TL;DR
次のチェックリストを用いることで、生成AIの利用有無を問わず、質の高い技術ブログを見分けることができます。
- traceability: 参考文献や引用元が明確に示されている
- testability: 内容の正確性を確認できるようになっている
- separatability: 事実と意見が明確に分離されている
- readability: 論理的な構成や明確な表現が用いられている
- originality: 執筆者自身の経験や洞察が反映されている
はじめに
生成AIを用いた技術ブログの執筆は増え、日々議論の的になっています。
本記事では、今の時代に求められる技術ブログについて考察します。
合わせて、技術ブログの読み手として、余計な時間を取られないために、どのような点に注意すればよいかについても述べます。
対象読者
- 技術ブログを書いている人、これから書こうとしている人
- 生成AIを用いて技術ブログを書こうとしていたり、既に書いている人
- 技術ブログを読む人
説明すること / しないこと
- 説明すること
- 生成AIを用いた技術ブログの問題点
- 大手技術ブログのポリシー
- 現代の技術ブログに求められる要件定義
- 技術ブログの読み手として注意すべき点
- 説明しないこと
- 生成AIの技術的な説明
- 生成AIを用いた技術ブログの書き方
生成AIを活用した技術ブログの問題点
生成AIを利用すれば、簡単に技術ブログのようなものは生成できます。
ただ、生成AIを活用した技術ブログには問題点があります。
watanyさんのブログ1では、ブログの質が高ければ生成AIを利用しても問題ないとしつつ、大規模言語モデル(LLM)を使用して技術ブログを書くことの問題点について述べられています。
主な問題点は以下の通りです。
- 読み手の時間を無駄にしてしまう
- 読み手から書き手に対して「LLMで書いてある」と疑われるだけで、実際は違っても質が低いとみなされる
大手技術ブログのポリシー
技術ブログとして、QiitaやZennなどがありますが、それぞれガイドラインを設けています。
Qiitaのコミュニティガイドライン2では、以下のように述べられています。
☝ AIが生成した内容は正確性を確かめよう
記事等の執筆に便利なAIツールを活用することそのものは禁止していませんが、AIが生成した内容は、そのまま投稿するのではなく、正しいかどうかを検証した上で投稿するようにしましょう。 Qiitaで提供しているAI機能を利用する場合も同様です。 正確ではない情報が投稿されることは、コミュニティにとって望ましいことではありません。内容に責任をもって投稿しましょう。
Zennのコミュニティガイドライン3では、以下のように述べられています。
生成AIを活用して執筆することは禁止していません。 著者の皆さまには、より質の高い記事を執筆するために生成AIを活用してほしいと考えています。ただし、下記のようにコンテンツを乱造する行為は控えてください。
- 内容の正確性を確認せずに記事を投稿すること
- 製品やサービスの宣伝を主な目的として記事を投稿すること
- Zennサービス内や外部SNSでのフォロワー獲得、転職サービスなどでのスコア上昇を主な目的として記事を乱造すること
- 外部サイトへ流入させることを主な目的として記事を投稿すること
つまり、両者とも生成AIを活用すること自体は禁止していませんが、内容の正確性を確認することを強調しています。
現代の技術ブログに求められるもの
どのようなものが技術ブログに求められるか、個人的に嬉しいと感じる要件を以下にまとめます。
| id | 要件 | 説明 |
|---|---|---|
| traceability | 追跡可能性 | ブログの内容がどこから来たのか、情報源が明確であること。引用元や参考文献が適切に示されていること。 |
| testability | 妥当確認性 | 読み手がブログを読んだ際に、内容が正しいかどうかを確認できる状態であること。コード例がある場合は、実際に動作確認ができること。 |
| separatability | 事実とその他の分離性 | 事実(コードや公式ドキュメントなど)と、執筆者の意見や考察が明確に分離されていること。 |
| readability | 可読性 | 読み手が理解しやすいように、論理的な構成や明確な表現が用いられていること。 |
| originality | 独自性 | 執筆者自身の経験や洞察が反映されており、他の情報源にはない独自の価値が提供されていること。 |
個人的には、上のものが満たされていれば、生成AIを活用していても良い技術ブログであると考えています。
以下ではそれぞれの要件についてどのようなことをすれば満たすことができるかを説明します。
追跡可能性(traceability)
追跡可能性を満たすためには、ブログの内容がどこから来たのか、情報源が明確であることが重要です。
つまり、参考文献が適切に示されていることが必要です。
公式ドキュメントやコードリポジトリ、参考にした教科書や論文などを明示的に引用することが求められます。
妥当確認性(testability)
妥当確認性を満たすためには、読み手がブログを読んだ際に、内容が正しいかどうかを確認できる状態であることが重要です。
コードについては、実際に動作確認ができることが求められます。そのため、バージョンを明示したり、サンプルコードを提供したりすることが有効です。
