はじめに
昨今のSASE需要により法人向けのインターネット回線の販売が伸びている
特にベストエフォートタイプ(以下、BEと略す)は個人宅から大企業まで幅広く利用されているが、どのサービスが良いのか非常に分かりづらい
個人的なナレッジを以下にまとめる
インターネット接続の基本構成
用語 | 説明 |
---|---|
プロバイダ設備 | インターネット接続機能を提供するプロバイダ企業の設備 NTT系のOCNやKDDI系のビッグローブが該当 |
アクセス設備 | プロバイダ設備にアクセスするための設備 光ファイバーを利用した回線でフレッツ回線が代表的なサービス |
ONU | 光回線終端装置。光ファイバー接続(アナログ光信号)からLAN接続(デジタル信号)に変換する装置 |
ブロードバンドルーター | インターネット接続機能(IPoE・PPPoE接続機能など)を有した機器。単純にルーターと呼ぶ。セキュリティ機能を有したUTMでも可 |
スイッチ | L2スイッチ、ハブなど。ルーターは基本的に物理的な接続ポートが少ないため、複数の機器を有線接続したい場合は必要 |
予算の確認
インターネット回線にかかる費用はピンキリだが、月額の価格帯としては概ね以下のとおり
数千円 ⇒ 個人向けインターネット回線(BE型)
数万円 ⇒ 法人向けインターネット回線(BE型)
数十万円 ⇒ 法人向けインターネット回線(帯域確保型)
Q. 法人向けと個人向けで何が違うのか?
A. 通信品質とオプション、保守対応が異なる
最大帯域〇〇bpsという通信帯域を複数ユーザーで共有する安価なプランでも法人・個人向けでは設備は分かれる。(法人の方がユーザーあたりの帯域設計が大きい)
Q. 最近のトレンドは?
A. ダークファイバ系や電力系の高品質なBE回線サービスの需要が伸びている
コロナ禍以降、オンライン会議やSaaS利用が普及している中、
フレッツ等のアクセス設備を他ユーザーと共有するタイプは通信品質が安定せず、
帯域確保型は高価なわりに確保できる帯域が少なくむしろボトルネックになる。
その中間層として、アクセス設備が専有である少し割高なBE回線の需要が高い。
(カタログスペックに近い帯域を利用でき、帯域確保型より安価)
FTTHのシェアについても後述する
回線の選定の考え方
各社の宣伝文句を真に受けていると品質の差が全く分からないが、
どのサービスであってもどのアクセス設備を利用しているかという制限からは逃れられない
よって、基本的にはアクセス設備の種別を基に判断することが理にかなっている
アクセスは以下のように分類される
フレッツ系
NTT東西が提供するFTTHサービス(光コラボを含む)
メリット :短納期・低価格・提供エリアが広い
デメリット:通信速度が遅く安定しない
こんな人に向いている
とにかく安いサービスを利用したい人(光コラボを活用)
地方などの遠方も含めてサービス・請求・保守を統一したい人
SIでカスタマイズしたい人(PPPoEでマルチセッション構成など)
ダークファイバ系
SONY(NURO)やソフトバンク等、アクセス設備を持たない企業が、NTT東西からダークファイバ(使用していない光回線)を借用し、自社サービスとして提供
メリット :比較的に安価で高品質(サービスによっては専有型)
デメリット:納期がかかる(概ね3,4か月程度)
こんな人に向いている
オフィス利用など安定した通信を利用したい人(特にオンライン会議)
専有型や一部帯域確保など一定の通信品質を担保したい人
電力系
KDDIやオプテージ、各電力が自社で保有するアクセス設備で提供するサービス
メリット :1社で高品質・高価格サービスから低品質・低価格までラインナップが多い
デメリット:提供エリアが限定的
こんな人に向いている
特定の地方のみで利用する人
コストパフォーマンスの高いサービスを利用したい人
電力とセットで申し込みたい人(キャンペーンを活用)
備考
バックアップ用に回線を用意したい場合は、回線種別を分けることを推奨する
(単一の設備故障で複数の回線が同時に通信断になるケースがある)
バックアップ用回線にはモバイル回線も選択肢に加えると良い
稀に大規模障害で特定のプロバイダが全断するため、プロバイダも分けると良い
参考情報として、FTTHのシェア(マンションタイプを除く)を以下に掲載する
フレッツ系(NTT東西)が62.2%、
ダークファイバ系(SONY、アルテリア)が4.2%
電力系(KDDI、オプテージ、QTnet、その他電力系)が21.4%
その他(不明)が12.1%
引用:総務省 電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和5年度第4四半期(3月末))