昨年、RaycastのAdvent Calendarを実施してから早1年が経ちました。
2025年もRaycastは進化を続け、単なる「ランチャーアプリ」という枠組みを超えた存在となりました。
この1年間(2024年12月〜2025年11月)を振り返ると、「AIの統合」「Raycast Focusの登場」「実行環境の拡大」「オンライン会議」という4つの大きな柱での変化がありました。この期間に追加された主要な機能を振り返りながら、Raycastがどのように変わったのかをまとめます。
この記事は、Raycast Advent Calendar 2025の1日目の記事です。
1. AIの統合
2024年までを「AIとチャットできる」段階だったと考えると、2025年は「AIがツールを使って作業を代行してくれる」エージェント化の段階でした。
AI Extensions Beta (v1.93.0 - 2025/02/26)
これが今年最大のパラダイムシフトだったと言っても過言ではありません。
これまでのRaycast AIは、あくまでテキストベースの回答生成が主でしたが、このアップデートによりAIが拡張機能(Extensions)を直接操作できるようになりました。
使い方はシンプルで、AI Chatの中で「@」を入力して拡張機能を指定し、自然言語で指示を出すだけです。
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「@calendar 来週の火曜日の13時から田中さんとランチの予定を入れて」
- → カレンダーの空き状況を確認し、イベントを作成してくれます。
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「@safari 開いているタブの中から、Reactに関する記事だけをまとめて」
- → ブラウザのタブを解析し、要約リストを作成してくれます。
これにより、手作業で手順を指定しなくても、実行したいコマンドなどを覚えていなくても、やりたいことを伝えるだけでRaycastが実行してくれるようになりました。
さらに、複数の拡張機能を組み合わせることで、より複雑な作業も自動化できます。
たとえば、「@safari 現在開いているタブの中から、Reactに関する記事だけをまとめて @apple-notes に新規メモを作成して」 という指示を出すと、要約したものをAppleのメモアプリに登録してくれます。
MCP (Model Context Protocol) (v1.98.0 - 2025/05/08)
AI Extensionsの裏側を支える技術として、MCPへの対応も迅速に行われました。これにより、Raycastはローカル環境や社内サーバーにあるデータにも手軽に接続できるようになりました。
エンジニアにとっては、RaycastからMCPサーバーに接続することで、「社内ドキュメントを検索するAI」や「DBから特定のユーザー情報を引いてくるコマンド」 も実現できるようになりました。
今後、MCPがより普及すると、便利な機能をRaycastから手軽に実現できます。
Local Models & BYOK (v1.99.0 / v1.100.0)
プライバシーとコストへの配慮も進みました。
- Local Models (v1.99.0): Ollamaとの統合により、ローカル環境で実行するLLMを使えるようになりました。機密情報を外部に送信したくないケースでも、Raycastの洗練されたUIでAIを利用できるようになりました。
- Bring Your Own Key (v1.100.0): Raycast Proのクレジットを消費せず、自分で契約しているOpenAIやAnthropic、GoogleのAPIキーを設定して使えるようになりました。有料のプランを契約している利用者にとってはコスト管理がしやすくなったと言えるでしょう。
Chat Branching (v1.101.0 - 2025/06/16)
地味ながらUXの向上につながったのが「会話の分岐」機能です。
AIとの対話中に「あ、この話題についてもっと深掘りしたいけど、今の流れも残しておきたい」という場面で、ツリー状に会話を分岐できます。会話していて「ちょっと違った」「直前の会話を引き継ぎたくない」といったときに、一本道で会話するのではなく、試行錯誤がしやすくなりました。
2. Raycat Focusで「集中」する
個人的に今年の大ヒットの機能として、利用者の集中力を高める「Raycast Focus」があります。
Raycast Focus (v1.89.0 - 2025/01/16)
「仕事に集中したいのに、ついX(旧Twitter)を見てしまう」「通知が来て作業が中断される」。
そんな現代病への処方箋として登場したのがRaycast Focusです。
