インターネットなしの「閉じられた世界」:複数LANをルーターで繋ぐ際の設計図
「外部インターネットには一切繋がない、完全に独立したネットワーク(クローズドネットワーク)」の構築ですね!工場内の制御システムや、極めて秘匿性の高い研究用ネットワークなどでよく見られる構成です。
インターネットという「外の世界」がない場合、デフォルトゲートウェイ(DGW)の考え方は少し特殊になります。シニアエンジニアの視点で、この「箱庭世界」のルーティングを整理しましょう。
1. 【結論】PCにはDGWが必要だが、ルーターにはDGWがいらない
インターネットに繋がない場合の設定ルールは以下の通りです。
- 各LANのPC:DGWの設定が必要です。
- ルーター:DGW(デフォルトルート)の設定は不要です。
インターネットがある場合は「わからない宛先はすべて外へ放り投げる」という設定が必要でしたが、インターネットがない場合は「知っている場所(自分が繋いでいるLAN)へ届ける」だけで仕事が完結するため、ルーター自身に「出口」を教える必要がないのです。
2. PC側:なぜDGWを設定しなければならないのか?
たとえインターネットがなくても、PC A(LAN1)が PC B(LAN2)と通信したい場合、PC Aから見れば PC Bは 「自分とは別のグループ」 です。
動作の流れ
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PC A:「宛先は
192.168.2.10(LAN2)か。自分(192.168.1.10)とは名字が違うな」 - PC A:「名字が違う相手への届け方は知らないから、とりあえず DGW(ルーター) に渡そう!」
- 結論:PCにとってのDGWは「インターネットへの出口」ではなく、「他のLAN(グループ)への入り口」 としての役割を果たしているため、設定が必要なのです。
3. ルーター側:なぜDGWを設定しなくていいのか?
ここが今回の肝です。通常、ルーターに設定する「デフォルトゲートウェイ(デフォルトルート)」は、「自分が知らない宛先のパケットが来たとき、とりあえずここに投げる」 という、いわば「勘」の設定です。
理由:ルーターはすべてのLANを知っているから
今回の構成では、ルーターは「LAN1」と「LAN2」の両方に直接ケーブルで繋がっています。
- ルーターは、自分が直接繋がっているLANのことは、設定しなくても自動的に認識します(これをConnectedルートと呼びます)。
- 「LAN1宛のパケット」が来れば、LAN1のポートへ流します。
- 「LAN2宛のパケット」が来れば、LAN2のポートへ流します。
- **それ以外の宛先(インターネットなど)**については、そもそも道が存在しないため、ルーターは「そんな場所は知らない」とパケットを破棄して終了します。
つまり、行き先がLAN1かLAN2しかない世界では、ルーターに「迷った時の出口(DGW)」を教える必要がないのです。
4. 【比較表】インターネット「あり」と「なし」の違い
| 項目 | インターネット接続あり | インターネット接続なし(今回) |
|---|---|---|
| PCのDGW設定 | 必須(ルーターのIP) | 必須(ルーターのIP) |
| ルーターのDGW設定 | 必須(プロバイダー等) | 不要(直接繋がるLAN間のみ) |
| 知らない宛先の扱い | インターネットへ送り出す | その場で破棄する |
| 主な用途 | 一般的なオフィス、家庭 | 工場、実験室、社内内線網 |
5. まとめ:エンジニアとしてのアドバイス
インターネットがない環境では、ルーターは単なる 「LAN同士の翻訳機」 として機能します。
- PC:自分以外のLANへ行くために、ルーターをDGWとして登録する。
- ルーター:自分が繋いでいるLANの情報(IPアドレス設定)さえ持っていれば、勝手に中継してくれる。
もし将来的に「やっぱりLAN3も増やしたい」となった時も、そのルーターにLAN3を繋ぐだけで、ルーターは自動的に3つのLANを中継できるようになります。
「出口がない世界」だからこそ、ネットワークの境界線をどこに引くかが非常に明確で、セキュリティ的にも非常に強固なネットワークと言えますね!
6. さらに学習を深めるための参考リンク集
-
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構):
ルーティングの基本 - 直接接続されたネットワーク
(基本情報技術者試験で、ルーターがどうやって経路を学習するかの基礎が学べます) -
IT用語辞典 e-Words:
クローズドネットワークとは
(外部と遮断されたネットワークの定義とメリットが解説されています) -
3Minutes Networking:
ルーティング・テーブルの作り方
(ルーターが「直接繋がっている網」をどう認識するか、専門的に詳しく書かれています)