアソンの定理の主張を書き, それにあてはまっていることを主張するとよいでしょう.