はじめに
私は、Microsoft 365 や Power Platformを用いた効率化などを勤務先企業内で推進しており、学習目的で契約しているMicrosoft テナントを持っています。
ある時、こんなことを、ふと思いました。
シャンプーやトイレットペーパー、キッチンで使う消耗品。
家の中には、気づいたら減っていて、なくなる直前にあわてて買うものがたくさんあります。
こうした日用品を在庫として管理して、必要なタイミングで発注候補まで出せないだろうか。
家族との写真や予定、ちょっとした思い出を、Copilot や Work IQ のような仕組みで振り返れるようにしたらどうなるだろうか。
せっかく学習用に Microsoft 365 のテナントを契約しているのだから、これを「家族」という最小の社会単位で運用してみてもよいのではないか。
このシリーズは、私が学習目的で契約していた Microsoft 365 の環境に家族を招き入れ、家族4人の小さなグループウェアとして運用していく記録です。
記事末尾に、この構築をしていくにあたって学習・参考にした Microsoft 公式情報のリンクをまとめています。
家庭DX全体構想
家庭で使う仕組みは、ざっくりこんな形にしたいなと考えています。
Microsoft 365 Business Basic
(家族向けグループウェア)
┌──────┬──────┬─────┴────┬──────┬──────┐
Teams Outlook OneDrive SharePoint Lists Planner
連絡 予定共有 1TB×人 家族ポータル 情報DB プロジェクト
│
┌───────────────────────┼──────────────────┐
[Power Apps] [Power Automate] [Copilot Studio]
おうち在庫アプリ 在庫チェック・承認 家族コンシェルジュ
└───────────┬───────────┘
▼
[Project Opal]
楽天カート投入まで自動化
(注文確定は人間)
Microsoft 365で、家族のコミュニケーションや家事の自動化ができたらいいな♪
まずは、アプリ作りの前に、家族のアカウントを作りました。
本記事では、次の4つをまとめます。
- なぜ家庭に Microsoft 365 Business Basic を入れることにしたのか
- このテナントがどういう前提でできているのか
- 子どものアカウントとセキュリティをどう考えたか
- 実際にいくらかかるか
このテナントの前提
今回は、ゼロから家庭用テナントを新しく作ったものではありません。
もともとは、私自身が Microsoft 365 や Power Platform を学ぶために契約していたテナントです。
こんな感じで、少しずつプランを追加しながら使ってきました。
- 最初は、学習用に Business Standard(no Teams)を1席だけ契約
- Teams Essentials を追加
- Microsoft 365 Copilot Business を追加
- Project Opal を試すために Intune Plan 1 を追加
- Azure サブスクリプションでも、ボットなどを少し実験
家庭にMicrosoft 365を入れるなら、まず考えたいプラン
家庭で Microsoft 365 を使うだけなら、本来いちばん素直なのは Microsoft 365 Family です。
Microsoft 365 Family は1〜6ユーザー向けで、1人あたり1TB、最大6TBのクラウドストレージを使えます。
Word、Excel、PowerPoint、OneDriveなどを家族で使う目的なら、まずはこちらを検討するのが自然だと思います。
それでも今回、我が家では Microsoft 365 Business Basic を選びました。
理由は、単にOfficeアプリやOneDriveを使いたかったからではありません。
家庭の予定、在庫、買い物、ちょっとした申請や確認を、Teams、SharePoint、Lists、Planner、Power Apps、Power Automate で扱ってみたいから。
Microsoft 365 Business Basic には、Teams、1人あたり1TBのクラウドストレージ、SharePoint、OneDrive、Outlookなどが含まれます。
また、Microsoft 365用の Power Apps や Power Automate も含まれており、Microsoft 365データや標準コネクタの範囲でアプリやフローを作れます。
今回しようとしていることは「家庭にOfficeを入れる」ことではなく、家庭に小さな組織テナントを作って、グループウェア・自動化・AIエージェントの土台を作ることです。
その意味で、これは一般的な家庭向けMicrosoft 365のおすすめ構成ではありません。
どちらかというと、Microsoft 365やPower Platformを学びたい人が、自宅を小さな実験環境にしてみた記録です。
Teamsなしプランを選んでしまった話
少し脱線してしまいますが、私の契約内容にひとつ失敗談があるので、参考までに書いておきます。
私は学習用として、最初に Business Standard の最小構成を選びました。
しかも、Teamsなしのプランを選択してしまっていました。
1人で触っているうちは、あまり困りませんでした。
ところが、Power Automate で Teams に投稿するアクションを試すには、やっぱりTeamsが必要になります……。
結局、Teams Essentials を追加することになりました。
Microsoft 365 には、Teamsあり・なし、通常版・試用版、単体契約・Copilotセットなど、似た名前のプランがいくつか並んでいます。
これから新しく契約する場合は、Microsoft 365 Business Basic(Teams入り) を選ぶのが分かりやすいと思います。
今回、家族3人のプランは Microsoft 365 Business Basic(Teams入り)にしました。
