私が開発している Makarov Physics Suite に、新しい実験と、大きく進化したおなじみの実験が加わりました。このファイルでは、新規追加・大幅更新した25のモジュールを紹介します。透明なエンジンの内部から、磁場に閉じ込められた粒子、風に揺れる橋、物をつかむロボットアームまで、さまざまな物理現象を立体的なシーンで探究できます。
大切なのは、眺めるだけでなく、自分で条件を変えてみることです。温度を上げる、磁場を強める、摩擦を減らす、制御の設定を変える。その小さな操作が、動きやグラフにどんな違いを生むのでしょうか。ここでは各実験の見どころと、その背後にある仕組みを、数式に頼りすぎずに解説します。モデルで表現している範囲にも触れながら、「なぜこうなるのか」を楽しんでいただければ幸いです。
橋のフラッター ― 風が育てる揺れ
一見すると動かない橋も、風を受ければわずかにたわみ、ねじれます。普通なら小さな揺れで済みますが、条件によっては風が揺れにエネルギーを送り込み続け、振動が次第に大きくなります。こうした空気の流れと構造物の運動の相互作用による不安定現象が、フラッターです。
橋桁が傾くと、風から受ける力が変わります。その力が橋桁を動かし、動いた橋桁がさらに空気力を変える。この循環の中で、風が与えるエネルギーが減衰によって失われる分を上回ると、揺れは成長します。単に強い材料を使えばよいわけではなく、橋桁の形、剛性、振動を抑える仕組みが重要になる理由です。
風速と減衰を変え、橋に短い外力を加えてみてください。計算されたフラッターの発生境界の前後で、揺れが収まる場合と成長する場合を比較できます。このモジュールは、たわみとねじれが結び付く仕組みを示す簡略モデルです。風による振動が、外から一定のリズムで押されなくても育つことを観察できます。
直流モーター ― 電気と回転をつなぐ仕掛け
磁石の間に置いたコイルに電流を流すと、コイルを回そうとする力が生まれます。しかし、一方向へ回転し続けるには、適切なタイミングで電流の向きを切り替えなければなりません。その役目を担うのが、ブラシと整流子です。断面モデルを通して、回転の陰で繰り返される接続の切り替えを見ることができます。
回っているモーターは、同時に小さな発電機でもあります。回転によって、電源から流れ込む電流を妨げる向きの電圧、逆起電力が生じます。負荷が増えて回転が遅くなると逆起電力が弱まり、電流が増えます。電気回路と機械の運動が、互いの状態を変え合っているのです。
電源の極性を反転したり、軸の負荷を変えたりして、電流と回転速度を比べてみてください。ゆっくり動かせば、巻線、ブラシ、整流子の関係も追いやすくなります。発電機モードでは、軸を回す側から回路へエネルギーが渡ります。同じ装置が、エネルギーの受け渡しの向きによってモーターにも発電機にもなることが分かります。
渦電流ブレーキ ― 触れずに動きを止める
金属板の振り子を磁石の近くで揺らすと、何かにこすれているわけでもないのに、動きが急速に弱まることがあります。金属板が場所によって強さの違う磁場を通ると、板の内部に渦を巻くような電流が誘導されます。これが渦電流です。
誘導された電流による磁気的な作用は、その電流を生み出した運動を妨げる向きに働きます。これはレンツの法則の表れです。失われた運動エネルギーは磁石に吸い込まれるのではなく、主に金属の電気抵抗によって熱へ変わります。板に切れ目を入れると電流の通り道が分断され、制動効果が弱くなることもあります。
切れ目のない板と、スリットを入れた板を同時に放してみてください。磁場の強さや電気抵抗を変え、電流の経路、振れ幅、エネルギー、発生した熱を比較できます。目には見えない電流が、目に見える運動の違いを生み出します。摩擦式ブレーキとは異なる、電磁誘導による減速の仕組みを探る実験です。
脱進機と振り子時計 ― 揺れを時刻に変える
