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AI時代のMoatとは — 「もし明日、競合が同じプロダクトを出したらどう勝つか?」

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Last updated at Posted at 2026-05-11

AI時代のMoatとは — 「もし明日、競合が同じプロダクトを出したらどう勝つか?」

ファインディ株式会社主催のProduct Management Summit 2026 に参加してきました!本記事では、セーフィー株式会社 石川貴夫氏のセッション「AI×独自データ×共創圏による拡張戦略」の内容をまとめています。

まとめた理由について「競合が同じものを出してきたらどう勝つか」というMoatの考え方が、FDEやAI開発を進める弊社に大きく関係する内容だと感じたためです。


登壇者紹介

氏名 所属 担当
石川 貴夫 氏 セーフィー株式会社 企画本部 本部長 PM組織・デザイン組織の統括

セーフィー(Safie) は、クラウド録画型の映像プラットフォームを提供する企業で、クラウド録画カメラの国内シェアNo.1。小売・飲食・建設・物流・製造など幅広い業界で導入されており、防犯用途にとどまらず、遠隔での現場確認や業務効率化、AIを活用した映像解析へと領域を拡大している。

新卒でメーカーに入社し、エンジニアとして複数のプロダクト開発・プロジェクトマネジメントを経験。その後DeNAに入社し、現在のタクシーアプリ「GO」の乗務員向けソリューションに携わる。事業統合に伴いGO株式会社へ転籍後も、IT×リアルな領域に向き合い続けてきた方。

2021年にセーフィーにジョインし、「映像の汎用性の高さと、解決できる課題の多さに可能性を感じた」という入社動機が、そのままセッションの内容に直結していた。


前提知識:Moatとは何か

Moat(モート) = 英語で「城の堀(ほり)」。ビジネスの文脈では、競合他社が簡単に真似できない、自社だけの競争優位性のことを指す。

堀が深ければ深いほど、城(=自社の事業)は攻められにくくなる、というイメージ。投資家のウォーレン・バフェットが企業評価に使ったことで広まり、スタートアップやプロダクト開発の世界でも「この事業のMoatは何か?」という問いは頻繁に使われる。

本セッションの核となる問いは非常にシンプルで

「もし明日、競合他社がまったく同じプロダクトを出してきたら、どう勝つのか?」

この問いにパッと答えられるなら、Moatはある。答えに詰まるなら、まだ築けていない。
そしてMoatはすぐには作れないからこそ、今から何を積み上げるかが重要になる。


なぜ今、Moatを意識する必要があるのか

開発スピードが飛躍的に向上した現在、機能の豊富さやUI/UXの優位性はすぐに競合に真似されてしまう。かつてはそれ自体が差別化要因だったが、今やMoatとしては機能しにくくなっている。

では、何がMoatになるのか。セッションでは以下の8つが挙げられていた。

# Moat 概要
1 データ インターネット上にない独自のクローズドデータを持っているか
2 ワークフロー 深く埋め込まれていて、簡単には剥がせない状態を作れるか
3 ディストリビューション 協力な販売チャネル・顧客基盤やパートナーシップにおける優位性
4 規制 ライセンス(事業認可)などの法規制対応
5 エコシステム Platform上に多くの外部開発者や企業が参入し独自のアプリケーションや機能を構築して、そのプラットフォームに依存している状態
6 ネットワーク効果 利用者が増えるほど、参加者全員にとってのメリットが増大するもの
7 スケール 大きすぎて誰も同じ土俵に立てないほどの規模
8 物理インフラ 現実世界の物理なモノ・ヒト・インフラ

セッション本編:AI時代のMoat戦略

独自データ=「たどり着けること自体」がMoat

重要なのは「データをうまく活用する力」ではなく、そもそもそのデータにアクセスできるポジションにいること自体が競争優位だという点。

現場に眠る非構造データ——暗黙知、行動の軌跡、日々のオペレーションの記録——こそがAIを賢くする武器になる。しかし、このデータは業務フローの奥深くにあり、表面的なAPI連携やSaaS導入では手が届かない。

カメラを設置する、現場にエンジニアを常駐させる、オペレーションを一緒に回す。そうしたフィジカルな関わりを通じて初めて、競合がアクセスできないデータを取得できるポジションが手に入る。