このプランでは、WordやExcelなどのOffice製品のデスクトップ版は利用できないものの、Web版のOfficeやTeams、SharePoint、OneDrive、Lists、Planner、Power Apps、Power Automate の標準的な範囲を使えます。
今後作る予定のアプリも、まずはこの範囲で運用します。
子どものアカウントをどう扱うか
今回、家庭用とはいえ Microsoft 365 Business Basic を使うため、家族のアカウントは Microsoft Entra ID 上の組織アカウントとして作成します。
ここで気になったのが、子どものアカウントの扱いです。
Microsoft Entra には、ユーザーの年齢に関する属性として ageGroup と consentProvidedForMinor があります。
年齢区分は、おおまかに次のように整理されています。
| 区分 | Microsoft Entra上の値 | 目安 |
|---|---|---|
| 年少者 | Minor |
12歳以下 |
| 成人未満 | NotAdult |
13〜18歳 |
| 成人 | Adult |
18歳以上 |
我が家の子どもは、Microsoft Entra の年齢区分では NotAdult にあたります。
また、保護者同意のもとで利用するアカウントとして、同意ありの属性を設定する方針にしました。
この設定は、Microsoft 365全体を自動的に「子ども向けモード」に切り替えるものではありません。
あくまで、Entra ID上で「このユーザーは13〜18歳の成人未満であり、保護者同意のもとで利用している」という情報を持たせるためのものです。
この情報をもとに、Microsoft 365の各アプリやサービスが、必要に応じて年齢に応じた制御を行う場合があります。
一方で、Teams、SharePoint、Power Apps、Power Automate などを家庭内でどこまで使わせるかは、管理者である保護者が別途考える必要があります。
つまりこの設定は、子ども用の安全設定がすべて完了する魔法のスイッチではなく、Microsoftが用意している年齢区分の考え方に沿って、アカウント側に正しい属性を持たせておくためのものです。
具体的な設定方法は、次回の Microsoft Graph PowerShell での構築編で紹介します。
セキュリティは標準の範囲で始める
セキュリティについては、新規テナントのセキュリティ既定値をそのまま使う方針にしました。
家族は Microsoft Authenticator を使い、私は Passkey(FIDO2)認証を使っています。
Passkey は、パスワードを使わずにサインインできる認証方式です。
Microsoft Entra ID では、Passkey(FIDO2)はサインインに使える認証方式として扱われ、フィッシングに強い認証方法のひとつとされています。
ゆくゆくは、家族にも Passkey 認証を体験してもらいたいです。
この便利さとスマートさをぜひ家族にも伝えたい。
コスト:実際いくらかかるか
以下に記載する価格は、2026年7月1日の価格改定後に確認したものです。
Microsoftは商用プランの価格改定を発表しており、Business Basic は 6ドル から 7ドル へ改定されました。
新規契約は改定後価格が適用されます。
ただし、契約形態や購入チャネルによって請求額は変わるため、以下はあくまで私の実測値です。
まず、私がもともと使っていた学習環境の費用です。
| 項目 | 月額(税込・請求書確認) |
|---|---|
| Business Standard(no Teams/管理者1名/月払い) | ¥1,608 |
| Teams Essentials(no Teams対策として追加) | ¥692 |
| Microsoft 365 Copilot Business + Intune Plan 1 | ¥5,739 |
| Azure 従量課金 | 実質¥0 |
私の学習環境合計:¥8,039/月(税込)
次に、家族3人を招くために今回新たに追加した費用です。
| 項目 | 単価(税抜) | 数 | 月額 |
|---|---|---|---|
| Microsoft 365 Business Basic(1年契約・月払い) | ¥1,101 | 3 | ¥3,303 |
| Power Apps / Power Automate / Lists | 標準コネクタ範囲で同梱 | — | ¥0 |
家族分合計:¥3,633/月(税込)
契約期間は、2026年7月7日〜2027年7月6日です。
年払いにすると、1席あたり月額換算で ¥849 程度になり、年間では約 ¥9,000 安くなります。
ただ、今回はまず家族で使ってみることを優先して、月払いを選びました。
なお、3年契約は月払い単価が1年契約と同じだったため、我が家ではメリットが薄いと判断しました。
世帯全体で見ると、私の学習環境 ¥8,039 + 家族分 ¥3,633 = ¥11,672/月(税込) になります。
AI利用は、従量課金で小さく試す
今後、Copilot Studio や Windows 365 for Agents を家庭で使う場合は、追加の従量課金が発生する可能性があります。
現時点では、家庭用途でいきなり大きな前払いプランを契約するつもりはありません。
まずは従量課金で、小さく試す方針です。
| 項目 | 月額の目安 |
|---|---|
| Copilot Studio 従量課金 | ¥500〜1,500 |
| Windows 365 for Agents 従量課金 | ¥500〜2,000 |
これはあくまで見込みです。
実際の金額は、利用回数やエージェントの処理内容によって変わります。
Copilot Studio の前払いパックは家庭で試すには大きな金額なので、家庭用途ではまず従量課金で十分だと思っています。
ただし、従量課金を使うには Azure サブスクリプションへの課金設定が必要です。
また、ユーザー操作を伴わない処理や、自律的な実行は無償範囲外になる場合があります。
このあたりは、実際に使いながら請求を確認していく予定です。
次回予告