振り子を一度揺らしても、摩擦や空気抵抗のために、やがて止まってしまいます。時計には、失われるエネルギーを補いながら、揺れを正確に数える仕組みが必要です。脱進機は歯車を少しずつ解放し、決まったタイミングで振り子に小さな力を与えます。連続して回ろうとする歯車の動きが、「チク、タク」という刻みに変わります。
振り子の周期を主に決めるのは、その長さです。振れ幅が小さい範囲では周期は振れ幅にあまり依存しませんが、大きく揺らすと事情が変わります。脱進機の形状、摩擦、駆動力の釣り合いも、時計の動作に影響します。エネルギーを与えすぎても、少なすぎても、安定した時を刻むのは難しくなります。
透明なケース越しに、アンクル、振り子、歯車の動きを観察できます。時計を巻き上げ、振り子の長さや損失を変え、刻みの間隔を比べてみてください。振り子を軽く押せば、その乱れからどのように落ち着くかも分かります。蓄えられた駆動エネルギーが減っていく様子とともに、機械式時計が動き続ける条件を確かめられます。
ガリレオ温度計 ― 浮かぶ球が温度を教える
細長いガラス容器の中で、色とりどりの球が浮いたり沈んだりします。それぞれに付いた数字の札は、単なる飾りではありません。球と札を合わせた平均密度がわずかずつ異なるように調整されており、周囲の液体の密度が変わると、浮く球と沈む球の組み合わせも変わります。
液体は温められると膨張し、一般に密度が小さくなります。同じ体積の球が押しのける液体の重さが減るため、浮力も弱くなり、それまで浮いていた球が沈むことがあります。冷やせば逆の変化が起こります。浮いている球の集まりのうち、最も下にある球の札が、おおよその温度を示します。アルキメデスの原理が、そのまま温度の目盛りになっているのです。
温度を上げ下げして、6個の球が位置を変える様子を観察してください。重力と浮力の差にも注目すると、なぜその球が動き始めたのかを理解しやすくなります。熱が伝わるまでには時間がかかるため、温度設定を変えた直後と、しばらく待った後では結果が異なります。美しい置物の中に、密度、熱膨張、浮力の関係が詰まっています。
跳水 ― 浅く速い流れが、深く遅い流れへ
水路を勢いよく流れる薄い水の層が、ある場所で急に盛り上がり、渦を巻いた深い流れへ変わることがあります。これが跳水です。水道の水が平らな面に当たるときにも見られる現象で、大きな水路では流れのエネルギーを弱めるために利用されます。
鍵となるのは、水の流速と、その水深で長い波が伝わる速さとの比較です。この比をフルード数といいます。上流の浅く速い流れでは波が上流へ進めず、跳水後の深く遅い流れでは上流へ伝わることができます。通過する水量は保たれ、運動量の収支が前後の水深を結び付けます。一方、流れの機械的エネルギーの一部は乱流へ移り、最終的に熱になります。
流量や入口の水深を変え、フルード数、下流の水深と流速、失われる水頭を比較できます。水面が高くなったからといって、水のエネルギーが増えたわけではありません。流速の低下も合わせて見ることが大切です。渦や粒子の表示は流れを理解するための模式表現で、細かな乱流をすべて計算するものではありません。
ケルビンの水滴発電機 ― 落ちる水から火花が生まれる
二つの水流、金属の輪、そして交差してつながれた受け皿。電池がないこの装置で、水滴を落とし続けると電荷が蓄積し、ついには火花が飛びます。電気のエネルギーの源は、落ちる水が失う重力による位置エネルギーです。
始まりは、ごく小さな電荷の偏りです。帯電した輪が近くの水流に静電誘導を起こし、切り離された水滴が電荷を運びます。輪が反対側の受け皿につながれているため、水滴が運んだ電荷は次の水滴の帯電をさらに強めます。こうした正のフィードバックによって、両側に逆符号の電荷が蓄積します。火花が飛ぶと電荷の偏りが減り、再び充電が始まります。
