はじめに
先日、ある案件でPCのキッティング作業を行うことになりました。作業場所は仮設スペースで、ネットワーク環境が一切ないという制約がありました。
このような環境下で効率よくキッティングを進める方法を検討した結果、Acronis Snap Deploy 6を使うことで無事に作業を完了することができました。
本記事では、ネットワークが利用できない環境でのPCキッティング手順とそのポイントをまとめています。
参考にした資料
作業の参考にしたのは、Acronis社が提供している以下のオンデマンドウェビナーです。
ただし、この動画は Snap Deploy 5 をベースにした内容のため、Snap Deploy 6 とは一部仕様やUIが異なる点があります。本記事では Snap Deploy 6 の実際の操作に基づいて解説しています。
使用したもの
- Acronis Snap Deploy 6 ライセンス
- 16GB以上のUSBメモリ(起動メディア用)
- マスターPC(初期構成を構築するための1台)
キッティング手順
以下の手順でキッティング作業を行いました。
1. Acronis Snap Deploy の購入・インストール
Acronisの公式サイトから Snap Deploy 6 を購入し、ライセンスを取得後、キッティング作業を行うPCにインストールします。
2. USBメモリの購入
今回は以下2種類のUSBメモリを用意しました。
- 起動用(ブータブルメディア)
- FAT32形式でフォーマットする必要があるため、32GB以下を推奨
- マスターイメージ保存用
- ディスクイメージが10GB以上になるため、読み書きが速いSSDタイプのUSBメモリを使用
FAT32形式に対応していないUSBメモリ(例:32GB超)は、正常にブートできないことがあります。
32GB以下、もしくはFAT32に対応しているメモリを推奨します。
3. ブータブルメディアの作成
Acronis Snap Deployを起動し「イメージの作成」からメディアを作成します。
4. ISOイメージの書き込み
作成したISOファイルをRufusを使ってUSBメモリに書き込みます。
USBメモリが完成したら、そこからPCを起動することで、Snap Deploy の各種ユーティリティが使用可能になります。
5. マスターPCの準備
インストールや初期設定を済ませた状態のPCを「マスターPC」として構築します。
このPCをベースに、他のPCへ一括展開を行います。
6. Sysprepの実行
WindowsのSysprepコマンドを使って、マスターPCをイメージ化可能な状態にします。
sysprep /generalize /oobe /shutdown
オプション | 説明 |
---|---|
/generalize | SIDなどの固有情報をリセット |
/oobe | 初回起動時にセットアップ(OOBE)を表示 |
/shutdown | 処理完了後に自動シャットダウン |
Sysprepの実行に関する補足
Acronis Snap Deploy 6 には、展開先PCに対して配置前に設定できる項目(コンピュータ名、ドメイン参加、ライセンスキーなど)がユーザーガイドにリストアップされています。
ただし、注意すべき点として「セキュリティ識別子(SID)の変更」については、Windows 10 / 11ではMicrosoftの仕様上サポートされておらず、Acronis側で自動変更は行えません。
そのため、以下のようなケースでは事前にSysprepの実行を推奨します。
- 展開先PCでSIDの一意性が求められる環境(例:Active Directoryドメイン参加)
- 「配置設定」でカバーされていない項目のリセットや初期化が必要な場合
なお、Sysprep済みのマスターイメージを使用した場合は、Acronis側で設定できる項目が一部に限られるため、展開後に必要な構成作業を別途行う前提で運用を設計する必要があります。
また、今回のようにネットワークを使わずスタンドアロン(ブータブルメディア)で展開する場合も、「配置設定」での自動設定は制限を受けるため注意が必要です。
7. イメージの取得
作成したUSBからマスターPCを起動すると、以下のようなコンソールメニューが表示されます(UEFI環境の場合)
Starting x64 UEFI loader (v.1.1.298)...
1. Acronis Snap Deploy 6 Standalone Utility
2. Acronis Snap Deploy 6 Master Image Creator
3. Acronis System Report
4. Acronis Snap Deploy 6 Agent
5. Continue booting
ここではAcronis Snap Deploy 6 Master Image Creatorを選択して、マスターPCのディスクイメージを取得します。
ブータブル環境では英語キーボード配列になります。
そのため、パス入力時やメモ入力時には注意が必要です。
8. 各PCへの展開
キッティング対象のPCを起動し、ブートメニューからAcronis Snap Deploy 6 Standalone Utilityを選択します。
あとは保存したイメージファイルを選択して復元するだけで、キッティングが完了します。
おわりに
ネットワークが一切使えない環境でも、Acronis Snap Deploy 6のスタンドアロン構成を活用すれば、効率的にPCの一括キッティングが可能です。
同様の課題を抱えている方の参考になれば幸いです。