これは単なる通知オフ機能ではありません。「強制力」が違います。
「Start Focus Session」コマンドを実行し、タイマーをセットすると、指定したアプリやWebサイトへのアクセスが物理的に(ソフトウェア的に)遮断されます。ブラウザでSNSを開こうとしてもブロック画面が表示され、アプリ自体が起動しなくなります。
Custom Focus Categories (v1.92.0 - 2025/02/19)
Focus機能はさらに進化し、状況に応じた「カテゴリ」を作成できるようになりました。
初期設定でも、「Gaming」や「Social」「News」などのカテゴリが用意されており、これを選ぶだけで、事前に指定したサイトなどをブロックできます。自分が使うものをカスタマイズして登録しておくと、Focusセッションを開始するときに、手軽に選べます。
「Allow List(許可リスト)」の導入もあります。「ブロックするものを選ぶ」のではなく、「これだけは使っていい」を指定することで、個別に指定するのが面倒なものもまとめて排除できます。
Manage Auto Quits (v1.87.0 - 2024/12/04)
「使っていないアプリがメモリを食っている」「Cmd+Tabのリストが汚い」。
そんなストレスを解消するAuto Quits機能の設定が便利になりました。一定時間バックグラウンドにいたアプリを自動終了させることで、Macのリソースを常にクリーンに保ち、作業環境を整えてくれます。
3. 実行環境の拡大
RaycastはmacOSだけのものではなくなり、iOSやiPadOS、Windowsでも使えるようになりました。
Raycast for iOS (v1.97.0 - 2025/04/30)
長年待ち望まれていたiOS版、iPadOS版がついにリリースされました。
macOSで設定したQuicklinksやSnippets、そしてAI ChatがiOSにも同期されます。
- 出先でふと思いついたアイデアをAIに投げておく。
- PCで登録した定型文(Snippet)をiPhoneのメール返信で使う。
といったシームレスな連携が可能になり、Raycastへの依存度がさらに高まりました。
Hyper Key (v1.91.0 - 2025/02/05)
パワーユーザー向けの機能として、Hyper Keyの設定が標準機能として組み込まれました。
Caps Lockキーなどを「Hyper Key(Cmd+Opt+Ctrl+Shift同時押し)」として割り当てることで、既存のショートカットキーと競合しない、自分だけのショートカットレイヤーを作成できます。
Karabiner-Elementsなどの外部ツールを使わずとも、Raycast単体で完結するのが魅力です。
macOS Tahoeへの対応強化 (v1.103.0 - 2025/09/15)
最新のmacOS Tahoeのリリースに合わせて、UIも刷新されました。
Appleの新しいデザイン言語に合わせた「Liquid Glass」風の透過エフェクトや、コントロールセンターとの親和性が高まり、OS標準機能のような顔をしてそこに居座っています。
Raycast for Windows
Windows版がついにリリースされました。
これについては誰かがこのAdvent Calendarの中で書いてくれるでしょう。
4. オンライン会議
リモートワークが定着した今、会議にまつわる「面倒」もRaycastが引き受けました。
Auto-Join Meetings (v1.94.0 - 2025/03/19)
「会議のURLどこだっけ?」とカレンダーを探す時間は無駄です。
また、会議用のアプリを開いて準備する時間も無駄です。
Raycastを使うと、会議の直前になるとプロンプトが表示され、Enterキーを押すだけでZoomやGoogle Meetに参加できます。これだけで、遅刻のストレスがなくなります。
Auto Transcribe with Granola (v1.102.0 - 2025/06/30)
AIメモアプリ「Granola」との連携機能です。
Auto-Joinで会議に参加すると同時に、バックグラウンドでGranolaが起動し、録音と文字起こしを開始します。会議が終われば、要約が自動生成されている状態にできます。
「議事録」をAIに完全に任せられるのは便利です。
おわりに:次の1年に向けて
2026年は一般の人に普及する段階だと考えます。これまでは一部のITエンジニアだけが使っているランチャーアプリでしたが、Windows版の登場、生成AIの普及もあり、多くの人がより便利に使える環境としてRaycastを広めていきたいです。
まだRaycastを使っていない方、あるいは無料版のままの方は、ぜひこの機会にPro版やAI機能を試してみてください。