Safieの実践:連鎖するMoatと共創圏

セーフィーでは、Moatを連鎖させることで競争優位を高めるアプローチを取っている。

Step 1:カメラ設置(ハードウェア・オペレーション)を自社で手がける
    ↓
Step 2:独自の映像データをAIで解析・活用する
    ↓
Step 3:複数のMoat要素が連鎖し、単体では模倣できない壁になる

一つひとつのMoat要素は突破されるかもしれないですが、連鎖していれば競合は全てを同時に再現しなければならず、模倣の難易度が跳ね上がる。

「共創圏」と水平分業モデル

とはいえ、全てを自社でやるのは物理的に不可能。そこでセーフィーが採っているのが水平分業型のエコシステム

水平分業 = 製品やサービスの工程を分解し、それぞれ得意な企業が担当する分業モデル。
共創圏 = 自社とパートナー企業が互いの強みを持ち寄り、一つのエコシステムとして価値を共に作り上げる関係性のこと。

パートナーとの「共創圏」を構築することで、以下のメリットが得られる。

  • 圧倒的なスピードと柔軟性
  • 莫大な設備投資・固定費の抑制
  • パートナーの強みを活かした市場拡張

「人+道具で完結させる」という設計思想と、「お客様がいつでも買える状況を作る」という商流設計が、スケールの基盤になっている。


自社への示唆:FDE × AI開発で考える

FDEモデルは「Moatを築けるポジション」にすでにいる

セッションで最も強調されていたのは、「業務フローの奥深くに入り込むことで、競合がアクセスできないデータに到達できる」という点。

弊社のFDEは、クライアントの現場に入り込んでエンジニアリングを行うモデル、つまり他社がAPIやSaaS連携では到達できない、現場の業務フローや暗黙知に日常的に触れているポジションに、すでにいる。

これはセーフィーが「カメラの設置から自社でやる」ことで映像データへのアクセスを確保しているのと、構造的に同じだと考える。

弊社にとっての「独自データ」は何か?

FDEが現場で触れている情報——クライアントの業務プロセス、意思決定のパターン、現場で発生する例外処理のナレッジ——これらは、外部からは見えない非構造データ。

ここで問うべきは、このデータを組織的に蓄積・活用する仕組みがあるかどうか

状態 結果
FDE個人の頭の中にだけある 属人的な経験で終わる
構造化してAI開発のインプットに活用 「FDEで現場に入っているからこそ作れるAI」という競合に真似できないサイクルが生まれる

受託AI開発を「Moat」に変えるには

受託開発はクライアントが別の会社に発注すれば同じものが作れてしまうため、一般的にMoatになりにくいと言われている。

しかし、FDEを通じて得た現場の知見をAI開発にフィードバックし、「この領域の業務を深く理解しているからこそ精度の高いAIが作れる」という状態を作れれば、単なる受託ではなくドメイン特化型のAI開発パートナーとしてのポジションが築ける。

今日から意識すべき3つのアクション

  1. ナレッジの蓄積 — FDEが現場で得ている知見を、個人の経験で終わらせず組織のナレッジとして蓄積する仕組みを作る
  2. ドメイン知識の横展開 — AI開発案件で得た知識を、次の案件や自社プロダクトに展開できる構造にする
  3. 共創圏の設計 — クライアントとの関係を「発注-受注」ではなく、セーフィーのような共創圏として設計できないか検討する

まとめ

「もし明日、競合が同じプロダクトを出したら?」

この問いに対する答えは、プロダクト単体の機能差ではない。
セッションで語られたMoat戦略を3つのレイヤーに整理すると、以下の通り。

レイヤー 内容
データ 現場の業務フローに深く入り込んで得た、コピー不可能な独自データ
物理インフラ ハード・オペレーションを含む、ソフトだけでは到達できない領域
エコシステム パートナーとの共創圏による市場拡張

この3つのレイヤーを連鎖させて積み重ねること。それがAI時代のMoat戦略となる。

弊社のFDEモデルは、現場に常駐するというフィジカルな接点を持ち、そこから独自データにアクセスできるポジションにすでに立っている。
次は、そこで得られるものをどう蓄積し、どう連鎖させていくかを考えていきたい。

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