はじめに:AIで変わった学習スタイル
あなたは、就職面接のときに「Pythonができますか?」と聞かれたとき
「(AIに聞けば何でもできるから、コードは書けないけどなんとかなるし)Pythonできます!」と言うのか
「(自分でコードも書けるけど、分からないときはAIを使ってうまく使って頑張りたいから)Pythonできます!」と言うのか
のどちらですか?
・・・・・
ChatGPTやClaude、CursorなどといったAIが登場してから、プログラミングや新しい技術の学習方法が劇的に変わりました。以前は書籍や公式ドキュメントを読み込んだりなど学習に時間がかかっていましたが、今ではAIに聞けば即座に答えが返ってきます。
私自身、[LangChain]や[Databricks]といった新しい技術をAIのサポートを受けながら学び、実際に記事として形にしてきました。
しかし、便利な反面「これって本当に身についているのか?」という不安も感じることがあります。この記事では、AIを使った学習のメリットとデメリットを正直に書いていきます。
AIを使った学習のメリット
いつでもどこでも即座に質問できる
従来の学習方法:
- 分からないことがあったらGoogle検索
- Stack Overflowで似た質問を探す
- 見つからなければ質問を投稿して回答を待つ(数時間〜数日)
- 書籍の目次から該当箇所を探す
AIを使った学習
私:「Pythonのリスト内包表記がよく分かりません。
forループとの違いを具体例で教えてください」
AI:「リスト内包表記は、forループをより簡潔に書ける方法です。
# forループの場合
numbers = []
for i in range(5):
numbers.append(i * 2)
# リスト内包表記の場合
numbers = [i * 2 for i in range(5)]
どちらも [0, 2, 4, 6, 8] という結果になります。」
即座に、自分の理解度に合わせた回答が得られるのは大きなメリットです。
自分のペースで学べる
人に聞く場合の心理的ハードル
- 「こんな基本的なこと聞いていいのかな...」
- 「さっき教えてもらったばかりなのにまた聞きづらい...」
- 「同じこと3回も聞いたら呆れられそう...」
AIの場合
- 何度でも同じことを聞ける
- 基本的すぎる質問でも躊躇しない
- 深夜でも休日でも質問できる
- 自分の理解度に合わせて説明を変えてもらえる
- 具体例などを教えてもらい理解が深まる
私:「さっきの説明、まだよく分かりません。
もっと簡単な例で説明してください」
AI:「わかりました!もっとシンプルな例で説明しますね...」
この「遠慮なく何度でも聞ける」環境は、特に独学者にとって非常に価値があります。
サンプルコードがすぐ手に入る
新しいライブラリやフレームワークを学ぶとき、最も効率的なのは「動くコードを見ること」です。
従来の学習
- 公式ドキュメントを読む(英語の場合も多い)
- チュートリアルを探す
- GitHub上のサンプルコードを探す
- 自分のユースケースに合わせて修正
AIを使った学習
私:「FastAPIでJWT認証を実装したいです。
シンプルなサンプルコードを見せてください」
AI:[即座に動くコードを提示]
しかも、自分のユースケースに合わせたコードを生成してくれるので、そのまま試せます。
新しい技術への挑戦ハードルが下がる
実体験:Databricksに挑戦したとき
以前の私なら「Databricks?聞いたことあるけどどうやるんだろ?調べるのも面倒だし...」と避けていたかもしれません。
しかし、AIに以下のように聞くことで、気軽に始められました:
私:「Databricksとは何ですか?初心者が最初に何をすべきか教えてください」
AI:「Databricksはデータ分析基盤のプラットフォームです。
初心者がまず試すべきことは...」
結果として、実際に手を動かして記事を書くところまで到達できました。
AIがあると
- 「まず何から始めればいいか」が分かる
- 「どんなことができるのか?」をすぐに教えてもらえる
- 「どのくらいのレベルの知識が必要か」が分かる
- 「自分でもできそう」という自信が持てる
エラー解決が圧倒的に早い
プログラミング学習で最も時間がかかるのが「エラー解決」です。
従来の方法
- エラーメッセージをコピー
- Google検索
- 似たような質問を探す
- 試行錯誤(30分〜数時間)
ここまでしてもなかなか答えが見つからない、回答を見つけられても自分の環境と違っていて解決に至らなかったなんてことも。
AIを使う場合
私:「このエラーが出ます。どう直せばいいですか?
