Amazon Bedrock と Amazon SageMaker AIの使い分け:戦略的選択のための徹底ガイド
Amazon BedrockとAmazon SageMakerは、AWSが提供する重要なAIサービスですが、その目的、ターゲットユーザー、機能において異なる特性を持っています。
これから生成AIの導入をお考えの方向けに、両サービスの違いを明確にし、ビジネスニーズに合わせた最適な選択について詳しく解説していきたいと思います!
AWSのAIサービス階層における位置づけ
AWSの生成AIサービスは、三階層のスタックとして分類されています。この階層構造を理解することで、両サービスの目的の違いが明確になります
サービスの階層構造
- 生産性を向上させるアプリケーション(最上層)
- 生成AIアプリを作成するためのモデルおよびツール(中間層)
- AIモデルを構築・トレーニングするためのインフラストラクチャ(基盤層)
この階層において、Amazon Bedrockは中間層(2)に位置し、Amazon SageMakerは基盤層(3)に位置しています。この違いは、両サービスの基本的な目的と設計思想を反映しています。
ちなみにAmazon Q Business、Amazon Q Developerは最上層(1)に位置しています
引用:https://docs.aws.amazon.com/decision-guides/latest/bedrock-or-sagemaker/bedrock-or-sagemaker.html
サービスの基本的な目的と主要ユーザー
Amazon Bedrockの目的と主要ユーザー
Amazon Bedrockは、開発者やビジネスユーザーが深い機械学習の知識なしに生成AIアプリケーションを開発できるように設計されています。APIを介して基盤モデル(FM)を活用し、生成AIアプリケーションを簡単に構築できる環境を提供します。
主な目的:
- アプリケーションにAI機能を統合する
- 事前トレーニング済みの基盤モデルを活用したアプリケーション開発
- 迅速なAIプロトタイピングと実装
Amazon SageMaker AIの目的と主要ユーザー
Amazon SageMaker AIは、データサイエンティスト、機械学習エンジニア、開発者向けに設計されています。カスタムモデルを構築し、特定のビジネスニーズに合わせた機械学習ソリューションを作成するためのプラットフォームを提供します。
主な目的:
- カスタムモデルの開発と訓練
- 専門的なAI/機械学習ニーズへの対応
- より詳細なモデル調整とコントロール
モデル利用とカスタマイズの違い
両サービスは基盤モデルの活用方法とカスタマイズ能力において顕著な違いがあります
Amazon Bedrockのモデル活用アプローチ
Amazon Bedrockでは、事前学習済みの基盤モデルを利用するか、必要に応じてファインチューニングが可能です
サービスとして以下の特徴があります
- APIを通じた簡単なモデル統合
- 限られたモデル選択でのファインチューニング
- コードを最小限に抑えた実装
2025年3月時点でAmazon Bedrockでファインチューニングがサポートされているモデルは以下の通りですが、SageMakerと比較するとその選択肢は限られています
- Amazon Titan Text G1 - Express
- Amazon Nova Pro
- Amazon Nova Lite
- Amazon Nova Micro
- Amazon Titan Text G1 - Lite
- Amazon Titan Multimodal Embeddings G1
- Amazon Titan Image Generator G1
- Amazon Titan Image Generator G1 v2
- Amazon Titan Text G1 - Premier
- Anthropic Claude 3 Haiku
- Cohere Command
- Cohere Command Light
- Meta Llama 3.1 70B Instruct
- Meta Llama 3.1 8B Instruct
Amazon SageMaker AIのモデル活用アプローチ
Amazon SageMaker AIでは、モデルを一から作成したり、詳細にカスタマイズしたりすることが可能です
特徴は以下の通りです:
- 広範なモデルカスタマイズ能力
- 詳細なパラメータ調整
- 専門的なAIモデル構築のための環境
基盤モデル(FM)の選択肢
両サービスで利用可能な基盤モデルの範囲と種類には違いがあります。
Amazon Bedrockの基盤モデル
Amazon Bedrockでは 人気のFMがサポートされており、定期的にアップデートされてます
- Amazon Nova
- Amazon Titan
- Anthropic Claude
- DeepSeek-R1
- Cohere Command & Embed
- AI21 Labs Jurassic
- Meta Llama
- Mistral AI
- Stable Diffusion XL
サポートされているモデルの詳細はこちら
最近では、生成AI界隈に一石を投じたDeppSeek-R1までサポートされ、どんどんと使い勝手が良くなっている印象です
Amazon SageMaker JumpStartの基盤モデル
Amazon SageMaker JumpStartでは、カスタマイズして生成AIワークフローに統合するための組み込みのパブリックFMおよび独自のFMを提供しています。特定のユースケース向けに最適化されたモデルを含め、Amazon Bedrockよりも幅広いFMを選択できるのが特徴です
JumpStartでは、Hugging Face、StabilityAI、Meta、AmazonからのモデルやAI21 Labs、Cohere、LightOnからの独自FMなど、多様なモデルを利用できます
2025年3月時点で使用できるモデル一覧
課金体系の違い
Amazon Bedrockの課金体系
Amazon BedrockはAPIの呼び出し回数に応じた従量課金制を採用しています。
アプリケーションがモデルを使用する頻度に基づいて料金が発生します
Amazon SageMaker AIの課金体系
Amazon SageMaker AIはコンピュートリソース、ストレージ、その他サービスの使用量に基づく課金体系を採用しています。実行時間に基づいて課金されるため、使用しないときはSageMakerのコントロールパネルで停止することが推奨されています。
ユースケース別の選択ガイド
両サービスの特性を理解したうえで、どのようなケースでどちらを選ぶべきかを検討しましょう!
