N 高グループ・N 中等部・N Code Labo Advent Calendar 2025 15日目の記事です
探せばすぐ出ると思いますが 第 4 期生徒会役員 をやっています
学園生には私のプロフィールを渡した上で本記事を読んでいただければと思います
https://n-highschool.slack.com/team/U06NJCN81SA
そして今日は私の誕生日です
9 月から発足した第 4 期生徒会役員として色々なこともありましたが、16歳という年齢で過ごした一年はとても楽しかった です
はじめに
生徒会の運用で Slack を使っていると、問い合わせが増えるにつれて「誰が担当するか分からない」「返信漏れが起きる」「進捗が追えない」といった問題が出てきました
最初は普通にチャンネルで問い合わせを受けていたんですが、件数が増えるにつれて管理が破綻しかけたので、Slack のワークフローとリストを組み合わせてチケット管理システムを作りました
この記事では、Slack のワークフローの基本から、実際に 問い合わせをチケット化して管理する方法 まで、生徒会で運用してみて分かったことをまとめます
目次
-
ワークフローでできることを最初に全部俯瞰する
-
まず押さえる基本
- ワークフローの構造
- トリガー
- ステップ
- 変数
- 権限と管理
-
実務で詰まりやすいポイント
- うまく動かない原因の切り分け
- 設計で事故を防ぐ
-
実践編
- 問い合わせをチケット化する全体設計
- Slack リストの設計
- ワークフローを組み立てる
- 運用ルール
- 改善の回し方
-
目的別レシピ集
ワークフローでできることを最初に全部俯瞰する
Slack のワークフローは、雑に言うと「Slack 内のイベントやクリックをきっかけに、決めた手順を毎回同じ形で実行する仕組み」です
できることの代表例
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フォームを出して入力を集める
- 企画申請、問い合わせ、レビュー依頼、欠席連絡、相談窓口など
-
入力結果を、決まった場所に自動で流す
- チャンネルに投稿
- スレッドに投稿
- DM で通知
-
情報を「作業対象」として管理する
- Slack のリストにアイテムを作る
- リストのステータス更新に反応して通知する
-
条件でルートを分岐させる
- 緊急なら
#urgentへ、通常なら#triageへ - 委員会ごとに通知先を変える
- 相談内容の種類で担当を変える
- 緊急なら
-
外部サービスとつなぐ
- Google Sheets や Google Calendar、GitHub、Jira などのコネクターで開始したり、更新したり
- Webhook で外部の出来事からワークフローを開始する
「フォーム + 通知」だけでも強いですが、リストと組み合わせる と「入力が流れて終わり」ではなく、管理できる状態 になります
まず押さえる基本
ワークフローの構造
ワークフローは基本的に次の 2 つでできています
-
トリガー
- 何をきっかけに開始するか
-
ステップ
- 開始したあとに何をするか
ここに 変数 が加わると一気に強くなります
- フォームの回答
- トリガーの情報
- リストアイテムの情報
これらを「変数」として受け取って、次のステップに差し込めます
トリガーについて
Slack のワークフローは、開始方法が重要です
設計の 8 割は「どのトリガーを選ぶか」で決まると言っても過言ではありません
代表的なトリガー
1. リンクから開始
- チャンネルに貼ったリンクや、ショートカットのボタンから開始
- 使いどころ
- 申請フォーム
- 問い合わせフォーム
- 毎回人が押す必要のある開始点
2. スケジュールで開始
- 毎日、毎週など定期実行
- 使いどころ
- 週次の進捗リマインド
- 締切前の催促
- 定期レポート
3. 絵文字リアクションで開始
- 特定の絵文字が付いたら開始
- 使いどころ
-
:white_check_mark:が付いたらタスク化 -
:rotating_light:が付いたら緊急フローへ
-
4. キーワードで開始
- 特定のキーワードに反応して開始
- 使いどころ
- よくある質問への自動回答
- 「緊急」「至急」などの言葉が含まれる投稿でアラート
- 特定ワードでサポート担当へ振り分け
5. チャンネル参加で開始
- 誰かがチャンネルに入ったら開始
- 使いどころ
- オンボーディング
- 自己紹介依頼
- チャンネルの使い方案内
6. リストのアイテム更新で開始
- リストのアイテムが更新されたら開始
