本記事はLITALICO Advent Calendar 2024の18日目の記事です。
はじめに
LITALICOの@michiokayです。
人事統括部新卒人材開発グループのメンバーとして、新卒エンジニア採用を担当しており、入社後のフォローアップも担当しています。
新卒採用としての取り組みは3日目に記載しているので関心ある方はご覧ください。
・新卒採用におけるカジュアル面談実施の目的とフォローアップ
本記事の目的
本記事は、新卒成果報告会について、概要をお伝えしながら振り返りをすることが大きな目的です。
具体的には、以下の内容についてお伝えします。
- どんな設計意図を持っていたのか
- 企画にあたって意識したこと
- やってみての改善点
この記事を通して、LITALICOのエンジニア新卒がどのような成長期待をかけられ、機会を作られているのかを知っていただきたいと思います。
本記事の前提:
LITALICOの新卒社員にはプロダクトや事業領域でのリーダーとしての活躍が期待されています。その際に異動やローテーションの機会を経ながら、いろんな立場での経験を積むことも期待されています。
そのため、各チームでのラインでのOJTを中心とした育成だけではなく、エンジニア組織と横断的に研修機会を作り、目線や水準を照らしつつ切磋琢磨できる状況を作ることを重要と考えました。
そこで、今回は入社してからの半年間を対象として、自分がどのような成果をあげたかを振り返り発表する会を企画しました。
また、今回はビジネス職新卒とも合同で開催し、違うプロダクトやビジネスプロセスについて触れることを意図しています。
研修設計
本研修の概要を説明します。
目的としては以下を設定しました。
- 半期の自分の試行錯誤を振り返り、学びと下期への目標を設定する
- 同期の間でそれぞれがしている仕事を知る
- 日常業務では接点のない部長陣や社長との接点を作る
当日の発表内容は以下の通りです
- 前提情報
- 上期の役割
- ミッション
- 業務内容
- 振り返り
- どんな課題に直面したか
- どのように乗り越えたか
- 何を学んだか
- 次に生かすこと
- 下期の抱負
これらの内容に対して、部長陣からの質問・フィードバックを一人ひとり実施、会の最後に社長からのメッセージという流れとしました。
この発表内容を用意するために、1ヶ月ほどの準備期間を設けて、人事や上長たちとの壁打ちをしながら内容を作り上げていきます
研修設計の背後にある考え方
本研修を企画するにあたって、整理しておきたい観点を紹介します。
成果をどう定義するか
発表テーマである成果とはなんでしょうか。
成果とは、期待されるアウトプットのことを指します。
そして、今回の振り返りで捉えてもらいたかったのは、成果と自分が出しえた/出したアウトプットの差分が何で(=課題)、どのようにその差分を捉える試行錯誤をしたかということでした。
特に、社会人になりたての時は、まずは成果に向けて挑戦するためにキャッチアップからスタートする場合も多いです(業界知識を身につける、ビジネススキルを身につけるなどスタート地点に立つための学びの必要がありますよね)。
ただ、そのキャッチアップ単体は「成果」ではないことに注意が必要です。キャッチアップしてから、期待値を知り、自分がその時点でできることとのギャップを埋める試行が重要です。
だからこそ、オンボーディング期間はまずキャッチアップして、成果に向けてチャレンジができる状態に持っていくことが大事です。その設計は人事側としてもなるべく早く整えるように準備が必要ですし、逆に一定のキャッチアップが必要な場合はチームとしてそのことを理解した上で期待値設定が必要です。
振り返り
経験学習理論に基づくと、職場での学びは、①「具体的経験」をした後、 ②その内容を内省し(振り返り) ③そこから「教訓」を引き出して ④その教訓を「新しい状況に適用する」ことで、生じるとされます。
このサイクルを回すためには内省をして教訓を引き出すことが重要です。
その機会づくりを人為的に生み出すことが研修の目的となります。
発表項目
発表項目として、「どんな課題に直面したか」「どのように乗り越えたか」「何を学んだか」「次に生かすこと」という4観点をいれました。こちらは、グループコーチングで用いられるG-POPフォーマットを参照にして設定したものです。