使用ケース | Amazon Bedrock | Amazon SageMaker AI |
---|---|---|
迅速なAIアプリ開発 | ◯ | |
事前学習済みモデルを使ったチャットボット開発 | ◯ | |
RAG(独自データの検索)で十分な場合 | ◯ | |
自律的なエージェント作成 | ◯ | |
テキスト生成・要約・画像生成など一般的なAI機能 | ◯ | |
機械学習の専門知識が限られているチーム | ◯ | |
ビジネスユーザーや開発者向けの簡単な生成AI開発 | ◯ | |
専門的・カスタムなAIソリューション | ◯ | |
特定業界向けの専門的なモデル構築 | ◯ | |
データサイエンティスト用の環境構築 | ◯ | |
研究開発目的での使用 | ◯ | |
高度なモデルカスタマイズ | ◯ | |
パラメータの詳細な調整 | ◯ | |
データサイエンスチームがいる場合 | ◯ | |
データサイエンティストや機械学習エンジニア向け | ◯ |
両サービスの補完的利用
Amazon BedrockとAmazon SageMaker AIは競合するというよりも、補完的な関係にあります
特に以下のような統合が可能です:
SageMakerモデルのBedrock統合
現在プレビュー版ですが、BedrockではSageMakerのモデルをインポートすることも可能になっています。これにより、SageMakerで作成した高度にカスタマイズされたモデルをBedrock環境で運用することができます
"Custom Model for Amazon Bedrock"という機能では、SageMakerやその他のツールでカスタマイズしたモデルを数クリックでAmazon Bedrockに追加することができます
複合的なAIソリューション構築
ファインチューニングとRAGを組み合わせることで、より高度なAIソリューションを構築することも可能です。例えば、SageMakerで専門的なモデルを作成し、BedrockでRAG機能と組み合わせて柔軟なアプリケーションを開発するというアプローチも考えられます
まとめ:選択の基準
Amazon BedrockとAmazon SageMakerは、それぞれ異なる目的と強みを持つAWSのAIサービスです。
選択の際には以下のポイントを考慮することをお勧めします:
評価基準 | Amazon Bedrock | Amazon SageMaker |
---|---|---|
必要な専門性レベル | 深い機械学習知識が不要 | 専門的なカスタマイズが必要 |
開発スピード | 迅速な開発が可能 | 自由度の高いカスタマイズが可能 |
コスト構造 | API呼び出しベースの課金 | リソース使用量ベースの課金 |
AIアプリの複雑さ | 一般的なAI機能に最適 | 高度にカスタマイズされた独自モデル向け |
チームのスキルセット | 開発者中心のチーム向け | データサイエンティスト中心のチーム向け |
適切なサービスを選択することで、生成AIの可能性を最大限に活用し、ビジネスニーズに最適なソリューションを構築することができるでしょう
今後の展望
AWSのAIサービスは急速に進化しており、今後も両サービス間の統合や新機能の追加が期待されます。特に、モデル評価機能やカスタムモデルのインポート機能の拡充、セキュリティ機能の強化など、エンタープライズでの生成AI活用をさらに促進する機能の開発が進められています
最新の情報を常に確認し、ビジネスニーズに合わせて適切なサービスを選択することが重要です!