- 使いどころ
- ステータスが変わったら通知
- 担当が入ったら担当者へ DM
- 期限が入ったらリマインドを組む
7. Webhookで開始
- Slack 外部から HTTP リクエストで開始
- 使いどころ
- Web サイトの監視
- 学内システムの更新通知
- 自作ツールからの通知
8. コネクターのイベントで開始
- 外部サービスのイベントで開始
- 使いどころ
- GitHub で Issue が立ったらチケット化
- Google Forms の入力を Slack に流す
トリガー選びのコツ
-
申請・問い合わせ は「リンクから開始」
- 誰がいつ押すか分かりやすい
-
状態変化に反応 するなら「リスト更新」
- チケット運用の核になる
-
人が忘れるやつ は「スケジュール」
- 週次レポートや締切
-
現場のトリアージ は「リアクション」
- 手触りが良い
ステップについて
ステップは「実行する動作」です
生徒会の運用でよく使っているのは次のカテゴリです
1. フォーム
- フォームを表示して入力を集める
- ここで集めた内容が 変数 になります
フォーム設計のコツ
- 入力項目は「運用に必要なものだけ」に絞る
- 迷う項目は選択式にする
- 必須と任意をはっきり分ける
2. メッセージ
- チャンネルに送る
- DM で送る
- スレッドに返信する
メッセージ設計のコツ
- 受け手が次にやることを 1 行で書く
- その場で押せるリンクを置く
- 情報は「短く、でも不足しない」
3. リスト
- リストにアイテムを追加する
- 既存アイテムを選択する
- アイテムを更新する
ここが「問い合わせ → チケット化」の主役です
4. Canvas
- Canvas を作成する
- Canvas を更新する
- 他のユーザーに Canvas を共有する
運用ノートを自動で育てるのに向いています
5. 条件分岐
- 条件に一致したときだけ、その先のステップを実行
- 複数の条件を組み合わせられる
6. 外部アプリのステップ
- Google Sheets に行を追加
- GitHub で Issue を作る
- Jira でチケットを作る
外部連携は強いですが、まずは Slack 内完結で設計するのが分かりやすいです
変数について
ワークフローが「自動化」になるか「ただの定型文」になるかは変数で決まります
ここが理解できると、ワークフローの設計がグッと楽になります
変数はどこから来るか
-
トリガー由来
- 誰が開始したか
- どのチャンネルからか
- どのメッセージか
-
フォーム回答
- テキスト
- 選択肢
- メンバー
- 日付
-
リスト由来
- アイテムのリンク
- ステータス
- 担当者
- 期限
変数を使うと何が嬉しいか
- フォームの「相談内容」を、そのままチケット本文に入れる
- 申請者の名前を自動でメンションする
- 期限や担当をメッセージに差し込んで取りこぼしを減らす
変数の設計で大事なこと
- 「運用で必要な情報」は必ず変数として取れる形にしておく
- 後から必要になる情報を見積もって、最初からフィールドを用意する
- ただし、入力項目を増やし過ぎると提出率が落ちるので、迷ったら
- 初期は少なく
- 足りなくなったら足す
権限と管理について
ワークフローは「作って終わり」ではなく、運用で育てます
生徒会のように担当者が変わる組織では、この管理の仕組みが特に重要です
ワークフローマネージャー
- 作成者以外にも編集権限を渡せる
- 生徒会の運用だと「担当が変わる」ので必須
誰が使えるか
- 実行できる人の範囲
- コピーできる人の範囲
これを雑に広げると、同じ目的のワークフローが乱立して地獄になります
変更管理
- トリガーは公開後に変えにくい
- 大きく変えたいときは「コピーして新しい版」を作る
名前の付け方
- 迷わない命名は運用コストを下げます
おすすめの形式
- 【用途】 + 【対象】 + 【動作】
例
- 問い合わせ 受付フォーム
- 企画 申請フォーム
- チケット ステータス更新通知
- チケット 期限リマインド
実際に詰まったポイント
運用していて「あれ?動かない」となったことを共有します
うまく動かない原因あるある
- 実行権限がない
- トリガーの対象チャンネルが違う
- フォームの項目が更新されて変数が消えた
- リストのフィールド名を変えてマッピングが崩れた(これは何回かやらかしました)
設計で事故を防ぐ
最初に全部やろうとすると失敗します
- まず「人がやりたくない作業」を 1 つだけ自動化する
- その後で分岐や外部連携を足す
- いきなり全部やると、誰も理解できない状態になる
