個人開発で一番こたえるのは、技術的な失敗じゃない。
半年かけて作ったものが、誰にも使われないことだ。
理由はだいたいひとつに集約される。最初から、誰も欲しがっていなかった。
コードでもデザインでもなく、需要がなかった。これに尽きる。
防ぐ方法はある。作る前に「これ需要あるの?」を確かめておけばいい。
それが分かっていても飛ばしてしまうのは、世の中の市場調査アドバイスがぜんぶSNS前提だからだ。
「まずTwitterで反応を見ましょう」
「ターゲット層にヒアリングしましょう」
その反応をくれる人がいないから困っている。フォロワーが3桁いれば苦労しない。ゼロだから手詰まりになる。
この記事は、SNSもフォロワーもなしで、作る前に需要を確かめる現実的な手順をまとめたもの。全部タダでできる。
前提:需要は「自分の頭の外」にしかない
自分が「これは絶対いける」と思っているアイデアほど危ない。
その確信はたいてい自分の頭の中で完結していて、外の世界の裏付けがない。
需要があるかどうかは、すでに世の中に出ているサインを読むしかない。
そのサインは、SNSがなくても拾える。
1. 検索されているか
人は困ったら検索する。検索されている = 需要が顕在化している、ということ。
- Googleトレンド:キーワードの伸びと季節性を見る
- 検索サジェスト:「◯◯ アプリ」で出る候補は、実際に打ち込まれている語そのもの
- サジェスト取得ツール(ラッコキーワード等):関連語をまとめて取得できる
「◯◯ アプリ」で候補がズラッと出るなら、その悩みは検索されている。
何も出ないなら、そもそも誰も探していない可能性が高い。
2. 競合のレビューを読む
競合アプリのレビュー欄は、ユーザーの本音が落ちている場所。
- 星1〜2のレビュー = 既存アプリへの不満 = こっちのチャンス
- 「◯◯ができない」「重い」「課金が高い」→ そのまま差別化ポイントになる
- レビュー数や更新頻度 = その市場で人とお金が動いているかの目安
ここで勘違いしがちなのが「競合がいる = 終わり」という思い込み。
逆だ。競合がいる = すでにお金が動いている市場がある。本当に怖いのは、競合すらいない無風地帯のほう。
3. どこかで「語られている」か
- Reddit、5ch、知恵袋、各種コミュニティで、その悩みが語られているか
- 「◯◯ おすすめ」「◯◯ 比較」の記事やまとめが多いか
人がわざわざ時間を使って語っているテーマには、ほぼ確実に需要がある。
4. 「需要」と「課金」は分けて考える
一番ミスりやすいのがここ。需要があっても、金を払うとは限らない。
- すでに有料アプリ・サブスクが成立しているジャンルか
- 仕事・金・健康・時間に直結する悩みか(財布が開きやすい)
- 無料の代替が強すぎないか
「みんな欲しがるけど誰も金を払わない」ジャンルは、個人開発だと一番つらい。
実例:自分のアプリでこの手順を回したら「再考」が出た
偉そうに書いてきたが、白状する。この手順を、自分が作り始めたアプリに当てたのは「作り始めたあと」だった。 順番を間違えた側の人間だ。だからこそ書ける。
作っていたのは、チケットやグッズの「争奪戦」を勝ちにいくための準備アプリ。発売URLを貼るだけで、カウントダウン・準備チェックリスト・複数サイトのリンクを1画面にまとめてくれる。発売の瞬間に集中できる「Battle Mode」が売り——のつもりだった。月¥480のサブスクも想定していた。
コアが動くところまで作ってから、上の1〜4を回した。結果はこうだ。
1. 検索されているか → ◎
「チケット 取れない 対策」「先着 繋がらない」「チケットぴあ 裏ワザ」は2025〜26年も記事が量産され続けていた。発売30分前にログイン、3秒前から新しいタブで開く、複数ブラウザ、有線LAN——攻略法が大量に語られている。需要は文句なし。
2. 競合のレビュー → ✗(ここで雲行きが怪しくなる)
- 「発売通知」は eplus・チケットぴあが公式・無料で提供済み(お気に入り登録→先行通知)。
- 「再販通知」は楽天・BASEなどEC側の標準機能。在庫を本当に知ってる店側のほうが速くて正確。
- 似た領域に Oshibana(登録50万・★4.83・¥400/月)、遠征管理の &Fanfun、おしきゅん(サンリオ運営)。競合は元気に金を動かしていた。
3. 語られているか → ◎
知恵袋・はてな・Xに攻略法とグチが山ほど。行動は実在する。
4. 需要と課金 → ✗(致命傷はここ)
チケットを「代わりに取って」もらう代行サービスは、1枚 ¥3,000〜15,000、人気公演は¥25,000で成立している。つまり「金を払ってでも勝ちたい」需要は爆発的にある。でもその金は“代わりに買う人”に流れる。 自分のアプリは思想として自動購入をしない設計だから、一番財布が開く場所には構造的に触れられない。残るのは「準備の安心」への課金だけで、そこは攻略ブログ・配布スプレッドシート・無料のカウントダウンアプリという0円の代替が強すぎた。
需要スコアはほぼ満点。なのに「課金されやすさ」で詰む。まさに「みんな欲しがるけど、このアプリには金を払わない」の典型だった。
判定は 「再考」。有料サブスクとして押し出すのは厳しい。
悔しいが、これを課金導線を実装する前に知れたのは救いだった。もし順番通り「作る前」に回していれば、コードを書く前に気づけた。結局アプリは課金を載せず、無料で公開した(TIX READY)。学びはこの記事に回した——という、わりとカッコ悪い実例である。実物は普通に動くので、よかったら触って(そして笑って)ほしい。
教訓は記事のタイトルそのまま。作る前に5分。これをサボると、こうなる。
毎回これを手で回すのはダルい
ここまで読んで分かる通り、やること自体は難しくない。
ただ、思いつくたびに毎回これを手作業で回すのは普通にダルい。アイデアの数だけ調べるのは現実的じゃない。
その「最初の当たりをつける」部分を一発でやるツールを作っている。
Mercado
ジャンルを日本語で打ち込むと、需要・競合の少なさ・課金されやすさ・SEO集客のポテンシャルを 0〜100 のスコアで返す。日本市場前提で、「GO / 要検討 / 再考」の判定とコメントもつく。
- SNSアカウント不要、フォロワーゼロで使える
- アイデアを思いついたその場で、30秒で当たりがつく
正直に書いておく。このスコアはAIによる推定で、検索ボリュームの実測値ではない。
「このジャンルなら市場はだいたいこのへんだろう」という出発点をくれるもので、最終的な裏取りは上の1〜4でやってほしい。
それでもゼロから悩むより、たたき台が一枚あるだけで動き出しは段違いに速い。
まとめ
- 個人開発の最大の死因は「誰も欲しがっていなかった」
- SNSがなくても、検索・レビュー・コミュニティで需要は読める
- 「需要」と「課金されるか」は別物として見る
- 当たりはAIでつけて、裏は一次情報で取る
つくり始める前の5分が、半年を救う。