Kimiって、日本語上手くない?
最近Kimi K3を使っていて、ふと気づいたことがあります。日本語の感じ方が、他のモデルとは違うんです。
敬語が丁寧だとか、語尾が美しいとか、そういう表面の話とは別の。「で、結局何が言いたいの?」「なぜそうなるの?」——普通なら読み手側で補う解釈や質問を、こちらからしなくて済むことが多いです。文章の流れの中に、答えが先回りして書かれている。
普段の作業で説明を書かせても、初めて見る専門用語には日本語の説明が添えられ、「何をするか」だけでなく「しないと何が起きるか」まで因果がつながっている。確認できた事実と自分の推測も、きちんと分けて書いてきます。分かりやすくするために事実を削る、という嘘のつき方をしてこないんです。
手を入れたくなる箇所が、明らかに少ないんです。ここまで来ると、なぜなのかが気になってきます。
何で上手いんだろう?
Kimiの公開資料をあたってみました。Kimi K3の技術報告には、自然さにつながりそうな学習方針がいくつか書かれています。
- 事前学習データを、ルール・品質分類器・重複除去で選別している
- 知識系のデータを、異なる文体と視点で言い換え、元資料との整合を確認している
- 教師あり微調整で、多段階の検証と人間による注釈を行っている
- 強化学習の対象に、段落単位の文章作成が含まれている
- 「Coding Experience」という観点で、実際にCoding Agentとして使ったときの指示追従や振る舞いを評価している
同じ内容を別の文体で語り直す訓練や、段落単位で文章を組み立てる訓練は、たしかに「読める文章」に寄与しそうです。
この学習方針と自分の体感を突き合わせて、私はこのように考えています。Kimiの日本語が自然に感じるのは、書かれている事実を、読み手が理解できる順番へ並べ直す力が強いから。「何を先に言い、どこで理由を挟み、どこまでを事実と言い切るか」という文章の組み立て方に、差があるのだと。
表面的な言い回しなら、翻訳調の文章でも機械的に直せます。一方で文章の組み立て方を直すのは、そう簡単ではありません。読み手が何を知らないか、どこでつまずくかを、モデル自身が把握している必要があるからです。冒頭に挙げた「事実と推測を分ける」「因果を先回りして書く」は、まさにこの組み立て方の話だと考えています。
あくまで私の見立てではありますが、ここまでが「なぜ上手いのか」の私なりの答えです。で、日本語が上手いなら活かしたいですよね。
上手いなら、これ活かそう!
「自然な日本語を記述できる」モデルの使いどころはどこか。そこで私は、NGワードの評価者として使ってみました。
AIが書いた日本語には癖があります。「本記事では〜について解説していきます」で始まり、「これにより」「さらに」が連なり、「〜することが可能となります」が続き、「いかがでしたか」で締める。こうした癖の多くは正規表現で機械的に検出できるので、私の環境では、以前の記事で紹介したHookを用いて文章を校正しています。
しかし面倒なのは、検出ルールを増やす作業です。AIっぽい文章を読んで、癖を見つけて、正規表現に書き起こして、言い換えの指針まで伝えるという作業です。手作業だと1件に数分かかりますし、数を増やすほど品質を保つのも大変になります。
この「癖を見つけて自然な言葉に矯正する」仕事こそ、Kimiの出番だと思いました。やり方はGAN(生成側と識別側を競わせて互いに鍛える機械学習の仕組み)に似ています。
ポイントは、敵対側と修正側の両方に同じ「癖の特徴」を渡すことです。今回渡したのはこの5つ。
- 「〜ではなく〜」型の対比構文
- 「効く」「刺さる」「回す」のような、動詞を比喩で使う言い回し
- 「これにより」「〜することが可能です」「〜が求められます」のような英語直訳調
- 「正本」のような、説明なしの内部用語
- 「いかがでしたか」「第一歩です」「ぜひ〜してみてください」型の締めの定型
修正側に何も伝えないと、良い文章まで潰しかねません。逆に特徴を渡しておけば、「この癖だけを狙って直し、自然な文は触らない」という線引きをKimi側でやってくれます。
1周目: リモートワークのコミュニケーション改善
敵対側にはテーマと上の5つの特徴を渡して、800字の解説記事を書かせました。「まず効くのは」「仕組みとしてコミュニケーションを『回す』ことが求められます」「チームの『正本』として明文化してください」——期待どおりのAIくささです。
これを別セッションのKimiに渡し、同じ5つの特徴を添えて「元の文章の意味・主張の強さ・書き手の意図は変えずに、言い回しだけを自然な日本語に直してください。すでに自然な文は変えないでください」と頼みました。返ってきた比較表がこれです。
12件の修正すべてに理由が付き、一緒に返ってきた正規表現12件はどれもそのまま登録でき、全部が元の敵対文にヒットしました。「効く」「刺さる」「回す」「正本」「これにより」「求められます」「いかがでしたか」は、修正後の本文から1つ残らず消えています。
一方で今回は、「〜ではなく〜」という文章パターンが5件中4件が残りましたが、このように残る場合は「『ではなく』も直して」と手動で指示すれば解決できるでしょう。
2周目: 議事録の書き方
テーマを変えて同じ手順を回します。敵対文には「『何を書くか』ではなく『何を残すべきか』」「見出しで『刺さる』構成にする」「正本として管理する運用を回す」が入っていました。
今度は13件の修正が返り、「〜ではなく〜」は6件すべて消えました。1周目で残った癖が2周目では全部直っています。同じモデル、同じ特徴リストでも、テーマやタイミングによって修正内容が変わるということです。
これが、NGワードをリストに書いてHookで毎回検知する理由でもあります。Kimiの判断はその時々で変わってしまうので、ルールをリスト化して固定することで、品質を担保します。
何周も回す
2周で25件の修正候補が出て、正規表現は25件すべてそのまま登録でき、23件が元の敵対文にヒットしました。テーマを変えると出てくる癖も変わります。リモートワークの回では「回す」「刺さる」、議事録の回では「にとどまらず」「よりも」への置き換え。このようにテーマを変えることで、テーマごとのNGワードを効果的に蓄積できます。
Kimi CodeのCLIで回す
このループはKimi CodeのCLIで回すのがおすすめです。特にKimi本家のCoding Planで使う場合は、Kimi Codeがいちばん想定どおりに動いてくれます。以下のようなプロンプトで指示することで、敵対役と修正役をサブエージェントに分けて実行し、比較表をMarkdownで保存するところまでやってくれます。今回頼んだ指示はこれです(テーマと癖の特徴は好きに差し替えてください)。
出てきた比較表から採用するものを選び、NGリストへ登録する。テーマを変えてもう一度頼む。これだけでNGリストを効果的に蓄積できます。
おわりに
Kimiの日本語が上手いのは確かです。ただ、書かせて終わりにするのはもったいないと思い、今回はNGワードの評価者として使ってみました。フィードバックループはこのようなNGワードの蓄積に向いているので、皆さんもやってみてください。
出典・参考
- Kimi K3 Technical Report: https://arxiv.org/pdf/2607.24653
- Kimi K3 Tech Blog: https://www.kimi.com/en/blog/kimi-k3
- Kimi Code Overview: https://www.kimi.com/code/docs/en/
- Kimi Code Hooks: https://www.kimi.com/code/docs/en/kimi-code-cli/customization/hooks.html



