0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

Kimiを用いた不自然な日本語の撲滅——Kimiの日本語はなぜ自然に感じるのか

0
Last updated at Posted at 2026-08-26

Kimiって、日本語上手くない?

最近Kimi K3を使っていて、ふと気づいたことがあります。日本語の感じ方が、他のモデルとは違うんです。

敬語が丁寧だとか、語尾が美しいとか、そういう表面の話とは別の。「で、結局何が言いたいの?」「なぜそうなるの?」——普通なら読み手側で補う解釈や質問を、こちらからしなくて済むことが多いです。文章の流れの中に、答えが先回りして書かれている。

普段の作業で説明を書かせても、初めて見る専門用語には日本語の説明が添えられ、「何をするか」だけでなく「しないと何が起きるか」まで因果がつながっている。確認できた事実と自分の推測も、きちんと分けて書いてきます。分かりやすくするために事実を削る、という嘘のつき方をしてこないんです。

手を入れたくなる箇所が、明らかに少ないんです。ここまで来ると、なぜなのかが気になってきます。


何で上手いんだろう?

Kimiの公開資料をあたってみました。Kimi K3の技術報告には、自然さにつながりそうな学習方針がいくつか書かれています。

  • 事前学習データを、ルール・品質分類器・重複除去で選別している
  • 知識系のデータを、異なる文体と視点で言い換え、元資料との整合を確認している
  • 教師あり微調整で、多段階の検証と人間による注釈を行っている
  • 強化学習の対象に、段落単位の文章作成が含まれている
  • 「Coding Experience」という観点で、実際にCoding Agentとして使ったときの指示追従や振る舞いを評価している

同じ内容を別の文体で語り直す訓練や、段落単位で文章を組み立てる訓練は、たしかに「読める文章」に寄与しそうです。

この学習方針と自分の体感を突き合わせて、私はこのように考えています。Kimiの日本語が自然に感じるのは、書かれている事実を、読み手が理解できる順番へ並べ直す力が強いから。「何を先に言い、どこで理由を挟み、どこまでを事実と言い切るか」という文章の組み立て方に、差があるのだと。

表面的な言い回しなら、翻訳調の文章でも機械的に直せます。一方で文章の組み立て方を直すのは、そう簡単ではありません。読み手が何を知らないか、どこでつまずくかを、モデル自身が把握している必要があるからです。冒頭に挙げた「事実と推測を分ける」「因果を先回りして書く」は、まさにこの組み立て方の話だと考えています。

あくまで私の見立てではありますが、ここまでが「なぜ上手いのか」の私なりの答えです。で、日本語が上手いなら活かしたいですよね。


上手いなら、これ活かそう!

「自然な日本語を記述できる」モデルの使いどころはどこか。そこで私は、NGワードの評価者として使ってみました。

AIが書いた日本語には癖があります。「本記事では〜について解説していきます」で始まり、「これにより」「さらに」が連なり、「〜することが可能となります」が続き、「いかがでしたか」で締める。こうした癖の多くは正規表現で機械的に検出できるので、私の環境では、以前の記事で紹介したHookを用いて文章を校正しています。

しかし面倒なのは、検出ルールを増やす作業です。AIっぽい文章を読んで、癖を見つけて、正規表現に書き起こして、言い換えの指針まで伝えるという作業です。手作業だと1件に数分かかりますし、数を増やすほど品質を保つのも大変になります。

この「癖を見つけて自然な言葉に矯正する」仕事こそ、Kimiの出番だと思いました。やり方はGAN(生成側と識別側を競わせて互いに鍛える機械学習の仕組み)に似ています。

コード1_ループ手順.png

ポイントは、敵対側と修正側の両方に同じ「癖の特徴」を渡すことです。今回渡したのはこの5つ。

  • 「〜ではなく〜」型の対比構文
  • 「効く」「刺さる」「回す」のような、動詞を比喩で使う言い回し
  • 「これにより」「〜することが可能です」「〜が求められます」のような英語直訳調
  • 「正本」のような、説明なしの内部用語
  • 「いかがでしたか」「第一歩です」「ぜひ〜してみてください」型の締めの定型

修正側に何も伝えないと、良い文章まで潰しかねません。逆に特徴を渡しておけば、「この癖だけを狙って直し、自然な文は触らない」という線引きをKimi側でやってくれます。

1周目: リモートワークのコミュニケーション改善

敵対側にはテーマと上の5つの特徴を渡して、800字の解説記事を書かせました。「まず効くのは」「仕組みとしてコミュニケーションを『回す』ことが求められます」「チームの『正本』として明文化してください」——期待どおりのAIくささです。

これを別セッションのKimiに渡し、同じ5つの特徴を添えて「元の文章の意味・主張の強さ・書き手の意図は変えずに、言い回しだけを自然な日本語に直してください。すでに自然な文は変えないでください」と頼みました。返ってきた比較表がこれです。

表1_1周目比較表.png

12件の修正すべてに理由が付き、一緒に返ってきた正規表現12件はどれもそのまま登録でき、全部が元の敵対文にヒットしました。「効く」「刺さる」「回す」「正本」「これにより」「求められます」「いかがでしたか」は、修正後の本文から1つ残らず消えています。

一方で今回は、「〜ではなく〜」という文章パターンが5件中4件が残りましたが、このように残る場合は「『ではなく』も直して」と手動で指示すれば解決できるでしょう。

2周目: 議事録の書き方

テーマを変えて同じ手順を回します。敵対文には「『何を書くか』ではなく『何を残すべきか』」「見出しで『刺さる』構成にする」「正本として管理する運用を回す」が入っていました。

表2_2周目比較表.png

今度は13件の修正が返り、「〜ではなく〜」は6件すべて消えました。1周目で残った癖が2周目では全部直っています。同じモデル、同じ特徴リストでも、テーマやタイミングによって修正内容が変わるということです。

これが、NGワードをリストに書いてHookで毎回検知する理由でもあります。Kimiの判断はその時々で変わってしまうので、ルールをリスト化して固定することで、品質を担保します。

何周も回す

2周で25件の修正候補が出て、正規表現は25件すべてそのまま登録でき、23件が元の敵対文にヒットしました。テーマを変えると出てくる癖も変わります。リモートワークの回では「回す」「刺さる」、議事録の回では「にとどまらず」「よりも」への置き換え。このようにテーマを変えることで、テーマごとのNGワードを効果的に蓄積できます。

Kimi CodeのCLIで回す

このループはKimi CodeのCLIで回すのがおすすめです。特にKimi本家のCoding Planで使う場合は、Kimi Codeがいちばん想定どおりに動いてくれます。以下のようなプロンプトで指示することで、敵対役と修正役をサブエージェントに分けて実行し、比較表をMarkdownで保存するところまでやってくれます。今回頼んだ指示はこれです(テーマと癖の特徴は好きに差し替えてください)。

コード2_メインAgent指示文.png

出てきた比較表から採用するものを選び、NGリストへ登録する。テーマを変えてもう一度頼む。これだけでNGリストを効果的に蓄積できます。


おわりに

Kimiの日本語が上手いのは確かです。ただ、書かせて終わりにするのはもったいないと思い、今回はNGワードの評価者として使ってみました。フィードバックループはこのようなNGワードの蓄積に向いているので、皆さんもやってみてください。


出典・参考

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?