AnthropicがClaude Code向けに公開した Dynamic Workflows は、1つの開発タスクをClaudeが自動で分解し、複数のサブエージェントに並列実行させるための新機能です。
これまでのAIコーディング支援は、基本的に「1つの会話で、1つのエージェントが順番に作業する」形が中心でした。
Dynamic Workflowsでは、その流れが大きく変わります。
Claudeがタスク全体を見て計画を立て、サブタスクに分解し、数十から数百のサブエージェントを並列に動かします。そして、各エージェントの結果を検証し、最終的に1つのまとまった回答や作業結果として提示します。
Anthropicは、通常なら数週間かかるような作業を数日単位に圧縮できる可能性があると説明しています。
参考: Introducing dynamic workflows in Claude Code
1人のAIアシスタントから、AIチームを動かす開発へ
Dynamic Workflowsのポイントは、Claudeが単に「複数の処理を並列化する」だけではないところです。
Claudeはユーザーの依頼を受けると、まずタスクをどう進めるべきかを動的に計画します。そのうえで、作業を複数のサブタスクに分け、それぞれを独立したサブエージェントに渡します。
たとえば、巨大なコードベースに対して次のような作業を行う場合を考えます。
- 認証まわりの脆弱性を探す
- 古いAPI呼び出しを新しいAPIへ移行する
- フレームワークのバージョンアップに伴う差分を修正する
- 使われていないコードを洗い出す
- 大規模なリファクタリング計画を検証する
通常は、対象ファイルを探し、影響範囲を調べ、修正し、テストし、再確認する必要があります。Dynamic Workflowsでは、このような作業を複数のサブエージェントに分散し、同時に進められます。
これにより、Claude Codeは「コードを書くアシスタント」から、小さなAIチームをその場で編成する開発オーケストレーターに近づいています。
仕組みの中心は、動的なオーケストレーション
Anthropicの説明では、Dynamic Workflowsが起動すると、Claudeはプロンプトに応じて計画を立て、作業を分解し、サブエージェントへ展開します。
重要なのは、ワークフローが固定テンプレートではない点です。
あらかじめ決められた手順をなぞるのではなく、Claudeがタスクの内容に応じて、どのような作業単位に分けるか、どの順番で検証するか、どの結果を採用するかを判断します。
さらに、サブエージェントの結果はそのまま採用されるわけではありません。
別のエージェントが発見内容を検証したり、反証を試みたり、複数の視点から結果を突き合わせたりします。Anthropicは、こうした独立した検証によって、単独のエージェントでは届きにくい品質を目指すと説明しています。
大規模移行や監査で効果を発揮する
Dynamic Workflowsが特に向いているのは、作業範囲が広く、独立して調べられる部分が多いタスクです。
Anthropicは、早期利用例として次のような用途を挙げています。
| 用途 | Dynamic Workflowsが効く理由 |
|---|---|
| コードベース全体のバグ探索 | 複数領域を同時に調査し、発見内容を別エージェントで検証できる |
| セキュリティ監査 | 認証、入力検証、危険なパターンなどを並列に確認できる |
| 大規模なフレームワーク移行 | 数百から数千ファイルにまたがる変更を分担できる |
| API非推奨対応 | 影響箇所の探索、置換、検証をまとめて進められる |
| 重要な設計判断の検証 | 複数の案を独立に評価し、弱点を探せる |
特に興味深いのは、AnthropicがBunのZigからRustへの移植例に触れている点です。
公式ブログでは、Dynamic Workflowsを使ったBunの移植で、約75万行のRustコード、既存テストスイートの99.8%通過、初回コミットからマージまで11日という事例が紹介されています。まだ本番投入されたものではないと補足されていますが、エージェント並列実行が大規模移行に向いていることを示す象徴的な例です。
利用できる環境とプラン
Dynamic Workflowsは、2026年5月28日時点で研究プレビューとして提供されています。
利用できる環境は以下です。
- Claude Code CLI
- Claude Code Desktop
- VS Code拡張
- Claude API
- Amazon Bedrock
- Google Vertex AI
- Microsoft Foundry
Claude CodeのCLI、Desktop、VS Code拡張では、Max、Team、Enterpriseプランで利用できます。Enterpriseでは管理者による有効化が必要です。
MaxまたはTeamプラン、あるいはAPI経由でClaude Codeを使う場合は、Dynamic Workflowsがデフォルトで有効になっています。Enterpriseプランでは、リリース時点ではデフォルトで無効になっており、管理者が設定から有効化できます。
使い始める方法は2つある
Anthropicの公式ブログでは、Dynamic Workflowsの開始方法として次の2つが紹介されています。
- Claudeに直接「ワークフローを作成して」と依頼する
- Claude Code固有の
ultracode設定を有効にする
ultracode は努力レベルを xhigh に設定し、Claudeがタスクに応じてワークフローを使うべきかを自動判断する設定です。
また、Dynamic Workflowsを使う場合は、Anthropicはauto modeの利用も推奨しています。
初回にワークフローが起動するときは、Claude Codeが何を実行しようとしているかを表示し、ユーザーに確認を求めます。大規模な作業を自動化する機能なので、実行前に意図を確認できる設計になっています。
強力だが、トークン消費は重い
Dynamic Workflowsには明確なトレードオフがあります。
それは、通常のClaude Codeセッションよりもトークン消費がかなり大きくなることです。
数十から数百のサブエージェントが並列に動き、それぞれが調査、実装、検証を行うため、単独のエージェントに比べて利用量は増えます。
Anthropicも、まずはスコープを絞ったタスクから始め、自分の作業でどれくらい使用量が増えるのかを把握することを推奨しています。
いきなり「リポジトリ全体を全部見て直して」と頼むより、最初は次のように範囲を区切るほうが現実的です。
- 認証モジュールだけを監査する
- 特定のAPI呼び出しだけを移行する
- 1つのパッケージ配下だけをリファクタリングする
- 既知のエラー一覧に対して修正案を出す
Dynamic Workflowsは強力ですが、雑に使うと使用量だけが膨らみます。大きな仕事を任せる前に、小さな単位で動作とコスト感をつかむのがよさそうです。
これは「AIに全部任せる」機能ではない
Dynamic Workflowsは、Claude Codeの自律性を大きく高める機能です。
ただし、これは人間のレビューや設計判断が不要になるという意味ではありません。
むしろ、大規模な探索、移行、検証のように、人間が手で進めると時間がかかる作業をAIチームに先に走らせ、その結果を人間が判断する流れが現実的です。
特にコードベース全体に影響する変更では、最終的なレビュー、テスト、仕様確認、リリース判断は引き続き重要です。
Dynamic Workflowsは、開発者を置き換えるというより、開発者がレビューすべき材料を高速に集める仕組みとして見ると理解しやすいです。
Claude Codeが示すエージェント開発の次の形
Dynamic Workflowsは、Claude Codeを単なるAIコーディングツールから、複数のエージェントを束ねる開発基盤へ近づける機能です。
ポイントは以下です。
- Claudeがタスクを動的に分解する
- 数十から数百のサブエージェントを並列に動かす
- 各結果を検証してから統合する
- 大規模なバグ探索、監査、移行、検証に向いている
- CLI、Desktop、VS Code拡張、APIなどで研究プレビュー提供中
- 通常のClaude Codeセッションよりトークン消費が大きい
AIコーディングの流れは、「1つのAIに指示して待つ」形から、「AIが複数の作業者を編成し、人間が最終判断する」形へ進みつつあります。
Dynamic Workflowsは、その変化をかなり分かりやすく示す機能です。
作成日: 2026年6月2日