水の流量や電荷の漏れやすさを変え、電圧、蓄積エネルギー、火花の間隔を観察してください。交差配線を外したり、受け皿を接地したりすると、電圧が育つ条件が見えてきます。水を止めれば新たな充電は止まり、残った電荷も漏れていきます。わずかな偏りを大きくする仕組みを、水滴一つ一つから追える実験です。
フィードバック制御による磁気浮上 ― 宙に浮くための調整
電磁石の下で鋼球が宙に浮いています。磁石の引く力と重力が等しければ、それで安定するように思えるかもしれません。しかし、電流を固定しただけでは、その釣り合いは不安定です。球が少し近づくと引力が強まり、さらに近づきます。少し遠ざかると引力が弱まり、そのまま落ちやすくなります。
そこで必要になるのが、球の状態を調べ、電流を調整するフィードバック制御です。位置や動きに応じて磁力を変えれば、ずれを打ち消すことができます。ただし、反応が遅ければ間に合わず、強く修正しすぎれば振動が続きます。コイルの電流は瞬時には変わらず、流せる電流にも上限があります。
目標の浮上位置と制御の設定を変え、球を下向きに軽く押してみてください。位置、電流、力のグラフを見れば、制御装置が乱れにどう対応したかが分かります。フィードバックを切ると、静かに浮いていた状態がどれほど繊細だったかも確かめられます。安定した姿を支えているのは、絶え間ない小さな調整なのです。
マクスウェルの悪魔 ― 情報で熱を仕分けられるか
小さな扉を操作して、速い分子と遅い分子を別々の部屋へ振り分けることができたら、どうなるでしょうか。分子に直接エネルギーを与えなくても、片側が熱く、もう片側が冷たくなりそうです。これは「マクスウェルの悪魔」と呼ばれる思考実験で、熱と情報の関係を考える入口になります。
このモジュールでは、512個の粒子が三次元の空間で動き、弾性衝突を繰り返します。粒子の色は速さを表し、扉は設定した条件に従って通過を選別します。扉自体が粒子の運動エネルギーを増やすわけではありません。それでも温度差が生じるのは、粒子についての情報を使って、通り道を選んでいるためです。
選別の基準を変え、両室の温度、気体のエントロピーの推定値、判断の回数を追ってみてください。記憶を消去する操作では、情報を不可逆に消去するときに必要となる最小の放熱量を、別の指標として示します。これは粒子へ自動的に加えられる熱ではありません。気体だけでなく、判断を記録する装置やその記憶まで含めて考えることが、この思考実験を読み解く鍵です。
メトロノームの同期 ― 共通の台がリズムをつなぐ
ばらばらのタイミングで動き始めたメトロノームが、いつの間にか同じリズムで揺れ始めます。互いの音を聞いているわけではありません。5台が載る共通の台がわずかに動き、一台の揺れをほかのメトロノームへ伝えているのです。
振り子が台を押し、動いた台がほかの振り子を押す。この弱い結び付きが、少しずつ揺れるタイミングを変えます。ただし、台に載せれば必ず同期するわけではありません。台の質量、振り子の長さや固有の速さの違い、振動を保つ駆動の条件によって、集団の振る舞いは変わります。
初期のタイミングをばらばらにし、台を自由に動かせる場合と固定した場合を比べてください。振り子の長さのばらつきを変えたり、一台だけを軽く乱したりすると、同期が生まれる条件や壊れる条件が見えてきます。位相がどれだけそろっているかを示す値も手掛かりになります。個々の振動が、共通の足場を通して一つの集団運動へ変わる実験です。
光の偏光 ― 向きを選ぶと、明るさが変わる
二枚の偏光板を直交させると、理想的には光が通らなくなります。ところが、その間に斜め向きの偏光板をもう一枚入れると、再び光が届きます。「邪魔する板を増やしたのに明るくなる」という、一見不思議な結果です。
