はじめに
最近、あるLT発表での資料を拝見して、山野弘樹さんの『独学の思考法 地頭を鍛える「考える技術」』を読みました。
「考えるとはどういうことか」 を哲学の視点から解説した一冊です。
私は普段、SE、PMとして仕事をしている中で、生成AIを活用する機会も増えています。
この本を読んで改めて感じたのは、AI時代だからこそ「考える力」の重要性が増しているということです。
今回は、本書で特に印象に残ったキーワードを、エンジニアの仕事と結び付けながら紹介したいと思います。
問いを立てる力
本書では、「良い問いが良い思考を生む」という考え方が紹介されています。
私たちは問題が起きると、すぐに答えを探そうとしてしまいます。しかし、その前に「本当の問題は何なのか」を考えることが重要です。
例えば、システム開発では、「APIが遅い」という現象だけでは、なかなか原因に辿り着けません。
問いを立てることで、
- どのAPIが遅いのか
- DBアクセスなのか
- ネットワークなのか
- ECSのCPU使用率なのか
- SQLが遅いのか
と、問題を少しずつ絞り込めます。
障害対応でも設計でも、「何が問題なのか」を正しく定義できれば、解決までの道筋は見えやすくなると感じました。
分節する力
本書では、「分節する力」という言葉も印象的でした。これは、複雑なものを適切な単位に分けて理解する力です。
例えばAWSも最初は「難しい」と感じますが、
AWS
→ ネットワーク
→ VPC
→ Subnet
→ Security Group
→ Route Table
というように分けて考えると理解しやすくなります。
システム設計でも、複雑なものを小さく分解して考えることの重要性を改めて感じました。
要約する力
理解したつもりでも、他人に説明できないことはよくあります。
そんな時は、
- 3行で説明する
- 1分で説明する
- 初心者向けに説明する
という練習が効果的です。
私はQiitaを書くことが、この「要約する力」を鍛える良いトレーニングになっていると感じています。
記事を書くことで、自分が本当に理解できているかを確認できますし、「どう説明すれば伝わるか」を自然と考えるようになります。
論証する力
「論証する力」とは、「なぜそう言えるのか」を説明する力です。
例えば、
悪い例
Spring Bootは便利です。
ではなく、
良い例
Spring BootはAuto Configurationによって設定量を減らせるため、開発効率を向上させられます。
というように、
- 結論
- 理由
- 根拠
を意識すると、説明に説得力が生まれます。
設計レビューや技術記事を書く際にも、この考え方は非常に役立つと感じました。
物語化する力
人は情報だけよりも、ストーリーのある情報の方が理解しやすいそうです。
例えばQiitaでも、「CloudFormationの使い方」よりも、「手動更新で環境差異が増えてしまったので、ChangeSet運用を始めた話」の方が興味を持ってもらいやすと思います。
実際の経験や失敗談を交えた記事には、成功したカッコイイ記事よりも価値があります。
今後も「知識の紹介」だけではなく、「なぜその技術を使ったのか」という背景も意識して記事を書いていきたいと思いました。
チャリタブル・リーディングを実践したい
本書の中で、私が特に印象に残った考え方が**「チャリタブル・リーディング」**です。
チャリタブル・リーディングとは、相手の発言や文章を、最初から「間違っている」と決めつけるのではなく、「相手は何を伝えたかったのだろう」という善意の解釈から読み解こうとする姿勢です。
SNSやインターネットでは、一部分だけを切り取って批判したり、言葉尻を捉えて議論がすれ違ったりする場面を目にすることがあります。
しかし、この考え方を知ってからは、まず相手の意図や前提を理解しようとすることが、建設的な対話につながるのではないかと感じました。
この姿勢は、エンジニアの仕事にも当てはまります。
例えばコードレビューでは、レビューコメントを「否定された」と受け止めるのではなく、「より良いコードにするための提案」と捉えることができます。
逆にレビューする側も、「なぜこの実装になったのか」という背景を考えてコメントすれば、相手も納得しやすくなります。
また、設計レビューや障害対応でも、「この人は間違っている」と考えるのではなく、「どのような前提でその結論に至ったのか」を理解しようとすることで、議論の質は大きく変わるはずです。
最近はC生成AIと対話する機会も増えましたが、人とのコミュニケーションだけでなく、AIが返した回答についても、結論だけを見るのではなく「どのような前提でその回答になったのか」を考える姿勢が大切だと感じました。
私は今後、仕事でも日常生活でも、相手の言葉を急いで評価するのではなく、まずは相手の意図を理解しようとする「チャリタブル・リーディング」を意識して実践していきたいと思います。
おわりに
「AI時代だからこそ考える力が重要」
生成AIによって、知識を得ること自体は非常に簡単になりました。
しかし、
- 良い問いを立てる
- 回答を評価する
- 根拠を考える
- 最終的に判断する
これらは、人間が担うべき重要な役割です。
知識量だけではなく、「考える技術」が、これからますます価値を持つ時代になると感じました。
この本は、「どう勉強するか」ではなく、「どう考えるか」を学べる一冊でした。
技術は変化し続けますが、考える力はどの分野でも活かせる普遍的なスキルです。
私自身も、本書で学んだことを仕事や日々のコミュニケーション、そしてQiitaの記事執筆に活かしていきたいと思います。
参考(感謝)
