注意事項
本記事は「Microsoft Fabric入門」の提供を受けて執筆しています。対価の支払い・内容の事前確認は受けておらず、記載内容は筆者個人の見解です。
ご提供いただき、ありがとうございました。
概要
本記事では、技術評論社から出版されている「Microsoft Fabric入門――レイクハウスで実現するAI時代の統合データ基盤」の書評を記します。
出所: https://gihyo.jp/book/2026/978-4-297-15877-4
書籍だけでなく、電子版(PDF 版)も下記のページから購入できます。
出所: Microsoft Fabric入門 ――レイクハウスで実現するAI時代の統合データ基盤 | Gihyo Digital Publishing … 技術評論社の電子書籍
Microsoft Fabric と私
Microsoft Fabric(以下、Fabric)が発表されたのは 2023 年ですが、私と Microsoft の BI 技術との付き合いは 10 年以上前にさかのぼります。最初に本格的に触れたのは、SQL Server を中心とした BI 基盤でした。その中で SQL Server Analysis Services(SSAS)の表形式(タブラー)モデルを採用したことが、現在につながる原点となっています。
当時の SSAS には多次元モデルと表形式モデルがありましたが、「せっかくなら新しい方に挑戦してみよう」という理由で表形式モデルを選択しました。インメモリでデータを高速に処理でき、Excel との親和性も高かったため、実用的なデータ活用基盤として大いに活躍しました。当時よく参考にしていたのが Marco Russo 氏の SQLBI でしたが、今なお Power BI や DAX の第一線で活躍されていることには深く感銘を受けます。
現在の私はクラウド DWH やレイクハウス領域の人間と思われることが多いのですが、実は BI にも長く携わってきました。Power BI の登場を経て Microsoft の BI 基盤が大きく進化し、2023 年には Fabric が登場しました。私にとって Fabric は、SSAS 表形式モデルや Power BI から続いてきた、Microsoft のデータ分析技術の正統な延長線上にある存在です。
書籍について
書籍の全体像
本書は全 11 章で構成されており、Microsoft Fabric の概要から、データ基盤、Power BI、リアルタイム分析、機械学習、生成 AI まで幅広く扱っています。
構成で特によいと感じたのは、理論編とハンズオン編を単純に分けるのではなく、まず第 2 章、第 3 章で実際にサービスに触れ、その後、第 4 章から第 6 章で理論や設計・管理について学び、第 7 章以降で本格的なハンズオンに進む流れです。最初に手を動かして全体像をつかみ、その後に理論を整理し、最後に実践へつなげられる構成になっています。
各章の構成は次のとおりです。
- 第1章 Microsoft Fabricの概要
- 第2章 Microsoft FabricとMicrosoft 365サービスの環境セットアップ
- 第3章 生成AIを活用したデータ加工と分析
- 第4章 Microsoft Fabricによるデータの価値昇華
- 第5章 Microsoft Fabricの機能選定とリファレンスアーキテクチャ
- 第6章 Microsoft Fabricのプラットフォームを管理する
- 第7章 全社レベルのデータ活用基盤構築
- 第8章 セマンティックモデルとPower BIレポートの実装
- 第9章 リアルタイム分析のエンドツーエンドソリューション
- 第10章 機械学習モデルの開発と推論
- 第11章 AI Readyなデータ整備とエージェントによるデータ活用
随所に掲載されている図も、本書の理解を助けてくれます。下記は公式ページに掲載されているハンズオンのアーキテクチャ図ですが、本書ではこうしたハンズオンの構成図だけでなく、概念や仕組みを説明するための図もふんだんに使われています。
出所: Microsoft Fabric入門 のサンプル画像
また、個人的にとても面白いと感じたのが、随所に挿入されている COLUMN です。単なる補足情報ではなく、実務で Fabric を活用するうえで知っておきたいナレッジが詰まっています。
たとえば、次のような COLUMN があります。
- ミラーリングのコスト
- すべてを Fabric 容量で動作させる必要はない
- リアルタイム推論の実務と Fabric の現状
一般的な技術書のコラムというと、ちょっとした Tips や補足にとどまることもありますが、本書の COLUMN は一歩踏み込んだ内容になっています。実際の設計や運用を意識したテーマも多く、こうした部分からも著者陣の Fabric に対する知見の深さや思い入れを感じました。
動かしてみよう
Microsoft Fabric は SaaS サービスであるため、利用にあたっては環境の準備や申請などが必要ですが、その手順は書籍の第 2 章で詳しく解説されています。Microsoft の各種サービスとシームレスに連携できることも Fabric の特徴ですが、Microsoft 365 や Microsoft Teams の準備についても記載されており、非常に親切だと感じました。
書籍で紹介されているサンプルコードは、GitHub で公開されています。GitHub 上で公開されていることで、ChatGPT などの AI サービスからも容易に参照できるため、とても助かります。ハンズオンを進める中でエラーが発生した場合でも、ChatGPT にコードを参照させながら解決方法を確認できます。また、よく発生するエラーなどが Issues に記載されていれば、そうした情報も ChatGPT が探してくれるため便利です。公開された環境にコードが配置されていることは、本当にありがたいことです。
出所: shohei1029/book-microsoft-fabric-sample: Microsoft Fabric書籍用サンプルコード
| ディレクトリ | 主な目的 | 入力 | 主な出力 |
|---|---|---|---|
notebook/ch7 |
BronzeからSilverへのクレンジング | 売上・都市のBronzeテーブル |
silver.Sale、silver.City
|
notebook/ch8 |
Power BI向けのスタースキーマ作成 | 売上・都市・商品・日付のSilverテーブル |
gold.FactSales、3つのディメンション |
notebook/ch10/handson |
売上予測モデルの開発とバッチ推論 | Walmartの販売データ | 学習・テストデータ、登録モデル、予測結果 |
notebook/ch10/sample |
MLflow・推論方式・REST APIの個別例 | 小規模な学習データ、登録済みモデル | MLflowの記録、推論結果 |
notebook/ch12 |
AI関数の利用とData Agentの比較評価 | テキスト・画像、生成したSCMデータ | AI処理結果、評価用テーブル・CSV・グラフ |
まとめ
本書を通して、Microsoft Fabric が Power BI を含む単なる BI サービスではなく、データ統合、分析、機械学習、生成 AI までを包含した統合データ基盤であることをあらためて実感しました。
これから Fabric を導入する方はもちろん、現在 Power BI を中心に利用していて、Fabric の機能を十分に活用できていない方にもおすすめできる一冊です。Fabric の全体像を理解することで、自社におけるデータ基盤やデータ利活用のあり方をあらためて考えるきっかけになるのではないでしょうか。