偏光板が選ぶのは、光の電場が振動する方向です。入ってきた電場のうち、板の透過軸に沿った成分だけが通ります。途中の偏光板を通った光は、その板の方向に偏光するため、最後の板も通れる成分を持つようになります。また、四分の一波長板は、直交する二つの成分の位相をずらします。条件が合えば、直線的な振動が楕円や円を描く振動へ変わります。
三枚の偏光板を回転させ、波の表示とスクリーンの明るさを見比べてください。四分の一波長板や、理想化したねじれ構造の液晶を加えることもできます。電場の振動方向、成分の大きさ、位相の関係を順に変えると、偏光が単なる「光の向き」以上の情報を持つことが見えてきます。
クアッドコプターと飛行制御 ― 四つの力で空中にとどまる
四つのローターを持つ機体が、空中で静止し、向きを変え、目的地へ進みます。前進するには機体を傾けて、推力の一部を横向きに使う必要があります。しかし傾けるほど、上向きの成分は小さくなります。高度を保つには、姿勢だけでなく推力の大きさも調整しなければなりません。
ローター間の推力の差が前後左右の傾きを生み、回転に伴う反作用のトルクが機首の向きを変えます。自動制御では、目標位置から必要な姿勢を求め、その姿勢を実現するために各モーターを調整します。このように段階を重ねた制御でも、応答が弱すぎれば動きが鈍く、強すぎれば行き過ぎや振動が起こります。
ホバリング、立体的な風景の中を進む飛行、手動操作を試してください。風や外乱を加え、制御の設定を変えながら、各ローターの推力と位置のずれを追えます。乱れた機体が元へ戻る過程を見ると、なめらかな飛行が、一つの力ではなく複数の調整の積み重ねで支えられていることが分かります。
星型エンジン ― 七つのシリンダーが一つの軸を回す
中心のクランク軸を囲むように、7本のシリンダーが放射状に並んでいます。透明なシリンダー越しに、ピストン、バルブ、燃料の流入、点火のタイミングを観察できます。星型エンジンの独特な姿の内側では、複数の往復運動が一つの回転へまとめられています。
各シリンダーは、吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気という四つの行程を繰り返します。点火後に高まる圧力がピストンを押し、主連桿とそこにつながる副連桿を通じて、共通のクランクピンへ力を伝えます。点火する順番を追うと、全体として回転を支える仕組みが見えてきます。
一つのシリンダーを選び、回転速度や取り込む混合気の量を変え、次の点火位置で止めてみてください。圧力、体積、ガスが生むトルクを結び付けて眺めると、エンジンの動きを理解しやすくなります。このモデルでは、内部の行程を観察できるように軸の回転を所定の速度で駆動します。燃焼によってエンジン全体が自ら加速する過程までを計算するものではありません。
ラトルバック ― 回した向きと逆に回り始める物体
細長い物体を机の上で回すと、一方向には素直に回るのに、逆方向ではぐらぐらと揺れ、回転が弱まり、やがて反対向きに回り始めることがあります。ラトルバックの不思議な動きは、底面の曲がり方と、内部の重さの分布の組み合わせから生まれます。
物体の回転しやすさを決める慣性の主軸と、底面の曲率の主軸がずれていると、回転と揺動の間で非対称なエネルギーのやり取りが起こります。ある向きの回転では揺れが育ち、その揺れから反対向きの回転へエネルギーが移ります。同時に損失もあるため、動き全体のエネルギーが増えているわけではありません。
両方向に回してみて、内部の重りが見える表示、回転と揺れのエネルギーを比較してください。軸のずれを変えたり、初めに揺れを与えたりすると、反転の起こり方が変わります。二つの軸をそろえた場合との比較も有効です。小さな揺れを平均化して扱うモデルを通して、形と質量の配置が運動に与える意外な影響を探れます。
サイフォン ― 一度上がってから流れ落ちる水