実践編:問い合わせをチケット化する
ここからが本題です
「Slack で問い合わせを受ける」だけなら簡単なんですが、それだと
- 返信漏れ
- 担当不明
- 進捗が追えない
- いつ終わったか分からない
という問題が出てきました
生徒会で実際にこれで困ったので、Slack のリストとワークフローを組み合わせてチケット管理の仕組みを作りました
全体設計
登場人物
-
起票者
- 問い合わせフォームを提出する
-
起票共有者
- 起票者が共有したいメンバー
-
担当者
- デジタル委員会代表(固定)
流れ
実際に運用している流れです
- 起票者がフォームを提出
- 自動でリストにチケットが作られる
- チャンネルに通知が投稿される
- スレッドに詳細が投稿される(担当者がアサインされる)
- 起票者に受付完了 DM が送信される
- 担当者がスレッドで対応
- 担当者が「担当者による完了」ボタンを押す
- 完了報告フォームが表示される
- リストが更新される
- スレッドにクローズ通知が投稿される
- 通知メッセージに完了の絵文字リアクションが追加される
Slack リストの設計
リストは「問い合わせ台帳」として使います
デジタル委員会で実際に運用しているリストを例に紹介します
リスト名の例
- デジタル委員会 問い合わせチケット
実際に運用しているフィールド
実際に運用してみて設計したフィールドです
-
ケース番号
- 自動採番される ID
-
タイトル
- 一瞬で判断できる短いタイトル
-
カテゴリ
- 対応依頼
- 確認依頼
- 操作依頼
- 質問
- その他
-
詳細
- フォームの本文(リッチテキスト対応)
-
関連 URL
- 関連資料などの URL
-
優先度 / 回答期限
- 低 - 1 週間以内
- 中 - 3 日以内
- 高 - 明日まで(至急)
-
起票者
- メンバー型(自動設定)
-
起票共有者
- 共有したいメンバーを複数選択可能
-
ステータス
- 完了
- 保留
- 取消
-
作業内容
- 完了報告の内容
ビューを作る
-
トリアージ用
- ステータスが新規だけ
-
担当者別
- 自分の担当だけ
-
期限が近い
- 7 日以内
-
完了
- 完了だけ
ビューが揃うと、管理が「気合」ではなく「仕組み」になります
ワークフロー1:受付フォーム → リストにチケット作成
目的
- 申請者が迷わず問い合わせできる
- 情報が不足しない
- 自動でチケットになる
トリガー
- リンクから開始
- チャンネルに固定メッセージ
- チャンネルのブックマーク
- Canvas にリンク
ステップ構成
実際に運用しているステップです
- フォームを表示
- リストにアイテムを追加
- チャンネルに通知
- スレッドに詳細を投稿
- 起票者に受付完了 DM
1. フォームの項目例
実際に運用しているフォームの項目です
-
カテゴリ(必須)
- 対応依頼 / 確認依頼 / 操作依頼 / 質問 / その他
-
タイトル(必須)
- 短くわかりやすく
-
詳細(必須)
- できるだけ具体的に記述(リッチテキスト対応)
-
関連 URL(任意)
- 関連資料などがあれば URL を記入
-
優先度 / 回答期限(必須)
- 低 - 1 週間以内 / 中 - 3 日以内 / 高 - 明日まで(至急)
- デフォルトは「低 - 1 週間以内」
-
起票共有者(任意)
- 共有したいメンバーがいれば指定
2. リストにアイテムを追加
- カテゴリ → カテゴリ
- タイトル → タイトル
- 詳細 → 詳細
- 関連 URL → 関連 URL
- 優先度 / 回答期限 → 優先度 / 回答期限
- 起票者 → 起票者(自動設定)
- 起票共有者 → 起票共有者
- ステータス →「完了」(初期値)
ポイント
- フォームとリストのフィールド名を揃えるとマッピングが楽
- フィールド名を後から変えると崩れやすいので慎重に
3. チャンネルへ通知
実際の通知メッセージ例
新しいお問い合わせが送信されました
カテゴリ:{カテゴリ}
ケース番号:{ケース番号}
優先度 / 回答期限:{優先度 / 回答期限}起票者
{起票者} {起票共有者}タイトル
{タイトル}
この通知を投稿することで、後から追いやすくなります
4. スレッドに詳細を投稿
スレッドに詳細情報を投稿します
タイトル
{タイトル}詳細
{詳細}関連 URL
{関連 URL}アサイン担当者
{担当者}優先度 / 回答期限
{優先度 / 回答期限}ボタン:[担当者による完了]
このスレッドで担当者とやり取りができるようになります
5. 起票者へ受付完了 DM
DM 例
デジタル委員会代表への連絡を受け付けました!
