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QAテスターの育成のために

Last updated at Posted at 2023-12-15

はじめに

日々QAとして業務をしている中で、コスト削減、品質向上、効率化、など様々な改善活動に頭を悩ませることがあると思います。その打ち手の一つとして、テスターの皆さんの育て方について考えた方もいらっしゃると思います。ここでは、テスト未経験の方に対する育成方法について私たちが試した結果を記載するので、よかったら参考にしてみてもらえると幸いです。

1.基礎研修

テスターとして採用したアルバイトの方について、大抵は異業種からの転職、あるいは元学生さんでテスト業界の業務経験がない方、というケースが多いかと思います。
そうした人たちには、まずテストのことを学んでもらう前に仕事に関する決まり事やルールなどを把握してもらうことから始める必要があります。
具体的には以下のようなコンテンツについてまず研修を行いました。

内容   研修詳細
各種オフィスルール 入退室、持ち込み可能なもの、勤怠周りのルール等
情報取り扱い セキュリティ、個人情報保護、コンプライアンス、著作権等
コミュニケーション チャットコミュニケーション、ハラスメント、報連相等
IT基礎 タイピング、Zoom、Excel、SpreadSheet等各種ツールの使い方

例えばゲームのテストにおいては、未発表の種機密事項を取り扱うことになるため、情報漏洩などのリスクが非常に大きいです。場合によっては会社に大きな損害を与えることにも繋がりかねないので、セキュリティ関連などは最初にきちんと意識づけを行ったうえで業務に入っていただく必要があります。

2.QAに関する研修

基本ルールに関する研修を終えた後、QAとしての研修を行いました。ただ、ここではテストの手順のような実務的な内容だけではなく、テスト対象であるモバイルゲームに関する基礎知識や開発側の体制、テストの目的や進捗報告など、テストプロセスにかかわる全般的な知識を研修で教えていきます。
この記事でも軽く触れられていますが、具体的には以下のようなコンテンツについて研修を行いました。

内容   研修詳細
モバイルゲーム基礎 クライアント、アセット、バージョン管理、各職掌の役割など、基本的なゲームの構造理解
テスト実施 テストの目的やテストケース、仕様書、進捗報告、探索的テストなど具体的なテストプロセスや必要な資料に関する説明
テスト準備 端末、アカウント、環境構築、デバッグツールなど、テストを実施するうえで必要な準備事項に関する説明
不具合報告 文章作成、BTSの基本操作、バグトラッキング、エビデンス、修正対応などの説明

このあたりの内容は一度聞いただけではなかなか覚えられないので、きちんと研修資料を作成し、不明点が出てきたときに見返せるようにしておくことが大切です。

3.卒業試験

研修は実施して終わりではなく、教えた内容がきちんと理解できているかが大切です。
確認のため、研修内容に関するテストを作成し、点数に応じてフォローを行います。
わからなかったところ、間違えたところは振り返りを行ってもらうようにしましょう。
また、特定の問題の正答率が悪い場合は、研修内容またはテスト問題に課題がある可能性があります。研修コンテンツは常に見直し、改善のサイクルを回しましょう。
テストだけでなく、研修に対するアンケートを取ることも重要です。
口頭での質問はハードルが高いですが、アンケートという形であれば、どういう点が困ったか、わかりづらかったか、などが出てきやすいです。

4.実務研修

座学の研修を終えた後、実際の担当業務のメンバーとともに、テスト含めた日常業務のやり方を学んでいきます。
OJT形式で、以下のような方針で研修を行いました。

Show(やってみせる)
・実際に業務をやっている様子を見てもらう
例)テストケースの進め方を見せる、起票の方法を見せる
Tell(説明・解説する)
・実施した業務について説明・質問受けをして理解を深めてもらう
例)テストケース対象施策の説明や、実施時の注意事項、抑えるべきポイント等
Do(やらせてみる)
・教えた業務を実際にやってもらう
例)テストケースの実施、不具合起票、進捗報告等
Check(評価・追加指導を行う)
・アウトプットを確認して、良かった点や改善点を伝える
・Tellで伝えきれなかった補足事項もここで説明する

5.トライアル

一通りの研修を終えた後、実際のテストケースに取り組んでみてもらいます。ただし、この時点では生産性や不具合検知など不安がある状況のため、現行稼働しているテスターと同じテストケースを並行で実施してもらい、パフォーマンスや品質に問題ないかを確認する方法を取るのが望ましいです。
テストケースの並行実施をしながら、生産性、不具合検知状況、起票時間など各種KPIを取得し、一定の基準を満たしていれば実業務に入っていくような形を取ります。

基準の例

・生産性が安定して現行テスターの〇〇%を越えていること
・一定期間の稼働中、不具合の見落としが0件であること
・不具合起票にかかる時間が〇〇分以内であること
・適切なコミュニケーションをとることができること

※具体的にどのような基準を満たせばOKとするかは現場の状況に応じますので、あくまで一例となります。

6.注意点

研修においては、対象の人数や回数、採用する人員など現場によって様々です。
ただ決まったことを教えれば良い、というわけではなく様々な点に注意し改善を図っていく必要があるので、いくつか例を挙げます。

座学の研修はできるだけ効率化を進める
採用規模次第ではありますが、研修の説明時間は担当社員の工数を圧迫する&繰り返し発生するので、自動読み上げのツールを用いるなどして、早めに効率化を行うことが望ましいです。

研修内容は常に振り返りアップデートを行う
テストやアンケートの結果、実業務に入った後の質問や課題、
各種KPIの結果などを分析し、研修内容や方法は常に更新していく必要があります。
研修期間をいかに効率的に行っていくかで、その後の成長性や定着率にも影響するので、
ただ同じことを繰り返すだけでなく適宜見直しをするよう心がけましょう

メンタルケアに注意
テスト業務は、ただゲームをやっていれば良い、というわけではなく、様々なコミュニケーションが必要であったり、ミスが大きな損失につながったり、覚えることもたくさんあります。想定していた業務とのギャップや、人間関係など含めて、モチベーション低下などにつながる人は一定出るので、定期的な1on1などで悩みや課題を引き出し、解決につなげてあげる必要があります。

最後に

いかがだったでしょうか。
もちろん現場によっては、採用してすぐ現場に入れて実務を行いながら教える、というやり方もあるかもしれませんが、私としては、むしろ研修に一定コストを掛けることで、早くから安定したパフォーマンスを発揮できる状況が構築できると考えています。
もちろん現場の状況、コスト、品質など、何を優先するかによっても変わってくると思いますが、ある程度体系的に研修を行うことで、採用した人たちにも働きやすい環境が準備できるのではないでしょうか。
もちろんこれらは一例ですので、最終的にどうするべきかはチームで話し合い、検討いただくのが良いかと思います。
未来のQAを担う人材を良い形で育てる参考になれば幸いです。

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