[エラーメッセージを貼り付け]」
AI:「このエラーは○○が原因です。以下のように修正してください
[修正コードを提示]」
数分で解決できることがほとんどです。
多角的な視点が得られる
AIに質問すると、複数のアプローチを提案してくれることがあります。
私:「Pythonでファイルを読み込む方法を教えてください」
AI:「いくつかの方法があります:
1. open()関数を使う方法(基本)
2. pathlib.Path().read_text()を使う方法(モダン)
3. pandasで読み込む方法(データ分析向け)
それぞれのメリット・デメリットは...」
この「選択肢を知る」ことで、より適切な実装方法を選べるようになります。
AIを使った学習のデメリット・注意点
便利なAI学習ですが、デメリットやリスクも存在します。
基礎がおろそかになる危険性
実際に起こりがちな問題:
# AIに「データをソートして重複を削除するコードを書いて」と頼んだ結果
data = list(set(sorted(data)))
これで動くは動きますが...
- なぜ
set()で重複が消えるのか? -
sorted()はどういう仕組みで動いているのか? - リストと集合の違いは?
AIに頼りすぎると、こういった基礎が身につきません。
結果として:
- 少し複雑な問題になると手が止まる
- エラーの原因が分からない
- 応用が効かない
- 顧客など、誰かに聞かれても答えられない
AIの間違いを見抜けない
AIも間違えます。そして、自分に基礎知識がないと、その間違いに気づけません。
実際にあった例:
# AIが提案したコード
date_str = "2024-01-32" # 存在しない日付
datetime.strptime(date_str, "%Y-%m-%d") # エラーになる
AIは「日付のパース方法」は正しく提示しましたが、サンプルデータが不適切でした。基礎知識があれば「1月32日は存在しない」とすぐ気づけますが、知識がないと「なぜエラーになるのか分からない」となります。
より深刻な例:
# AIが提案した「安全なパスワードハッシュ化」
import hashlib
password_hash = hashlib.md5(password.encode()).hexdigest()
これはセキュリティ的に脆弱です。本来はbcryptやArgon2を使うべきですが、基礎知識がないと「MD5はもう安全ではない」ことに気づけません。
依存しすぎて考える力が落ちる
こんな使い方をしていませんか?
問題発生 → すぐAIに聞く → 答えをコピペ → 動いた!完了!
これを繰り返すと:
- 自分で考える前にAIに頼る癖がつく
- トラブルシューティング能力が育たない
- 「なぜそうなるのか」を考えなくなる
- 知識がつかないので、本当に「Pythonができる」とは言えない
- AIがないと何もできない人間になる
これって、言い換えれば「AIを使ってコードが書けるならエンジニアをクビにしてもいいよね、だって誰にでもできるんだもんね」と言われるのと同じことです。
今後のエンジニアは、AIを使ってコードを書く以上のことができる必要があるかと思います。それはすなわち、言語をきちんと身につけているのと同じこと。だからこその「エンジニア」です(かつての小泉構文みたいになってしまいましたが)
健全な学習サイクル
問題発生 → 自分で5〜10分考える → 調べる → 同僚などに聞く→それでも分からなければAIに聞く
→ 答えを理解する → 自分の言葉で説明できるか確認
ここでなぜ「AIに聞くよりも先に同僚などに聞くのか」というと、人に聞いた方がその人がすでにやり方を知っている、解決方法を知っているパターンがあり、その方が正確で無駄がないこともあるからです。
体系的な学習ができない
AIとの対話は「点」の知識です。しかし、プログラミングスキルを身につけるには「線」「面」の理解が必要です。
AIで学べること:
- 個別の文法
- 特定の問題の解決方法
- ライブラリの使い方
AIだけでは学びにくいこと:
- 全体的な設計思想
- ベストプラクティスの背景
- 歴史的経緯や進化の過程
- 大規模な実装のアーキテクチャ
古い情報や環境依存の問題
AIの学習データには限界があります。
私:「Python 3.12の新機能を教えてください」
AI:「私の学習データは2024年1月までなので、最新情報は
web検索した方が正確です」
また、こんな問題も:
# AIが提案したコード(Python 3.8向け)
from typing import List
def process(items: List[str]) -> List[int]:
...
# Python 3.9以降では不要な記法
def process(items: list[str]) -> list[int]:
...