ケース番号は「{ケース番号}」です
下記のリンクから起票内容をご確認ください
{チャンネル投稿へのリンク}
ここは意外と重要です
自分だったら「ちゃんと届いてるか不安」になると思い、受付完了の DM を追加しました
これだけで問い合わせの質が上がったと感じています
ワークフロー2:完了報告
担当者が「担当者による完了」ボタンを押したときに起動するワークフローです
トリガー
- ボタンクリック(インタラクティブコンポーネント)
- スレッドの「担当者による完了」ボタン
ステップ
1. 完了報告フォームを表示
-
作業内容(必須)
- リッチテキストで作業内容を記入
-
ステータス(必須)
- 完了 / 保留 / 取消
- デフォルトは「完了」
2. リストを更新
フォームの内容でリストアイテムを更新します
- 作業内容 → 作業内容
- ステータス → ステータス
3. スレッドにクローズ通知
本件はクローズされました
本件を再開することはできませんが、同様の会話をご希望の場合はケース番号「{ケース番号}」を添えて新規起票してください
4. 完了の絵文字リアクションを追加
チャンネルの通知メッセージに絵文字リアクション(:white_check_mark:)を追加して、完了したことを視覚的に分かりやすくします
ちなみに、完了絵文字には「いらすとや」の 「済」スタンプ を使うのも雰囲気が出ておすすめです!
リスト側の自動化も使う
リストには「リスト内で設定できる自動化」があります
最初は全部ワークフローで組もうとしたんですが、リスト側の自動化の方が簡単なケースも多いです
リスト側の自動化でできること:
- フォーム回答をリストに追加
- フィールド変更時の通知
- 期限通知
- 担当者へ
- チャンネルへ
- 期限サマリー
まずは
- 期限通知
- フィールド変更通知
この 2 つを入れるだけでも運用が安定しますワークフローを組む前に、リスト側の自動化を確認するのがおすすめです
運用ルール
仕組みができても、ルールがないと崩れます
最低限のルール
- 新規は 24 時間以内に受付済みとする
- 受付済みになったら担当が必ず入る
- 対応中にしたら進捗コメントを残す
- 完了にしたら完了理由を短く残す
運用ノートを Canvas に作る
- ルール
- よくある質問
- 例外対応
- 改善履歴
これを Canvas で育てると、属人化が減ります
改善の回し方
ワークフローは「最初から完璧」は無理です
おすすめの改善サイクル
- まず運用開始
- 週 1 で詰まりポイントを拾う
- フォームの項目を調整
- 通知の文章を直す
- 分岐を追加
「提出しやすい」と「管理しやすい」はトレードオフなので、運用しながらバランスを取ります
目的別レシピ集
1. 新メンバーのオンボーディング
-
トリガー
- チャンネル参加
-
ステップ
- 使い方案内
- 自己紹介フォーム
- まとめをチャンネル or スレッドに投稿
2. 週次の進捗回収
-
トリガー
- スケジュール
-
ステップ
- フォーム
- リストに追加
- サマリー投稿
3. 企画のレビュー依頼
-
トリガー
- リンク
-
ステップ
- 企画情報フォーム
- 担当者へ DM
- 期限設定
まとめ
Slack のワークフローは、使い方をちゃんと設計すると「連絡ツール」から「運用の OS」に変わります
生徒会で実際にこの仕組みを導入してから、返信漏れが減り、進捗が可視化され、担当者の負担も軽減されました
運用してみて学んだこと
- まず「人がやりたくない作業」を 1 つだけ自動化する
- その後で分岐や外部連携を足す
- いきなり全部やると、誰も理解できない状態になる
- リスト側の自動化とワークフローを使い分ける
- 運用しながら改善していく
この記事のゴールは、ワークフローの機能紹介ではなく
- どこをどう触れば
- 何ができて
- どう運用に落とし込めるか
を一気に繋げることでした
もし同じような問題を抱えている方がいれば、参考にしてみてください!