次回は、ここまで整理した家庭テナントを、Microsoft Graph PowerShell でまとめて構築するところを書きます。
作るのは、家族3人のユーザー、ライセンス割り当て、Team、チャネル、Lists、Plannerプランです。
手作業でポチポチ作るのではなく、できるだけコードで再現できる形にしていきます。
家庭のことを少し便利にしたい人にも、Microsoft 365やPower Platformを学びたい人にも、何か参考になる形にできたらうれしいです。
参考にした公式情報
Microsoft 365 のプラン
-
Microsoft 365 Family 公式ページ
家庭向けプランの人数、OneDrive容量、含まれるアプリの確認に使用。 -
Microsoft 365 Business のプランと価格
Business Basic / Standard / Premium の違い、Teamsあり・なし、現在価格の確認に使用。 -
Microsoft 365 および Office 365 サービスの説明
Microsoft 365 / Office 365 に含まれるサービス全体の確認に使用。 -
Microsoft 365 および Office 365 プラン オプション
各プランに含まれる Exchange Online、SharePoint Online などのサービス確認に使用。
Power Apps / Power Automate
-
Power Automate のライセンスに関する FAQ
Microsoft 365 ライセンスで使える範囲、標準コネクタとプレミアムコネクタの考え方の確認に使用。 -
Types of Power Automate licenses
Power Automate のライセンス種類やコネクタ種別の確認に使用。 -
Connector reference overview
Power Automate / Power Apps / Logic Apps のコネクタ確認に使用。
子どもアカウント / Microsoft Entra ID
-
Microsoft Graph user リソース
ageGroup、consentProvidedForMinor、legalAgeGroupClassificationの定義確認に使用。 -
Microsoft Entra 管理センターでのユーザープロファイル情報の管理
Minor、NotAdult、Adultの年齢区分の確認に使用。 -
Microsoft Graph user 更新 API
次回の Graph PowerShell 編で、ユーザー属性更新の参考にする予定。 -
Update-MgUser コマンド
Graph PowerShell でユーザー情報を更新する際の参考にする予定。
セキュリティ / 認証
-
Microsoft Entra ID のセキュリティの既定値
新規テナントのセキュリティ既定値、多要素認証の考え方の確認に使用。 -
Microsoft Entra 多要素認証の概要
Microsoft Entra の多要素認証の基本的な考え方の確認に使用。 -
Passkeys (FIDO2) authentication method in Microsoft Entra ID
Passkey(FIDO2)がフィッシングに強い認証方法として扱われることの確認に使用。 -
Microsoft Entra authentication overview
Passkey(FIDO2)など、Microsoft Entra の認証方式全体の位置づけ確認に使用。 -
How to enable passkeys (FIDO2) in Microsoft Entra ID
Passkey(FIDO2)の有効化手順の確認に使用。
Copilot Studio / Work IQ / Project Opal / Windows 365 for Agents
-
Copilot Studio licensing
Copilot Studio のライセンス、従量課金、Azureサブスクリプションとの関係確認に使用。 -
Set up a pay-as-you-go plan - Power Platform
Power Platform の従量課金設定に Azure サブスクリプションが必要なことの確認に使用。 -
Microsoft 365 Copilot Pay-as-You-Go Service Overview
Microsoft 365 Copilot 関連の従量課金サービスの考え方確認に使用。 -
Set Up Microsoft 365 Copilot Pay-as-You-Go Services
Microsoft 365 管理センターでの従量課金サービス設定の確認に使用。 -
Work IQ の概要
Work IQ が Microsoft 365 Copilot やエージェントに文脈を与える層であることの確認に使用。 -
Work IQ API overview
Work IQ API の概要確認に使用。 -
Work IQ MCP の概要(プレビュー)
Copilot Studio で Work IQ MCP を使う考え方の確認に使用。 -
Project Opal(フロンティア)の設定と管理
Project Opal の利用条件、設定、管理方法の確認に使用。 -
Windows 365 for Agents とは
Project Opal や Copilot Studio のコンピューター利用で使われる Cloud PC for Agents の概要確認に使用。
価格改定
-
Partner Center announcements - December 2025
2026年7月1日以降、新規・更新契約に価格改定が適用されることの確認に使用。 -
Partner Center announcements - June 2026
2026年7月1日を前にした価格改定・パッケージ変更に関する案内の確認に使用。
この記事中の金額は、上記の公式情報に加えて、私のテナントで確認した請求書ベースの実測値です。
実際の請求額は、契約形態、購入チャネル、契約期間、税、地域、為替などによって変わります。