コピペ癖がついて、タイピングスキルが落ちる
これは意外と見落とされがちですが、コードを自分で書く経験は重要です。
コピペだけだと:
- 細かい文法が身につかない
- タイプミスに気づく力が育たない
- IDEの補完機能に慣れない
おすすめの方法:
AIが提示したコードを見ながら、自分で打ち直すことで記憶に定着しやすくなります。
効果的なAI学習法:メリットを活かし、デメリットを避ける
戦略1:AIに聞く前に5分考える
× 悪い例:
エラーが出た → すぐAIに聞く
〇 良い例:
エラーが出た → エラーメッセージを読む →
何が原因か推測してみる(5分) → それでも分からなければAIに聞く
この「5分考える」習慣が、問題解決能力を育てます。
戦略2:AIの回答を鵜呑みにせず、理解してから使う
私:「このコードの各行が何をしているか説明してください」
AI:[詳細な説明]
私:「わかりました。では、この部分を○○に変更したらどうなりますか?」
深く理解するための質問例:
- 「なぜこの方法がベストなのですか?」
- 「他にどんな方法がありますか?」
- 「この部分を変更するとどうなりますか?」
- 「このコードのデメリットは何ですか?」
戦略3:基礎学習は別途しっかり行う
AIは基礎を固めた後の応用に使うのが最も効果的です。
おすすめの学習ステップ:
-
基礎は書籍やコースで体系的に学ぶ
- Pythonの基本文法
- データ構造とアルゴリズム
- オブジェクト指向の概念
-
基礎が固まったら、AIで効率化
- 新しいライブラリの習得
- 実装の最適化
- エラー解決の高速化
戦略4:「写経」と「実験」を組み合わせる
学習フロー:
1. AIにサンプルコードを出してもらう
2. コードを見ながら自分で打ち込む(写経)
3. 実際に動かしてみる
4. 一部を変更して実験してみる
「この変数を変えたらどうなるだろう?」
「この関数を消したらエラーが出るかな?」
5. 予想と結果を比較して理解を深める
私がLangChainの記事を書いたときも、この方法で理解を深めました。
戦略5:複数のAIを使い分ける
AIによって得意分野が違います。
- ChatGPT:幅広い質問に対応、会話形式で深掘りしやすい
- Claude:長文の説明が得意、コード解説が丁寧
- GitHub Copilot:コーディング中のリアルタイム補完
- Google Gemini:最新情報へのアクセスが強い
複数のAIに同じ質問をして、回答を比較するのも効果的です。
戦略6:学んだことをアウトプットする
最強の学習法は「教えること」
AIで学んだことを:
- ブログ記事にまとめる(Qiitaなど)
- 社内勉強会で発表する
- 後輩に教える
- GitHubにサンプルコードを公開する
アウトプットすることで、自分の理解があやふやな部分が明確になります。
戦略7:定期的に「AIなし」で書いてみる
月に1回程度、AIの助けを借りずにコードを書く練習をしましょう。
チャレンジ例:
- 簡単なCLIツールを最初から最後までAIなしで作る
- 過去に学んだアルゴリズムをホワイトボードで実装
- 公式ドキュメントだけを見てライブラリを使ってみる
これにより、自分の実力を客観的に把握できます。
私の実践例:Databricks学習
実際に私がDatabricksの記事を書いたときの学習プロセスを紹介します。
Step 1: 全体像を把握(AIに質問)
私:「Databricksとは何か?初心者が理解すべきポイントは?」
Step 2: 具体的な実装を聞く
私:「Databricksで初級者向けのデータ分析をしたいです。
何ができるか教えてください」
Step 3: 実際に手を動かす
- AIが提示したコードを自分で書き直す
- 動かしてみる
- エラーが出たら原因を考える(5分)
- それでも分からなければAIに質問
Step 4: 理解を深める
私:「このコードの○○の部分がよく分かりません。
もっと詳しく説明してください」
Step 5: 実験する
- パラメータを変えてみる
- 違うデータで試してみる
- エラーをわざと起こしてみる
Step 6: アウトプット
- 学んだことを記事にまとめる
- 自分が躓いたポイントを詳しく書く
- 読者に分かりやすく説明する
この一連の流れで、単なるコピペではなく、本当に理解した状態になりました。
まとめ:AIは最高の「補助輪」
AIを使った学習は、確かに効率的で便利です。しかし、AIはあくまで「補助輪」 です。
補助輪の役割
- 最初のハードルを下げてくれる
- スピードアップを助けてくれる
- 転ぶのを防いでくれる
でも最終的には
- 自分の力で進めるようになる必要がある
- バランス感覚(基礎力)は自分で身につける
- 補助輪なしでも走れる状態を目指す
理想的なAI学習のバランス
基礎学習(書籍・コース):40%
AI活用学習:40%
自力での実践・実験:20%
AIを上手く使いながらも、自分で考える力を育てることが、本当の意味での成長につながります。
私自身、AIのおかげで色々と新しい技術に挑戦でき、週末の学習が楽しいと感じています。
しかし、同時に、基礎をしっかり固めることの重要性も実感しています。
皆さんも、AIのメリットを活かしつつ、デメリットを意識した学習スタイルを見つけてみてください!
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