水で満たした管を容器の縁にまたがせ、出口を水面より低くすると、水は管の頂上を越えて流れ続けます。途中では重力に逆らって上がっているのに、全体としては流れが続く。サイフォンでは、入口から出口までの高さの差と、管の中の圧力の分布を一緒に考えることが大切です。
水が全体として低い位置へ移ることで、流れを維持するエネルギーが得られます。管の頂上では圧力が低くなり、水柱を高く持ち上げすぎると、水蒸気が発生して連続した流れが途切れることがあります。途中に空気が入っても流れは止まりやすくなります。また、管内の摩擦による損失が、実際に流れる量を制限します。
管の頂上と出口の高さ、大気圧、流れの損失を変えて、二つの容器の間を移動する水を観察してください。流量だけでなく、頂上の圧力を追うと、流れが続く条件が見えてきます。空気を入れて水柱を切り、再び管を水で満たす操作も試せます。身近な排水の仕組みから、圧力と重力の共同作業を読み解く実験です。
蒸気機関 ― 膨張する蒸気から仕事を取り出す
蒸気がピストンの両側へ交互に導かれ、ピストンが往復します。その動きが連桿とクランクを通じて回転へ変わり、はずみ車が回転のむらを和らげます。透明な二つの作動室を見れば、蒸気を入れる、膨張させる、排出するという流れを、機械の動きと対応させられます。
蒸気は、ピストンが端まで進む間ずっと供給し続ける必要があるとは限りません。途中で入口を閉じても、閉じ込められた蒸気は膨張しながら仕事をします。この供給を止める時期が、カットオフです。圧力と体積の変化を図にすると一周する曲線ができ、その囲む面積から、ガスが一周期に行う正味の仕事を読み取れます。
蒸気の圧力、供給量、カットオフ、軸にかかる負荷を変え、回転が速くなる場合、遅くなる場合、止まる場合を比較してください。はずみ車に始動のひと押しを与えることもできます。圧力―体積線図とピストンの動きを同時に追えば、熱を受け取った作動流体が、どの段階で機械にエネルギーを渡しているかが見えてきます。
テスラコイルとプラズマボール ― 電場が描く光の枝
テスラコイルの先端から伸びる枝分かれした放電と、ガラス球の中を走る細い光。どちらも、強い電場によって気体中の荷電粒子が動き、気体が発光する現象です。同じ電気の実験でも、空気中へ伸びる放電と、球の内部に収まる光の筋とでは、まったく違う表情を見せます。
テスラコイルでは、結合した二つの共振回路の間でエネルギーがやり取りされます。周波数の関係や結合の強さが、得られる電圧に影響します。一方、プラズマボールの表面に手を近づけたり触れたりすると、静電容量を通じた電気的な結び付きが変わり、その付近に放電が集まりやすくなります。指がガラスを突き抜けなくても、内部の光は反応するのです。
二つのモードを切り替え、駆動の強さ、周波数、結合の設定を変えてみてください。プラズマボールでは画面上で球に触れ、接触点を動かすと、光の筋がそこへ集まる様子を観察できます。回路の数値と放電の変化を見比べながら、共振と電場が生み出す、動く光の模様を楽しめます。
トカマク ― 磁場で粒子の道を曲げる
非常に高温のプラズマを、容器の壁に直接触れさせずに保ちたい。そのための方法の一つが、磁場を使った閉じ込めです。トカマクはドーナツ状の装置で、電荷を持つ粒子の運動を磁場によって曲げ、壁から離れた領域にとどめようとします。
荷電粒子は磁力線の周りをらせん状に動きますが、ドーナツを一周する方向の磁場だけでは十分ではありません。曲がった磁場や強さの不均一さのために、粒子の運動にはずれが生じます。プラズマ電流が作る別方向の磁場を重ね、磁力線をねじれた形にすることが、閉じ込めの改善につながります。
装置の一部を切り開いた表示で、粒子の軌跡を内側から観察できます。プラズマ電流のある場合とない場合、磁場の設定や初期温度を変えた場合を比べ、壁への衝突と残った粒子の割合を追ってください。このモジュールは、あらかじめ定めた磁場の中での粒子運動を扱います。核融合反応や炉全体の運転計算ではなく、磁気閉じ込めの基本を目で理解するための実験です。