このフォーマットを使ったグループコーチングを通したマネジメント(G-POPマネジメント)は、以下のような効果が期待されるとされています。ここまでの効果が出るかはわかりませんが、対象者が今後も自律的に学習を進めていってほしいと考えたので参考にすることにしました。
❶自然にメンバー個人、個人の仕事のスキルが向上します。
❷自然に現場でのOJT(On the Job Training)が機能しだします。
❸自然に現場の見える化が進みます。
❹自然にナレッジマネジメントが促進します。
成果を振り返ることでの期待
ドナルド・ショーンが現代のプロフェッショナルの専門家像として提起した「省察的実践家」について説明する際に、「行為の中での内省」と「行為の後の内省」という概念を区別しました。
この区分は非常に示唆に富むと考えています。
仕事の中でも、まず、自分の行動を振り返り、試行錯誤しながら改善していくことは重要です。今回の振り返り会でも期待されることです。アクションがしっかりと期待値に向かって進んでいたのかどうかを振り返り、もっとできたかどうかを振り返ることが、より効果的なパフォーマンスに繋がります。
今回は成果に紐づけてふりかえることで、目標とした成果がどんな意味を持っているのかや、目指していた水準は期待される成果として十分だったのかといった、一歩踏み込んだ振り返りが得られる機会になることを期待していました。こういった振り返りは事後的に時間を取り、かつ立場上違う視点を持った人のフィードバックが加わることで深まると考えられます。
企画にあたって気をつけた点
これらの研修を実施するにあたって、ステップを細かくすることを意識しました。結局足早になってしまったことは大きな反省点の一つですが、今回踏んだステップは段階的に発表を作り上げる上では重要だったと考えています。
- オリエンテーション
- 人事との1on1
- 最低2回は実施する
- エンジニア組織では個別のフィードバック会「素振り」
- 部門ごと
- 二部門合同
また、並行して以下の取り組みをしました。
- 伴走してくれるマネージャー陣へのレク
- 当日コメントする部長陣とのレク
当然、それぞれの立場から育成に対する意見やコミットメントがあリマス。
そこで、あらかじめ今回の研修の意図やどのような経験をしてほしいかを伝えておくことで、研修後の状態像が大きくぶれないようにすることを重要視しており、事前のコミュニケーションをなるべく取るように心がけました。
反省点
無事に開催し、アンケートでもこのような機会があったことに対しては好意的な意見がほとんどだったことでまず安心しました。
一方で、運営上の課題もありました。
発表形式
シンプルな表形式を用意しましたが、分量的には全然足りず分けてまとめてもらうことになりました。こちらは実際の発表の経験をもとに、次回以降は改善できそうです。
振り返り期間のフィードバック方向性
フィードバックが、提供者によって角度が違うことや、場合によっては真逆のものがあったようです。これは、気をつけたことにも記載した意識統一が十分ではなかったことが原因と思われます。次回以降は意図やどのような観点からの振り返りを促すことを期待しているかをしっかりと言語化して、すり合わせの精度を上げていきたいです。
(本記事の執筆もその一環です)
振り返りを般化すること
半年に一度の大きな振り返りをするよりも日頃から振り返りをしながら、改善を積み上げることが多くの学びがあるはずです。また、振り返りをして言語化できるのは一定のスキルのため経験の有無の差が大きく表れます。
そのため、このような大きな機会を作るだけでなく、前段階から段階的に振り返りの機会を作っていくことが望ましいと考え、次年度以降はもう少し前の段階でのプレ企画などを検討していきます。
まとめ
ここまで、新卒育成で実施した半期振り返り会の目的や学びをまとめてきました。ビジョンを自律するサービスやプロダクトを生み出す組織になるためには、一人ひとりが自律的な学び手であることが大前提になると思います。
そのような学びを豊かにするには安心して挑戦できる組織になることが大事だと考えています。
- 安心できる=自分もこの道をいけば成長ができると思うことができ、どんどん挑戦ができる
- 挑戦できる=試行が繰り返される
これらが満たされると、結果として学びが得られて、成長ができ、さらに次の挑戦でができるように組織のケイパビリティが広がります。
どんどんこの正の循環が回っていくような組織になっていくために、半期振り返り会だけでなく、いろんな機会創造をこれからも新卒採用として進めていきます。