また、tracabilityとも関連しますが、参考元のどこにその内容が書かれているのかを明示することも重要です。
事実とその他の分離性(separatability)
事実とその他の分離性を満たすためには、事実(コードや公式ドキュメントなど)と、執筆者の意見や考察が明確に分離されていることが重要です。
これは後述のreadabilityとも関連しますが、事実と意見を混同しないように注意深く文章を構成することが求められます。
可読性(readability)
可読性を満たすためには、読み手が理解しやすいように、論理的な構成や明確な表現が用いられていることが重要です。特に見出しで、誰のための情報か、何について書かれているのかが明確になるようにすることが求められます。
GoogleのTechnical Writingガイドライン4や、小堀内さんのブログ5などの、既存の書き方のガイドラインを参考にすることも有効だと思います。
独自性(originality)
生成AI時代において、独自性を満たすためには、執筆者自身の経験や洞察が反映されており、他の情報源にはない独自の価値が提供されていることが重要です。
上記の要件を満たしているか簡単に確認するためのチェックリスト
以下のチェックリストを用いて、技術ブログが上記の要件を満たしているか簡単に確認できます。
こちらを利用することで、生成AIの利用有無を問わず、質の高い技術ブログを見分けることができます。
- traceability: 参考文献や引用元が明確に示されている
- testability: 内容の正確性を確認できるようになっている
- separatability: 事実と意見が明確に分離されている
- readability: 論理的な構成や明確な表現が用いられている
- originality: 執筆者自身の経験や洞察が反映されている
おわりに
生成AIを活用した技術ブログには問題点もありますが、適切に利用すれば有益な情報源となり得ます。
余談
私の書くブログは問題ないのだろうか
チェックリストを提示させていただきましたが、
過去の私のブログを見ると、上記の要件を満たしていないものも多々あります。
今後は上記の要件を意識して、質の高い技術ブログを書いていきたいと思います。
技術ブログを書く際の質の担保方法
ソフトウェア開発において、DoD 6やチェックリスト7を用いて品質を担保することがあります。
同様に、技術ブログを書く際にも、上記のチェックリストを用いて質を担保することができると考えています。
生成AI時代における技術ブログの価値の変化
本記事で提示した要件は現時点でのものですが、生成AIの進化とともに、技術ブログに求められる価値も変化していく可能性があります。
懸念される課題
生成AIが技術ブログを学習し、高品質な技術情報を自動生成できるようになると、以下のような状況が想定されます。
- 読み手は既存のブログを検索する代わりに、生成AIに必要な情報を生成させる
- 低品質な技術ブログが生成AIの学習データに混入し、出力品質が低下する
- 技術ブログの執筆者が、自身のコンテンツが学習データとして使われることに懸念を持つ
変わらない価値
一方で、技術ブログの執筆には以下のような普遍的な価値があると考えています。
- 学習効果: 自分の理解を文章化することで、知識が深まる
- コミュニティへの貢献: 自身の経験や洞察を共有することで、他者の学習を助ける
- 信頼性の構築: 継続的な情報発信により、技術者としての信頼を築く
今後必要になる可能性のある仕組み
生成AI時代において、技術ブログのエコシステムを健全に保つために、以下のような仕組みが求められるかもしれません。
- 技術ブログを生成AIの学習対象から除外するオプトアウトの仕組み
- 技術ブログの一番上に品質についての評価やチェックリストの達成度を表示する仕組み
-
watany, アドベントカレンダーをLLMで書くくらいなら何も書かない方がいい。 , 更新日 2025.12.01. アクセス日: 2025年12月1日. ↩
-
Qiita, コミュニティガイドライン | Qiita ヘルプ , 更新日 2023.11.20. アクセス日: 2025年12月1日. ↩
-
Zenn, コミュニティガイドライン | Zenn , 更新日 2025.06.05. アクセス日: 2025年12月1日. ↩
-
Google, Technical Writing | Google for Developers , アクセス日: 2025年12月1日. ↩
-
小堀内さん, 僕が考える テックブログを書く意義 と 書き方のすゝめ , 更新日 2023.12.21. アクセス日: 2025年12月1日. ↩
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アジャイルビジネスインスティテュート株式会社, スクラムにおける完了の定義(Doneの定義)とは? , アクセス日: 2025年12月1日. ↩
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谷口さん, ソフトウェア開発で役立つチェックリスト作成のポイントとは? , 更新日 2025.05.15. アクセス日: 2025年12月1日. ↩