津波 ― 海底の深さが波を変える
外洋では高さが目立たない波でも、浅い沿岸へ近づくと大きく姿を変えることがあります。津波は波長が非常に長く、水面の近くだけでなく、水柱全体の運動が重要になる波です。そのため、海底がどれほど深いかが、波の伝わり方を大きく左右します。
水深に比べて波長が十分に長い場合、波の速さはおよそ水深の平方根に比例します。深い海から浅い棚状の地形へ進むと波は遅くなり、波長も短くなります。条件によっては波高が増し、地形の変化で一部が反射することもあります。海底は単なる背景ではなく、波の形と速さを変える要因です。
深い領域と浅い領域の水深、最初の波の高さなどを変え、進行波と反射波を観察してください。ゆっくり再生すると、水深の境目で何が起こるかを追いやすくなります。水量が保たれることも確認できます。波を見やすくするために高さ方向の縮尺は強調されています。このモデルは長い波の伝播を扱い、砕波や陸上への浸水までを計算するものではありません。
水分子の双極子と水素結合 ― 小さな偏りがつながりを生む
水分子は全体として電気的に中性ですが、電荷が均等に分布しているわけではありません。酸素側には負、水素側には正の偏りがあり、分子の折れ曲がった形と合わせて、電気双極子を作ります。小さな分子の向きが、周囲の分子や外から加えた電場との関係を変えます。
ある分子の水素側と、別の分子の酸素側の間には、水素結合が生じることがあります。そのつながりは固定された骨組みではなく、熱運動の中で絶えず組み替わります。外部の電場は双極子の向きをそろえようとし、熱運動は向きを乱します。この二つの傾向の競い合いが、分子集団の振る舞いを決めます。
三次元空間で動き、回転する48個の分子を観察し、温度を表す無次元の値や、電場の強さと方向を変えてみてください。双極子の矢印と配向の度合いを見れば、分子がどれほど同じ向きを向くかが分かります。破線は、水素結合を作りやすい幾何学的な位置関係を示す目印です。電子状態を解く量子化学計算ではなく、分子の向きと相互作用を直感的に探るモデルです。
ワットの遠心調速機 ― 回転が自分の速さを調整する
回転軸の周りで二つの重りが回り、速くなるほど外側へ広がって上がります。その動きがリンク機構を通じて蒸気の弁へ伝わり、供給を絞ります。回転が遅くなると重りが下がり、弁が開きます。機械自身の動きが、機械へ入るエネルギーを調整する仕組みです。
速くなりすぎたら駆動を弱め、遅くなったら強める。これは負のフィードバックの代表例です。しかし、重りや回転体には慣性があり、弁を動かしても速度はすぐには変わりません。調整が強すぎたり減衰が足りなかったりすると、速度が行き過ぎと戻りを繰り返す「ハンチング」が起こります。負荷が変わると、落ち着いた後の速度にもずれが残る場合があります。
軸の負荷、制御の強さ、減衰を変え、重りの角度、弁の開き、回転速度を比べてください。安定して落ち着く条件と、振動が続く条件を見分けられます。電子回路がなくても実現できる自動制御を通して、フィードバックの利点と、調整の難しさを同時に体験できます。
ウィルバーフォースの振り子 ― 上下の揺れがねじれに変わる
ばねからつり下げた重りを上下に揺らすと、その揺れが弱まり、代わりに重りが回転するようにねじれ始めます。しばらくすると、ねじれが弱まって再び上下に揺れます。エネルギーが消えたり現れたりしているのではなく、二種類の運動の間を行き来しているのです。
この仕組みでは、ばねの伸び縮みとねじれが弱く結び付いています。上下振動とねじり振動の固有振動数が近いほど、エネルギーの交換がはっきり現れます。連成した系の固有の振動を重ね合わせて見ると、振幅がゆっくり変わる「うなり」としても理解できます。
重りの配置を変えて慣性モーメントを調整し、上下に変位させた場合と、最初にねじった場合を比べてみてください。それぞれの運動のエネルギーを追えば、見た目の変化がエネルギーの受け渡しに対応していることが分かります。減衰を加えたときには、交換を続けながら全体の運動が弱まっていきます。
アルファ型スターリングエンジン ― 温度差で密閉した気体を働かせる
V字に並ぶ二つの透明なシリンダーで、ピストンがタイミングをずらして動き、共通の軸とはずみ車につながっています。内部の気体は一回転ごとに入れ替わるのではなく、同じ気体が密閉されたまま循環します。外から壁を通して熱を受け取り、高温側と低温側の温度差を利用して仕事を取り出すのが、スターリングエンジンです。
大切なのは、気体の温度と体積の変化をうまく組み合わせることです。適切な位相差では、主に高温側で膨張し、低温側で圧縮されます。膨張で取り出せる仕事が圧縮に必要な仕事を上回れば、差し引きで仕事が得られます。二つのシリンダーの間にある再生器は、通過する気体の熱の一部を一時的に蓄え、流れが逆になったときに戻します。
高温側と低温側の温度、ピストンの位相差を変え、圧力―体積線図を観察してください。曲線が囲む面積は一周期の仕事の大きさを、曲線をたどる向きは仕事の符号を示します。両側を同じ温度にすると、この理想化モデルでは正味の仕事はゼロになります。それでも軸が回るのは、各行程を観察できるよう、回転速度を別に指定しているためです。
3D砂時計 ― 一粒ずつの衝突が流れを作る
透明な容器の中で、何千もの粒が積み重なり、細いくびれを通って下へ落ち、新しい山を作ります。砂時計をひっくり返すと、粒はガラスの壁に沿って転がり、隣の粒と衝突しながら、再び下への道を探します。見慣れた時計が、粉粒体の運動を調べる小さな実験室になります。
粒には一つ一つ、移動と回転があります。重力が下へ引く一方、隣の粒や壁との接触が力を伝え直します。摩擦や非弾性衝突で機械的エネルギーが失われるため、粒の山はやがて落ち着きます。狭い出口付近では粒がアーチ状に支え合い、流れを妨げることもあります。砂の流れは、重力だけでなく、出口の大きさ、粒の並び方、接触の性質に左右されます。
粒の数を2,000、6,000、12,000から選び、くびれの直径や摩擦を変えて、容器をさまざまな角度から眺めてください。反転中には動く壁が粒へ運動量を与えます。反転後の流量や通過した粒の数を追い、Beverlooの経験式による目安とも比較できます。流れそのものを生むのは粒同士の相互作用です。見やすく大きくした乾いた球形粒子を通して、細い砂の流れに隠れた仕組みを探れます。
ロボットアーム・ワークショップ ― つかむ動作を分解する
台座を回し、肩と肘を曲げ、つかみ具を物体へ近づけて持ち上げ、別の場所へ置く。人には簡単に見える動作でも、ロボットには複数の関節を協調させる必要があります。このワークショップでは、6関節のアームがテーブル上の立体的な物体を扱い、移動、仕分け、積み上げを行います。
「つかみ具をこの位置へ動かす」には、そこへ届く関節角度を求めなければなりません。これが逆運動学です。リンクの長さと関節の可動範囲が、手の届く領域を決めます。一方、物体には質量と慣性があり、重力で落ち、衝突し、摩擦を受けます。手を開いた瞬間にも、それまでの動きは残ります。正確に置くには、放す場所だけでなく、そのときの速さも大切です。
関節を一つずつ操作するか、つかみ具の座標を指定して動かしてください。物体をクリックで選び、移動速度や可搬質量の上限も調整できます。自動動作では、選んだ物体の移動、6個の物体の仕分け、3個の立方体の積み上げを試せます。接近、把持、持ち上げ、移動、下降、解放という段階と、先端の軌跡を追いましょう。把持を補助する仕組みを備えたモデルで、動作の幾何学と、置かれた物体の物理的な結果を結び付けて学べます。